速い。
麻袋から僅かに漏れる外の光とこの風の抵抗を考えれば何かバイク等で誘拐されている途中なのだろうが・・・
どうしてエンジン音が聞こえないのだ、どうして先程の鉄球を落とした様な音がリズムよく鳴り響くのだ、どうしてそのリズムに合わせて振動が身体を揺らすのだ。
まるでバイクの速度を維持して走っているかのように。
「い、一体何が目的なのだ高身長残念女よ!?」
「はぁ~?目的だって・・?野暮な事聞くじゃねえか。」
「野暮も糞ったれもあるものか!人を一人攫っておいて目的が無い訳でもあるまい!!」
「世界とアタシが必要としてるぜ!!!それ以外に理由が必要か!?」
やだ、なにこの高身長残念女。ちょっとキュンと来そう。
あの夏のせいかこんな時でも何とか頭は回せる、こちらの情報は渡してはいけない。何が世界線の変動に繋がるかは判らない以上絶対にタイムリープマシンに繋がる情報は出してはいけない。
「ひ、必要に決まっているだろうが!言え、目的を!」
「ふっ・・・そいつは言えねえな。ゴルシちゃんがゴルゴル星から来た事は決して言えねえのさ。」
「わけがわからんぞ高身長残念女!!」
駄目だ、やはりコイツもフェイリスと同じくネジが外れているタイプで会話に難がある。
どうしたものかと思って居たらどうやら何か建物に入ったようで、ざわざわと女子が戸惑う様な声が微かに聞こえる。
そりゃこんな陸に打ち上げられたエビフライの様なものが高速移動していれば不可思議と思うだろうが・・・と言うか誰か通報してくれ!頼むから!!
そんな事を考えていると流石に見かねたのか他の人から声がかかる。
「ゴールドシップ、それは?」
「おう、テイオー!これはアタシの獲物だから一口もやらねえぞ!?」
「いや、別に欲しいとは一言も言ってないから・・・」
「た、助けてくれテイオーとやら!今俺が誘拐されている最中だ!!」
「うぇぇ・・・ゴールドシップに捕まったんだね、ご愁傷様。」
パンパン、と手を叩く音が聞こえ、見えずとも手を合わせて拝んでいるような姿が見えてくるようだ。
何なのだ?誘拐して来るのが日常茶飯事みたいな場所なのかここは???
「じゃあな、テイオー!次はターフの上で手押し相撲デスマッチしようぜ!!」
「助けてくれぇええええ~~~・・・・」
陸に打ち上げられたエビフライこと岡部倫太郎と高身長残念女ことゴールドシップはここトレセン学園の廊下の奥へと消え去っていき、悲鳴も一緒に消え去っていくだろう。
後に残されたのはトウカイテイオーただ一人
「・・・ターフの上、か。」
彼女はそう呟き、拳を握る
「良かったねゴールドシップ。トレーナー見つけたんだ。」