現世と常世
此方と彼方
ここは境界
悪逆を犯した貴方は
どちらにも行くことが出来ず
永遠を彷徨う
劫火を受ける資格すら
貴方には無い。
「……誰から預かったの?」
刀原から四角い箱……『蘇りの石』が入った箱を受け取った時、ハリーはそう聞いた。
お守り…的な物?良いことがあるぞ……多分。
不安になったら開けろ。大丈夫だ……多分な。
刀原は確信が無いと……そういう曖昧な表現を使う。
故にハリーは、この箱が
「中身はアルバ、ダンブルドアから提供された物だ。一応中身を確認した時にそうだったからな。本来ならそのまま渡す筈だったんだが……その後和尚に「少し貸してくれんか」って言われたから貸した。そのあと箱付きで渡されたけど……。多分……色々と細工が施されてる」
「えっと……細工って何?誰が施したの?」
アルバ、え?
ダンブルドア先生を名前で呼んでるの?
あと和尚って誰?
刀原の言葉にいくつかの
「知らん。和尚と『かの御方』が施されたと思うぞ?詳細は聞いてない。ってか聞けなかった……あっ」
刀原はここまで言って「やっちまった」って顔をする。
「かの御方?」
そんな初めて見る刀原の表情に、ハリーは怖いもの見たさでそう聞いた。
「聞くな」
「え?」
「聞くな。日本で最も崇拝と尊敬を集める最重要護衛対象者だ。それで察しろ」
刀原の言葉に、ハリーは
あ、これ聞いたら消されるやつかも*1
そう思ったハリーは……それ以上何も聞けず、箱をポケットに仕舞った。
「……じゃ、じゃあ、またな」
「う、うん、また」
刀原とハリーはこうして別れていた。
「本当なら、ここでの解説はアルバス君がやるはずだったんでしょうけど……彼は
確かに死んだハリーは、真っ白い謎の空間にいた。
目線の先には黒髪の女性が佇んでいて、何かぶつぶつと言っている。
「あ、ようこそいらっしゃい。こんな形だけど、会えて嬉しいわ。……ハリー・ジェームズ・ポッター君」
女性はハリーに気づき、くるりと振り向いてニコッと笑う。
「君は素晴らしい。素晴らしく、そして勇敢な子。ここで必ず会えると……私は確信してたわ」
そして褒め称える。
「私はひ……あ~、この名前を言ってもハリー君は知らないでしょうから……解りやすい名前を名乗るわね?」
女性はそう言って、雰囲気を変えた。
恐怖は無い。
だが、ただ圧倒される。
神々しいとは、正にこのことだろうか。
「私は、日ノ本の魔法世界において……『霊王』そう、呼ばれている者よ」
ハリーは思った。
刀原が明かし、そして聞くなと釘を刺した人。
日本魔法界における最重要護衛対象者にして、最も崇拝と尊敬を集める『かの御方』
この人がそうだろうと、直感的に思った。
僕、
そうも思った。
「あー、消さないから……安心してね?」
ハリーの内心を読み取った女性は、
ときどき……自分の思考や行動は、刀原やダンブルドアに筒抜けなのではないかと思っていた。
だが、これほどまでに『見透かされている』と思ったことは無いし……多分、今後も無いだろう。
自分が解りやすいだけなのかもしれないけど。
取り敢えず……ここは何処だろうか?
「ここは何処?そんな顔ね」
自身を『霊王』と呼ばれていると語った女性からニコッと笑いながらそう言われ、ハリーは苦笑いするしかなかった。
「はい、そう思ってます」
「素直にそう言った方が良い。それは賢いし、正しい判断よ。私もその方が楽だしね。とりあえず、歩きながらお話しましょうか」
女性は表情を変えずそう言い、ハリーはそれに付き添う形で歩き始めた。
「此処が何処かについてなんだけど……私も聞こうと思っていたのよね。此処は何処だと思う?」
質問を質問で返されたハリーは、歩きながら冷静に周囲を良く見渡した。
「キングズ・クロス駅……。ロンドンにある、ホグワーツに行くための駅に似てます」
「駅か……。此処の形は来る人によって変わる。現実と非現実双方の側面を併せ持つ。ならここは、貴方が未来に進むための場所。晴れ舞台ね」
ハリーの答えに女性は、何処か納得した様に言った。
「さて、此処は何処か?う~ん、なんて言えば良いかしら?現世と常世の……
そしてハリーの疑問に答えてくれた。
「どうして僕は此処に?どうして貴女は此処に?」
「それは、そうね……。納得しやすい理由を、理解しやすく言えば……貴方は今、夢を見ているからよ」
「夢……ですか?」
「貴方は死の呪文で撃たれた。あれは魂を『直接破壊している』か『分離させている』と私は解釈してるけど……とりあえず、貴方は死んだ。死の前に人は夢を見ることがある。私は夢見の力があるから、貴方と私の夢を繋げた。だからこうしてお話が出来るのよ」
「……すみません、さっぱり解りません」
「でしょうね。別に無理に解らなくて良いのよ?夢でも妄想でも転移でも……好きに解釈して良いわ。どうせ誰も解らないもの」
「そうなんですか?」
「ええ。『未知数の叡智』ですらあんまり理解してないことよ?なんか凄い力が働いたとか、そんな適当な認識で良いのよ」
「じゃあ、適当に認識してます」
「それで良いと思うわ」
ハリーの答えに、女性は満足げに頷いた。
ハリーはこの神々しい女性に関して、一つの仮説を出していた。
それは彼女がトレローニーなんて目じゃないぐらいの『世界で最も優れた高位の予言者』であるというものだった。
「私は予言者では……う~ん、違うとも言い切れないわね。大昔は似たような事を生業にしていたし、今でもその力はあるもの」
ハリーの評価に、女性は嬉しそうにそう言った。
「ああ、ベンチの下にあるものは見なくても良いし……見ても構わないわ」
そして暫く歩いた先にあったベンチに腰掛けた女性は、ハリーにそう言った。
ベンチの下から微かに聞こえる弱弱しい声が気になっていたハリーはゆっくりと覗き、そしてギョッとする。
ヴォルデモートの顔をした瘦せ細った赤ん坊のような存在が、弱々しく苦しそうにしていたからだ。
「こ、これは……」
「貴方に取り付いていたヴォルデモートの魂の残骸。私たちにはどうすることも出来ない『救えぬもの』よ」
ハリーの問いに、女性は冷たくそう言った。
「魂と人間性が汚損する様な言語道断の悪行をした者は、リンボに閉じ込められて何処へ行くことも出来ないの。現世に戻ることも、常世にも進むことも出来ない。これがヴォルデモートと言う愚か者の末路」
今まで感じていた包容さが嘘だったかのように、女性は吐き捨てるように言う。
「救えないのですか?」
「救う方法が無い訳では無いわよ?『良心の呵責』これを受け入れることで解放されるの。でも、それが出来るなら彼は闇の帝王にはなってないだろうし、分霊箱の様な言語道断の代物を七つも作らない。そうでしょう?」
女性の言葉に、ハリーは納得しかなかった。
『
『
『
彼が己の行いを悔い改めるなど、あり得ない。
ヴォルデモートを倒すために多くの時間を割き、理解していたハリーは、それを確信していた。
「魂が欠けた状態を治すには良心の呵責による魂の修正、そしてその苦痛による死が必要よ。でもこれが期待できない以上、あれは私たちでは……いいえ、誰も救えない」
気にする必要はない。
この末路は容易に想像出来たはずなのに……。
彼は無視した。
対価は、必ず支払われなくては。
そうでしょう?
女性の言葉にハリーは頷く。
「両親からのまともな愛が無かった。そして誰からも愛されなかった。彼の過去が可哀そうだとは……思わなくもない。だけど残念なことに……残酷なことに、世の中そんなもの。実際、貴方も似たような境遇だったでしょう?」
「確かにダーズリー家に良い思い出は……無いと言っていいかもしれません」
幼少期から物置倉庫で住み。
雑用の様に扱われ。
両親のことを馬鹿にされた。
ご飯がグレープフルーツの半分だった時もある。
まあ……あれはダドリーのダイエットの為だったが*2。
「ええ、そうでしょうね。でも、だからこそと言ってい良いのかしら?貴方には多くの友人がいる。貴方の為に命を賭けてくれる人いる。導いてくれる人がいる。それは貴方がそう望んだから。貴方がその選択肢を選んだから。そうでしょう?」
「はい。みんな大切な人たちです」
「ダドリー・ダーズリーとも、最後には和解した。そうだったわよね?」
「はい、出来ました」
俺はお前が邪魔だとは思わない。
ダーズリー家を離れる前、ダドリーはこう言った。
そして再会を約束して握手した。
「それが貴方とリドル君との決定的な違い。……彼は望もうとすらしなかった。選択肢を作ろうとしなかった。リドル君が貴方だったら、とっくにダーズリー家はみんな殺されてる。彼に下僕はいても、友人は皆無よ」
「ヴォルデモートには自己愛と孤独しかなかった……」
「……この結末は必然。それに、曲がりなりにも彼が望む永遠を過ごす事が出来るのよ?本望でしょう」
女性はそう言って立ち上がった。
もうこのベンチに用は無いと言わんばかりに。
「あの……僕はどうしたら良いのでしょう?」
暫く歩いたところで、ハリーは女性に尋ねる。
「普通の人なら、このまま
女性はそう言い「自分で選びなさい。まあ、道は一つでしょうけどね」と続けた。
「選べるんですか!?……でもどうやって戻れば?」
「ここは駅なのでしょう?ならそうね……出発することになるんじゃないかしら?行先はちゃんと見なさいね?」
驚いた様子のハリーに、女性は笑いながら言う。
そして歩を止め、ハリーの方を向いた。
「必要な条件は解っているわね?」
「蛇を殺す。そのあとで、本体を打倒する」
「正解よ。加えるならあと一つだけ必要だけど……それはもう動いているから心配いらない。蛇に関しても心配はいらなさそうね」
「……?」
ハリーは女性が言っていることが殆ど解らなかったが、とりあえず気にしないことにした。
「時間よ」
そう女性が言ったとき。
ほんの微かに、自分を呼ぶ声がした気がした。
「忘れないでねハリー君。リドル君を倒せるのは、将平君でもアルバス君でも無く……貴方なの。諦めちゃ駄目よ?まあ、諦めるつもりなんて毛頭ないでしょうけど」
辺りが真っ白に包まれながら真面目な顔で言う女性に、ハリーはしっかりと頷いて返す。
「じゃあ、またね。機会があれば、日本にいらっしゃい。貴方が来たら連れて来るようにって……一兵衛君に伝えておくわ」
女性はそう言って手を振った。
辺りは完全に白に染まり、女性の姿は見えなくなった。
「待って下さい!これだけ、これだけ最後に聞かせてください!僕の企みは成功しましたか!?」
慌ててハリーは、忘れていた大切な事を聞く。
「ああ、あのことね?」
女性の声が、忘れてたと言わんばかりの声で響く。
「成功してるわ。よく頑張ったわね。貴方が勇気を示したからよ」
その言葉にハリーは安堵し、目を瞑った。
揺られている。
意識がはっきりと戻ってきたと何となく認識したハリーは、自分が運ばれていることが解り、うっすらと目を開けた。
ハリーは今、所謂『お姫様抱っこ』で誰かに運ばれながら、ホグワーツ正面にある石橋を渡っている最中だった。
目線が高い。
感じる手の大きさと自然を感じる匂い、その目線の高さから……ハリーは自分がハグリッドに運ばれていることを理解した。
目線の先には特徴的な白玉、もといヴォルデモートが歩いていた。
石橋で事切れた巨人や、動かなくなった石像などを魔法で退かしながら悠然と進んでいる。
勝利の凱旋とでも言うかのように。
ヴォルデモートがやってきた事を察知したのか、ホグワーツ側の者達も出てくる。
「あれ!まさか!」
「嘘よ!そんな!」
ハリーの存在に気付いた何人かの嘆きが聞こえてくる。
ヴォルデモートはそれを聞いて満足げだ。
ハリーはチャンスを伺うことにした。
「ハリー・ポッターは……死んだ!」
ヴォルデモートはそう高らかに宣言し、ハリーの杖を目の前に放り投げた。
英国における最後の砦がいなくなったのだ。
自身が未だに崖っぷちであることを一応自覚してはいるが、それでも一矢報いた気分になっていた。
「ハリー・ポッターは死んだ!ダンブルドアも居ない!貴様らに勝ち目など無い!今こそ俺様に、忠誠を捧げよ!」
破面の連中が居なくなったのは痛打としか言えないが、それ故に特記戦力たる護廷十三隊は大義名分を失う。
それに連中とて疲弊している。
打破は出来ずとも、撤退に追い込むことは出来る*3。
ヴォルデモートがそう思っていると、目の前の群衆から男子が出てくる。
群衆が騒めく。
先程まで死喰い人相手に奮戦していた筈の、ドラコ・マルフォイだったからだ。
「おお、ドラコか。ルシウスは残念だったが…お前は賢い奴だな」
ヴォルデモートは余裕たっぷりにそう言い、ドラコに形だけのハグをする。
「他にもおるか?誰も咎めはせぬ。ハリー・ポッターは死に、ダンブルドアは行方知れず。最早、勝敗は決したのだからな」
緊張と恐怖故にカチコチになったドラコを見送ったヴォルデモートは、そう言う。
尤も、内心では「降参してくれ」と言う思いでいっぱいだった。
護廷十三隊は依然として健在。
ダンブルドアも死んでいる訳では無い。
護廷十三隊がこの場で仕留めようと動くのならば……ダンブルドアが来れば……有利なはずの立場があっさりとひっくり返るかもしれない。
そして残念な事に、その恐れは現実になる。
勝敗は決した。
その思考が、防衛側に少し蔓延した。
だがそれはあっさりと霧散する。
確かにハリーは死んだのかもしれない。
ダンブルドアだって居ない。
でも、まだトーハラがいる。
ササキベもいる。
不死鳥の騎士団も教授陣も健在だ。
しかし、それでも躊躇が芽生える。
それを一蹴する。
「臆すな!引いてはならねぇ!」
刀原が叫ぶ。
「ハリーの犠牲を献身を無駄には出来ません!」
雀部が叫ぶ。
「君たちには」
「貴方たちには」
「俺らがいる!」
「私たちがいます!」
刀原と雀部がそう言って前に出る。
「そうだ!諦めちゃダメだ!戦いはまだ、終わってない!
ネビルが前に出る。
その手にはグリフィンドールの剣があった。
「無駄な足掻きを」
ヴォルデモートは冷たく言い放つ。
「無駄な足掻きでは無いぞ?」
そう言ったのは元柳斎。
今の今まで戦いに参戦していなかった歴戦の死神が、遂に此処で……!
そんな周囲の期待は、いい意味で裏切られる。
「ホグワーツでは、助けを求める者には常に助けが与えられる……。忘れたのかね
その言葉は、元柳斎が発するものでは無かった。
「まさか、貴様は……!」
「久しぶりじゃのうトム。それとも、もうこう呼ぼうかの『ヴォルデモート』と」
元柳斎の顔がダンブルドアへと変わり、服装もいつものローブに変わる。
「例え呪いに伏そうとも、わしはこの学校の長として……皆を、守る義務がある」
ダンブルドアの言葉に生徒や教師が騒めく。
ホグワーツの守護者が戻って来たのだ。
そして、姿を偽っていたのは
「ふん。この程度の戯れも分からない様では……。闇の帝王とやらもたかが知れてるな」
「……まさか、ゲラート・グリンデルバルドか!」
ヴォルデモートの言葉に、敵味方問わず騒めく。
雀部長次郎と思われていたのが、
「私が未だに有名なところを見ると、闇の帝王の悪名も大した事ない様だ」
グリンデルバルドにとってはその騒めきすらも、帰還への喝采に聞こえる様だ。
服装も質の良いスーツに変わり、往年の闇の魔法使いとして佇まいを感じさせる。
「さて、愚かな後輩に引導をくれてやるのが……先の闇の魔法使いとしての私の責務であり、贖罪。覚悟してもらおう、闇の帝王」
グリンデルバルドがダンブルドアの傍に立つ。
そして二人は、ヴォルデモートと向かい合う。
その姿……正に壮観。
刀原が詳細を言わないのは、秘匿事項だからなだけである。
何も特別な行動しなければ消されはしない。
ただし、言いふらす相手を間違えたら…いつの間にか
ちなみに刀原は、グリモールド・プレイスにて似たような単語で一度だけ漏らしているが……それ以上の話などで全員が忘れている。
当たり前だ。
ぷぷぷ、ざまぁ。
残念ながら、そんな甘い連中では無い。
疲弊してようが、片腕無くなってようが…好機である以上、やはり此処で殺す。
結局、ヴォルデモート君は死ぬ。
道を違えた我らは
陣営も、主義も違え
幾年も違う先を見続けた
だが、漸く
我らは並び立ち、同じ先を見る
私はそれを、心の底から願っていたのだ。
ダンブルドアとグリンデルバルドが並び立つ。
この光景を見たいがために、釈放しました。
感想、ご意見、評価、お気に入り登録。
ありがとうございます。
そしてお待ちしております。
では次回は
運命の戦い
次回もお楽しみに
『霊王』
BLEACHの霊王とは根本から異なる霊王。
性別は女性。
世界最高の予言者にして全てを見通す者。
日本魔法界の始祖。
日本人なら誰でも聞いたことがある歴史上の『あの人』
護廷十三隊の隊長は必ず彼女にお目通りし、忠誠の儀を行う。
ハリーや刀原の未来を、彼らが幼少の時から気にかけてきた。
普段は霊王宮にいる。
本人曰く『未来とか今を見ながら退屈に過ごす日々』を過ごしているらしい。
その為、新しい刺激に飢えている。
おまけに妙にフットワークが軽い。
ちなみに、刀原はハリーと霊王が接触していることを知らない。
後に知った時、過去最高に
というか、雀部も日番谷も全員した。
cv.田村ゆかりさん