ハムスケの体表を裂いた剣を、偲は探知剣と呼んでいた。実際のアイテム名は違うが。
この剣は攻撃によってモンスターの特徴を解析する。だからこそ、偲はその情報を取得した。
「……!」
「い、痛いでござる! というか、痒い? 気持ち悪い? ありとあらゆる不快感が押し寄せてくるでござるよ!」
ブリタがこの剣を禍々しいと形容したのはその性質を察知したからだろうか、と偲はハムスケの悲鳴を聞いて考える。ダメージ耐性や状態異常耐性を確認するために、探知剣はあらゆる属性ダメージとあらゆる状態異常を攻撃に付与するのだ。
「そろそろ、終わっていいころじゃないか? 賢王サマよぉ」
「そ、そうでござるね……。貴殿らは十分な力を持っているでござる。ではさらば!」
「いや、待ってくれ」
偲は、ハムスケを引き止めた。先程の情報を有効活用する為に。
「君の主人に伝えろ──」
偲はンフィーレアが背後にいる事を確認してから、目を見開いてハムスケを凝視する。
「僕はまだ本気を出しちゃいないってね」
「……分かったでござる。では!」
ハムスケは去った。偲も一度目を閉じて、後ろを振り返る。
「とりあえず、勝利! だね。これで薬草も気兼ねなく採れる」
「偲、最後のは……?」
「ハムスケは誰かに飼いならされてたんだ。それだけ」
『探知剣か?』
『うん。ウルには言っておくと、それだけじゃなくて。今の戦いは見られてた』
『あ? どうやって』
『ハムスケの目を通してだよ。気づけなかったのは……。相手が高レベルの
〈
「何してるの?」
頭を下げていた。
「ありがとう森の賢王。貴女のおかげで、村はモンスターの襲撃を受けなかった。……でも、それもこれで終わりだ」
ンフィーレアが礼をしている方向が、ハムスケの去った方向だと偲はやっと思い立った。
偲の声はンフィーレアに届いていなかったらしい。しばしの沈黙の後、ンフィーレアは顔を上げて、何事もなかったかのように口を開いた。
「もう街に戻ろう」
***
依頼主の指示で、漆黒の剣含む一行はエ・ランテルに帰還する。森の賢王が来るまでに十分な薬草が採れていた為に、賢王を引き寄せた偲も罪悪感を感じる必要はなかった。
特にこれといった出来事もなく、街に着く。その頃には依頼の受理から四日も経っていたようだった。
次からは街の外に行くような依頼は受けないでおこう。野営やら食事やらでかなりの精神的疲労に見舞われた偲はそう決意した。
十字路の中心で一行は立ち止まる。
「ここで分かれるんだっけ?」
「そうですね、ルクルットさん。でも、本当にいいんですか? 僕らだけ組合に行っても」
「森の賢王撃退という名誉の持ち主がそう臆病になる事はないのである!」
「そうですかね……?」
依頼通りンフィーレアの家まで薬草を運ぶ漆黒の剣たちと違い、偲とウルは森の賢王との戦闘を組合に報告する事になった。
明日でもいいはずなのに今日報告する理由は、血である。
「本当に森の賢王と戦ったのか知る為に魔法を使うなんて、組合も大げさですね」
「そんな事ないよ偲。いや、そう思えてこそ偲なのかな」
「なんですかそれ……」
「いいか偲、その血を一滴も落とすなよ? 一刻も早く組合に行けよ? 血の鮮度が落ちたら鑑定できないかもしれないからな」
剣に付着した血に魔法をかけ、賢王と本当に戦ったのか鑑定するらしいが、鮮度に関しては多分迷信だと、偲は思っても口にしなかった。だからとりあえず、離れていく馬車の上に手を振る。
「ンフィーレア、また明日」
手を振り返されて、自分でも意外なほど満足感を味わっていた事を、偲は明日知ることになる。
***
「まだ帰っていないようだったぞ」
「あーあ、最悪! やっと見つけたと思ったのに、なんで肝心の
親しき友人の声に答える。
「薬草を取りに行ってるんじゃないか。この店は天然の薬草で有名だ」
「もうー。私外国人だからさー、ここの店がそんなでもあんまし意味ないんだよねー。今日ぐらい私の為にいてくれてもいいのにー」
「そうだな……」
「あ、でもそのタレントは私の為といっても過言じゃないかも、やるじゃん」
親友と雑談を楽しんでいると、鎧の男が部屋に現れた。
「来たぞ。バアさんはいない」
途端、女はおぞましい笑みを浮かべる。
文字数が少ない
そういえば主人公が戦う相手どっちがいいです?
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クレマンティーヌ
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カジット
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まとめてかかってこい