韋駄天様は手紙を届けたい(完結)   作:かりん2022

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韋駄天様はヒーロー気質(にも限度がありますよねえええええ!)

「恐らく、本物の神族だ」

 

 夜蛾は頭を抑える。神様が降臨するなど前代未聞だ。

 それが異界の神であれ、天与呪縛に干渉できるなら関係ない。上位者だ。

 お茶を飲む手が震えている。

 

「神様ってああ見えるのか……」

「傑大丈夫なの?」

 

 硝子が心配する。

 

「一応、神様が責任持って返すというのだから大丈夫だろう。数日で目覚めると言っていた。任務だが……」

「俺に勝てるぐらいだから大丈夫だろ。神様だし」

「しかし、神様に任務を押し付けるのは……」

「聞いてみればいいじゃん。あの人そんな事で怒らね―だろ」

「機嫌が良さそうだな、五条」

「あの神様、速度で無限に追いついたんだよ。無限自体もキャンセルできるけど、俺相手にはしないようにしてたし、もうすげーの♪ 多分傑の回復に力を割いてるし、それであれだからすげーよなって」

「とにかく、悟! くれぐれも不敬はするなよ!」

「わかったって」

 

 

 一方その頃、甚爾は戸惑っていた。

 極端に落ちる身体能力。溢れ出る呪力。それは、やろうと思えば切り替えることも出来た。

 鋭い身体能力と、呪力なしの身体へと。

 

 まるで、ゲームのアバターの切り替えだ。

 戦士タイプと、魔法使いタイプの切り替え。

 はっきり言ってチートである。

 相伝ではないが、影の竜を操るかなり強い式神系の術式だった。

 甚爾はしゃがみ込む。馬鹿なことを考えている。馬鹿なことを考えている。

 

 猿でなくなったから何だというのだ。

 あの場所で、受け入れられて嬉しいとでも言うつもりか?

 

 戸惑いながらも、歩き始めた先には、捨てたはずの実家があった。

 

「呪力を得たと? 馬鹿な!」

「相伝じゃないがな」

 

 甚爾が印を組むと。ズルリ、と影の竜が現れる。

 相伝ではないが、相伝にかなり近そうな術式である。

 

 影には当然のように物をしまっておけたし、影で作った鞭でも大剣でも出現させられた。

 控えめに言って強く見栄えが良い。

 甚爾が引き起こしてきた問題はかなり多い。だが。禪院は実力主義だ。

 そうして、会合が行われた。

 

「パパ! 新たな当主候補を選んだやて!? ふざけんなや!」

「新たな当主候補の甚爾だ」

「甚爾くんが当主なら従ったるわ!」

 

 直哉の豪快な手のひらくるりに頭を痛めつつ、直毘人は説明する。

 

「それって、甚爾くんの本来の術式ってこと? 僕にも見せてや!」

 

 甚爾が影の竜を見せると、直哉は大喜びだ。

 もう次期当主甚爾くんで良くない? 甚爾くんで決まりやな!

 はしゃいで喜ぶ直哉にやはり頭痛がしながらも、直毘人は告げる。

 

「甚爾は当主候補にはするが、当主にしたとしても実権は渡さない」

 

 呪具をお馬さんに貢がれたら困るというのが切実な理由だ。

 ただ、お飾りの当主としてはあり得るということだ。

 恵と津美紀を引き取る話も出ており、直毘人としては、恵こそはきちんと教育しようという腹づもりである。勝手すぎる。

 討議は――揉めた。

 

 天与呪縛であることは変わらない。猿が今更何を。

 罵詈雑言を、憎しみの眼を向けられ、やっぱり受け入れられるはずがないか、などと冷笑する。なお、憧れの眼で見てくる直哉は甚爾の視界には入ってない。受け入れられたいなら、まずはそこを眼中に入れてあげたいものである。

 

「韋駄天・八兵衛……」

「呼んだかい? 神に愛されし青年よ」

 

 ひょっこりと顔を出した韋駄天・八兵衛。依代の名は夏油 傑に、よりすぐりの術者達は度肝を抜かれる。

 誰も気配も入ってくる様子も感じ取れなかったのだ。

 

「夏油 傑!?」

「お前、呼ばれれば来るのかよ」

 

 驚きつつも問うと、かなりびっくりな答えが帰ってきた。

 

「私の名において助けを求められればね」

「はあ?」

「助けを求めていたのだろう? 私が来たよ! どんな悪霊も退治して……あ、こちらでは呪霊を祓うというのだっけ?」

 

 しばし沈黙した甚爾は、笑った。

 

「天与呪縛を猿だって言われて困ってるんだよ。なんとかしてくれ、韋駄天・八兵衛サマ」

「――神が与えた施しを猿とは随分な表現だね」

 

 夏油 傑から清浄な空気がざあっと巻き起こり、術師達はすべからく頭を下げた。

 なお、この時点で恵が「選ばれし運命の子」であることを韋駄天・八兵衛がぽろりして、恵の将来は決まった。

 

「それはそうと、八兵衛サマ。「助けて」ほしいんだけどよ」

「なんだい?」

 

 甚爾は、八兵衛を違約金として時の器に売っぱらった。

 

 




信じられないでしょうが、八兵衛様のお人好し度はほぼほぼ原作準拠です。
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