ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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既に死んでいる私は

最後まで罪と向き合い

そして精算する

屍になろうとも。







死神、外交をする。亡命とロケット

 

 

時は第二次世界大戦の最中。

 

ナチスドイツによって本国を奪われてしまったフランスやオランダといった国々は、連合国側で一番近くにあるイギリスに『亡命政府』を作り、本国奪還を目指した。

 

一度でも第二次世界大戦を調べたことのある者であれば、『自由フランス』とか『亡命政権』とかを見聞きしたことと思う。

 

え、何故こんな歴史の(眠くなるような)話をしたかって?

 

かつて本国をナチスに取られたフランスがイギリスに亡命政府を作ったように……政権をヴォルデモートに支配されてしまった英国魔法省が、ブリテン島の玄関口となっている仏国のダンケルクに亡命政権を作ったからだ。

 

 

 

京楽、藍染、浦原、刀原は、ダンブルドアが英国から……『一時的(亡命)』か『永遠に(死亡)』かは置いといて……いなくなることになった場合、英国魔法省が陥落する可能性はかなり高いと考えていた。

 

そしてそれはダンブルドアや、英国魔法省が如何に腐っているかを知っているスクリムジョールも、内心で考えていたことだった。

 

ーーーーーー

 

少なくともさ……。

馬鹿打倒へのヒントだの備えだの、分かりやすく用意しとけや。

 

自分がいなくなった時に……「後はよろしく!頑張ってね!」的な感じで投げたまんまにする気か?

 

は?バレたらマズイから?

 

それであいつらが分かんなかったら、ダメだろうが。

 

自分がどれだけでかい存在か分かってんのか?

 

ああん?

 

ーーーーーー

 

言い訳はいらん。

 

様は頭を下げたくないんだろ?

 

先の大戦では手ぇ結んだくせに。

こっちからは嫌だってか?

 

んな道理が通るか。

ちゃちなプライドなんて捨ててしまえ。

 

英国が取られたら世界の危機なんだぞ?

状況分かってんのか?

 

ああん?

 

ーーーーーー

 

言っておきますがね……。

 

ヴォルデモートが英国を制覇した後、次の標的は間違いなく貴方々です。

 

ドーバー渡れば直ぐですからね。

 

アルデンヌの森を突破された時の(フランス侵攻→一ヶ月で陥落)ようにならなければいいですけど。

 

ねぇ?

 

そこのところ……分かってます?

 

ーーーーーー

 

実際にこういったやり取りが……あったかどうかは定かではないが……。

 

交渉役としてダンブルドアと英国魔法省と現地の仏国魔法省を説き伏せ、日本魔法省外務部と協力して樹立の用意を整えた刀原の苦労は半端なかった。

 

そしてその苦労は、形となって報われる。

 

「例のあの人によって、英国魔法省は支配されました。新大臣こそ前魔法執行部部長のパイアス・シックネスですが、彼が例のあの人の傀儡である事は明白であります。よって、不当に奪われた政権を奪還すべく、我々は『自由英国魔法省』の設立を、ここに宣言するものであります」

 

フランスのダンケルクにてそう宣言したのは、バーテミウス・クラウチだった。

 

例のあの人の勢力と長年に渡り戦ってきた彼ならば、亡命政権を引っ張っていけると多くの人々に支持されたからだ。

 

もっとも、彼にとってはこれが祖国や恩のある人達に対する最後の奉公と考えていたが。

 

兎にも角にも。

 

『亡命政権』は正式に発足し、ドーバーを越えて逃げてくる魔法使いたちの受け皿になることに成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりになりますな、トーハラ殿」

 

「とりあえず無事に発足出来て良かったですね、クラウチ臨時魔法大臣」

 

亡命政権が発足してから一週間後。

 

刀原は仏国にて、クラウチとの会談に臨んだ。

 

日米合同会議が一通り終わったので、急いでフランスへとやって来たのだ。

 

「クーデターは円滑に、ほぼ沈黙に近いうちで行われました。前大臣が膿を出していなければ、我々は全く気が付かなかったでしょう。事を早急に知らせた当直の警備員と前大臣のおかげです」

 

クラウチはくたびれた様子を隠せずに言う。

 

「無論、貴国の働きも非常に大きい。貴方々が調整を手伝ってくれなければ、この状況は成しえなかった。改めて、深い感謝を」

 

クラウチはそう言って頭を下げる。

 

「我々日本にしても、英国魔法省が乗っ取られ続けることは好ましくない。……全ては平和のためです。日本魔法省外務部部長 痣城双也*1殿もそうおっしゃっていましたよ」

 

刀原がニコリと笑いながら言えば、クラウチは再度「ありがとうございます」と言って顔を上げる。

 

「では早速ではありますが……英国の情勢を、教えていただけますでしょうか」

 

そしてこの刀原の言葉をもって、会談は本格的にスタートした。

 

 

 

「まず、毎年ホグワーツに派遣していた遣英救援部隊に関してですが……ロンドンからは断られました」

 

「やはりですか、まあそうでしょうな」

 

「こちらはどうですか?」

 

「本音で言えば是非にと言いたいのですが……ホグワーツの実権も向こうに行ってしまった以上……申し訳ないのですが、慎重にならざるえません」

 

「左様ですか」

 

「ええ……。ただ、我々と不死鳥の騎士団との繋がりは未だ健在です。先日、ウィーズリー家の方々がいらっしゃいましてな。もっとも、夫妻とパーシー殿だけですが」

 

「ああ、なるほど」

 

ってことは……。

結婚したばかりのビル、ルーマニアのチャーリー、ダイアゴン横丁で店を構えている双子、多分ハリーといるロン、学校に行くであろうジニーは来てないと。

 

「そして、不死鳥の騎士団との会談で決定したことがあります」

 

「決定したこと?」

 

「反攻は、ハリー・ポッターが動いてから……と」

 

「なるほど……では我々はそれまで待ちですか」

 

「申し訳ないのですが、そのようになります」

 

クラウチは申し訳なさそうに言うが、刀原は内心でガッツポーズをしていた。

 

直ぐに反攻作戦を始めるとなった場合、こちらが定めたタイムスケジュールが大幅に狂ってしまうからだ。

 

「分かりました。それと……ホグワーツに関してはどうなっていますか?

 

「残念ながら詳細はまだ……」

 

ホグワーツの話題に関しては、まだ情報を得ていないらしい。

 

クラウチがそう言い淀んだ時、ドアがノックされ、人が入って来る。

 

秘書官と思しきその人物は、刀原に向けてお辞儀をした後……クラウチに新聞を渡す。

 

「……ちょうど来ました。ホグワーツの情報です」

 

クラウチはそう言って新聞を渡す。

 

刀原はそれを見て、思わずニヤッと笑ってしまう。

 

『セブルス・スネイプ氏 ホグワーツ校長に就任』

 

新聞にはこう書かれていたからだ。

 

「スネイプは、確か死喰い人……」

 

刀原の笑みを不審に思ったクラウチがそう言うと、刀原は首を振る。

 

「いいえ。彼はこちら側の人間ですよ。ダンブルドアの命で二重スパイをしているんです」

 

ダンブルドアとスネイプだけが知っていたその情報は、今や騎士団の殆どが知ることだった。

 

シリウスやリーマス、マクゴナガルやフリットウィック、ハリーやハーマイオニーに至るまで。

 

多分DAの面々にも『スネイプは味方』と伝わっているかもしれない。

 

ってか、ネビルとジニーとルーナには俺が伝えたし。

 

ハリーはスネイプの見方を大幅に変えたし、複雑だけどその勇気は尊敬に値するとこっそり言っていた。

 

「彼がホグワーツの校長となれば、少なくともホグワーツは安泰です」

 

刀原は、にこやかに言う。

 

しかし、クラウチにはまだ懸念事項があるらしい。

 

「しかし、新たに教授となるカロー兄妹は死喰い人です。彼らが……」

 

「確かにそれは心配ですが、多分問題にはあまりならないかと……」

 

「何故です?」

 

「……ガマガエルという前例があるからです」

 

刀原は何かを察したようにそう言った。

 

何処ぞの誰か(去年ホグワーツで最も忙しかった人)によって鍛え上げられた(魔改造された)者達を筆頭に……あの抗議運動(反アンブリッジキャンペーン)を知っている生徒達が、簡単に屈するとは考えられないのだ。

 

むしろ、「この機に乗じて『悪ガキ大将』の座を奪ってやるぜ!」とか「死喰い人?つまり叩き放題ってことですよね?」とか「第二次ネガキャン祭りの開始だ!ヒャッハー!」とか……やるかもしれない。

 

多分、挙寮一致体制とか作られるんだろうな……。

 

大丈夫かな、スネイプ……多分胃痛の一年になるんだろうな……。

 

「ゲリラ戦法とか……三交代で休みを与えぬ攻めとか……教えなきゃ良かったかな……?」

 

刀原はボソッとそう言った。

 

俺は悪くない。

 

悪いのはあいつらだ。

俺は期待に応えただけだ。

 

ダンブルドア(自分を教授に推薦した奴)ヴォルデモート(そもそもの根本原因)と言うあながち間違ってもいない相手に、刀原は責任転換した。

 

 


 

 

時系列は少しだけ遡る。

 

 

招かれざる客(死喰い人達)の乱入によって、結婚式はめちゃくちゃになった。

 

そして、キングズリーの警告のおかげで窮地を脱したハリーとロン、ハーマイオニーは、ロンドンのトテナム・コート通りに姿現しをした。

 

ハーマイオニー曰く「マグルの町にいた方が比較的安全だと思った」らしいが、何故かハリー達は死喰い人二人の奇襲を受けた。

 

これをなんとか返り討ちにした三人は、次にグリモールド・プレイスに移動する。

 

騎士団の本部だった場所だし、なりよりシリウスがいるかもしれないからだ。

 

三人は誰にも見つからないようにグリモールド・プレイスの玄関に辿り着き、そして入った。

 

中には誰もいなかった。

 

室内は荒らされた後があり、誰かが家探ししたことしか分からない。

 

その晩は三人一緒になって眠った。

 

そして朝になると、家主がやって来る。

 

「ハリー!良かった、無事だったんだな。もしかしたら、ここにいるかもしれないと思ってね……。私の勘も捨てたものじゃないな」

 

シリウスは満面の笑みでハリーを抱きしめ、ハーマイオニー達ともハグをする。

 

「……随分と荒れているな」

 

あまり居たくはないとはいえ、自らの家が荒れていることにしかめっ面をした。

 

「まあいい。さて……お互いの無事を確認したところでだ。ハリー、君は今後どうするつもりだ?」

 

そしてシリウスは真剣な顔でそう言った。

 

 

 

 

ハリーは非常に悩んだ。

 

ショウ達は日本で決戦をすると言っていた。

だからショウ達の力を借りる為にも、動くのはまだ早い。

 

ハリーとしてはその間に分霊箱を探し、出来る限り見つけて破壊しておきたい。

 

幸いにも、場所はある程度把握出来ている。

 

ヴォルデモートの傍にいる蛇。

 

多分髪飾りと思われる分霊箱は、おそらくホグワーツに。

 

そして最後の一つ、ロケットは『R・A・B』が鍵になる。

 

蛇はちょっと無理だとして……。

ホグワーツにあるやつは……ルーナやジニーを通して、今年ホグワーツに行くDAのメンバーに探してもらう手筈になっている。

 

残るはロケット。

これさえ手に入ってしまえば……。

 

問題は『R・A・B』

 

誰だかさっぱり分からない。

 

多分裏切った死喰い人かと思い、マルフォイに聞いてみたが……答えは芳しくなかった。

 

シリウスに聞けば、言えば、必ず事情を聴かれる。

 

それは……。

 

「実を言うとな……。騎士団は、ダンブルドアが君にある使命を与えているのではと考えている。それはおそらく、あの人を倒す鍵になるだろうとも」

 

考えているハリーに対し、シリウスはそう言う。

 

「秘密は守る。私以外に言うなと言うなら、例えリーマスでも言わないと誓おう。どうか……私に打ち明けてくれないか?君の名付け親として、君の力になりたいんだ」

 

シリウスは真っ直ぐ、ハリーを見ていた。

 

その目は、時々ショウやライカが見せていた優しい目……ただ僕の為に言っているのだと分かった。

 

「でも、その……」

 

秘密にしなければ……。

 

ハリーはそこまで思って、ふと思った。

 

今更じゃないか?

 

ハーマイオニーやロン、ショウやライカは、事情を全て知っている。

 

分霊箱と明言こそしていないが、「ヴォルデモートを倒すのに必要な物なんだ」と言って、ネビルだのジニーだのルーナだのマルフォイだのチョウだのに教えているんだ。

 

これで大人……しかもシリウスに教えないなんて、そんな話があるか?

 

いや、無い。

 

万難を排して万事を尽くせ。

それが勝利への道だ。

 

ショウやライカが言っていたことじゃないか!?

 

それに……あんな目をするシリウスに、隠し事なんてしたくない。

 

「……分かった」

 

ハリーは頷く。

 

「……いいのかよハリー?」

 

ロンは言う。

 

「だって、今更じゃないか。正体こそ(分霊箱とは)言ってないけど……ネビルやジニーやルーナとかに、もう教えてるんだ。ショウとかライカには全部言ってるし……それこそ二人にも教えてる。今さらシリウスに内緒にしたって意味ないよ」

 

ハリーは割りきった様に言う。

 

「そうね。秘密を貫いて分かんなかったり、探せなかったりしたら……それこそ本末転倒よ」

 

ハーマイオニーも肯定的に言う。

 

「……話してくれるのかい?」

 

「うん。でも約束して欲しい……誰にも言わないって。教えるのはシリウスだけだ」

 

ハリーが見せたこともない程に慎重な様子に、シリウスはただならぬ事だと察する。

 

「……分かった。ジェームズやリリーとの絆にかけて、死んでも言わないと誓う」

 

そして、真面目な顔でそう言ったのだった。

 

 

 

 

 

 

ハリーから事の詳細を聞いたシリウスは、その内容に驚愕し……そしてハリー達がなぜ秘密にしたがったのかを理解した。

 

ヴォルデモート(頭のイカれた魔法使い)の根幹に関わる内容であり、あまりに非人道的な所業を。

 

ホグワーツが襲われた(天文台の塔の戦いの)あの日……僕とダンブルドアは、その分霊箱を取りに行ったんだ。でも、偽物だったんだ」

 

ハリーは偽物のロケットを見せながらそう言った。

 

「うーん、何処かで見たような気が……」

 

心当たり無い?と言われて手に取ったロケットを観察しながら、シリウスはその『何処か』を思い出す為に唸る。

 

「それと……中にはメッセージもあったんだ」

 

シリウスが頭を悩ましているのを見たハリーは、何かのヒントになればと思い、RABからのメッセージを見せる。

 

「RAB?」

 

メッセージを読み終えたシリウスは、そう言って考え込む。

 

「いや、そんなまさか……だが……」

 

シリウスはそう呟きながらロケットを眺める。

 

「シリウス?」

 

ハリーやハーマイオニーはそう考えこんでいるシリウスに、心配そうに言う。

 

しかし……シリウスはそれに答えずに立ち上がって屋敷を歩き始め、ハリー達は慌ててシリウスを追いかけた。

 

シリウスが立ち止まった場所は、とある一室の扉の前であり……彼は意を決したような顔で部屋を入った。

 

ハリー達はその扉を見て驚いた。

 

扉に書かれていた名前が『レギュラス・アークタルス・ブラック』……RABだったからだ。

 

少しの時を置いて、シリウスは部屋から出てくる。

 

出てきたシリウスは思い悩んだ顔だった。

 

「……クリーチャー!」

 

そして、シリウスはあれだけ忌み嫌っていたクリーチャーという屋敷しもべを呼んだのだった。

 

 

 

ハリーはクリーチャーからRAB……レギュラス・ブラックが行った事を聞いた。

 

自身が愛する屋敷しもべ(クリーチャー)を使い捨ての駒様に扱ったヴォルデモートに失望し……聞いた内容から、クリーチャーが関わったのはヴォルデモートの根本に関わる重大な何か(分霊箱)だと判断したこと。

 

クリーチャーにその場へと案内させ、ダンブルドアと同じ様に毒薬を飲み……そして死んだ事を。

 

「馬鹿な弟だった……だがあいつは、最後に自分の信じる道を選んだんだな」

 

自身が想像していたものとは違う弟の最期に、シリウスは戸惑いを隠せていなかった。

 

「これで頭のイカれた魔法使い殿(ヴォルデモート)は親友の仇であると同時に、血分けた兄弟の仇になった訳だ」

 

それでも気持ちを新たにしたシリウスは……そう固く決心し、クリーチャーに向き直る。

 

「クリーチャー……今まですまなかった。親友と弟の仇を取る為にも…私にレギュラスが手に入れたロケットの在処を教えて欲しい。この通りだ」

 

そう言って頭を下げたシリウスに、クリーチャーも戸惑いを隠せていなかった。

 

しかし、やがてしっかりと頷くと……搾り取る様な声で「申し訳ありませんご主人様。あのロケットは……盗まれてしまいました」と言った。

 

「ぬ、盗まれただと!?それは……もしかしなくとも屋敷が荒らされていることに関係があるな?盗んだ奴は誰だ」

 

「マンダンガスです。マンダンガス・フレッチャー」

 

あ、あいつか……。

 

ハリー達は、あまり想定外とは言えない下手人の正体にそう反応した。

 

「……ではクリーチャー。私達にとっても、そしてレギュラスにとっても大切なロケットを盗んだマンダンガスを捕らえて、ここに連れてきてくれるか?」

 

盗人の正体を予測していたシリウスは、そうクリーチャーに依頼した。

 

メッセージが入っていたブラック家のロケットを『今までの苦労の褒美』として与えた上で。

 

それにクリーチャーは感激し「必ずや盗人めを捕らえてご覧に見せます!」と意気込みながら出ていった。

 

そして見事捕らえることに成功したクリーチャーは、マンダンガスをハリー達の元に引き渡したのだった。

 

 

そして、時系列は戻る……。

 

 


 

 

ハリー達はマンダンガスから受け取った情報に、頭を抱えていた。

 

マンダンガスは既にロケット(本物)を手放して居たのだが……その相手が問題だったのだ。

 

ーーー

 

無料(タダ)でくれてやったんだよゥ」

 

「くれてやった?誰に?」

 

「魔法省の役人だよ。執行部の……ああ、今は大臣になってるんだったか?」

 

「パイアス・シックネスに!?」

 

「名前なんて知らねぇよ」

 

ーーー

 

ハリー達にとって、それは最悪な情報だった。

 

シックネスは、奴ら(ヴォルデモート陣営)の傀儡なのだ。

 

『パイアス、良いロケットだな?見せろ、いや寄越せ……な、これは!?』

 

なんて展開になってたら……ロケットを破壊するどころか、目にすることすら出来なくなる。

 

例えロケットが例のあの馬鹿(ヴォルデモート)に見初められていないとしても……大臣に接触し、ロケットを奪取するなど困難極まる。

 

ってか不可能でしょ。

 

例えポリジュース薬を使っても。

 

頭脳明晰なハーマイオニーやシリウスをもってしても、良い作戦は思い浮かばなかった。

 

いや、正確には思い浮かんではいるのだが……彼がその為に英国へと来てくれるとは思えなかった。

 

だが、神はハリー達を見捨てていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

仏国での会談を終えた刀原の姿は、ロンドンの英国魔法省にあった。

 

実は来なくても支障は無いのだが……やはり一応国家同士のやり取りであるため、仕方なく来ることになったのだ。

 

何度も来ているためにほぼ顔パスになっている受付を終わらせ、刀原は約束の時間までアトリウムを眺めていた。

 

『魔法は力なり』

 

つい最近出来たと思われるその像はマグルの上に魔法族が君臨するかの様な構図で出来ており、新たな新政権《死喰い人》のイカれた思考がありありと示されていた。

 

あと、見ていて恥ずかしくなるぐらい悪趣味だった。

 

一方……刀原の背後に控えている三人の死神は、その像を苦々しい目で見ていた。

 

特に女性の死神は、まるで親の仇の様な目をしていた。

 

過激な交渉(武力行使)をしに来たんじゃない。いくらアレな趣味とは言え、先方の趣味を睨んだら駄目だろう?」

 

刀原がそうやんわり諌めれば、「ごめんなさい」と言ってその目を止めたが。

 

「トーハラ殿、お待たせした」

 

刀原達がそんなやり取りをしていると、銀髪をオールバックの三つ編みにした壮年の男性がやって来てそう言った。

 

「コーバン・ヤックスリー……」

 

刀原の背後に控える黒髪の死神が内心で睨む。

 

シックネスの政権下で法執行部部長になったこの男こそ……スクリムジョールが出しきれなかった膿の一つであり、シックネスに服従の呪文をかけた張本人(死喰い人)なのだ。

 

「いやいや、待ってなどいませんよ。新たに設置されたこの像を、どう報告したものかと思っていましたからね」

 

背後に控える三人の死神を他所に、刀原はいつもの笑みを浮かべながらそう言った。

 

「報告……ですと?」

 

「ええ。いま考えている最初の文言は『噂は本当だった』でしょうかねぇ?パリ、ベルリン、ローマ、ニューヨーク、東京……等々。僕の報告を待っている場所が多くて大変ですよ」

 

刀原はニッコリと嗤う。

 

この像が、()が本当だと言う証拠だ。

各国はそれを知りたがっているし……この像だけで英国魔法省は陥落した(ヴォルデモートの政権になった)と信じる。

 

分かりやすい証拠をありがとう。

 

刀原は暗にそう言っているのだ。

 

「ああ、失礼。時間も無いことですし、新魔法大臣を待たせる訳にもいきませんな。さっそく行きましょう」

 

ヤックスリーはこの瞬間、会談が一方的なものになると思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1

日本魔法省外務部部長 痣城双也。

 

外交が弱いと言われていた日本を外交から強くしようと、隊長職を放り投げてまで外務部に移籍した人物である。

 

ここ最近は米国や近隣諸国との探り合いで忙しく、外交を担わない筈の刀原に欧州方面を任せることを申し訳なく思っているらしい。

 






死に様は、その者を写す鏡

どう生き、どう死ぬか

私はそれを決めた。




刀原が周囲の運命と思考を変えまくった影響が一気に。

そして状況は、どんどん悪くなっていきます。
誰のとは……あえて言いませんが。



感想、ご意見、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。


では次回は

布告と逃亡

次回もお楽しみに。





おまけ


駄目だなぁヴォルデモート君。
権力の示し方がやり方が下手っぴさ。

そんな像作ったら。

「僕が政権を握ったぞ!」って。

内外に知られちゃうだけ。

隠したいなら、きっちりやらなきゃ。

コツコツ頑張った者に、未来は来るんだよ。


ま、頑張ったとしても……。
君の未来は来ないんだけどね。



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