「八兵衛様。少しお話をお伺いしても宜しいでしょうか」
「構わない」
なんとか五条くんを倒し、気を失ってしまった彼を運んだら、かなり警戒されてしまった。その後、大人しく部屋で待っていたのだが、五条くんと夏油くんの担任の夜峨くんからお伺いを立てられた。
どうやら、五条くんは私の報告をしていなかったらしい。
夏油君もろとも封印処置をされることを警戒していたのだとか。
私を信頼してくれて、報告をしたというわけだ。……そういうことなら、報告はしてくれなくて良かったんだよ? 本来、神は人間に関わらないものなんだから。
口止めをしていればよかったのかと半ば後悔した。
「八兵衛様は、傑に怪我をさせてしまったので治療を行っているとのことですが」
「その件については申し訳なかった。あと数日もすれば、彼も意識を取り戻すだろうと思う」
「それは良かった」
本当に安心した様子で言う。生徒を心から思いやれる彼は良き先生なのであろう。
「治療をした後は、すぐ傑の体から出ていかれるのですか?」
「これは目覚めた夏油くんとも相談してなのだが、こちらで活動するに当たって依代が欲しい。落とした手紙を探さなくてはならないし、九兵衛も探さなくては。帰るのはその後だが、もちろん夏油くんが嫌がれば、治療が終わり次第身体を出ていく」
「手紙?」
「そうだ。恥ずかしながら、手紙を配達中に九兵衛という者に絡まれて落としてしまってな。あれも捕まえねばならん」
「そうですか。韋駄天様……と名乗られたとのことですが。韋駄天様はたくさんおられるのですか?」
「そうだ。流石に神界の郵便配達を1人では出来ないだろう? あっ そのっ 違ってだな。私は神族ではないし、そもそもこの世界は私達の担当する世界ではないのだ! こちらの者がとても困っているのは五条くんより聞いているが、すまぬな、私にはどうにもできぬ」
「あっ いえ。天与呪縛に干渉したのは」
「この世界の神族の愛子に干渉したのはやはりまずかっただろうか? しかし、当人が祝福を嫌がっていたようだからな……。いや、人間に問うても仕方あるまい。何かあれば、私がなんとかするとあの青年に伝えてはもらえないだろうか」
「ええ。連絡が取れるようなら取ってみましょう」
「ありがとう。ああ、そうだ、しばし閉じこもっていてお腹が減っているのだが、食事を貰ってもいいだろうか」
「……まさか、数日間絶食を?」
「部屋にいるように言われたからな」
「限度があるでしょう? 傑の身体なので、大事に扱ってください。ましてや、回復には栄養が必要です。すぐに消化に良いものを用意します」
「すまない」
親切そうな者で良かった。しかし、まずいな。まずいよなぁ。
困った……。
夏油くんの仕事も、肩代わりしないと収入面で夏油君が困るのではないだろうか。
周囲の人間にも仕事のしわ寄せが来るはずだし、何より危険な仕事。しかし、特定の人間に肩入れしすぎるのは……ぐぬぬ。
その後、私は食事をした。
久しぶりの人間界の食事は美味しかった。