その決意は炎の様
その心は漣の様
その勇気は獅子の様。
漣の音が聞こえる。
暗い、漆黒の夜の海だが……ハリーはこの場所が妙に落ち着いた。
彼の手元には一通の手紙。
どの様な手段で送って来たのかは不明だが……ショウから送られて来たその手紙には、たった一言だけ書かれていた。
『Are you ready?』
ハリーはこの一言を理解していた。
『戦う準備は出来たか?』
『皆を巻き込む覚悟は出来たか?』
『こちらは準備出来たぞ』
そう言いたいのだ。
ハリーは……答えを書くのは簡単だと思っていた。
だが……いざ書こうと思ったら、手が震えるのだ。
戦いになれば、否が応でも皆を巻き込む。
ロンが、ハーマイオニーが。
ネビルが、ジニーが、ルーナが。
シリウスが、ルーピンが。
ショウが、ライカが。
みんなが。
自分自身が。
死ぬかもしれないのだ。
惨たらしく、無惨に、呆気なく……死ぬかもしれない。
拷問も、洗脳もされるかもされない。
漣の音が聞こえる。
ハリーは胡座をかきながら砂浜に座った。
膝にはグリフィンドールの剣を乗せて。
ハリーは目を瞑る。
漣の音が聞こえる。
静かな夜の砂浜に、漣の音がただ聞こえる。
ーーーーーー
『良いのかね?スリザリンに入れば、君は偉大になれるのだよ?それでも嫌なのならば……グリフィンドール!』
組み分け帽子にグリフィンドールに選ばれた。
ショウやロンと共に、トロールを倒した。
ロンとハーマイオニーと、ニコラス・フラメルについて調べた。
クィデッチの初試合でスニッチをキャッチした。
賢者の石を守った。
ーーーーーー
漣の音が聞こえる。
ーーーーーー
ドビーと出会った。
空飛ぶ車でロンの家に行き、列車を追いかけた。
秘密の部屋が開かれた。
アラゴグに襲われた。
『僕はヴォルデモート卿の過去であり、未来だ』
トム・リドルと対峙した。
『何してるハリー、下がれ!……そうか、じゃあ、無理して前に出んなよ?』
ショウと一緒にバジリスクと戦った。
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漣の音が聞こえる。
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ライカに出会った。
吸魂鬼という生物を知った。
ルーピンに出会った。
シリウスと、両親の死の原因を知った。
『エクペクト・パトローナム!』
守護霊で吸魂鬼を追い払った。
ーーーーーー
漣の音が聞こえる。
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魔法学校対抗試合に参加させられた。
ドラゴンと戦った。
ダンスパーティーでジニーと踊った。
水中でロンやフラーの妹を救出した。
生垣の迷路に入った。
墓場でヴォルデモートが復活した。
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漣の音がただ静かに聞こえる。
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ダドリーを助けた。
裁判で無罪になった。
ショウとライカが隊長になった。
DAでみんなと訓練……実戦訓練をした。
神秘部で死喰い人と戦った。
目の前でショウとダンブルドアがヴォルデモートと戦っている。
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漣の音が静かに聞こえる。
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『ハリー』
ロンが呼んでいる。
ハーマイオニーが呼んでいる。
『ハリー』
ライカが呼んでいる。
シリウスが、ルーピンが呼んでいる。
『ハリー』
ネビルが、ジニーが、ルーナが呼んでいる。
フレッドとジョージが、セドリックが、チョウが呼んでいる。
『ハリー』
ハグリッドが呼んでいる。
ホグワーツで出会った生徒達が呼んでいる。
『ポッター』
マクゴナガル先生が、他の先生達が呼んでいる。
マルフォイが呼んでいる。
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漣が微かに聞こえる。
ーーーーー
『ハリー』
ダンブルドアが呼んでいる。
『ハリー』
ショウが呼んでいる。
『俺が』
『皆が』
『待っているぞ』
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ハリーは目を開けた。
剣はほんのり暖かい。
そして手紙に返事を書いた。
たった一文字だけ。
『!』
手は震えなかった。
吼える
炎の様に
開く
決意の目を。