船長の新衣装が可愛い
「…ここまでにしましょうか」
床に倒れている自分に向けてマリンが言う。
やっぱり宝鐘海賊団船長は伊達じゃないな。
立ち上がり、息を整える。
ここは彼女の組織が所有する訓練場だ。
フレアとラミィとの飲み会?のあとフレアに、もし液体金属の戦闘能力をプレゼンする予定があるのなら、マリンに訓練を頼んでみてはどうか、と言われた。
いやいや、マリンは多忙な立場にいるのだから無理だろう、そう思い、ダメ元で訊いてみるとあっさりOKと来た。
どうやら最近、違法な手段でナノマシンを手に入れた犯罪者が多く現れ、そのデータ収集のために付き合ってくれるらしい。
その後マリンは何か言ってた気がしたが聞き間違いだろう。
「凄いですね。本当に運動苦手なんですか?」
「マジックアイテムと液体金属のおかげだよ」
会長からたまに金属と一緒に貰うものだ。
性能が高く、マジでどこから手に入れてくるのか不思議だ。
いつも遠慮しようと尽力しているのだが、そのたびに会長がキレるので折れている。
ドラゴンの怒りなんぞ鎮められるか。
「お疲れ様なのです」
「スゴかった!」
「ありがとう」
エメラルドのような髪をお団子にしたるしあがスポーツドリンクを持って、ぐらが拍手しながら近づいてくる。
マリンと戦闘訓練するとき、必ず2人とも見に来るのだ。
「でもあれはマリンが手加減してくれてるからだよ。それに、見た事ない初見の攻撃ばかり繰り出したから着いていけただけだ」
「それでも凄いのです!マリンはいつもバトルロワイヤルでトップ5に入るのですから、着いていくのだけでも大変なはずなのですよ!」
横でうんうんと頷いているぐら。
「船長もほんとに凄いと思いますよ。それぞれの場面で的確な武器を作り対応しているということは、常に戦況を把握しているということに他なりませんからね。」
「…そうか」
なんか、こんなに褒められると恥ずかしくなってくる。
おいぐら、るしあ、人の顔を見て笑うんじゃない。
「とはいえ、やはり実戦経験が足りてませんね。攻撃される際に最後まで目を逸らさない、武器を振る時の姿勢など、まだまだ直す所はたくさんありますよ〜?」
「…お手柔らかに頼むよ」
かなりキツいだろうなあ。
「じゃあ、そろそろいこ?」
そう、今日はマリンとるしあと一緒に海に行く予定なのだ。
「ザンネン。I wish I could go there with you.《ぐらも一緒に行けたらいいのに》」
日本語交じりで話すぐら。
可愛い。
だが、残念ながら彼女は今日予定があり、遊ぶことはできない。
……なんか研究が詰まってから遊んでばかりだな。
「Sorry,but I have nothing to do in next weekend. I
promise you to play with you at next week.《ごめんな、でも来週末にやらなきゃいけないことはないよ。来週遊ぶって約束する》」
「Yes!ヤクソク!」
素直でいい子だ。
施設を出て、ぐらに別れを告げる。
「そういえばどこの海に行くんだ?」
「あれ?言ってませんでしたっけ?」
聞いてないぞ。
というか、朝から行かないと場所取り出来ないんじゃ――
「今日は宝鐘海賊団の私有地のビーチでやるのですよ。マリンもちゃんと連絡しないとなのです」
「あはは…すみませんね」
「…マジかよ」
もう、色々規模が違いすぎる。
―――――――――――――――――――――――――――――
水着に着替え、ラッシュガードを着て更衣室を出る。
更衣室と海が近い…便利だなぁ(思考放棄)。
なんか近くに海の家みたいなのもあるし、この組織色々ヤバい。
もう考えるのも億劫なので、ボーっとしていると、更衣室からるしあ達が出てきた。
「すみません、待たせちゃいましたね」
「いいよ、そんなに待ってな―――」
言葉が続かなかったのは、彼女たちを見たからだ。
るしあは、いつも着ている青にどこかで見た蝶の模様と同じような柄で、フリルの着いたビキニを着ている。
一方マリンは、髪と同じ色のビキニの上に黒のパーカーを着て、髪をストレートにしていた。
「見てください、るしあ。船長たちを見て言葉が出ないようですね」
「うう…マリン、やっぱり恥ずかしいよぉ」
「何を言うのですかるしあ!夏といえば海、海といえば水着、水着といえばビキニ!これは鉄則ですよ!」
「で、でも…」
「ほら、あなたも黙ってないで何か言ってはどうですか!」
何かって言われても…そんなの…
「…に、似合ってるぞ、2人とも…すごく可愛いと思う…」
「「!」」
綺麗すぎて、こっちが恥ずかしくなってくる。
何でこういう時にキザなセリフが出てこないのだろう。
「ちょ、そんなに顔赤くしないでくださいよ!船長もはずかしくなってくるじゃないですか!」
「え、あ…うぁ…」
るしあはもうトマトと遜色ないほどの顔色になり、言語として成り立った言葉を発していない。
マリンもほんのり耳が赤くなり、よく分からない雰囲気になる。
「あー、海入るか」
責任もってこの流れを断ちます。
―――――――――――――――――――――――――――――
マリンとるしあが戦闘科だったことを完全に忘れていた。
体力が違いすぎてついていけない。
疲れたので、海の家らしき建物に向かう。
「すごい顔してるな小僧。大丈夫か?」
やっぱり運営してたのは海賊員だった。
「だ、大丈夫です…コーラ貰えませんか?」
「はいよ」
氷水に入れられていたコーラの缶を手渡される。
封を切り、中身をグイッと煽る。
薬が元となったとは思えないほどの味わいだ。
何を入れたらこんなに美味い飲み物ができるんだろうか。
これを創った人を天才と言うのだろう。
「なあ、小僧」
コワモテの海賊員に話しかけられる。正直怖い。
「オレらの船長、どうだ?」
「凄い人ですよ、可愛くて、強くて、憧れます」
即答する。
おちゃらけていて、セクハラまがいのことをしてばかりだが、自分の仕事に誇りを持ち、面倒見がいい。
ほんとにすごいと思う。
「船長はな、オレら一味が怪我したことを自分のことのように悲しむし、犯罪者が自殺したりしちまった時はかなり落ち込むんだ」
「…」
「最近のやつらは特にそういうのが多くてな。船長は顔を曇らせてばかりなんだ。でも、あの緑髪の娘とか、白銀聖騎士団の団長さんとか、お前さんとかの話をしてる時の船長の顔は、とびきりすげえんだ。」
そう言い、るしあとマリンの戯れを見る彼。
「ねえ、マリン。一緒に死の?それでずーっと一緒になれるよ」
「ちょ、るしあ!?何でヤンデレ発動してるんですか!?」
「何で逃げるのマリン?るしあとは嫌?他の女がいいの?」
「違うんですよそういうわけではないんですけどまだ私死にたくないんです決して壁みたいだから嫌とかじゃな…るしあ!?無言で近づかないでください、こわいですぅぅ!」
あれは…戯れ、なのか?
「ちょっとぉぉぉ!?見てないで助けてくれませんか!?」
もう少し見てたい。
この光景はてぇてぇ。
「おねがい"!お"ね"か"い"し"ま"す"ぅぅぅ!」
「捕まえた♪マリン、一緒に逝こうね!」
そろそろ限界か。
そう思い、助けに行こうとする。
「船長のこと、支えてくれよ?」
その言葉に応えるように、前に進んだ。
―――――――――――――――――――――――――――――
「し、死ぬかと思いました…」
時間が来てお開きとなり、着替え終わったマリンの最初の言葉である。
「えー、るしあは楽しかったよ?」
「自分も良かったな、マリるしてぇてぇって感じで」
「あれがてぇてぇなんですか!?」
もちろん。
「…次やる時は、もっと優しくお願いしますね」
「分かってるよマリン。あれは冗談」
「ホントに冗談なんですかねぇ…」
「あはは…さて、そろそろ帰るよ」
るしあとは途中まで帰る方向が同じなのだ。
「うん、今日はありがとうマリン。楽しかったよ!」
「自分もだな。凄い良かったよ」
「船長は疲れましたけどね…まあいいでしょう!」
明るく笑うマリン。
やはりマリンには笑顔が似合う。
「それではいつもの行きますよ〜、出航ーーー!!」
「「ヨーソロー!」」
そう言ってマリンと別れた。
本当に楽しかったなあ。
―――――――――――――――――――――――――――――
彼と共に帰り道を歩く。
脳裏に、さっきの会話が思い出される。
『マリンは彼のこと好き?』
『もちろんですよ、るしあもですよね?』
『…うん。でも、譲る気はないよ』
『…るしあ。船長はね、海賊団の船長なんですよ?だから、欲しいお宝を逃すなんてことはしません。だから―』
――絶対に手に入れてみせます。
そう言ったマリンの目は力強くて、るしあなんて簡単に押し返せそうだった。
ああ、るしあは大変だ。こんなに凄い人達と戦わなきゃいけないなんて。
「どうしたるしあ?さっきから黙ってばかりで」
あ、考えるのに集中しすぎちゃった。
「ううん、なんでもないのです」
「そっか」
夕焼けに照らされた彼の笑顔は眩しかった。
こんなにいい笑顔をできるのに、何で―――
「ずっと気になってたんだけど、どうしていつも自分を卑下するのです?」
「急な質問だな」
「あんなに凄いもの作ってたり、マリンと戦えてたりする人の性格を気にならない人なんていないのです」
「あー、そうだな…自分を正確に捉えられるのは他人だけど、自分を1番見てるのは自分だろ?自分がしでかした失敗や情けない面とか、全部見なきゃいけない。俺は自分の負の側面を沢山見たし、これからも沢山見るから嫌いなんだよ」
「あの発明がなければ俺は、るしあ達に追いつく権利すら与えられない弱者だ。出来損ないだ。自分の嫌なところを見る度にそうとしか―「バカ!」―るしあ?」
彼に力強く抱き着く。
いくら何でもこれは許せない。
「ほんとにほんとのバカなのです!どうして皆が…るしあが君を好きなのかわかってないのですか!?」
「あ、いや、あの…ん?好き?」
「るしあはどんな姿の君も好きなのです、カッコいいとか、カッコ悪いとか関係なく。でも、でもぉ…」
思わず泣いてしまう。
でもこれだけは言わないと。
「るしあは…るしあは君が自分を大事にしないところが…大嫌いなのです…」
そのまま彼の胸に顔を埋める。
身長差があるため、顔は見られないだろう。
――すると、頭を撫でられた。
「ごめんな、るしあ。自分の悪い癖がでちまった。俺が悪いから、もう泣き止んでくれないか?」
「…もう、自分のことを悪く言わないのです?」
彼の顔を見上げて言う。
「…今すぐは無理だ…でも、徐々に直す。それで許してくれ」
こういう時は嘘でも肯定すべきだろう。
そんな彼の不器用だけど、素直な気持ちに心が暖まる。
「…じゃあ、その正直さに免じて、アイス買ってくれたら、許してあげるのです」
「そんなことでいいのか?」
「うん、だってるしあ優しいもん」
るしあは自分のことが好きだ。
マリンと、ノエルと、フレアと、彼と、皆と仲良くなれた自分のことが。
だから、るしあが彼の1番になったときに、彼も自分のことを好きになって欲しい。
いや、させてみせる。
そう思い、彼の体から離れて―――
―心火の熱を伝えるために、彼の頬にキスをした。
マリるしてぇてぇ。
次回は温泉、ノエフレの予定…?
書けなかったら違う話かヤンデレです。
その次はお嬢?ししろん?
船長の服装は新衣装を、るしあの水着はツイッターの絵を参考にしました。
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