秀色神彩:秀色は美しい様子、神彩は品格が高いこと
「んん…ぐっ」
眠く、まどろみたかったが痛みで強制的に目覚めさせられる。
なんで自分は寝てるんだ?それになんで痛い?
「あっ!ご主人、起きたんだね!」
目を開けると、隈が濃い
「んん…はっ!ほんとだ、起きてる!」
椅子に座り、頭をベッドに置いて寝ていたフブキも目が覚めたようだ。
ん?なんで自分はベッドにいるんだ…?
「あたし、看護師さんと騎士に伝えてくるね!」
今の声はフレアか?
「ここはどこだ?一体何が…なんで泣いてるんだ?」
「なんでじゃないよぉ!事件に巻き込まれたって言われたから急いで行ったら気を失ってるし!」
「…あー」
思い出した、確かナノマシン使いのやつに……
「腕は炭化してかけてたし、お腹は金属の破片が刺さって血が溢れてたし、心配したんだからね!」
マジかよ、そんなにやられてたのか。
「体組織は治癒魔法によって治り、液体金属も全て回収したけど…怪我が怪我だから、フィードバックは数日残るよ」
フブキの説明で、痛みの理由がわかった。
まだ何か足りない気がする…あ!
「あの鬼の子はどこだ?大丈夫なのか!?」
「はい、彼女は大丈夫ですよ。打ち身による怪我以外は特にないと」
「ご主人のおかげでね」
よかった…ちゃんと守れたんだな…
「あと、ここは白銀聖騎士団に付属している病院です。事件に関わったということで、ここに」
「まあ…そうだよな」
首謀者に鏖殺されたしなぁ。
「ご主人、あとでフレアちゃんにお礼言ってね」
「そうですよー、フレアの精霊術のおかげで一命を取り留めたんですからね」
「…ちなみにフレアに助けられなかったらどうなってます?」
「「死んでたね」」
「ありがとうフレア!!」
まだこの若さで死にたくねえ!
―――――――――――――――――――――――――――――
その後、医師による検査と騎士による事情聴取があった。
体自体は完治しているので、明日には退院してもよいとのこと。
事情聴取では、あやめの言葉との違いがないかの確認が取られた。
会話の最後の方は何言ってるか聴こえなかったと言うと、液体金属に興味があるような旨だったそうだ。
一応液体金属の第一人者かつ唯一無二の人だから、知っている人は知っているらしい。
実際騎士の人にも握手を求められたし。
あと、両親が住んでいたところでもテロ行為があったらしく、暫く来れないらしい。
あくあたちは夜通し面倒を見てくれたそうなので、感謝の意を伝え、家に帰した。
今度何かご馳走するよと言うと、3人揃って手料理が食べたいと言ってくれた。
凄く嬉しいのだが、あくあはいつも食べてないか?と言うと
『ご主人の料理が1番好きだから食べた…あっ』
なんて言って顔を赤くしていた。
愛いやつめ。
とびきりを作ってやろう。
―――――――――――――――――――――――――――――
コンコン、とドアをノックする。
返事が返ってきたので、勢い良くドアを開け、彼の元へ向かう。
結構広い個室なのは、彼が事件の解決にかなり貢献したからだそうだ。
「ラミィか。来てくれてありがグハッ!」
彼に抱き着く、とっても力強く。
「心配しました…ほんとに、ほんとによかったですぅ…」
「痛い痛い痛い!ラミィ、分かったから離してくれ!」
「嫌です!もう絶対離しません!」
「ラミちゃんラミちゃん…彼苦しんでるから」
ししろんからそう言われたので仕方なく離れる。
「ハア…ハア…死ぬかと思った…ん?獅白さんも一緒か」
「うん。1日ぶりだね」
「兎田さんに言っといてくれ、1日は棒に振ることになるって」
「んー、了解」
「…なんか息合ってるね」
思わず不満げな声を漏らしてしまう。
しまった、めんどくさい女と思われ――
「ラミちゃんの推薦により鍛えてるからね〜」
「ああ。こんな人を紹介してくれたラミィには感謝しかないよ」
彼は爽やかな笑顔を見せる。
「そうやって言ってさ、ラミィのことをコネとしか見てないんでしょ?ラミィのこと好きじゃないんでしょ?」
あまりにも恥ずかしくて、思ってもないことを言ってしまう。
これでは余計に面倒だと思われてしまう。
ああ…なんでこんなことを…
「あー、ラミちゃん君が無理したって聞いて凄いご機嫌ナナメなんだよ。だからちょっと…ね」
「分かってる、いつものだろ?」
「いつものって何よ!ラミィが君のことどれだ――」
―言い切る前に、頭に手を置かれた。
「俺には、ラミィがどれだけ心配してくれたかは分からない。どんな気持ちで居たかもな。でも、俺の事を思ってくれたことはしっかり伝わってるよ。それに、ラミィのことをコネだの何だの思うわけないだろ。友達なんだし、好きに決まってる」
「…ズルいよ」
いつもそうだ。
思わせぶりなこと言って、どこか線引きをしたような態度で。
ラミィだけを見てくれたら、どれだけ…
「ん?その紙は何?色々書いてあるけど」
ししろんがそう話しかける。
「ああ、これか?今まで液体金属を巾着袋のマジックアイテムに入れてたからな。エネルギー供給も兼ねて収納できる、ビーム兵器を使えるようになるコアを「ふん!」ラミィィィィィ!?」
気づいたらその紙を破っていた。
「まだ戦う気なの?それなら、ラミィの屍を越えていけーー!」
「あっ、あのなラミィ…」
「もう傷ついて欲しくないの!戦って欲しくもない!ラミィが、ラミィが守るから…」
「えっと…それ、生活費稼ぎの1つなの…」
「え?」
「今のところ液体金属の研究と宝鐘海賊団からの報酬でお金稼いでるから、親の仕送りもあるけ―」
「うわあああん、ごめんなさぁぁぁい!」
恥ずかしい!恥ずかしい!
あまりにも恥ずかしいので病室から急いで去った。
ほんとにごめんなさい!
「…すまん、あと頼むわ獅白さん」
「おっけー。任せといて」
―――――――――――――――――――――――――――――
その後、天音さんと桐生会長が来た。
会長の所以?桐生会やってるからだよ。
レア金属手に入れられる組織のトップなドラゴンというパワーワード、頭おかしくなりそうだ。
ちなみに会長にはボロクソに言われた。
実力を弁えろだの、連絡をしろだの、もっと上手く扱えだの…全て正論だわ。
でも最後の会話が気になったなぁ。
『ふふっ、ココはこう言ってるけどね、内容聞いた時ニヤけてたんだよ?「私が見立てただけはある」とか照れ隠ししてたけど本当は…おっと危ない、じゃあね〜!』
『おいっ、かなたテメッ…逃げんなァァァ!』
天音さんは何が言いたかったのだろう…
まあいつか教えてくれるだろう。
暇なのでラミィが作ってくれた溶けにくい白鳥の氷細工を眺める。
よく見ると中にも白鳥のカットが入っており綺麗だ。
なんて眺めていると、ドアが半開きになっていて、そこからあやめの顔が出ているのが見えた。
もしかして、気付くまでずっとそうしていたのか?
「あやめ?入ってきてよ、そんな所にいないでさ」
「…しつれいします」
なんだ?随分と元気がないが…
「…その、体の様子はどうだ?」
「まだフィードバックが残っているけど、怪我自体は治ったよ」
「そうか…ほんとに、ほんとうに…」
そう言って顔を下に向けてしまった。
ヤバい、会話が続かねえ…こういう時どうすれば…
すると、そろそろとあやめがこちらに近づいてきた。
何も言わないで接近されるのは正直こわ…ん?
もしかして、泣いてるのか?
でも、なんで…
「ごめんなさい、余のせいで…余が勝手に突っ込んだから…あんなに酷い怪我を…」
「気にしてないから大丈夫だよ、ほら?傷も残ってないし、多少痛いだけさ」
「そっ、それでも!」
あやめがガバッと顔を上げる。
散った涙が冷ややかに煌めいた。
「余は…1人じゃあいつを止められなかった…それどころか、余計なことを…しでかしちゃって…」
そう言って泣き出してしまった。
なーに言ってんだ本当に。
「じゃあ、あいつに会うまで一緒に頑張ってくれたのは誰だ?」
「それは…でも!余がいなかったら、あいつに会うことも無かった、怪我することも!」
「そうだな。あやめがいなければ首謀者には会えなかっただろう。でも同時に、自分は多分死んでたぞ?」
「…え?」
「最初に出会った敵にはジリ貧で勝てただろうけど、他の敵に見つかったらあっさり殺されてたと思う。だから、あやめは俺の命を救ったんだ」
「でっ、でも、結局致命傷を負うことになったし、それは結果論でしょ!」
「ああ、結果論だ。でも事実でもある。だからまあ、そんなに気にしないでくれよ。自分は今、こうして生きているんだし」
それでもあやめの顔は不服そうだ。
屁理屈に聞こえもするしなぁ…
「じゃあ、痛みも取れたら今度、二刀流教えてくれよ。もう死ぬような思いをしなくてもいいように、さ。んでもっていつか、あいつを一緒にぶっ飛ばそうぜ」
「…それは、約束か?」
「そうだな、約束しよう。絶対に破らないって」
「ああ、わかった余。余の剣術、みっちり叩き込むからな!」
「楽しみにしてる」
―――――――――――――――――――――――――――――
『帰り道を無くした風景 夕焼け小焼け逆さまに
下校時間他人の影踏み 気付いたら夜明け1人きり
1人きりを終わらせないって 泣いていいよ今だけ―――』
「何を聞いているのです?」
「うわっ!?ビックリした!」
「せっかく船長たちがお見舞いに来たのに、音楽に夢中になってるから、るしあが妬いちゃったんですよ」
「ちょっ!?マリン!そんなことは別に…」
イヤホンで音楽を聞いていたら、突然イヤホンを抜かれ、るしあとマリンに話しかけられた。
「るしあもマリンもよく来てくれたな。時間は大丈夫なのか?」
「るしあは大丈夫なのです、ちゃんとレポートも書き終わったし」
「船長も、一味の皆が仕事を引き継いでくれたので長く居れますよ〜」
驚いた、まさかマリンまで来てくれるとは。
「マリンに関しては本当に大丈夫か?テロリストが動いたってのに」
「いやー、それが、彼ら魔界から転移してやってきたみたいなので、海担当の船長たちは出る幕がないんだワ」
なるほど、てことはノエルは来れないだろうな。
多少残念ではあるけど、立場が立場だ、仕方がない。
「あ、そうそう。ぐらちゃんは用事があって来れないそうなので、お手紙を渡すように言われました」
そう言われ渡された封筒にはデフォルメされたサメの絵がプリントされており、口は可愛いサメのシールでとめられていた。
あとで大切に読もう。
るしあたちと会話に花を咲かせていると、看護師の人がご飯を持って来てくれた。
品数も豊富で、中々に美味しそう、なんだが…
「どうしてたんですか?遠慮しなくてもいいですよ、食べながら話しましょうよ」
「そうだよ、何ならるしあが食べさせてあげようか?」
「…頼んでもいいか?」
「「え?」」
るしあは冗談半分で言ったのだろうが、こっちは本気だ。
先程イヤホンを着けようと腕を上げただけでもかなり痛かった。
加えて、力加減も痛みによって掻き乱されれるので、食器を持つのもしんどいし、ゆっくりと味わうこともできない。
その辺も考慮してスプーンで食べられる品だったり、何かあればとのことで呼び出しのボタンだったりを貰っていた。
さっきの設計図は、ファンネル的なやつの精密な操作の練習もかねて液体金属のみで書いていたが。
「ほぉ〜、随分と殊勝な心がけじゃないですか。素直にるしあに従うなんて、船長驚きました」
「言い出しっぺのるしあもだけどね…はい、あーん」
「んぐっ…うん、美味いな。マリンに見られてるってのがちょっと恥ずかしいが」
「え〜、こんなに可愛い船長が一緒にいるのが嫌なんですか〜?」
「なんかキツいな、ババア」
「何でだよ!まだそんなに歳食ってねえだろうがよ!船長はまだ20代だからな!」
「うるさいよマリン、ここは病院だよ?」
でもそうやって考えると20代で組織のトップとかすげぇな。
こういうスペックの高さがマリンの凄いところだ。
「というか、前もるしあにこんなことされたな…」
「お出かけの時のやつ?」
「へぇー、以前もこういう経験あったんですね。るしあ、ぜひ船長にも――」
「なんかご飯食べさせるのって楽しいんだよね。親鳥の気持ちになれて」
「ちょっと、無視すんなよぉぉ!」
「はいはい、マリンが風邪でもひいたらやってあげる」
「よし!…というか、船長にもやらせてくれませんか?本当に楽しそうなので」
「やだ。この前あーんしてもらったんでしょ?これは譲らないよ」
「ちょっと待ってください。なんでるしあがそれを…いや、そんなことより、スプーンよこせよ!」
「やだぁ!」
「船長も餌付けしてぇんだよ!」
なんつーことで言い争いしてんだこの2人。
「まあ、るしあ。少しぐらいいいんじゃないか?減るもんじゃないし」
「ダメだよ!るしあがあげられる愛情が減っちゃうじゃん!」
「るしあ。いい女ってのはね、船長みたいに余裕がある人のことを言うんだワ。こんな事でカリカリしてたらいい女から遠ざかっちゃうぞ?」
「年齢ネタの時余裕無かったじゃん」
「君は船長の味方なのか敵なのかどっちなんですか!?」
結局、2人で仲良くご飯を与えてくれました。
―――――――――――――――――――――――――――――
やっべえ、お仕事してたら受付時間ギリギリになっちまった。
団員さんが団長ならある程度は時間オーバーしても大丈夫ですよ〜なんて優しいことを言ってくれたので、その気遣いに甘えさせてもらう。
焦る気持ちをが伝わらぬよう、控えめにノックする。
中から「ふぁい?」と呂律の回ってない言葉が返ってきた。
寝てたのかな、申し訳ない気持ちが溢れてくる。
「こんマッスル〜、お邪魔します」
ちょっぴり小声で言う。
「んぁ…あ、ノエル!来てくれたのか」
眠たげに目を擦っていたが、団長を見た途端に嬉しそうな顔をしてくれた。
可愛いなぁ。
「ごめん、遅くなっちゃって。寝てた?」
「皆来てくれてひと段落したからちょっと昼寝をね。晩ご飯まで時間あるし」
元気そうに話す彼に傷はない。
「本当にごめんね、騎士団動かすの遅くて。そのせいで首謀者を民間人に対応させてしまったし…」
「いいよ別に。同時多発テロだろ?何処に何人送るかとか色々考えないといけないことも多かったろうし」
確かにそうだ、各地で起きたので対応に手こずった。
それは事実であるし、結果的に彼に危険なことをさせてしまったのも事実だ。
騎士とは、人を守る存在であるのに、そのトップの団長が、1番大事な人を守れないで…
いや、今はこんなこと考えてる場合じゃない。
彼と一緒にいるのだ、マイナスな面を見せたくない。
「テロリストと戦って、怖くなかった?」
「…正直、すげー怖かった。下っぱ的なやつ2人に自分1人じゃ勝てるかどうか怪しかったし、それ以前に周りがたくさん燃えてて、それが恐怖を煽って―ッ!?」
彼の頭を胸に抱いて、撫でる。
あくまでも彼は一般人。
人同士の戦いとは無縁の生活を送っていたのだ。
そんな彼が、勇気を出してくれたから、テロが早く落ち着いた。
もちろん、命の危機に陥ったことに思うところはあるけど、それは結局ちゃんと動けなかった団長たちの責任だし。
「ノ、ノエル!その、これは」
「あんときたくさん触ったのに、今更?」
おちょくるようなトーンで言うと、彼の耳が赤くなった。
今この手に感じる生命の温かみ。
これを守っていけるように、ずっと感じていられるように――
「団長頑張るから、君もそばにいてね?」
そう囁いて、力強く抱き締めた。
夏休みなのに忙しいので失踪します
設定集を出さないとしたら次の投稿日は不明です
作者のリアルの都合がやばくなってきたので亀更新でも許してください。
感想、リクエスト、お待ちしております
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