ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

77 / 93


東で勝鬨が挙がったのなら

今度は西で挙げる番。







死神と死の秘宝 ホグワーツ血戦編『選ばれし者』
選ばれし者、宣言する。 戦前の下準備


 

 

 

十一月

 

ハリー達の旅は、順調とは言えなかった。

 

ロケットを手に入れた代償として、暖かなグリモールド・プレイスから離れなくてはならなかったし……。

 

手に入れたロケットも、破壊出来ずにいた。

 

ラジオからは辛く悲しいニュースしか流れない。

 

先が見えない。

 

それでも三人は団結して旅を続けた。

 

打倒ヴォルデモートチーム(勇者一行)の参謀役となっていたハーマイオニーは、この忌々しいロケットの破壊方法に日々頭を悩ませていた。

 

やり方は分かっている。

 

彼女はその明晰な頭脳で、分霊箱を破壊するには特別な方法を用いる他ないと分かっていたのだ。

 

バジリスクの毒。

悪霊の火。

 

その性質上*1、バジリスクの毒を吸収しているであろうグリフィンドールの剣。

 

強力な始解を持つ斬魄刀。

卍解した斬魄刀。

九十番台の鬼道。

 

しかし、本当にそれだけなのか……。

 

ハーマイオニーはストレス発散も兼ねて……爆破だの粉砕だの切断だの失神だの、知っているすべての呪文を打ち込んでみた。

 

まあ、駄目だったが……ハーマイオニーやハリー達に焦りはなかった。

 

彼女やハリーの自分たちの兄貴分であり、最も頼りになる人……刀原が必ず破壊出来る。

 

『分霊箱の耐久実験』とかいうイカれてるとしか思えない実験で、実際に破壊した実績がある程だ。

 

だがまあ、欲を言えば……自分たちで破壊したい。

 

自分たちでも出来るんだぞというところを、少しだけでもアピールしたいのだ。

 

 

 

逃避行を続けながら、打倒ヴォルデモートの為に準備をするハリー達。

 

その中には『死の秘宝』なるアイテムの情報があった。

 

ニワトコの杖

甦りの石

透明マント

 

『吟遊詩人ビートル』なる童話本*2に書かれていたこれらは、あくまでも童話の筈だった。

 

しかし、調べれば調べるほど……『それは本当にあるのではないか?』と思わせる何かがあった。

 

理由もある。

 

ハリーは、透明マントの現所有者だからだ。

 

少なくとも彼の父であるジェームズの代から色褪せない透明力。

引き寄せ呪文も効かない。

 

少なくとも……特別な物であることは間違いない。

『死の秘宝』あるいは『それに類する物』が実際にある(おとぎ話ではない)と判断出来る証拠となりえるのだ。

 

だが、三人は……特に現実主義者(リアリスト)であるハーマイオニーは『本当にあるかどうかの確証がない物』を対ヴォルデモートへの切り札にはしなかった。

 

『無い可能性の方が高い』

『そもそも、それを探す時間などないわ』

『だいたい、無かったら探した時間が無駄になるのよ?』

 

見知った笑み(刀原のいつもの笑み)を再現しながらそう言ったハーマイオニーを、ハリーとロンは説得を試みることも出来なかった。

 

そんな感じで、三人は旅を続けたのだった。

 

 

 

 

 

一月になった。

 

三人は相変わらず逃避行を続けている。

 

そして喜ばしいことも起きた。

 

分霊箱の一つ、『スリザリンのロケット』の破壊に成功したのだ。

 

 

ーーーーー

 

 

その夜、ハリーが深夜の見張りをしていると、守護霊の雌鹿が現れた。

 

ハリーはそれを見て、フラフラと雌鹿に近づこうとする。

 

だが雌鹿はフラッとその場から離れ、凍った池に入り、消えてしまう。

 

慌てて凍った池に駆け寄ったハリーは池の底を見て驚く。

 

あれだけ求めたグリフィンドールの剣があったからだ。

 

「『ディフィンド(裂けよ)』」

 

ハリーは即座に池の表面を覆う氷を砕き、衣服を脱ぎ、意を決して池の中に入った。

 

池の中は身を切り割かれるようで、最早『冷たい』を通り越していた。

 

それでもハリーは怯むことなく潜水し、池の底に沈んでいた剣を入手することに成功したのだった。

 

 

 

何も知らないロンとハーマイオニーは、見張りをしていた筈のハリーがいきなり消えたことに困惑していた。

 

何も言わずに消えるなんて!と怒ってもいた。

 

しかし、この寒い夜なのにも関わらず何故かびしょ濡れになって帰ってきたハリーに混乱することとなる。

 

いったいどうしたの!?

 

その当たり前とか言い様のない問いに、ハリーは意気揚々と(ドヤ顔で)グリフィンドールの剣を見ることで返答する。

 

「「……!?」」

 

二人は更に困惑し(宇宙猫と化し)、ハリーが犯した危険行為に叱ることも出来なかった。

 

それでも、混乱の渦に呑まれていたロンとハーマイオニーは立ち直り……三人はその夜の内にロケットを蛇語で開ける。

 

そして、グリフィンドールの剣をロケットに振り下ろしたのだった。

 

 

ーーーーー

 

 

入手経路こそ混沌極まりないが、それでも分霊箱を破壊出来るであろう物を手に入れたことは、大いな進展となった。

 

 

焦る気持ちは無くなり、逆に余裕が出来た。

 

そして、三人を更に喜ばせる出来事が起きる。

 

 

 

 

 

 

ポッターウォッチというラジオがある。

 

不定期に放送され、聞くには合言葉が必要なそのラジオは、不死鳥の騎士団が運営するいわゆる『レジスタンスラジオ(抵抗者たちのラジオ)』だ。

 

ハリー達三人は、親しい人達がやっているこのラジオが楽しみだった。

 

「やったぞハリー!緊急放送のパスワードは『トーハラ』だった!」

 

そうロンが歓声を上げる。

そして三人は聞き洩らすまいと、息を殺しながらラジオに耳を傾けた。

 

緊急のお知らせがあると、以前から告知されていたからだ。

 

『どうも皆さんこんばんは。

ポッターウォッチへようこそ。

司会のリバーです』

 

「リバー……リーは相変わらずみたいね」

 

リバーというコードネームで司会をやっているリー・ジョーダンは、クィディッチの実況をやっていた時のノリで、冗談を交えながら司会をする。

 

「でも、なんだか声が固いよ」

 

さすがに今回の放送では……それも無いらしい。

 

『早速ですが本題に入らせて頂きます。一部の皆さんにはお馴染みのあの方々……ショウことショーヘイ・トーハラとその仲間達、護廷十三隊についてです』

 

リーが言った内容は、ここ最近のハリー達の話題『刀原達は勝ったのか』についてだった。

 

『十二月を目途に決戦をし、賊軍との戦いに終止符を打つ。

そのあとで英国に向かうよ。

 

万難を排して向かってやる。

勝つ可能性、ゼロにしてやる。

首を洗って待ってろよヴォルデモート……。

クックック……震えて眠れ』

 

何やら悪人みたいな言い方だったが……。

ショウはそう言っていた。

 

だが十二月を過ぎた今でも続報はなく、ハリー達は心配していたのだ。

 

「ショウたちなら絶対に勝つ」

「負けるなんて考えられない」

「むしろ私達が心配されてる」

 

でも、万が一……億が一の確率で重症を負っているかもしれない。

 

……一応、一応心配していた。

 

ハリーは固唾を飲んで聞く。

 

『我々が掴んだ公式文、その全文を読まさせて頂きます。

 

《護廷十三隊及び日本魔法省共同発表

 

我々護廷十三隊と日本魔法省は……兼ねてより問題視されていた通称『賊軍』との決戦を行い……。

 

これに勝利したことを発表させて頂く》

 

「や、やった!」

「さすがショウ達だぜ!」

「凄いわ!」

 

テントの中で歓声が上がる。

 

三人が待った勝利の一報だ。

 

ショウがいれば「な?言ったろ?俺たちは絶対勝つって」と言っていただろう。

 

《この戦いに参戦してくれた全ての者達。

援軍として参戦して頂いた星十字騎士団。

 

そして我らの勝利を疑わず、信じてくれた者たちに深い感謝を表す。

 

ありがとう》

 

「私達は信じていたわ」

「ああ」

「一応、心配はしていたけどね」

 

《そして、この場で改めてお伝えする。

 

我々護廷十三隊と日本魔法省は……同盟国たる英国に巣食う者共……。

 

ヴォルデモートなる愚か者に、正式に……宣戦布告させて頂く!

 

覚悟せよヴォルデモート。

我らの敵となった以上、容赦はせぬ!》……以上です』

 

「堂々の宣戦布告ね」

「ショウ達らしいな」

 

『「ロイヤル(キングズリー)、これをどう思います?」

 

「いやあ、もう流石としか言えないな。無論彼らの実力は知っているし、体験もしている。私は対して驚かないが、それでも賞賛の声を惜しむつもりはない」

 

「そして我々にとっては待望の勝利宣言だ。これで勝利がより近づいたからね」

 

ロムルス(ルーピン)もそう思いますか。ゲイリー(シリウス)は?」

 

「個人的には堂々の宣戦布告を注目したい。護廷十三隊という特記戦力集団に宣戦布告されたという事実は、計り知れない影響を及ぼすだろう。奴らの部下からは、逃げ出したり裏切ったりする者が出てくるかもしれないし……奴自身も、今頃はガタガタと震えているかもしれない。それほどの影響力を彼らは持っている」』

 

あの『見た目も頭も寒そうな奴(ヴォルデモート)』がガタガタ震えているのを想像したら、思わず同情してしまうかもな。

 

シリウスのジョークに三人は頷く。

 

待望の勝利宣言と、堂々の宣戦布告。

 

頼もしいことこの上ない。

 

それに、あのショウの師匠方がいるのだ。

例え十刃がいようとも、ヴォルデモートは勝てない。

 

そして最後に流れたショウからの音声メッセージ*3を聴き、三人は大興奮した。

 

勝つ。

この戦いに終止符を。

 

「ヴォル…!んんっ、アイツは僕が倒す!」

 

ヴォルデモートの名前を言うと人攫いがやって来る。

 

そいつら自体は返り討ちに出来る自信があるが、要らない面倒は避けたい。

 

なんとも締まらないが、それでもハリーはそう宣言したのだった。

 

 

 

 

 

 

さて、そう宣言したハリー達だったが、問題が残っていた。

 

いつ決戦を挑むのか。

どこで行うのか。

援軍への連絡方法は。

 

残る分霊箱……多分レイブンクロー髪飾りと蛇をどうやって破壊するのか。

 

そして……このまま勝てるのか。

 

難題だらけだったが故に、ハリー達は遂に行動を始める。

 

ビルとフラーの結婚式にて死の秘宝のエンブレムを持っていた人物……ルーナの父親であるゼノフィリウスに死の秘宝の情報を聞く為、ラブグッド家を訪ねたのだ。

 

兼ねてよりハリーのファンを公言していたゼノフィリウスは、世情が故にザ・クィブラーの発行を中止していた*4が……「信念は変わってない」「私は貴方を応援している」と言いながらハリーと握手を交わし、彼が知りうる全てを伝えた。

 

ーーーーーー

 

「甦りの石と透明マントは歴史に出てくることはなかった。だがニワトコの杖は度々その存在を歴史に晒してきた」

 

「でも、教科書にはどこにも……」

 

「歴代の所有者は自分が持っていると明確には言いふらさなかった。だが悪人エメリックや彼を倒した極悪人エグバード…バーナバス・デベリル、ロクシアスなどと言った闇の魔法使い達は、杖を持っていたと言う自らの手記が残っている」

 

「確認された最後の所有者は…?」

 

「マイキュー・グレゴロビッチ……去年の九月に亡くなったヨーロッパの杖職人が持っていたと言う噂だが……」

 

「噂…ですか」

 

「ああ」

 

「……ありがとう、ラブグッドさん」

 

ーーーーー

 

残念ながら、彼は確たる情報を持ってはいなかった。

 

しかしある可能性が更に上がった事は有益だった。

 

だが、ここで不運が起る。

 

ホグワーツで()()()()()レジスタンス運動を主催している三人の内の一人、ルーナを何とかする為……死喰い人達がわざわざやって来たのだ。

 

気せずして戦場になるラブグッド家。

 

何人かを返り討ちにしながらも、多勢に無勢である為……ハリー達はズルズルと追い詰められていく。

 

「ここを爆破しますから、君達はその隙に逃げなさい。そして……ルーナに…父は勇敢だったと伝えて下さい」

 

我が家と共に爆散(自分諸共敵を爆殺)しようとするゼノフィリウス。

 

そんな覚悟ガンギマリな(薩摩ホグワーツ的な)策は、一人の頼もしい助っ人によって阻止される。

 

「助けに来ました!ハリー・ポッター!」

 

「ど、ドビー⁉︎」

 

そう、自由なしもべ妖精『ドビー』が助けに来てくれたのだ。

 

ドビーの様な屋敷しもべ妖精が使う魔法は、ハリー達が使う西洋魔法(ハリポタ魔法)でも刀原達が使う極東魔法(鬼道)でも無い特別な魔法。

 

故に彼らは姿眩ましが使えないホグワーツでもそれに類する移動手段を持っているし、この様な局面でも問題無く逃げられるのだ。

 

「さあ、私に触れて下さい」

 

ドビーがそう言えば、四人は躊躇うことなく彼の側に向かう。

 

そしてハリー達はラブグッド家から脱出することに成功したのだった。

 

なお……その直後に家にあったエルンペントの角に魔法が着弾し、家は突入していた死喰い人ごと爆破された。

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……?」

 

着いたと同時にハリーは一応警戒する。

 

ドビーがマズイ所に連れて行くとは思っていないが、それでも何処に行くのか分から無かったからだ。

 

「大丈夫ですよハリー・ポッター。ここは安全な場所ですから」

 

ドビーは安心させる様にそう言う。

 

「……大丈夫か?」

 

そしてそう言って来た相手を見て、ハリー達は驚く。

 

「び、ビル!フラー!」

 

「ようこそ『貝殻の家』へ」

 

ビルとフラーはにこやかにそう言った。

 

 

 

 

 

 

*1

小鬼(ゴブリン)が作った剣には、錆や腐食から剣を守り、自身を強化する力を吸収するという性質がある。

グリフィンドールの剣は、小鬼(ゴブリン)製であるため、その性質が適応されるのだ。

*2

イソップ童話や日本昔話に近い存在だろう。

 

実際、ロン曰く「魔法使いの子供ならだれで知っている本」とのこと

*3
詳しくはおまけにて

*4
娘たるルーナから忠告を受けていたらしい。

 

「私やハリーの為に、しばらく発行を中止しよう」と。

 

信頼出来る『ある人』がそう勧めてきたとも。

 

愛娘を守るため、自身の信念を歪めないため、彼は発行を中止した






僕らも
いよいよ動き出す時。



本小説で刀原が出て来なかったのは初めて。
今頃何をしているのやら……。

ハリー達が今の今まで大人しく逃亡生活をしていた影響は、微妙に大きいですね。

ゴドリックの谷での一戦が無い為、ハリーの杖が折れてない。
人攫いに見つかる事もなく、マルフォイの館での一戦も無い。
よってハーマイオニーの杖は奪われず、ドビーも死なない。

え、杖職人がいた筈だ?
何処ぞの鎌鼬四席が守りました。



感想、ご意見、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。


では次回は

決戦直前

次回もお楽しみに






おまけ



『それとあと、えーっと……三番隊隊長の……ショーヘイ・トーハラの言葉です。

音声データですね。
そのまま流します。

ピッ
《このラジオを聴いている、忠勇なる英国の魔法使い諸君たちよ。

我ら護廷十三隊は、賊軍を鎧袖一触にした。
これで我らの戦いは終わりか?

否!
ほんの前哨戦に過ぎないと判断している!

我らは勇気ある同胞を、友を、決して見捨てないからだ!

我らは近々英国に乗り込む。

そして我が盟友…『選ばれし者』たるハリー・ポッターと共に、ヴォルデモートを叩き潰す!

即ち、ハリーが反撃の狼煙を上げたその時こそ……諸君らも立ち上がる時である!

確かに敵は強い。

認めよう、敵は強い!

現にマッド・アイを始めとする多くの者が、その命を散らした……。
彼らが諸君らにとって、掛け替えの無い友人や家族であった事は否定できない。

だが、どうか思い出して欲しい!

諸君らの肉親は、親戚は、友は…なんの為に戦い、そして、死んだのかを。

それは彼らが、己の信念を曲げず、勇気を示そうとしたからではないのか!?

彼らを亡くした、その怒りも悲しみも…。
彼らが残した、その勇気も信念も…。
決して無駄には出来ない!

勝利こそ…亡くなった全ての人たちへの、最大の慰めとなる。

そしてハリー・ポッター…。
彼こそ、全ての者達にとっての希望だ!

彼の下、鋼の団結を結ぼう!

それに、奴らの同盟者たる賊軍は…我らの刀の錆にもならず、瀞霊廷に消えた。

我ら護廷十三隊への対抗手段の半数を失い、痛烈な打撃を受けたヴォルデモート陣営に、如何ほどの戦力があろうとも…それは形骸である。

敢えて言おう、カスであると!

所詮、暴力と恐怖でしか支配出来ない奴ら如きが…英国征服など、出来よう筈がない。

千年早いか、夢のまた夢なのだ。

そう、断言出来る!


そしてヴォルデモートよ……。
貴様の命運もこれまでだ。

首を洗って待つがいい!

そして、戦場で会うその時まで……。
産まれたての小鹿のように、ガクガク震えながら眠るがいい!

フハハハハハハ!

では勇気ある同胞諸君。
戦場で我らと握手!》

…………だそうです』

「ノリノリね」
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。