オーバーロードナイトスター   作:曳航彼

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旅路1

 エ・ランテルから森に沿った東に進む。護衛任務なのにモンスターの出る可能性が高い森に沿って進むのは、モンスターを道中倒していっての報酬狙いだ。

 偲達のチームが強い事を確信しているらしい漆黒の剣による選択である。彼らの視線がウルの方を向いていたのを偲は覚えている。なんというか、ウルの方が有名になってしまってる感があった。

 ブリタに自らの強さはいくらか見せたのだが、やはり庭小人(ノーム)を討伐するだけでは足りないのだろうか。じゃあ、ウルはなぜ二つ名までもらっているのか。ウルに聞いてみても笑って答えてくれないし。

 ウルの方を睨んでみると、ウインクで返された。

 「それにしても、偲のチームでは魔法詠唱者(マジックキャスター)がいないのであるな。ウル氏が拳メインの修行僧(モンク)で、偲が剣士であると」

 「だよなー。偲君、魔法詠唱者じゃないまでも、遠距離攻撃使いはいるべきだぜ。戦士と修行僧(モンク)だけってのはな」

 肩を組んでくるルクルットが、偲にはうっとおしく感じた。どうやら子分みたいに思われているらしい。

 「そうですね……。もっと仲間とかが必要なのかな。できれば魔法詠唱者がいいですけど」

 「まー、でもすぐには見つからんだろうな。魔法詠唱者ってけっこう狭き門らしいぜ? 習得も時間かかるし」

 「そうなんですか? ニニャさんは結構若いけど……なる、生まれながらの異能(タレント)か」

 「そうですよー。僕だって師匠に声をかけられなければ今だって魔法詠唱者になってなかったでしょうから」

 「例えば、僕が魔法詠唱者になるとかは?」

 「かなり難しいんじゃねえか? 魔法詠唱者になるとか年単位だぜ? 世界への接続、だったっけか」

 世界、という言葉に目を開けそうになる。ユグドラシル時代での癖だ。あのゲームでは、世界という名前を持つ物は必ず何かしら特別な意味を持っていた。

 世界級(ワールド)アイテムや、偲が就いているワールドチャンピオンなどだ。ルクルットは魔法を習得する方法、としてその言葉を言っていたようだったが、何か関係があったりするんだろうか。この世界の世界級アイテムとか。

 そういうのを探す意味はあるかもしれない。

 「だから、戦士だとしてもスリングとかは持っておくべきだよ。僕だって持ってるし」

 「なるほど」

 ペテルにそう答えていると、歩いているウルがちらちら馬車の方を向いていた。

 「偲、ウル氏は何をしておられるのだ?」

 「多分、馬車に乗りたがってるんだと思いますよ」

 「疲れているのか? そんな風には見えないけど」

 「いや、あいつの趣味です。あいつ、乗り物に乗るのが好きなんですよ」

 飛空艇の船長だからとそう設定したのだが、こう言ってみると子供みたいだ。

 「そ、そうであるか……」

 ダインさんの声が少し小さくなっていたのも多分、それのせいだった。

 

***

 

 偲が常時発動型(パッシブ)特殊技術(スキル)神の洞察(ゴッドアイ)〉による第六感で森のモンスターを察知してからしばらくして、一行の内一人が口を開いた。

 「来たな」

 ルクルットの言葉を聞き、全員が構えを取る。偲も、だ。偲自身の意思ではなく、気づけば体が勝手に動いているのだ。

 この世界に来てからなのだが、戦士としての特殊技術(スキル)のせいか、こういった戦闘時の動きが補正されている気がする。本能のように戦士的な動きを体が勝手にしてくれるのは楽ではあるし怖くもある。

 そんな事を考えていると、森からモンスターが出てくる。人食い大鬼(オーガ)小鬼(ゴブリン)だ。

 「どう動きますか? 敵を半分ずつやっていくって話でしたが」

 「そうだな……これまで聞いてこなかったけど、偲。参考までに、君はどれくらい強いの?」

 ペテルの質問に偲は少し迷い、嘘をつく必要もないかと本当の事を言う。

 「……ウルより上です」

 「ええ? それって本当か、偲君」

 ルクルットが疑惑の声を上げる。今まで話してきた中で偲が嘘をつく性格ではないのは知っている。だが、万一の事があった。

 「本当ですよ? というか、本人は言ってくれないんですけど、ウルってなんでそんなに噂になってるんですか?」

 「ええっと……」

 漆黒の剣のメンバーが、ウルの方を覗き見て、沈黙する。

 「本当に何をしたんだ……。ま、そうですね。僕らが二人で攻勢に出るので、皆さんはすり抜けたモンスターからンフィーレアを守っててくれません?」

 「それは……」

 「大丈夫ですよ。この剣の数々が見かけ倒しじゃない事を見せてやりますよ」

 言うと、やはり心配なのかペテルが偲の顔をじっと見る。

 彼らからすれば貴族のボンボンが無理な挑戦をしてるように見えるのだろうな、とペテルを見返すと、偲は気づく。

 ペテルの顔には汗が滲んでいた。装備によって疲れや眠気が存在しないから偲は何も感じないだけで、人の身でこれだけの距離を歩けば元の世界の偲ならかなり疲れていただろう。

 「……汗が一切出てないな。分かったよ偲、そうしよう。戦況が悪くなったら逃げてくれ」

 偲と同じ事を考えていたのか、ペテルがそんな事を言ってくれた。

 リーダーの人望は素晴らしい物らしく、それに対し不平の声は上がらない。

 「……じゃあペテル、どう戦う?」

 「こっちに来るモンスターの数がある程度不明瞭だから、いつも通りの手でいこう。偲、そっちは支援魔法はいる?」

 「あ、い──」

 「俺はいらんぜ。その魔力は別に回してくれ」

 「……僕もいらないです」

 偲の狙いとして、今回の戦いで自らの評判を立てたいと考えていた。そんな時で、ウルが支援魔法をいらないと言えば、偲もいらないとしか言えなくなる。

 その空気を見て、ニニャが偲へ心配そうに語りかける。

 「偲、意地張って無理しないで下さいよ」

 

***

 

 ルクルットが弓矢によってモンスター達を引きつけるのに合わせ、偲とウルは群れへ直進する。

 ウルは群れの手前で胸を張って歩いているオーガへと向かう。俊敏なその走りはモンスター達の進行を遅くするのに十分な威圧だった。

 そしてウルは、その勢いそのままにドロップキックをかます。受けたオーガは胸をへこませ、血を吐き、一瞬で絶命した。

 拳での戦いがメインなのではなかったのか、という突っ込みも無いではなかったが、漆黒の剣はあまりの筋力に感嘆の息をこぼす。

 ウルにとっては、せっかく腹を貫かないよう手加減したというのにオーガの吐血が体を汚した事に不満げだったが。

 そして、偲は──と、視線を向けると、漆黒の剣の面々が、今度は絶句した。

 その光景を見て驚くのは第一にそのスピードだ。あまりに速い進行速度で、偲は群れで最後尾のオーガへと向かう。

 だが、漆黒の剣が絶句したのはそれが原因ではない。

 なによりも偲の動きは、流れるようだった。それも、見ている人間に違和感を抱かせない程に。

 現に今偲は、群れのゴブリンの頭上を走っているというのに、ゴブリン達は悲鳴一つあげていない。隣のゴブリンが脳髄を踏み潰され絶命していても、鮮やかな動きはモンスターに気づかれてすらいなかった。

 そして目標のオーガに近づくと、最後のゴブリンを踏み抜いてから、偲は地に足をつく。そのオーガの様子をほとんどの者は見る事ができなかったのだが、ルクルットは見た。偲が地面に降りる寸前、オーガの左胸に切れ込みが入ったのを。

 オーガが倒れ、そしてやっと群れが異常を探知する。

 気づくと、まず先頭のオーガがやられている。二つ目に、何匹かのゴブリンが頭を潰され死んでいた。

 そして。

 「偲君?」

 ルクルットが呟く。仲間が彼を見るより先に、群れから何匹ものゴブリンの首が中空へ跳ねた。

 「あの一瞬で、ゴブリンの首を跳ねたのか……?」

 ダインの言葉に、ルクルットは頷く。

 手前にいるウルの動きも凄まじいが、奥の存在がなしたらしい結果は、全てが常軌を逸していた。

 「なるほど……。ウルさんより強いというのも、分かりますね」

 「つーか、ちょっと待て。群れがこっちに来てないか?」

 後ろにいる存在に怯えたのか、モンスター達の群れはさらに速い速度で進みはじめた。命の危険まで感じているのだ、その加速は尋常ではない。ウルが捌き切れなくなっていた。

 ンフィーレアの乗る馬車を守る為、漆黒の剣は前に、出た。

 彼らはこの日、死に物狂いで戦う者達の恐ろしさを知る。結果として、″漆黒の剣″達の鎧は何箇所かへこんだ。




カジットの人気少な!

そういえば主人公が戦う相手どっちがいいです?

  • クレマンティーヌ
  • カジット
  • まとめてかかってこい
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