ハリー・ポッターと日ノ本の死神   作:シオンカシン

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普段使えないもの

だからこそ使うのです。







死神、現着す。ホグワーツ決戦 開戦直後

 

 

 

「協力者から緊急伝です!」

 

「なんと?」

 

「はい。

『発 助演者

 宛 共演者

 

 主演ハ楽屋ニ入ッタ

 

 演目:学舎

 

 客入リハ確実

 共演者ハ至急楽屋入リヲサレタシ』

 

それと、DAより『Lightning glows!(稲妻光る!)』との一報。

 

以上です!」

 

「来たか!」

 

伝令からの一報に刀原は色めきだった。

 

不死鳥の騎士団経由で『ハリーがホグワーツに行く』と言う連絡が来たのが約二時間前。

その時…刀原、雀部、日番谷、雛森、黒崎、朽木、は事態急変に備えて、ロンドンにある在英日本大使館にいた。

 

刀原はその連絡が来た時点で、日本に『事態急変、至急来られたし』の一報を送る。

しかしホグワーツで決戦をするという確信が無かった為、ロンドンから動かなかったのだ。

 

だが、もう待つ必要は無い。

 

刀原は雀部達と部屋を出る。

 

「京楽さん達に、ホグワーツに直行するよう伝えてくれ。それと京楽さん達の到着予定時刻は?」

 

「穿界門*1の射程範囲と列車の現在地、それとホグワーツの位置を考えると…早くて後一時間半かと」

 

「分かった。それじゃあ俺たちの方が早いな」

 

刀原は後方支援として来ている日本魔法省のスタッフと話しながら、廊下を歩く。

 

「早いと言っても、私達だってここから三十分は掛かりますよ?」

 

ロンドンからスコットランド(直線距離 約900km)だからな」

 

「穿界門あって、本当に良かったですよね」

 

「技術開発局に感謝だな」

 

「だから最後の最後まで結論を伸ばしたんだろ」

 

「おかげでギリギリかもしれねぇがな」

 

雀部、日番谷、雛森、朽木、黒崎、阿散井も歩きながらボヤく。

そこに戦闘前の緊張感は感じられない。

 

「俺たちが現着するまで開戦の先延ばしと防御を張るようにと、伝えてくれ」

 

城にはマクゴナガル教授を始めとする優秀なホグワーツ教授陣がいるし、既に騎士団のメンバーも現着している筈。

 

多分大丈夫だろうと思いつつ、刀原はそう指示を出す。

 

そんなやりとりをしながら、一同は穿界門の前に着く。

 

「ご武運を」

 

刀原達はその言葉に見送られながら、穿界門の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

「何故このような夜間に集められたのか、不思議に思う者もいよう。聞くところによると先程……ポッターがホグズミードに現れた」

 

ホグワーツの校長となっていたスネイプは、キリキリと痛む胃を隠しながら言った。

 

今年度に入ってからというもの、全校集会はロクなことがないからだ。

 

花火、糞爆弾、黒い煙幕、等々。

 

必ず途中で妨害され、カロー兄妹が酷い目に合う……のはまあ、良いとして。

 

位置的にしょうがない……いやしょうがなくないけど。

自分も巻き添えを食らうのは、勘弁して欲しい……。

 

「さて?もしこの中に、今宵のポッターの動きを知っている者が居れば……今すぐここで名乗り出よ……直ちに」

 

スネイプはそう思いながら、余裕たっぷりに見せかけながらそう言った。

 

脳内で「出る訳無いだろ」と思っていたスネイプの思考は、あっさり崩される。

 

「カロー兄妹!貴様らの専横もこれまでだ!」

「我らが英雄、ハリー・ポッターが帰還したのよ!」

「貴様らの命運も潰えたのだ!」

 

例の生徒達(レジスタンス)が堂々と前に出て来たのだ。

 

ハリー・ポッターが帰還したと言いながら。

 

ば、馬鹿かこいつら。

 

唖然となるスネイプ。

同じく脳が止まったカロー兄妹も唖然とする。

 

「……ここは徹底的に防備を固めたらしいですが……どうやら穴があるようですよ?スネイプ校長代理」

 

こんな感じで出てくるつもりは無かったとばかりに、戸惑いながらハリーも出てくる。

 

そしてそれを合図に大広間に突入するのは……キングズリーやシリウス、リーマスを始めとした不死鳥の騎士団の面々。

 

その光景を見たカロー兄妹も漸く動きだし、ハリーに向けて杖を構える。

スネイプも一応ハリーに杖を向ける。

 

不死鳥の騎士団も杖をカロー兄妹達に向ける。

例の生徒達も、杖や花火や煙幕爆弾を構える。

 

マクゴナガルなどはハリーを庇うように前に出る。

 

「校長代理。……この一年間、大変だったのでは?」

 

そんな中……ハリーは生徒達をチラッと見つつ、ゆっくりとスネイプに近づきながら言う。

 

「胃痛の日々も今宵で終わりです。そろそろ……楽になっては?」

 

スネイプはハリーの戯けたこの言葉に、苦虫を噛み潰したような顔になる。

 

かの者を彷彿とさせる台詞だったから。

 

だが、その言葉が正しいのも事実。

伊達に今まで胃薬のお世話になっていた訳ではない。

 

「そうですな。では……そうしましょうかな?」

 

スネイプはそう言って、体の向きを真後ろに向き直す。

 

戸惑うカロー兄妹。

直後彼らが見たのは……スネイプとハリーが呪文を放ち、それが自分達に向かってくる光景だった。

 

 

 

カロー兄妹を捕らえたハリー達の背に歓声が上がる。

 

だがその傍らで、ハリーの意識は別にあった。

 

薬は透明になり、石の水盆の底にあるはずのロケットが無い……。

 

「ポッター!何故ノコノコと戻って来た!」

 

「そうですとも、それに不死鳥の騎士団まで……」

 

スネイプとマクゴナガルの指摘に、ハリーは意識を戻す。

 

「ヴォルデモートが近づいています。時間がありません。先生、僕はダンブルドアの命令で動いているんです!」

 

ハリーがそう言えば、二人はハッとした表情で背筋を伸ばす。

 

「校長の命令……なるほど」

 

「なるほど、それが理由ですか」

 

納得した素振りを見せる二人。

 

「ではポッター、何が必要なのです?」

「左様、何が必要なのかな?」

 

「時間です。先生、出来るだけ時間が欲しいです」

 

ハリーの言葉に二人は頷く。

 

「なすべき事をなさい。城は私達が守ります」

 

マクゴナガルは強くそう言う。

 

ハリーはそれを聞いてその場を離れようとしたが、それを遮る出来事が起きた。

 

大広間の大扉の前に障子の門が現れたのだ。

 

その如何にも日本的な見た目に大広間が騒めく。

 

そしてその期待は正しかった。

 

「よう、ハリー。いよいよだな」

 

刀原達が現着したのだ。

 

 

 

 

 

 

大広間の天井は暗く、星が瞬いていた。

 

その下の四つの寮テーブルには髪も服もくしゃくしゃな寝起きの生徒と、戦支度のつもりであろう煙幕や糞爆弾を持って完全装備を整えた生徒が座っていた。

 

壇上にはマクゴナガルと刀原。

 

背後には学校にいる教授達や戦いに馳せ参じた不死鳥の騎士団メンバー、そして護廷十三隊の先遣隊が壇場に立っている。

 

「未成年の者はホグワーツから避難を。監督するのはフィルチさんとマダム・ポンフリーです。監督生がそれぞれの寮をまとめて避難の指揮を執り、秩序を保って移動して下さい」

 

マクゴナガルがそう言う、

 

生徒達はその深刻さに『来るべき時が来た(これは演習にあらず)』事を察し、恐怖で震える者や、逆に震え立つ者などがいた。

 

「先生!ここは僕らの学校です!僕らも戦います!」

「そうです先生!私達、逃げるなんて出来ません!」

「我らの意地、ここで見せる時!」

「グリフィンドールの有志達。準備よし!」

「負けるか!スリザリン、避難希望者の選定完了!」

「ハッフルハプも選定完了。穴熊の意地、見せるぞ!」

「レイブンクローも準備よし。避難希望者の護衛は、我らにお任せを」

 

「「参戦準備は出来ています!」」

 

震え立つ生徒達がそう叫ぶ。

避難希望者と思しき者達も、一塊になっている。

 

「せ、先輩。僕らも……」

 

「駄目よ。三年生以下は例外無く避難しなさい」

「四年生も下級生を護衛しつつ避難だ」

「残って良いのは五、六、七年生。事前に決めた通りにな」

 

三年生以下の勇気ある者が名乗り出るが、高学年の者がそれを拒否する。

 

「また我が家で会おう」「帰って来てよね」

「元気でね。パパやママによろしく」「……うん」

「さらば我が友」「……すまない」「気にするな」

 

中には今生の別れとばかりにハグをする兄弟や姉妹、友人もいる。

そこに赤も緑も青も黄色も無かった。

 

この光景を見たマクゴナガルを始めとする教授達は額に手を当て、雀部や日番谷が何とも言えない顔をし、シリウスやルーピンなどは信じられないと言う顔で唖然とした。

 

こいつら本当に学生か?

 

事情を知っている者は、思わずかの者を見てしまう(おい、どうすんだこの状況!)

かの者は何とも言えない顔になっていた(まさかこんなことになるとは……)

 

「……非常に、非常に遺憾な決断ですが……五年生以上の生徒達の参戦を許可します。但し、あくまでもサポートとし、積極的に戦うことは許しません」

 

マクゴナガルは渋々……本当に渋々そうに了承する。

 

「ありがとうございます!」

「教えられた通り、三人一組で行動します!」

「死喰い人には、一人につき三人で相手します!」

 

生徒達はそれに歓喜の声を上げた。

 

本当に分かってるのですか?

あと、そんな事を教えたつもりはありません。

 

マクゴナガルは不安になった。

 

その時だ。

 

『戦いたがっている者がいる様だ……。

戦う事が賢いと、利口だと考えている者もいる様だ。

 

……愚かな事だ』

 

突如としてヴォルデモートの声が響いたのだ。

 

『俺様はホグワーツに敬意を示す。

歴史ある学校を灰燼に帰すことは避けたいのだ。

 

ハリー・ポッターを差し出せ。

さすればホグワーツには手を出さぬ。

 

ハリー・ポッターを差し出せば、お前達は報われる。

 

一時間だけ待ってやろう』

 

その甘言を最後にヴォルデモートの言葉は終わる。

 

「なんだ、一時間もくれるのか。優しいな」

 

「『三分間待ってやる』じゃないんですね」

 

ほぼ全員の顔が強張る中……刀原と雀部は顔色一つ変えずに、そう言った。

 

 

 

「さて諸君、一刻の猶予も無ぇぞ」

 

開戦まであと一時間となった事で生徒達が避難を始め、刀原とハリーは全員を集めて軍議を開いた。

 

「現在この城は『多分まだユニコーンに乗れるあの人』こと、ヴォルデモートが包囲している状況だ。猶予の一時間だって、多分まだ本人が着陣してないからだろう。故に……『虹色のアフロを被ってみて欲しい例のあの人』こと、ヴォルデモートの準備が済み次第……連中は総攻撃をしてくると考えてほしい」

 

刀原が真面目な顔でそう言えば、何人かが頷く。

何人かは笑いを堪える。

 

多分『ユニコーンに乗って、キャッキャウフフしているヴォルデモート』や『虹色のアフロの被り、ノリノリなヴォルデモート』を想像してしまったのだろう。

 

「……護廷十三隊の本隊到着は、早くてあと一時間。その為、敵との会敵を出来るだけ遅らせる必要があります。教授方と不死鳥の騎士団の方々には、最高の防御魔法を張って頂きたいです」

 

「元よりそのつもりです。我々が知りうる限りの防御を施しましょう」

 

雀部の要請に、マクゴナガルやフリットウィックがそう言って頷く。

 

そして各組織ごとに配置などを決めていく。

 

「配置はどうする?」

 

「各員の力量と相性を考えて、均等に振るしかないな。それと、出来るだけツーマンセルで組ませる」

 

「基本中の基本だが、有効的な策だな」

 

 

 

「ミスターロングボトム。それと愉快な仲間達。貴方達にお願いしたい事があります」

 

「なんでしょうかマクゴナガル先生」

「「「なんなりと先生!」」」

 

「学校と禁じられた森の間にある谷。そこに架かっている木製の橋を落として欲しいのです」

 

「え、本当に良いんですか?」

 

「その通りですロングボトム。なんなら爆破なさい」

 

「爆破を?ドカンと?」

 

「ドカンと!」

 

「スッゲェ!」

「マジか!」

「一度やってみたかったんだ!」

「ドカンと行こうぜ!」

 

「でもどうやって綺麗に爆破すれば……?」

「せっかくなら芸術的にやりたい……!」

 

「具体的な爆破方法は、ミスターフィネガンに相談しては?彼は何でもかんでも爆破するのがお得意の様ですから」

 

「話は聞いた。任せろ。あんな橋なんて一発だ」

 

「その勢です。早速向かいなさい」

 

「よし!みんな行くぞ!」

 

「DA工作班!火薬の貯蔵は充分か!」

「充分だ!全部放出するぜ!」

「どうせなら死喰い人を巻き込んで落とそうぜ!」

 

 

「正面の橋は俺と雷華で守る。冬獅郎と桃は、あの爆破魔達と共に。一護は天文台。織姫は大広間。ルキアと恋次は中庭」

 

「他の皆さんは?」

 

「それは現着してからだな」

 

「目標は虚と破面だけか?」

「死喰い人は良いんですか?」

 

「手向かいする者は悉く斬り捨てろ。死喰い人も虚みたいなものだ」

 

「私は治療班ね?」

 

「マダム・ポンフリーは俺が知ってる人の中で最高の癒者だ。だが限度があるからな、頼む」

 

「任せて!」

 

「一護、ルキア、恋次も頼むぞ」

 

「「「おう!」」」

 

 

「ハリー、お前は成すべき事をなせ。分霊箱の破壊は任せたぞ」

 

「ショウも。気をつけて」

 

「ハリー達を日本に招待するまで死なんよ。ハリーこそ、充分に気をつけろ」

 

「うん、分かった」

 

「ハリー……会えて良かった。お前は最高の親友だ」

 

「僕もだよ。ショウ」

 

「ショウ、ハリー。みんな準備出来たぞ」

 

「分かった」

「おう」

 

シリウスの合図を受け、ハリーとショウが壇上に立つ。

 

「これが最後の戦いだ!ヴォルデモートを倒す為、みんなの力を貸して欲しい!」

 

「ヴォルデモートに目にもの見せてやるぞ!皆の武運を祈る!」

 

二人の言葉に大歓声が上がる。

士気は高かった。

 

「では諸君。戦争の時間だ」

 

こうして軍議は終わり、それぞれが持ち場へと移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

各員が配置に着いた。

 

「残念ながら『あの人』を何時迄も抑え込む事は出来ませんぞ?」

 

悲痛な顔でフリットウィックが言う。

誰が何と言おうとも、ヴォルデモートが強大な魔法使いである事は否定出来ないからだ。

 

「ですが時間を稼ぐ事は出来ます。今はポッターとトーハラを信じましょう。私は二人を信じますよ?何せ二人はグリフィンドール生ですから」

 

マクゴナガルは自慢の生徒を紹介する様に言う。

 

片や『選ばれし英雄』

片や『マホウトコロ開闢以来最強の死神』

 

一癖も二癖もあるが……彼女にとって、彼らは自慢の生徒なのだ。

 

「確かにそうですな。ここは彼らを信じましょう」

 

フリットウィックもそう言い、移動する。

 

「……なんの話を?」

 

刀原がマクゴナガルの隣に来てそう言えば、マクゴナガルは「これを機に、普段は使えない呪文を使ってみようかと言っていたのですよ」と朗らかに言う。

 

「『ピエールトータム・ロコモーター(全ての石像よ動け)』」

 

そして真後ろに振り向いたマクゴナガルがそう唱えれば、ホグワーツ中の石像に命が吹き込まれる。

 

「ホグワーツが脅かされています。盾として護りなさい。学校への務めを果たすのです!」

 

それらは一斉に動き出し、隊列を成して石橋に陣取る為に向かって行く。

 

「この呪文、一度使ってみたかったんですよ」

 

マクゴナガルが微笑みながら、興奮した様に言う。

楽しそうだった。

 

「僕も完全詠唱で使ってみたい鬼道があります」

 

刀原も楽しそうに言った。

 

ホグワーツ中から、空に向かって呪文が飛んで行く。

 

プロテゴ・マキシマ(最大の守り)

フィアント・デューリ(強化せよ)

レペロ・イニミカム(敵をよけよ)

プロテゴ・トタラム(万全の守り)

プロテゴ・ホリビリス(恐ろしきものから守れ)

サルビオ・ヘクシア(呪いを避けよ)

カーべ・イニミカム(敵を警戒せよ)

 

教授達が、騎士団が、それぞれ出来る限りの防御魔法を掛けていく。

 

半透明のそれは、やがて膜の様にホグワーツを覆い……ホグワーツの守護結界を補強した。

 

準備は整った。

 

 

 

 

 

刀原達が着々と戦備を整えている間、ハリー、ロン、ハーマイオニーの三人は大規模物置と化した必要の部屋にいた。

 

数万もの品数があるこの場所で、ティアラみたいな髪飾りを探すのは……ハッキリ言って無謀だった。

 

「ネビルは兎も角…ジニーもルーナも居ないのは辛いわね」

 

「頭数いるぜ…コリャ…」

 

ロンやハーマイオニーがそう言う。

 

その意見にはハリーも同意だった。

 

あと三人…せめて二人ぐらい来てくれないかな。

 

ハリーがそう思ったその時、思わぬ援軍が現れた。

 

「お困りの様だなぁポッター?この僕が、力を貸してあげようか?」

 

上から目線でそう言ったのは、何とマルフォイ。

亡命先のフランスから、不死鳥の騎士団の第二陣と共に駆けつけたのだ。

 

しかもマルフォイだけではない。

 

ダフネ・グリーングラス。

アストリア・グリーングラス。

パンジー・パーキンソン。

ビンセント・クラッブ。

グレゴリー・ゴイル。

セオドール・ノット。

ブレーズ・ザビニ。

 

ハリー達と一度は出会い、そして一度は必ず争ったスリザリンの面々がやって来たのだ。

 

「来てくれたのは嬉しい。でもマルフォイとダフネ、アストリア以外は良いのか?ヴォルデモートと対立することになるけど」

 

ハリーは当然の疑問を投げる。

 

ヴォルデモートと対立することになるこの行為を何故するのか。

大きな声では言えないが……一部の者を除き、殆どの親が死喰い人なのに。

 

その理由は至極単純。

 

「トーハラやササキベと戦いたくない」

byパーキンソン。

 

「トーハラと戦うよりマシ」

byクラッブ。

 

「トーハラの方が怖い」

byゴイル。

 

「『そうか、残念だ。じゃあ死ね』って言われて死ぬ」

byノット。

 

「トーハラを敵に回したくない」

byザビニ。

 

スリザリンの面々は、迫真迫った顔でそう言う。

 

マルフォイは何度も頷いていた(「分かる、分かるぞ」)

ハリー達は全てを察した顔(「ああ…うん、そう、だよね」)になった。

 

そしてハリーは「じゃあ宜しく」と言った。

 

 

 

 

「ハ、懲りない連中だ……」

 

ヴォルデモートはホグワーツに見下ろしながら、そう吐き捨てた。

 

開戦まであと十分。

彼は最初から約束を守るつもりなど無かった。

 

「我が君……待った方が宜しいのでは……?」

 

死喰い人の一人がオドオドしながら言う。

 

「ちんたらしていれば、極東からあの連中が来る……そんなことも分からんのか!?」

 

ヴォルデモートは死喰い人に対し、そう叱責する。

 

「あの規格外共と言えど、極東から一時間で来れる筈がない。故に短期決戦しかない。トーハラ、ササキベもいない今こそ、小癪な小僧を潰すチャンスなのだ!」

 

ヴォルデモートはそう言い、何気に怖じ気付いている部下達を叱責する。

 

巨人もいる。

部下も数百を数える。

 

規格外が極東から来る前に、ホグワーツにいる者共をすり潰し……遅れてやって来るトーハラ達を迎え撃つ。

 

これしかない!

 

「かかれ」

 

ヴォルデモートは総攻撃の下知を下す。

 

数百人の死喰い人達が一斉に呪文を発射する。

 

それらは弾幕となってホグワーツに迫り……。

補強されたホグワーツの守護結界に当たり始める。

 

「では」

 

「気をつけて」

 

刀原は雀部に見送られながら、石橋を占拠する石像の直上に移動した。

敵の出鼻をへし折るために。

 

 

 

グリフィンドール三人衆とスリザリンの面々で行われた『必要の部屋大捜索会』

 

これだけ人数を動員した捜索は……意外と難航した。

 

めんどくさくなったクラッブやゴイルが「これ、燃やした方が早いだろ」と何処かで聞いた台詞を言うぐらいには難航した。

 

だが。

 

「おい、ポッター」

 

「ああ……これだ」

 

マルフォイとハリーが導かれる様に触った小箱。

 

ハリーがそっと開ける。

 

そこには……レイブンクローの髪飾りがあった。

 

美しかったであろう銀やサファイアの色はくすみ、声無き声が聞こえるかのような雰囲気が漂う。

 

「これは……ショウが言っていた通りだな。途方もなく邪悪で、途徹もない闇の魔術を感じる」

 

スリザリンである故か、マルフォイはこの異質さがハッキリと分かるらしい。

 

「ここで破壊するのはマズイ。必要の部屋を出てから破壊しよう」

 

ハリーとマルフォイは合図の音を出し、彼らは集結し部屋を出る。

 

そして、廊下に出たハリーはグリフィンドールの剣を大上段に構え、マルフォイが投げた髪飾りを断ち切った。

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーーー!!!」

 

ヴォルデモートは、声にならない絶叫をあげる。

 

髪飾りが破壊されたことが分かったからだ。

 

まさか……まさかまさかまさか!

あり得ない!あり得ない!あり得ない!

 

まさか小僧が、あの部屋を知っていたとは!

あの部屋から見つけるなどあり得ない!

 

焦燥、怒り。

 

それらがヴォルデモートの頭を埋め尽くす。

 

「ーーーーーーー!!!」

 

それは魔力となり、杖の先から放出される。

 

そしてホグワーツの守護結界に衝突し……崩壊させた。

 

 

 

 

 

 

ホグワーツが誇る魔法防壁が……破れた。

 

数百は下らないであろう死喰い人達の総攻撃でもビクともしなかったホグワーツの守りを。

 

ヴォルデモートは一撃で破壊したのだ。

 

「……来るぞ」

 

誰かが、そう言った。

 

そしてその言葉の通り……数百人もの死喰い人と巨人からなる大軍が、押し寄せる。

 

マクゴナガルが命を吹き込んだ石像達が身構える。

 

不死鳥の騎士団が、教授達が、生徒達が、決意を固める。

 

ヴォルデモートは自軍の数を見て、一気にカタがつくだろうと思った。

 

それを……彼が霧散させる。

 

 

 

 

 

 

 

 滲み出す混濁の紋章

 

 

 

 

 不遜なる狂気の器

 

 

 

 

 湧き上がり、否定し

 

 

 

 

 痺れ瞬き、眠りを妨げる

 

 

 

 

 爬行する鉄の王女

 

 

 

 

 絶えず自壊する泥の人形

 

 

 

 

 結合せよ、反発せよ

 

 

 

 

 地に満ち、己の無力を知れ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 破道の九十『黒棺』

 

 

 

 

 

 

突如……黒い重力の奔流が、大軍先端を棺のように囲う。

 

そして……。

 

それは跡形もなく砕け散った。

 

「す、凄まじい……」

 

「なん……だと」

 

敵味方問わず、その光景に圧倒される。

動きを止め、呆然と立ち尽くす。

 

「こんなことが出来るのは、彼しかいない!」

 

誰かが叫ぶ。

 

 

 

「一度やってみたかったんだよねぇ……完全詠唱黒棺」

 

 

 

「開戦の挨拶としては、温かったかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
数年前に開発された『長距離を短時間で移動出来る様になれるゲート』のこと。

 

但し、安全の為に日本魔法界に住む『地獄蝶』という黒い蝶々が必要になり、出入り口も固定しなくてはならない。

 

なお、開かれる時に障子を開ける様な演出がされる。






地に伏し

己の愚かさを知れ

黒き棺に砕かれながら。




ピエールトータム・ロコモーター
私の好きな呪文です。

マクゴナガル教授の台詞
「この呪文、一度使ってみたかったんですよ」
私の好きな台詞です。

この一連の流れは是非映画でご覧ください!
BGMも相まって…マクゴナガル教授、格好良いです。



黒棺の完全詠唱は必須。
ここで使うと最初から決めておりました。
私の好きな鬼道です。


この小説ならではのホグワーツ決戦を書くため、映画や原作を混ぜております。

原作ならでは、映画ならではの良さを味わって頂ければと思います。



感想、ご意見、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。



では次回は

死神VS十刃

次回もお楽しみに







おまけ



「開戦の挨拶でもしたらどうです?」

雀部がさらっと言った。
冗談のつもりで言った。

「任せろ」

刀原は真面目な顔で言う。

しかし、内容は真面目ではなかった。

『宣誓!

私たち、護廷十三隊は!

日頃の鍛練の成果を、充分に発揮し。

正々堂々、君たちを殲滅することを誓います!

警告します!

ホグワーツが攻撃を受けた場合、日英魔法安全保証条約を適用し。

攻撃を開始します!』

刀原がソノーラス(響け)を使い、全力で放ったショタボイスは……。

敵味方問わず『!?』となった。

油断してくれる者はいなかったが。

「録音した」
「即刻消せ」




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