正直に告白する。
岡部倫太郎はそこまで運動が出来るわけではない、俗にいう『もやし』と言う部類だ。
そんなもやしがジェットコースターレベルの速度と鉄球を落としたようなドンドンという振動がする乗り物にお米様抱っこ状態で10分以上揺られてみればどうなると思う?
完全にグロッキーに決まっているだろう・・・・サンボで牛丼を食べる前で本当に良かったと思う。
「ゴルゴルゴルーー!!!どけどけー!ゴルシちゃんのお通りだぞーー!!!」
この高身長残念女の名前はどうやら『ゴールドシップ』と言うらしい。
考えたくは無いがこのゴールドシップどうやら俺を担ぎながら走っているようだが・・・・一体どんな体力と脚力をしていれば男一人を抱えて10分以上走り続けるのだろうか、あのミスターブラウンでも不可能ではないか?
SERNの部隊に所属していたミスターブラウンを超える逸材、ミスゴールド。
自衛隊員は60ポンドの荷物を抱え東京マラソンを完走したとも聞く・・・60ポンドが何キロかは判らないが
それと似たような事をしているのだろうこのミスゴールド軍曹は。
せめて重りにするならスーパーハカーのダルにすればもっと負荷をかけれ・・・いや、ダルをお米様抱っこ出来る存在などそれこそスーパーサイヤ人でもない限りは。
「っでぇーい!ゴルシちゃんのエントリーでーい!!」
「おうぶっ!?」
まるで戦車が扉を撃ち抜いたような轟音が響く。
おそらくはこのミスゴールドが何処かの扉を蹴り破ったか蹴り開けたのだろう、轟音にふさわしい振動が身体をつきぬけた事から判る。本当に牛丼を食べてなくて良かった。
「わわっ!ご、ゴールドシップさん!?」
「驚愕っ!!一体どうしたのだ!?事件か!?」
中には女性複数人が居たのだろう。すまない、いきなり来たのがこんな死にかけのエビフライで。
「いぇーい!これでゴルシちゃんもデビューだぞー!!」
ドサリ、と何かソファの様な物に座らされたと思えば遂に永劫の時と思えた麻袋という名の揚げ衣から解放されると・・・
周りには質の良い調度品がや様々な賞状等が飾られ、自分が座ったソファの向かいにはいかにも高級志向の様な一片の汚れも無い机を挟み今自身が座っている物と全く同じソファが置かれている。まるで小学校時代に忍び込んだ校長室のような部屋で校長の居るべき座席には白の帽子を被り、『驚愕』と書かれた幼女が座り、隣には緑の帽子を被った20代の女性が呆然と立っており両者とも鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。
「一体・・・これは、どういう事だ?何故俺は誘拐されたのだ?」
「疑問ッ!それはこちらも同じだ!!君は一体何者で何故ここに来た!?」
「質問を質問で返すのではぬぁあい!!!何を考えている誘拐犯共!!!」
「困惑ッ!誘拐犯とはまさか私達の事か!?」
「この状況でお前達以外に誰が居ると言うのだ!?」
「お二人共、少し落ち着いて落ち着いて・・・・」
幼女と言い争って居ると横から緑帽子が宥める様に口を挟んでくる。
どうやらこの中で唯一会話が通じる相手の様だ。
「えー・・・そうですね、まず状況整理と自己紹介からしましょう・・・ここはトレセン学園、ウマ娘達の教育育生機関となります。」
「私は理事長秘書の駿川たづなと申します。こちらは・・・」
「刮目ッ!!トレセン学園理事長秋川やよいだ!!」
・・・・一体どういうことなのだ、誘拐されたと思ったら学園理事長の前に居る。
先程まで牛丼を食べていただけなのにどうしてこうなっている・・・?
俺は、鳳凰院凶真は流れる様な動作で携帯を取り出す。
「もしもし、俺だ。どうやら機関の本部に連れ去られてしまったようだ・・・ああ、四面楚歌の状況だが問題はない。いざとなればこの鳳凰院凶真に封印された力を開放する。」
「トゥルル、トゥルル。残念だったな鳳凰院凶真・・・この回線は既にGORNによってジャックされている。お前はもう麻袋の鼠だ、どうぞ。」
振り向けば紙コップを右耳と口に当てた糸電話(糸なし)で我が領域に侵入してきたミスゴールド。
「なっ・・・!?このトップシークレットの秘密回線に割り込むだとっ!?どうぞ。」
「我が軍の技術を使えばこの程度造作もない・・・貴様は既に包囲されている。人質を解放し投稿せよ。どうぞ」
「くっ・・・・例えこの鳳凰院凶真が最後の一人となったとしても名誉ある死を選ぼうぞ!死なばもろともぉ!!!どうぞ。」
「やめろテメェ!!!故郷のおっかさんが泣いてるぜ!?後今ならカツ丼もサービスサービスぅ!どうぞ!」
『くぅ~』と、可愛らしい腹の虫の鳴き声が鳳凰院領域を破壊する。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・昼飯を食い損ねてまして。」
何故俺はお昼の牛丼を食べなかったのだろうか、酷く後悔してしまう。
おのれミスゴールド、これもそれも全て貴様のせいだぞミスゴールド!!
引きつった蛙のような苦笑いをしながら二人の方へ振り替えるとまたもや鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。
「・・・・信じられない。」
「感動ッ!よもや彼女・・ゴールドシップのテンションでコミュニケーションが取れる人類が存在したとは!!もしや二人は古い友人か何かか!?」
「へへっ、そうさ。あれはアタシが三歳の頃・・・凶真おじさんが「いえ、誘拐犯と被害者です。」
「昔からよく遊んで貰ってもう父親同然「牛丼を食べる途中に誘拐されて来ました。」
「はぁーー!?なんだよさっきからアタシの言葉に被せやがって!!その口にイトヒキイワシぶちこまれてぇのか!?」
「うるさいわこの高身長残念女!そんな訳の判らない魚ではなく昼飯を食べさせるのだ!!」
「酷いっ・・・!アタシと牛丼とイトヒキイワシのどれが大事なの!?」
「牛丼。」
「テメェッ!!そこは愛を混めて『お前だよゴールドシップ・・・』って言う場面だろどう考えても!?」
「一位に牛丼、二位に仕方なくイトヒキイワシ・・・・・選考外に入れてやろうではないか高身長残念女。」
「へへっ、つまりアタシは評価がつけれない程良いウマ娘ってことだな?」
「何を」
「・・・・あのー?」
「あ、はい。」
緑帽子の女性が不安そうな声を出し、ふと我に返る。
「お名前をお伺いしても?」
「東京電機大学の岡部倫太郎と言います。」
「岡部さんですね・・・で、ゴールドシップさんは何故岡部さんを連れて来られたのですか?」
「おう!アタシのトレーナーを見つけたんでちょっくら袋詰めにしてやったぜ!」
「・・・待て、待つのだ。」
「おいおい、差すなら水じゃなく超神水で頼むぜ?」
「・・・・誰がお前のトレーナーだと?」
「オカリン、テメーは現時刻ヒトサンマルマルを持って名誉ゴルシトレーナーに任命された。」