「では、バルドさん。その件よろしくお願いします」
「はい。夜も更けちゃったし、気をつけて。イエローさん」
今商談を進めていたバルドという相手は、城塞都市としてのエ・ランテルにおいて重要となる、食料取引の大部分を掌握している商人だ。
つまるところ都市の中でもかなりの権力者だが、この都市に来て十数日しか経過していないのにそのような商人と取引が出来ているのは、イエローが優れた商人として創造された為だ。
イエローはギルド、ワールドサーチャーズの中で行われた『精神系作用のある魔法や
彼がレベル50程度なのは最も商人系特殊技術に効果のあるビルドがそれだけで成り立つと実験の中で理解された為であり、彼が悪魔という種族なのも種族的な特殊技術として、『支配の呪言』があるからこそだ。だが、そういった特殊技術は異世界人に違和感を持たせない為に偲に禁止されている。
イエローの有用性はこの場合、特殊技術による物ではない。それは創造主カバー・シーオーバーに決められた、彼の性質。偲に言わせてみれば、設定だ。
有り体に言えば、設定において彼は他人に取り入る才を持っているのだ。特殊技術を用いずとも、素の交渉術が巧みである事。それは言葉や舌戦などが重視される場──つまりは人間の社会において、あまりにも優位に働く。
彼が自らに幻術をかけて作った中年の顔も、彼の才覚を表していた。
決して整っている訳ではないが、他人に警戒を与えず、威圧をかけないその顔が、他人との交渉にどんな影響を与えるかは言うまでもないだろう。
偲が、外に出せる者の少ない飛空艇から彼を連れてきたのは、当然と言っていい。
「予定より少し早いですが、明日は冒険者組合に行きましょうか」
その才覚もあるが、飛空艇の支援によってイエローは短期間でかなりの財を作る事が出来た。これであれば、冒険者組合に『依頼』を出す事も出来る。
イエローが商人としてこの街で扱った物には勿論普通の品や、偲が冒険者として入手した武具などもあるが、最初に様々なコネを作る為に売ったのはかなり特殊な品々だ。それは、飛空艇が『略奪』した亜人達のアイテム。
この世界での略奪がどのような物になったかを確かめる為に、飛空艇は情報が広がりにくい──飛空艇の略奪を探知されないような──場所で実験を行っている。その実験で入手できた品々はイエロー達からしてみればゴミも同然だったが、この世界の住民、特に王国の民からすれば珍しい物だったようで、よく売れた。
勿論、亜人のアイテムを多数持っている事に対する疑惑の目も無くは無かったが、イエローと共に冒険者登録を行った人物、つまりはイエローの主がダンジョンにおいて冒険者としての実力を明らかにした事で、それらも無くなってきた。
イエローは主の噂に笑みを浮かべる。異例の速度で銅級から銀級冒険者まで駆け上がった冒険者に関する話は、彼のような商人筋でさえ広まっている。
だからこそ、イエローは命じられた任務に動きやすくなるのだ。任務の一つは偲の御用商人として。そしてもう一つ──
イエローが歩くのは、エ・ランテル内、高級住宅の立ちならぶとある区画。向かっているのはその奥だ。
目当ての、二つの出入り口がある建物を見つける。地上と地下の二つの扉があるその建物に、イエローは迷わず、階段を降り、地下の扉を開けた。
***
とある宿屋の主人が、薬師の店に来ていた。
冒険者御用達の宿屋では、ポーションなど依頼に必要な物を冒険者達に用意するサービスが存在する。そういった
その薬師の家族とある程度知り合いであるその男はいくらか世間話をして、そういえばとその薬師に話そうと思っていた事を思い出す。
少し前に別の宿に鞍替えした、とある冒険者の客の事だ。
その話を聞き、薬師は興味深そうに──見方によれば、興奮しているようにも聞こえる声音で──こう言うのだ。
「へえ……。赤いポーションですか。その冒険者さんがなんて名前の人なのか、教えていただけませんか?」
宿屋の主人は、現在の取引をいくらか割引する事を対価に、その申し出を受ける事となる。
そういえば主人公が戦う相手どっちがいいです?
-
クレマンティーヌ
-
カジット
-
まとめてかかってこい