ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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死は飛翔する

死は形を成す

貴様の前には何がある?

貴様の死神がいる。







死神と死の秘宝 日本決戦編『煌めく白刃』
死神、要請する。七人?のポッター作戦


 

 

ダンブルドアは老いた。

 

それは本人が痛いほど分かっていたことだった。

それを彼は、魔法省のアトリウムでの一戦で再認識してしまう。

 

ダンブルドアが老いた。

 

それをヴォルデモートは気付かなかった。

 

いや、認識出来なかった。

 

闇の帝王にとってダンブルドアは高い壁であると同時に、恐るべき策士であったからだ。

 

それに、実感出来なかったともいえる。

 

おそらく彼にそうはっきり(「老いたなダンブルドア」)と言えるのは、全盛期の彼と戦った『前の世代の闇の魔法使い(グリンデルバルド)』か、彼よりも強大な魔法使いだった『極東の魔術師(刀原の祖父)』ぐらいだろう。

 

ヴォルデモートはダンブルドアの全盛期を知らない。

 

その伝説は、例え老いたとしても健在だった。

 

その、目の上のたん瘤であるダンブルドアが……何があったのかは知らないが重傷だという。

 

そのうえで、なんと日本に行くと言う。

 

ヴォルデモートは、その報告を聞いた瞬間……内心で盛大にガッツポーズ(勝ったぞぉおおお!)した。

 

色めきだった。

 

そして……万難を排して日本へと向かう列車を襲撃し、ダンブルドアの殺害*1を命じた。

 

 

だが、蓋を開けてみればこのざまだ。

 

たった二人の死神によって死喰い人達は殲滅され、古参のドロホフもあっさりやられてしまったのだ。

 

しかし、千載一遇のこの時を逃すわけにはいかない。

 

小癪にも自身を小馬鹿にしてきたトーハラを殺し、目的を達成するのだ。

 

 

 

 

 

 

 

列車の屋根の上で火花が弾けている。

 

日本の若き死神である刀原と、欧州の闇の帝王であるヴォルデモートが、お互い殺意マシマシ(死にさらせぇえええ)で呪文をぶつけているからだ。

 

暫くして、ヴォルデモートが杖をねじ上げる。

その隙をつき、刀原が接近しようとする。

 

接近されてしまえば、ヴォルデモートに勝ち目はなくなる。

 

それを分かっているヴォルデモートは、直後に悪霊の火を放つ。

 

炎の蛇と化したその業火に、刀原はほんの少しだけ戸惑う。

 

しかし。

 

「一閃煌めき両断せよ『神殲斬刀』!」

 

刀原は左手で逆手に抜刀し、上に斬り上げて斬撃を飛ばし、業火を霧散させる。

 

「その程度の火力で、どうにか出来るとでも?」

 

流刃若火(元柳斎)の火力に比べたら……。

 

刀原は余裕たっぷりの笑みでそう言った。

 

一方のヴォルデモート、こちらは余裕などなかった。

 

魔法というジャンルで言えば……圧倒的とはいかないまでも、必ず勝てる。

 

だがほぼ未経験の鬼道と、去年の戦いでその厄介さを味わった斬魄刀は、世界最高峰の魔法使いであるヴォルデモートに最大級の警戒をさせていた。

 

捕縛呪文(インカーセラス)とは格が違い、おまけに種類も豊富で、呪文などで解くことができない『縛道』。

 

何よりも威力が段違いで、完全防御呪文(プロテゴ・マキシマ)を使ってようやくなんとか被害軽微で済む『破道』

 

刀原が持つ……雷も氷も炎も出さないが、そのかわりに防御不可の斬撃を放ってくる凶悪な『斬魄刀』

 

そして何よりも不遜な態度を普段からしている彼を慎重に足らしめているのが、刀原が出している霊圧と殺気だった。

 

恐怖の象徴であるヴォルデモート。

 

当然、殺意を向けられたことはある。

しかし、それらの根底には恐怖があった。

 

好戦的な目を向けられたこともある。

しかし、それらにも怯えの目はあった。

 

少なくとも記憶には無い。

 

手ごわかったダンブルドアにも、殺意はなかった。

 

だが、目の前のこいつ(刀原)はどうだ。

 

恐怖?怯え?

そんなもの、一切感じられない。

 

殺意、殺気?

ありありだ。

 

そして……全身に纏わりつくような、この重さ。

 

おそらく、これが『レイアツ(霊圧)』だろう。

 

少なくとも、二年前まで学生だった青年が出していいものではない。

 

飛んできた斬撃を姿くらましで回避しながら、ヴォルデモートは苦虫を嚙み潰した。

 

そして……。

 

こんなヤバい存在を生み出した日本に、彼の師匠だという日本の最高戦力達に内心で恐怖した。

 

意訳すると。

 

やっぱあいつらやべーじゃん(オージャパニーズクレイジー)』である。

 

 

 

ヴォルデモートが日本の戦力を再認識したところで、戦況は特に変わらない。

 

呪文を連射しようとも、刀原はそれを防ぎつつ接近しようとする。

姿くらましで距離を取れば、斬撃が飛んでくる。

 

悪霊の火を始めとした闇の魔術も、切断の能力の前では無力だった。

 

時間(タイムリミット)も迫っている。

 

ドーバー海峡を渡られてしまえば、国際問題を避ける為にヴォルデモートは手を引かざる得ないからだ。

 

故に……。

 

ヴォルデモートは決着を早めるため、賭けに出た。

 

まず爆破呪文を放ち、爆煙で目くらましをする。

 

そして姿晦ましをし、刀原の背後を取った。

 

「『アバダ・ケダブラ(息絶えよ)』!」

 

本来は行われない、近距離で放つ死の呪文。

 

勝った……。

 

ヴォルデモートは勝利を確信した。

 

しかし。

 

「縛道の六十三『鎖条鎖縛』」

 

勝利の愉悦に浸る前に、太い鎖がヴォルデモートの体の自由を奪った。

 

「くっ……!」

 

嵌められた。

 

ヴォルデモートは瞬時にそれを悟った。

 

呪文を防がれないように至近距離まで接近してくることを、刀原は読んでいたのだ。

 

そしてヴォルデモートが鎖条鎖縛を解こうとする隙を、刀原は逃がさない。

 

「千手の(はて) 届かざる闇の御手(みて) 映らざる天の射手(いて) 光を落とす道 火種を煽る風 集いて惑うな 我が指を見よ 光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔 弓引く彼方 皎皎(こうこう)として消ゆ」

 

唱えている間に、無数ともいえる数の光の矢が刀原の背後に現れる。

 

「おのれ!」

(おせ)ぇ!」

 

ヴォルデモートが何とかしようとするが、もう遅い。

 

「破道の九十一『千手皎天汰炮(せんじゅこうてんたいほう)』!」

 

光の矢は吸い込まれるようにヴォルデモートに向かい、その全てが着弾する。

 

爆音の後に爆煙が立ち込め、ヴォルデモートと思しきものが力なく落下していった。

 

刀原は戦果(死亡確認)をせずに列車に乗り込み、近くにあった通信マイクを手に取る。

 

「引き離せ!」

 

刀原の言葉を受けた機関士は、機関車の全速を発揮させる。

 

そして一行を乗せた列車は、あっという間に夜空の彼方に消えた。

 

 

 

「お、おのれぇ……トーハラめ……」

 

とある森にて、焼けただれた男が力なく呻いていた。

 

鬼道の中でも屈指の破壊力を持つ、千手皎天汰炮。

 

刀原が本気(完全詠唱)で放ったそれは、ヴォルデモートを討ち取ってもおかしくはなかった。

 

しかし、彼は間一髪で防御呪文を張ることに成功した。

 

これが完全防御呪文であれば、まだマシだったかもしれないが……彼が出来たのは防御呪文だった。

 

そしてそのツケは痛打で帰って来る。

 

完全詠唱された九十番台の破道は凄まじい威力を持ち、ヴォルデモートの容易く防御を貫いたのだ。

 

まあ、死ぬことはなかったが……重傷にはなった。

 

黒いローブは爛れ、両手は大火傷。

顔にも火傷が見られ、移動は這う事しかできない。

 

当然ながら列車を追いかけたり、攻撃を行うことなど不可能で……むしろ落下死しないようにするので精一杯だった。

 

「恐るべし、護廷十三隊」

 

ヴォルデモートは、日本だけは手を出さない方が良いと確信した。

 

……もう手遅れなのだが。

 

 

 

 

 

 

死神たちとダンブルドアを乗せた列車は、無事に日本へと着いた。

 

ダンブルドアは直ぐに四番隊隊舎に移送され、直ちに治療が開始された。

 

刀原を除く派遣組は、一日の休息の後に、戦線に加わることになった。

 

そして刀原は……各所への報告だった。

 

元柳斎へ(護廷十三隊総隊長)藍染へ(マホウトコロ校長)市丸へ(日本魔法省大臣)……。

 

米国魔法評議会へ、星十字騎士団へ。

ハリー達への手紙、不死鳥の騎士団へ。

 

他にも沢山。

 

上がって来る報告書もある。

 

日本魔法省外務部がヴォルデモート関連の事案でてんてこ舞いのため、外交が出来る刀原にお鉢が回って来たのだ。

 

「だあぁああああああ!」

 

刀原は数日間、机に突っ伏すことになる。

 

「お主もようやく分かったようじゃな」

「辛いよねぇ、書類」

「トンズラ、したくなるやろ?」

 

誰とは言わないが……そう言ってきた隊長たちに刀原は思わず頷いてしまった。

 

 

 

そんな感じで、刀原が書類に泣いている頃……。

 

護廷十三隊と星十字騎士団の連合軍と、賊軍との戦いは佳境を迎えていた。

 

賊軍の数的主力は、没落貴族の私兵たちと滅却師が連れてきた聖兵(ゾルダード)

 

他に注意すべきなのは……。

 

死神だと『更木剣八』『班目』『綾瀬川』

 

滅却師だと『F』『I』『K』『L』『O』『S』『U』『R』『Q』*2

 

そして綱彌代時灘。

 

対するこちら側は……。

 

護廷十三隊の隊長たち。

 

星十字騎士団の聖章騎士

 

など、相応の戦力が未だ健在だった。

 

それに、日本には隠された最終にして最強の『零番隊』が存在している。

 

このままじりじりと押しつぶすか。

それとも、いっそ決戦を仕掛けるか。

 

それを近々行う予定の合同会議にて、決定するつもりだ。

 

そして合同会議開催に合わせる形で、聖章騎士の主力も来日する予定となっていた。

 

刀原はその日程調整で忙しかった。

 

 


 

 

刀原が己の仕事で忙しかった頃……。

 

英国では、情勢が更に悪化していた。

 

ダンブルドアは不在。

 

英国魔法省は、膿をまだ完全に出し切れてない。

 

不死鳥の騎士団もリーダー(ダンブルドア)不在のため、その穴埋めで動きが鈍くなっている。

 

ホグワーツの教授陣もそれは同じ。

 

子供たちは不安な日々が続く。

 

良くも悪くもダンブルドアという強大な実力者に、英国魔法界がおんぶにだっこ(頼りっぱなし)だったことが理由だった。

 

そして、それは英国以外の欧州魔法界もだった。

 

グリンデルバルドが敗北して、五十年。

 

何処か平和ボケしていたのは、何も英国魔法省だけではなかったのだ。

 

グリンデルバルドを倒したダンブルドア。

叡智と知略を兼ね備えた賢人。

 

数年前に刀原やMACUSA(米国魔法議会)の議長が懸念していた通り……欧州の魔法界は『最後はダンブルドアが何とかするでしょ』という甘い認識があったのだ。

 

そんな中で駆け巡る『ダンブルドア不在』の一報。

 

英国魔法省が戦略的重要情報(パニックを防ぐ為)として隠匿し、重要人物たち(各魔法省の大臣)以外には伏せられた急報。

 

それは、欧州中の魔法界に冷や汗と危機感と混沌をもたらすには十分な悲報だった。

 

危機感からヴォルデモートへの宣戦布告を考える者

 

これに乗じて栄誉や権力を得ようとする者たち(ハイエナ)

 

英国への影響を更に強めようと画策する者たち(自称戦略家)

 

混乱に乗じて政権を倒そうとする者たち(馬鹿)

 

誰も幸せにならない混乱と不安が、欧州中へ広がっていった。

 

ただ一つ言えるのが、『死亡した』という訃報だった場合、この程度では済まされなかっただろうと言う事だけだ。

 

まあ、兎にも角にも……このしわ寄せが、ただでさえ混乱の中にある英国魔法省へ向かうことになったのは当然の摂理と言えた。

 

ドンドンやって来るフクロウ。

 

日増しに増える吠えメール。

 

国内の事でいっぱいのスクリムジョールにとって、それは『それどころじゃねぇんだよ!(意訳)』だった。

 

そのため……イギリス(マグル)首相に対しての外交的顧問として、()()魔法省に残っていたファッジに全てを放り投げた。

 

『前任の魔法大臣だろ。これも何とかしろ』という事だ。

 

ファッジは泣いた。

 

 

 

 

 

 

英国、いや欧州中の魔法界がパニクっていた頃。

 

ハリーにも問題が訪れていた。

 

成人問題である。

 

ハリーが特に居たくもない、良い思い出も無いダーズリー家にいたのは、ひとえにそれが自身の守りに直結しており、その維持のためだ。

 

しかしその守りも成人になるまでであり、ハリーが十七歳になった瞬間、守りは消えてしまう。

 

現在、騎士団はハリーが十七歳になる前に、ダーズリー家から移動させようと計画している。

 

そしてマッドアイやシリウスは、無理なのは百も承知の上で、刀原に参戦を要請した。

 

『事情はこちらも把握している。

 

だがすまん、無理。

俺は行けない。

 

幸運を祈ってる。

 

護廷十三隊 三番隊隊長 刀原将平』

 

刀原から送られてきた手紙には、こう書かれていた。

 

「まあ、しょうがなかろう。それに、最初から彼頼みの策など、たかが知れてる」

 

刀原の返信を予想していたマッドアイはそう言い放ち、シリウスもそれに頷いた。

 

元より、彼は来ないつもりで策を考えていたのだ。

 

腹をくくるしかない。

 

自分たちの最後の希望を生き残らせるべく、騎士団は策を練った。

 

 


 

 

「ふむ……」

 

刀原は悩んでいた。

 

ハリーを移動する必要性はあるし、護衛の一人として参戦したい。

 

しかし、自身の立場がそれを許さない。

それに、とても忙しいのだ。

 

「どうします?」

 

気持ちは同じな雀部が聞いてくる。

 

「騎士団の面々だけでも大丈夫だと思うが……」

 

刀原はそこまで言って、紙を取り出す。

 

そしてある二人に手紙を書いた。

 

「え、本気ですか?」

 

「保険だよ。保険」

 

 


 

 

ハリーの移動に際し、騎士団はある作戦を立てた。

 

それは、ハリー本人とその影武者を含む七人のハリーを用意し、ダーズリー家から一斉に出発するというものだった。

 

「だ、ダメだ!僕の代わりなんて、絶対にダメだ!」

 

ハリーはその作戦に断固反対した。

 

当然だ。

 

ポリジュース薬で変身し、影武者役となるハーマイオニーやロン、フレッド・ジョージ、フラーが死ぬかもしれないからだ*3

 

ハリーとしては、認める訳にはいかなかった。

 

だが、騎士団はそんな健気な抵抗など予想していた。

 

「安心しろポッター。今ここにいるのは騎士団だけだが、日本からの援軍も来ている」

 

マッドアイはそう言う。

 

「でも……」

 

「喧しいぞポッター。既に作戦の根回しは済んだのだ」

 

「そうだ。僕たちはもう覚悟を決めているんだぞ」

 

渋るハリーにそう言ったのは、なんとスネイプとマルフォイだった。

 

「セブルス?お前は参加しないはずでは……?」

 

リーマスが少し驚いた様子で聞く。

 

「我輩が死喰い人達に作戦をリークした。今宵、ポッターを移動させるとな。そして、ポッターを七人にしているとも」

 

スネイプは少し呆れた様子で、そう言った。

 

二重スパイとして死喰い人側にいる彼だからこそ、出来ることだ。

 

「敵にリークした訳は?」

 

マッドアイが問い詰めるように言う。

 

『別に本当の日付を言わなくても良かったでは?』と言いたいのだ。

 

「情報は、ある程度正しい方が信憑性を増す。それに、いつ来るか分からないなら、もういると分かった方が良いだろう……とね」

 

「ちなみに七人になっているとリークした理由は、その数に信憑性を持たせる為です。そして僕が七人目の影武者となり、ポッターを八人目にする。これで死喰い人達は本物が分かりづらくなります」

 

マルフォイが自身の箒を持って、そう言い放つ。

 

「だがなぁ……」

 

ハグリッドとの護衛役争奪戦に勝利したシリウスが、しかめっ面で言う。

 

「彼は、ここで死喰い人の数を更に減らすつもりのようだ。曰く「わざわざ隠密機動とあの人を派遣するんだからね」とのことでね」

 

シリウスの顔に渋々ながら賛同……と言った顔をしながらも、呆れたようにスネイプは言う。

 

そしてここにいる全員が、スネイプとマルフォイの裏にいる黒幕の正体を察した。

 

スパイから九割正しい情報を得た敵は、騎士団側を奇襲出来ると思っている。

 

だが、それは誤りで……。

 

騎士団はその奇襲を知っており、想定外の援軍をもって奇襲してきた死喰い人を可能な範囲で撃破する。

 

しかも七人の筈のポッターは八人になっており、本物はバレにくい低空を飛んで悠々と安全圏まで移動する。

 

つまり、防衛戦を攻勢に変えるのだ。

 

こんな策を考えそうな奴を……ハリー達は一人しか知らない。

 

「という事で。ではマルフォイ。ポッターから髪を頂戴したまえ」

 

「分かりました」

「アイタッ!」

 

こうして、七人改め八人のポッター作戦は開始された。

 

 

 

影武者のポッターと護衛役がツーマンセルを組み、箒やセストラルに跨って空へと繰り出す。

 

そしてそれを大きく包囲する形で、援軍として派遣されてきた日本の闇祓いや隠密機動が少数なれど護衛する。

 

肝心のハリー(本物)は、シリウスが操縦するサイドカー付きのバイクに乗っている。

 

最も、こちらは空を飛ばずに人気も車も碌にない道路を走っていたが。

 

「だ、大丈夫かな……みんな」

 

ハリーは心配な表情をしながらそう呟いた。

 

作戦開始からまだ三分しか経ってないのに、ハリーは三回もそう言っていた。

 

「大丈夫さ」

 

シリウスはそう励ますように言う。

 

そう言われたハリーだが、やはり心配そうに周囲を見渡している。

 

呪文どころか死喰い人の影すら見えないのだが、それはその分影武者の方に行っているという事だからだ。

 

「シリウス……」

 

ハリーがそう何かを言いかけた時。

 

「ハリー・ポッターだな?刀原や京楽が言うほどの覇気は感じられんが」

 

という女性の声が聞こえてきた。

 

「な」

「え」

 

いきなり聞こえてきたそれに驚愕する二人。

直ぐに聞こえてきた方を向く。

 

するとそこには……。

 

かなりのスピードを出している筈のバイクに並走している、小柄で華奢な女性がいた。

 

黒髪は短く、黄色い布を腰に巻き、斬魄刀は数年前までの刀原のやつ並みに小振り。

 

死覇装の上には袖なしの隊長羽織。

 

と言っても彼女は隊長ではなく……あくまでも日本魔法省の部長としての羽織だが。

 

「えっと、ショウの要請で来てくださった方ですか?」

 

ハリーは「もうそれしかないだろう、そうであってくれ」と思いながら恐る恐る聞いた。

 

「ほう、察しが良いな。その通り、刀原の要請で来た者だ。最も、私は隠密機動でも、二番隊の者でもないのだがな」

 

女性は息も切らさず、恐ろしい速度で並走しながら言う。

 

「日本魔法省情報捜査部 部長 砕蜂だ」

 

女性……砕蜂は表情を一つ変えずにそう名乗った。

 

 

「共にこのまま……と行きたいが、私も付きっきりで護衛する訳にはいかない。そら、見てみろ」

 

砕蜂は淡々とそう指し示す。

 

その先には、バイクの存在に漸く気が付いた数名の死喰い人がいた。

 

「気づかれたか」

 

「ものの数ではない」

 

シリウスが苦々しそうに言うが、砕蜂は吐き捨てるようにそう言う。

 

「私が蹴散らす。お前たちはそのまま突き進め。このスピードで行けば、約十分後には違う者が直掩につく手筈だ」

 

そう言って、砕蜂は瞬歩で消えたように移動する。

 

そして死喰い人の元へと一気に辿り着き、蹴り技であっという間に蹴散らしてしまった。

 

ハリーとシリウスはそのスピードのまま、一気に駆け抜けた。

 

 

 

「このままいけば、目的地だ」

 

必死の形相で運転しながら、シリウスが言う。

 

ハリーはそれを聞き流しながら、後ろに付いてくる三名の死喰い人を迎撃する。

 

砕蜂と別れて数分後に、新手が現れたのだ。

 

もっとも、シリウスの巧みなハンドル捌きによって、ハリーにもバイクにも当たってない。

 

ただ、それはハリーも同じであり、追ってくる死喰い人に呪文を当てられないでいた。

 

カーチェイスを繰り広げるハリー達と死喰い人。

 

彼らはそのスピードのあまり、砕蜂が言っていた『次の助っ人』が待機している地点を過ぎていたことに気が付かなかった。

 

「おいおい、もうドンパチしてるじゃねぇか!」

 

陽気な男性の声が、死喰い人に向けて失神呪文を打ち込んでいるハリーに聞こえてくる。

 

「え?」

 

ハリーが声の方向へ振り向くと……そこにはシリウスのバイクに後ろ向きで座り、ハリーに向けて「よっ」とでも言っているようなジェスチャーをした男性の死神がいた。

 

見た目こそ若いが、死覇装の上に袖なしの隊長羽織を着用している。

 

「日本魔法省 魔法執行部部長の黒崎一心だ。刀原君の要請でな。君を守りに来たぜ」

 

一心はニヤッと不敵な笑みを見せながらそう言った。

 

「あ、ありがとうごz「おっと、礼はいらねぇよ。俺の息子が少し世話になったらしいからな。守るのは当然だぜ」

 

ハリーの礼を遮って一心はそう言った。

 

その言葉に『そういえば……イチゴが、父親は執行部の部長さんだって言ってたな』とハリーは思い出す。

 

「さあて……シリウスって言ったっけ?五秒だけ、真っ直ぐに走ってくれねぇか?」

 

飛んでくる呪文を捌きながら一心はそう気楽な感じで言う。

 

「別に大丈夫だが、何をするんだ?」

 

当然ながらシリウスはそう聞く。

 

今まで呪文に当たってないのは、このジグザグ走行が大きい筈だからだ。

 

「なあに、あいつらを一掃するだけぜ」

 

一心はあっけらかんと言う。

 

『ショウといい、この人といい、実力のある死神は全員こうなのか』

 

ハリーとシリウスは、その『さも当然』と思っているような発言にそう思った。

 

「……では、行くぞ」

 

シリウスはそう言い、ハンドルを握り直す。

 

「いつでもいいぜ」

 

一心はバイクのシートに立ち、抜刀する

 

五秒。

バイクは真っ直ぐ進む。

 

死喰い人達はチャンスだと思い、ほぼ並列になって一斉に呪文を放とうとする。

 

だが、それこそが一心の狙いだった。

 

「燃えろ『剡月』!」

 

一心が持つ斬魄刀が炎を纏う。

 

死喰い人達に動揺が走る。

 

しかし、もう手遅れ。

 

「月牙…天衝!」

 

ハリーが見慣れた(刀原が放つ)飛ぶ斬撃とはまた違う斬撃が、未だ動揺の渦にいた死喰い人達に襲いかかった。

 

当然ながら死喰い人達は、ロクな防御や回避も出来なかった。

 

文字通り吹き飛ばされ、撃退されてしまうのだった。

 

「ま、ざっとこんなもんだろ」

 

一心は斬魄刀を納めながら、ハリーにそう言った。

 

 

 

 

 

 

砕蜂や一心といった実力者の援護もあって、ハリーとシリウスは危なげなく目的地である『隠れ穴』へと辿り着いた。

 

作戦の直前に空へ飛ばしたヘドウィグ、カバンやファイアボルトなどの荷物も無事であり、ハリーの移動は成功と言えた。

 

そしてハーマイオニーやロン、フレッド・ジョージ、フラーやマルフォイといったハリーの影武者たち、リーマスやキングズリー、スネイプなどの護衛役も無事に集合出来た。

 

だが、何も失われなかった訳ではない。

 

日本から派遣された面々の中には、重傷を負った者や戦死した者が少なからずいたからだ。

 

そして何よりの痛手は、マッドアイの戦死だった。

 

彼は影武者役のマンダンガス・フレッチャーと、ツーマンセルを組んでいたのだが……。

 

ソーフィン・ロウルが死の呪文を乱射し出したことに恐怖したマンダンガス(チキン野郎)が、姿くらましで逃げ出(敵前逃亡)したのだ。

 

思わず叱責するマッドアイ(「待て、マンダンガス!」)

 

しかし、乱戦の中でその隙は致命的だった。

 

死喰い人の誰かが放った死の呪文が顔面に直撃し、マッドアイは箒から転落していったのだ。

 

マッドアイの遺体は、その日の夜には見つからなかったが……翌日には捜索を手伝っていた隠密機動によって発見され、隠れ穴にて葬儀が行われた。

 

「そう、ですか……。ご苦労様でした」

 

帰国した一心と砕蜂から速報を受け取った刀原は、歴戦の闇祓いの死を悼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

*1
ついでに……()()()()自身の野望達成を妨害している日本の死神の排除

*2
このうち『Q』は既に死亡

*3
あと、ついでに発案者のマンダンガス・フレッチャーも






死を越えて行け

立ち止まるな

心せよ

油断大敵




刀原vsヴォルデモートは必ずやるつもりでした。

なお、ヴォルデモートにとって刀原は相性最悪に近いです。

接近されたら終わり、斬撃は防げない。

まあ、流刃若火とか氷輪丸とかも防げませんけど……。

頑張れヴォルデモート。
刀原君はまだ序の口の方だぞ。


夜一さんが二番隊にいる影響で出番がない砕蜂さん。

残念ながらバラガンと戦う相手は貴女ではないので、ここで登場していただきました。

ちなみに、一心さんを出したのはアニメを見たからです。


それと……ありがとうマッドアイ。
運命です。


感想、ご意見、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。



では次回は

結婚式と陥落

次回もお楽しみに。



ハリー達が分霊箱捜索旅をしている間に、刀原達は賊軍と戦ってる予定です。ハリポタの登場人物が一切出ませんが……要りますか?

  • 1『要る!』vs賊軍→ホグワーツの戦い
  • 2『要らない!』vs賊軍は全部カット
  • 3『後にしろ!』終了後、おまけとして
  • 4『お前も同行!』刀原も旅に参加する
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