求め、焦がれ
過去を悔い
恨まれんとも
敵意を向けられようとも
この想いは永久に
ただひたすらに
僕は貴女を想い続ける。
生徒たちの憩いの場だった中庭も。
教室、寮に行くための廊下や階段も。
どこもかしこも、戦場となった。
出鼻を砕かれたどころか爆砕された死喰い人だったが……最前線を食い破るだけの力は持っていたのだ。
クィディッチ競技場もハグリッドの小屋も焼け落ちた。
戦いは死喰い人どもの有利で進んだ……訳ではなかった。
理由は二つほどある。
一つ目はやはり、刀原が初手で放った黒棺だろう。
あれで
一部の者は逃げ散ってもいた。
二つ目は、現在進行形で行われている死神対破面の決戦の影響だ。
ホグワーツ陣営は、彼らの恐ろしさと容赦のなさを知っていた。
何故とは言わない…言えないが、良く知っていた。
そりゃあ死神達なら…ある程度は巻き込むまいと気にかけてくれるだろう。
だが…
破面の連中にとっては……気に掛ける掛けないの話ですらなく、文字通り『
故に、ホグワーツ陣営は死神対破面との戦いに対して暗黙のルールをごく自然な流れで定めていた。
『
『
ホグワーツ陣営はこれを
だが、一部の
『隊長格を討ち取ることが出来た者は、褒美は望むが儘』という甘い言葉に目が眩んだ一部のアホが、隊長格に向けて吶喊したのだ。
しかし……結果は見えている。
ある者は桜の花弁に切り刻まれ、ある者は氷像となったりした。
他、多くの者が死神と破面の決戦に訳も分からず巻き込まれて死んでいった。
三つ目は……やっぱりホグワーツ陣営が手強かったこと。
ホグワーツ教授陣。
不死鳥の騎士団。
ハリーと刀原から
彼らは魔法や魔法動植物は当然として物理的手段、ほぼ原始的と言っていい手段も使って頑強に抵抗したのだ。
仕掛けられた悪魔の罠に有毒食虫蔓。
投げつけられる水晶玉に魔法薬。
ホグワーツ・カクテルと称したファイヤ・ウイスキーの火炎瓶に、閃光弾替わりの暴れ花火。
様々な色のインク瓶にクソ爆弾。
呪文を駆使しているのか……やたらとスピードがある投石や重い本、ゴブレット、
矢のように飛んできたナイフ、フォーク、羽ペン。
ネットなどのブービートラップ。
木製のテーブルや椅子は『
当然ながら……時にはこれらも呪文で飛ばし、死喰い人にぶつけた。
この様な防衛と妨害の工夫が、死喰い人を苦しめた。
油を床に流して火を放ち、火達磨にした。
木製の橋は、敵集団が3/4付近まで来た所で爆破した。
木製テーブルや椅子の一部にも火薬を仕込み、敵が接近したら爆破した。
なんなら、あちこちに火薬やら地雷やらを仕込み..……タイミングを図って爆破した。
階段には『
窓ガラスも片っ端から硬化呪文で固くしていった。
弾幕をくぐり抜け、窓ガラスを突き破って突入しようとした死喰い人が……カエルのようにぐしゃりと激突し、力なく転落していったことも二度三度ではない。
何よりも……驚くべき事は、これらの
生徒達は絶対に
挑発としてか、死喰い人からは「卑怯者が!一対一で来い!」「
「
「
「
「
「
「
「
「
「
生徒達は「そんなの知らん」と言わんばかりの言葉と共に、呪文で礼儀正しく返答した。
空は、死神と破面の戦場であることも忘れてはならない。
桜の花弁に呑まれたり、雷に打たれたり、氷結したり、虚閃に当たったり、いきなり骨になったり、真っ二つになったりした。
死喰い人が空からの侵入を早々に諦めたのは、極々自然の流れだろう。
だが、それらは数百もいる死喰い人のほんの一部でしかなく……最終的に、ホグワーツ城は敵味方入り乱れての戦場となった。
腕は……まあ、あとで治せるだろうが……。
参ったなぁこりゃ。
自ら斬り落とした左腕の傷口を回道で塞ぎながら、刀原はそう呟いた。
『老い』という力を持つバラガンに、『
ってことは……だ。
まず『
『老いの力』とやらで届かないのは明白だ。
飛ばしているのは、
『
接近しなければいけない都合上、刃が届く前にやられるだろう。
俺の移動速度より老いの力の方が速かったし。
あれは切っ先に触れることで効果を発揮するんだから。
残る戦型は……二と三。
「作戦はまとまったか?まあ、何をしようとも徒労に終わるだけだがな」
少し離れているバラガンが笑いながら言う。
「カタカタうるせぇぞホラーマン。ハロウィンはまだ早いだろ?」
刀原はバラガンの嘲笑にそう返す。
これも通じなかったらいよいよヤバい。
だけど……ま、大丈夫でしょ。
なんせ……。
斬魄刀を鞘に納めた刀原は目を閉じる。
「白刃二ノ太刀『
発動と同時に、刀原とバラガンの周りを白い陣幕と篝火が囲い始める。
様々な音が響いていたのに、今は隔離されたかのように篝火の音しか聞こえなくなる。
バラガンは、自身と刀原がいつの間にか空中ではなく
「これから先は、小細工無しの真っ向勝負だ」
刀原はゆっくりと目を開けた。
哀れにも分霊箱となっていたレイブンクローの髪飾りを破壊したハリーは、スネイプからの呼び出しを受けた。
「校長室で、二人だけで」という話に当然ながらハリーは難色を示す。
ホグワーツ中で戦闘が行われているのに……。
なぜ今なのか。
なぜ二人だけなのか。
ある意味で当然とも言えるハリーの疑問を予知していたスネイプは、こう続けた。
『校長から真相を預かっている。今だからこそ話せる真相を』
これを言われてしまっては……ハリーに拒否は出来なかった。
今はどこもかしこも戦場となっているホグワーツ。
ハリーと手前まで見送ることにしたロンとハーマイオニーは、散発的に遭遇する敵を打ち倒しながら校長室へと向かった。
「来たな……ポッター」
会って早々にそう言ったスネイプは、見るからに顔色が悪かった。
ポタポタと左腕から血を流し、特徴的な黒いローブは切り傷だらけだからだろう。
だが、その瞳は何かを決意した瞳だった。
「疑問に思っていよう。
決意が籠った目をしながらそう言ったスネイプに、ハリーは彼を労わる言葉すら出てこなかった。
スネイプは語り始める……ことはなかった。
「時間がない。これを見れば…全てが分かる」
スネイプはそう言って、こめかみから銀色の糸のようなものを取り出す。
そして……あらかじめ近くに置いておいた憂いの篩に、それを落とした。
ハリーは憂いの篩でスネイプが抱えていた
赤い髪の綺麗な女の子が黒髪の男の子と出会うところ。
それがリリー・エバンズと……スネイプであること。
彼らが座っているコンパートメントに四人の男の子がやって来たところ。
それがジェームズ・ポッターとシリウス、リーマス、ペディグリューであること。
彼らの組み分けの結果……。
始まったジェームズやシリウスとの対立。
心は荒み、リリーに
二人は疎遠となり、リリーはジェームズと結ばれた。
スネイプはホッグズ・ヘッドにて、とある言葉…トレローニーがダンブルドアに言ったあの予言を盗み聞いた。
予言は闇の帝王に関する予言だったので、完全なものではなかったが……当然ながらスネイプは闇の帝王に予言を伝えた。
だがスネイプは伝えたことを後悔した。
予言の対象の一つがポッター家……リリーの家族だったからだ。
闇の帝王に辞めるよう言っても、
故にスネイプは、ダンブルドアの元に駆け込むことにした。
リリーと…ついでに
だが、当然ながらダンブルドアの反応は冷たかった。
それでもダンブルドアは……最終的には交渉のテーブルに着いてくれた。
「彼女らを助けて下さい……お願いします」
「代わりに君は、何をくれる?何をしてくれる?」
ダンブルドアの問いに、スネイプは迷わずこう言った。
「なんなりと」
愛する人を助ける為に、スネイプはダンブルドアに全てを差し出したのだ。
これが、スネイプが二重スパイになった理由であり。
ハリーを辛辣に扱いながらも、陰ながら見守っていた理由だった。
文字通り、スネイプは全てを差し出した。
ダンブルドアがポッター家を
だが、事実と結果は一つだ。
ダンブルドアはスネイプとの約束通り、ポッター家を守る為にあらゆる手を用いた。
だが……
スネイプの決死の行いは水泡に帰したのだ。
「どうして、どうしてです!?貴方は守ると誓った筈だ……」
「二人は
嘆き悲しむスネイプに、ダンブルドアはそう言う。
「守る必要などない!闇の帝王は死んだ!」
「闇の帝王はいつか必ず戻ってくる。その時、彼は……ハリーは危険に晒される」
一瞬、ほんの一瞬だけ「何言ってんだこのジジイ」と思ったスネイプだったが……直後にその認識を改める。
確かにあの闇の帝王がそう簡単に
「備えなければならん。闇の帝王が戻ってきてもいいように……我らはあの子を守らねばならぬ」
あの子を見守ってくれるかの……?
ダンブルドアの言葉にスネイプは暫く沈黙し、やがてゆっくりと頷いた。
ハリー・ポッターが入学してきた。
チヤホヤされて育った
だが、宿敵であり恋敵でもあるジェームズに似ているのは……複雑極まりない。
幸いなことは、眼はリリーによく似ていることか。
スリザリンに来てほしいものだが、あの二人の子供だ。
望みは薄いだろう……。
賢者の石のこともあるが、このまま健やかに……。
「ヴォルデモートの分霊箱は6つだけではない。ゴドリックの谷での一件で、新たにもう一個出来ておる」
「もう一個……まさか、それは」
「左様、ハリーじゃ」
「……では……あの子は、死なねばならぬと……?」
「……そうじゃ。あの子は……死なねばならぬ」
校長室にてダンブルドアから出た言葉に、スネイプは愕然とする。
「か、彼にこの事は?彼ならあの子を殺さずに分霊箱を破壊することも可能なはずです」
スネイプは思考を復旧させた後、そう言った。
ホグワーツにいる者の中で最も規格外な『
ハリーを庇護している彼は、弟分の為とあらば
ホグワーツにおいて『かの者』が持つ『未知数の戦闘力』に対する信頼は確固たるものだが……『味方に厳しくも甘い』ということも、確固たる信頼を得ているのだ。
当然、スネイプにとっても絶対に敵に回したくない者であると同時に……その力量には全幅と言って良い信頼を寄せていた。
だが顔色を取り戻したスネイプとは裏腹に、ダンブルドアの顔色は優れなかった。
「いや彼には言わぬし、力も借りぬつもりじゃ」
そして思案顔でそう言ったダンブルドアに、スネイプは啞然とした。
「な、何故です!?」
「確かに『かの者』なら対処出来るじゃろう……。進んでやってくれるじゃろう。じゃがそれでは駄目なのじゃ。あの子が、ハリーが自ら決断し、受け入れてこそヴォルデモートを倒せるのじゃ」
「で、では…いったい何の為に彼を今まで育てていたのですか?何の為に守ってきたというのですか?屠られる豚を、生贄を育ててきたのですか!?」
スネイプはダンブルドアに問う。
「まさか、あの子に情が移ったのではあるまいな?」
ダンブルドアは厳しい顔で言う。
「あの子に?」
スネイプはそこまで言って杖を取り出す。
「『
出来たのは雌鹿。
すなわち……
「これほどの年月が経ってもか……!?」
「
スネイプの返答に、ダンブルドアは一筋の涙を見せた。
「やはり……リリーと同じ眼をしている」
現実に戻って来たハリーに、スネイプは言った。
「
ーーーーーー
「それはただの自己満足だろうが。この期に及んで、無駄死なんかさせねぇぞ」
「貴方も生きるんです。それこそが贖罪です。死んではなりません」
ーーーーーー
「彼らは、死なせてはくれんらしい」
ーーーーーー
「「死者はあまり出したくない」」
「「尊い犠牲なんて」」
「いらねぇからな」
「いらないですから」
ーーーーーー
「無理に行く必要など無い。今からトーハラに何とかしてもらうことも……出来よう」
スネイプは心配そうに言う。
それを見たハリーは……今までの敵愾心とか、嫌悪感を感じなくなっていた。
その瞳は、シリウスや刀原が時折見せる『慈愛の心』を感じさせるようなものだったから。
「……なんだここは?」
バラガンはほんの少しだけ困惑気味にそう言った。
自分も目の前にいる
だが今は……白い陣幕と篝火に囲われた白洲の上にいる。
この場から離れた方が良い。
半ば本能的にそう判断したバラガンは、空中へと歩を進めようとした。
だが、それも出来ない。
そもそも……霊圧が、無い?
いや、確かにある。
では……。
「出せぬだと?虚閃も、我が『老いの力』すらも……」
『
確かにある筈の力を……放出することが出来ない。
「いったいなんなんだここは!?」
バラガンは眼前にいる刀原を問い詰める。
「神覧戦陣、俺の卍解の能力の一つ。これから行われるのは神がご覧になる御前試合。ここは、死合い場。御前試合に小細工は赦されない。逃亡も、部外者の介入も赦されはしない。故に……お前は俺と『能力無しで戦う』ことになるんだよ」
刀原が発動したもの、それは『
死神も破面も、基本的には『能力』で戦っている。
斬術も体術も非常に優れている隊長格だって斬魄刀の能力を主体としている。
魔法使いだって魔法という名の能力が主体。
ごく一部の例外を除き、皆がそうなのだ。
今まで普通に使えていた能力が封じられたら?
能力に頼るあまり、自身そのものを鍛えていなかった者にとって…刀原の神覧戦陣は致命的と言えるだろう。
「当然ながら弱点はあるぜ?」
刀原はそう嘯く。
「体術や斬術が優れている人や、これらを戦闘の主体にしている人には全くと言っていいほど効果が無い」
これで総隊長の流刃若火を封じたはいいけど…「それがいかがした?」と言わんばかりに『撫斬』や『一骨』をしてきたしな。
そう言うが……相手が
そして何よりも、対象者が戦うのは刀原だ。
元柳斎や卯ノ花によって鍛えられ、本人の相当な努力を重ねてきた『斬術』
瞬神達との鬼ごっこや、盛んに行われた組手で身に着けた『体術』に『歩法』
斬魄刀の能力が使えないのは刀原も同じだが……彼の強さの本質は『
斬魄刀の能力無しなら…もう勝てないなぁ。
京楽や藍染などが嘯くほどの『総合戦闘術』こそが、刀原の神髄なのだ。
この白洲に来た時、刀原と
「わしは虚の王なのだ!これしきのことで!」
骸骨から大柄な老人へと戻りつつあるバラガンは、巨大な両刃の戦斧を振りかぶりながら刀原へ向かう。
老いの力が使えない今、彼が出来るのはそれくらいだった。
「これが正常に発動し、お前を巻き込めた時点で……お前は負けたんだよ」
刀原は迎え撃つ。
「『神斬払い』」
バラガンに死の白刃が迫った。
この筈だった。
だが……常識は変わった。
そんなのは
グリフィンドールとスリザリンの低学年生には『
戦いが終わったあと、これら事実を認識した彼らの常識は
逃れられぬは黒なれど
死の色は白く煌めく
汝は老いなくとも
明日はもう無い。
『神覧戦陣』
刀原の卍解『斬滅白刃ノ太刀』の戦型の一つ
発動と同時に『自他を問わず、体術や剣術のみで戦う状態を強制する』フィールドを発生させる。
巻き込める者は一人のみ。
発動終了条件は
『刀原が解除する』か『刀原を撃破する』
なお、戦ったのはバラガンを除き二名のみ。
日番谷からは『反則だろこんなの!?』
山じいからは『流刃若火を封じたところで、容易にわしを倒せると思うてか?』
という反応だった。
感想、ご意見、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。
では次回は
死への覚悟
次回もお楽しみに
おまけ
えっ?賢者の石を守ろうとクィレルに立ち向かった!?
えっ?秘密の部屋にでバジリスクと戦った!?
ど、どうして事件の渦中に首を突っ込もうとする!?
確かに……ポッターの野郎もリリーも
だが自分の立場を考えろ!
そして守る側の人間のこともな!
あ、シリウス・ブラック!
あ、ルーピンが人狼に……。
ピーター・ペディグリュー!貴様は赦さん!!!
あ、危ないポッターぁあああ!?
あと、何気に思ってるんだけどさ。
ポッターの護衛、いらなくね?
だってあのトーハラが直衛してるんだよ?
この英国で本気の彼に勝てる奴、多分誰もいないよ?
頑張っても押し留めることしか出来なかった呪いを、あっさりと解いたんだぞ?
ダンブルドアが冷静に「駄目じゃな、勝てん。ゲラートと組んで漸く
下手すれば闇の帝王にも勝てるぞ。
訂正、死神としてだったら間違いなく勝てるぞ。
え?魔法使いの目線からの護衛も必要?
いやいや、黒い番犬いるし。
更におまけ
「ところで……『かの者』が良しとしますかな?」
「それが最大の難関じゃ。彼の性格を考えれば、そう簡単には納得してくれんじゃろう?故に黙っておくつもりなのじゃが……」
「あっさりと露呈し、水泡に帰す光景がありありと見えますな」
ところでアルバス、こんな話を聞いたんだが……。
いったい……どういうつもりだ?
納得出来る理由が……あるんだろうなぁ?
そ う だ よ な ?
おい、こっち向け。
なんとか言えや。
えっと、その……じ、実はじゃな、そのぉ……。
あ?
う、その、り、理由としてはじゃな。
聞こえねぇなぁ?大きな声でハッキリと言えよ?
「……やはり、正直に言う方が良いかのう……」
「正直に言ったところで、激怒されるのは確定しているかと」
ふざけんじゃねぇぞアルバス!!!
「それでも内密にするよりかは良さそうじゃが」