敗者は虫の様に潰され
勝者は獣の様に叫ぶ
戦う者は血肉を喰らわんとする
獣になろうとする。
滲み出す混濁の紋章
不遜なる狂気の器
湧き上がり、否定し
痺れ瞬き、眠りを妨げる
爬行する鉄の王女
絶えず自壊する泥の人形
結合せよ、反発せよ
地に満ち、己の無力を知れ
破道の九十『黒棺』
巨人を先頭とし、それを肉壁にしながら死喰い人がホグワーツ城に踏み入る。
それがヴォルデモート陣営の策だった。
だが、その策は藻屑と消える。
有力な衝角、あるいは破城槌になるはずだったそれが、たった一撃で壊滅されることになったのだから。
巨人部隊は極一部を除いて消え去り、事実上の全滅。
死喰い人も、少なく数えても約八十名が消えた。
そう、消えたのだ。
負傷……などという甘えも許さず。
まるで霞の様に。
ちょっと前を走っていた同胞が、友が、親戚が、消えたのだ。
死喰い人達の士気は大きく乱れた。
壊乱とまではいかないまでも。
そしてヴォルデモートの見積もりも大きく崩れた。
彼の思考の中では、刀原率いる護廷十三隊はまだ英国に来ていない筈だったのだ。
来ていない今だからこそ、開戦を決意したのだ。
来る前になんとかしたかったのだ。
だが……さすがというべきか、彼らは既に現着していたらしい。
さらにヴォルデモートを焦らせたのは、先の鬼道の威力だった。
おそらくあれは、分霊箱を破壊出来る力だ。
あれをナギニごと受ければ……終わる。
「陣を移す!急げ!」
ガタガタになった本隊の立て直しもかね、ヴォルデモートは禁じられた森に本陣を移すことに決定。
死喰い人達は塊にならず、散発的にホグワーツに攻め込むよう通達する。
加えて谷の方面から、死喰い人以下のならず者共を吶喊させる。
更に、十刃の面々に出陣を要請。
事実上の長からは「何様のつもりじゃ」と言われるも、なんとか説き伏せて向かわせることに成功する。
しかし、開戦早々に出鼻を思いっ切り回し蹴りされたことに、変わりはなかった。
ヴォルデモートは苦虫を嚙み潰したような顔のまま、移動した。
黒棺で発生した光景。
それはヴォルデモート陣営を震え上がらせた他、ホグワーツ側に歓声を齎した。
さすがは『かの者』
だが、その歓声は消え去る。
十刃の面々がホグワーツの周辺に現れたからだ。
しかし現れたのは十刃の面々だけではない。
外に繋がる石の大橋の手前、大広間に繋がる正面の大扉の前……マクゴナガルが布陣している場所の近くで障子で出来たゲートが現れ、死神たちが姿を現したのだ。
「おおっ、どうやら間に合ったみたいっすね」
「間に合わぬではないかとヒヤヒヤしたわ」
「間に合わなかったら、刀原君達に良いところ全部持ってかれちゃうからね」
「彼らの負担も跳ね上がるからな」
「だが間に合った」
「間に合った以上、十刃の者共に好きにはさせん」
浦原喜助、四楓院夜一、京楽春水、浮竹十四郎、朽木白哉、狛村左陣が現れる。
「獲物は残っている様ですね」
「そ、その様じゃのう……」
「みたいですな」
卯ノ花烈、山本元柳斎、雀部長次郎が現れる。
そして死神達は、各々の敵を定めて各地に散開する。
「隊長君じゃなくて、隊長さん達か」
「ごめんね、歳食ったおじさんでさ」
「まあ、君が一番手強いと思ってるからな」
コヨーテ・スタークVS京楽春水、浮竹十四郎
「小童が、我に挑むか」
「一応総大将なんでね」
バラガン・ルイゼンバーンVS刀原将平
「また会ったな、隊長格」
「三年ぶりだな。十刃」
ティア・ハリベルVS日番谷冬獅郎
「英国魔法省以来だな」
「あの時とは違いますよ」
ウルキオラ・シファーVS雀部雷華
「俺はあの刀原って言う奴と戦いたいんだがなぁ」
「私で我慢なさいな」
ノイトラ・ジルガVS卯ノ花烈
「決着つけるぞ!一護!」
「ああ、来いよ。グリムジョー」
グリムジョー・ジャガージャックVS黒崎一護
「貴方が私のお相手ですか?」
「その通りだ」
ゾマリ・ルルーVS朽木白哉
「君が私の実験体かね?」
「さあ?実験体になるのはどちらっすかね?」
ザエルアポロ・グランツVS浦原喜助
「二人がかりか」
「卑怯などとは言わぬよな?」
「言われたって気にしねぇけどな」
アーロニーロ・アルルエリVS朽木ルキア、阿散井恋次
それらを端目で見ながら、ヴォルデモート陣営はホグワーツに総攻めを開始し、ホグワーツ陣営は防衛を始めたのだった。
ホグワーツの正面にある谷の上空。
そこでバラガンと対峙することになった刀原。
腕を組み、余裕綽々と言った表情だが、内心は少し悩んでいた。
アビラマ・レッダー
フィンドール・キャリアス
チーノン・ポウ
ジオ=ヴェガ
ニルゲ・パルドゥック
これら五人の副官……
面倒だな……。
まあ、でも……なんとかなるでしょ。
さっさと片付けて、
「一閃煌めき両断せよ『神殲斬刀』」
刀原はそう思いつつ、始解しながら鯉口を切る。
しかし抜くことは無い。
柄に手を掛けたまま……納刀状態のままだ。
「は、来ねぇならこっちから行くぞ!」
それを躊躇していると思ったのか、ジオが駆け出す。
「喰い千切れ『
両手の甲に2枚、長大化した三つ編みの先に1枚の計3枚の刃を出現させたジオは……その優れたスピードを生かし、刀原に刃を突き付けた。
刀原はそれを、あっさり躱す。
「良く避けた隊長格!」
ジオは、自身の最速に近い速度で向かったのにも関わらず躱されたことを、内心で驚愕する。
「じゃあ次は!」
だがそれを圧し殺し、二撃目を突き付ける。
「俺のターンだ」
そして抜刀した刀原に、首を跳ねられた。
「「!?」」
「なに!?」
「クソッ!」
サクッと殺され落下していくジオを見た四人の従属官は、慌てて動き出そうとする。
だがその隙を逃さない刀原は、ニルゲの目の前に瞬歩で接近する。
「踏み潰せ『
「遅い」
解放し巨大な象となったニルゲだが、時既に遅く、刀原によって頭から真っ二つになってしまう。
だが残る三人にとっては貴重な隙。
「気吹け『
チーノンが巨大な鯨人間のような姿になる。
「うっわ、めんどくさ」
刀原がその姿を見てしかめっ面をする。
真っ二つにするのは簡単だが、ここで斬ったら落下した遺体が面倒な事態を作り出しかねないからだ。
「刀原隊長!儂が請け負おう!」
それを察した狛村が割り込む。
「お願い出来ますか!?」
「無論だ!どりゃああああ!」
刀原の依頼を受けた狛村は、チーノンを投げ飛ばす。
チーノンの巨体がフワリと浮く。
「じゃあ、お任せします!『斬払い』!」
そして刀原が吹き飛ばし、狛村はそれを追いかけた。
「残り二人」
見送った刀原は、そう言って周囲を見る。
「頂を削れ『
「水面に刻め『
ほぼ運良く残った二人……アビラマとフィンドールは、同格二人をサクッと斬り捨て、一人を吹き飛ばした目の前の隊長格に戦慄していた。
「戦うなら死ぬぜ?一応、降伏を奨めるけど?」
善意で言う刀原。
彼らもそれを理解しているが、彼らにはバラガンへの忠誠心がある。
ここで降伏などあり得ない。
「バラガン様へは行かせん!」
「これが我らにとっての
「「どうする隊長格!」」
死を覚悟した二人。
「どうするも何も、降伏しねぇなら斬り捨てるまでだ」
刀原は刀を構え直した。
それ以外の死神も、それぞれの敵と向かい合う。
「お前みたいなチビにぃいいい!」
「確かに貴公からすればそうだろう……。だが、それでも任せてくれた期待に応えることぐらいは出来る!」
巨大なチーノンに対抗するため、狛村も切り札を使う。
「卍解『黒縄天譴明王』!」
発動と同時に、狛村の背後に巨大な鎧武者が出現する。
その様は、まさに明王。
チーノンが恐れおののき、怯んだ直後。
明王の刃が振り下ろされた。
「静まれ『
第7十刃『ゾマリ・ルルー』は早くも帰刃した。
「
出会い頭早々にそう言い放った朽木白哉が、有言実行とばかりに卍解を発動したからだ。
「卍解『
発動と同時に現れる無数と言っていい桜の花弁。
それは目で見つめたものの支配権を奪うという能力を持つゾマリにとって、相性最悪としか言いようがなかった。
襲い掛かってくる桜の花弁は数億枚。
初見の刀原が「枚数詐欺だ!千枚じゃなくて億枚じゃん!」と思わず言ったぐらいには多い。
一方のゾマリの目の数は、異形の姿になったところで六十に届かない。
ゾマリは『絶望的状況の中で戦う自分』に陶酔しながら、吭景と称される桜の花弁に呑まれていった。
「悪いが、決着を急がせてもらう」
第九十刃『アーロニーロ・アルルエリ』にそう宣言したルキアは、霊圧を高める。
『優秀な、将来が楽しみ』そんな評価が似合っていた彼女は、本来ならマホウトコロを主席で卒業出来るだけの能力を持っていた。
事実、彼女は在学中に始解を達成している。
だが…同期が濃すぎた。
開闢以来最強の生徒『刀原』
刀原と共に成長している『雀部』
氷雪系最強にして天才『日番谷』
未知数の潜在能力を持つ『黒崎』
謎に包まれる拒絶の力『井上』
綺羅星の如く輝く同期達に埋没しないように、彼女…そして阿散井は必死になって努力を重ねた。
そして彼女らは習得したのだ。
「卍解『
当代の斬魄刀で最も美しく、最も『純白』という言葉が似合う袖白雪。
その卍解も、また美しいものだった。
そして、白い霞に呑まれたアーロニーロは氷像となった。
第八十刃『ザエルアポロ・グランツ』に良いところは何もなかった。
彼は破面随一の科学者だったらしいのだが……彼の技術や能力は『未知数とも思える手段の数』を持つ浦原に全く通じなかったのだ。
「対策済っすよ」と言わんばかりのドヤ顔で、ザエルアポロのあらゆる策を封じていく浦原。
そして、ザエルアポロに盛られる『
涅の研修室から
「上手く刀が振れるねぇ。将平君が言ってた通りだ」
「そう言うあんたは呑気だな…。のらりくらりと、網笠も着物も飛ばさずによ」
京楽とスタークは
京楽としては、無理に攻める必要は無いから。
スタークとしては、命を賭ける必要が無いから。
だから双方ともに、本気にはならない。
だから、真下で浮竹とリリネットが遊んでいるように見える行動をしても良い。
まあ、リリネットは本気だろうが。
「あんた、全く本気じゃないな。両利きで、左右で間合いが違う剣士で、おまけに脇差まであるのに…
「参ったね。そこまで見抜かれちゃったか」
スタークの指摘に京楽は苦笑いをする。
ほんの少しずつ手の内を明かしていこうと思っていたのに…。
「バレたんじゃあしょうがない。二本目、抜くしかないね」
「藪蛇だったか…」
始解も帰刃もしていないが、強者の戦いがそこにはあった。
「クッ、クソが!」
そんな主義である第五十刃の『ノイトラ・ジルガ』は、その主義に則り、卯ノ花烈と戦うことを選択した。
そして卯ノ花が場所を変えるために移動した時も、なんの疑問も抱かなかった。
せいぜいが「見た目の割に好戦的だな」程度だった。
こうして戦い始めたのだが、彼女は
そして、段々と追い詰められていった。
ノイトラは気付かなかった。
『生粋の優』にしか見えない卯ノ花の笑みの中にある、狂気とも言える素顔を。
彼女が般若であることを。
ノイトラは知らなかった。
卯ノ花が日本屈指の
日本でも五本の指に入る剣士であることを。
卯ノ花烈の本名…卯ノ花
彼女こそ、『歴代最強』『殺伐とした殺し屋集団』と称された『初代護廷十三隊』であることを。
彼女こそが、初代剣八であることを。
ーーーーー
「日本に居てください。貴女は日本の切り札のお一人なのですから……。救護班としては虎徹副隊長と山田七席のお二人で十分かと」
「あらあら、何を言うかと思えば。私が一人いれば十分でしょう?私が英国に赴きます」
「駄目です。日本に居てください」
「嫌です。英国に赴きます」
「……」
「……」
「どうせ
「そのようなことはありません。私は四番隊……救護班の長としての責務を果たそうとしているまで」
「……」
「……」
「……やっぱり駄目で「なら貴方と死なない程度に死合うというのはどうです?勿論『無間』で。卍解も使っ」戦闘は必要最低限。それならば英国行きを許可します」
「交渉成立ですね」
「やっぱり戦いたかったんじゃないですか」
「
「安心出来ねぇから日本に居て欲しかったんだよなぁ」
「何か?」
「いいえ何も」
ーーーーー
日本でこんなやり取りがあったことは、知る由もない。
「貴方の底は知れました」
やがて放たれたその言葉は、死刑宣告に等しい言葉。
「座興は……これにてお仕舞い」
ノイトラは必死に防ごうとする。
しかし、六本の腕や武器を搔い潜って迫ってくる血に染まった太刀は……十刃最高鋼度の
「ま、待ってくれ…」
羽を斬られ、地面に叩きつけられたアビラマは思わずそう言う。
「待たねぇよ」
しかし静止の声も空しく、一蹴されて首を刎ねられてしまった。
「おのれ!」
直後、フィンドールが遠方から水圧の刃を放つ。
コンクリートすら簡単に両断する威力を持つが、当たらなければ意味がない。
水刃を躱されたフィンドールは、直ぐに二発目を放とうとするが……接近され、縦に真っ二つ…とはならなかった。
シオマネキの鋏のようになった右腕の防御が間に合ったのだ。
その代償として、右腕は真っ二つとなったが。
距離を取るフィンドール。
「私の鋏を……そのつもりで」
「
虚閃を放とうとするも間に合わず、追いつかれて今度こそ真っ二つとなった。
そんな部下たちの惨死をバラガンは何もせずに見ていた。
「薄情な親分だな。部下がやられても何もなしか」
そのあんまりな態度に、刀原は思わずそう言う。
「異なことを言うな?死神よ。その部下を全員斬り捨てたのは貴様だろうが」
「それ言われたら何も言えねぇじゃねぇか」
案の定の反論に、苦い顔をする刀原。
しかしそれも一瞬。
刀原は注意深く斬魄刀を正眼に構える。
「ふん。業腹だが、貴様に接近されたら碌なことにならなさそうだ。だが……それならば、接近出来ぬようにすれば良いだけのこと」
バラガンはそう言って戦斧を取り出し、黒い炎に包まれる。
「朽ちろ『
そして現れたのは骸骨の大帝だった。
「『
刀原は先手必勝とばかりに斬撃を放つ。
本来なら防ぐことすら出来ぬ斬撃。
「届かぬわ『
それが届くことなく砕け散る。
それどころか、勢いそのまま刀原の元に迫る。
影響を受けた物体は朽ち果てていく。
「卍解『
刀原は卍解して迎え撃とうとする。
「白刃四ノ太刀『浄化祓刃』」
刀原の両親の呪い、ダンブルドアの呪いを祓った白刃。
切れ味が普通の刀になるが、あらゆる攻撃を防ぐ白刃。
「これならどうだ!」
バラガンの攻撃を呪いのようなものと思った刀原は、浄化の刃を斬撃として放つ。
しかし。
「届かぬと言ったはず」
「な……」
斬撃は砕け散ってしまったのだ。
「我が力は『老い』老いとは不変の決まり事。祓うことなど出来ぬ。斬ること出来ぬ。防ぐことなど出来ぬ」
迫りくる『老い』の力。
「マジかよ!」
刀原は瞬歩で距離を取る。
いや、一時撤退を図る。
だが……。
「逃れることなど出来はせぬ」
バラガンのその言葉の通り、刀原の左腕を『老い』の力が捉えた。
「!?」
指先から肉が、血が、骨が朽ち果てていく。
驚愕に染まる刀原。
しかし、彼もまた護廷の者。
「しゃーねーな」
刀原はあっさりと……自ら己の左腕を斬り落とした。
長らくお待たせいたしました。
いよいよ大詰めだというのに……。
頑張っていきますので、温かい目で見てください。
一部の十刃との戦いは、ほぼ省略させていただきます。
千年血戦後半くらい戦闘力があるので最初から勝ち目ないですし。
でもネームドである1.2.3.4.6ぐらいは……善戦出来るかも?
というか、2を倒す方法が……!
有昭田鉢玄、よく勝てたな。
残念ながら彼はいないので。
ってことで頼むよ刀原君?
「マジ?」
「マジ」
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そしてお待ちしております。
では次回は
明かされる記憶
次回もお楽しみに