学生生活終わっちまう…(ダメな意味で)終わっちまうよ…
「退院祝い?2日しか入院してないのにか?」
『ウチお見舞いに行けなかったからさー、その代わりだと思って、ね?』
フィードバックが無くなり退院した次の日にミオに電話された。
どうやら彼女も別の場所でのゴタゴタに巻き込まれたようだ。
「やってくれることはとても嬉しいのだが、人数はどうするんだ?2人だけはなんか寂しいぞ」
『ウチとしてはそれでもいいんだけ…ゴホン、フブキとあやめが来る予定だよ。あやめとはこの前知り合ったって聞いたし、大丈夫だよね?』
「うん、ありがとう。いつにしてくれるんだ?」
『そっちの予定が良ければ――』
その後、日付と場所が告げられたが問題などあるはずが無いので受け入れた。
いつもなら無理な時間であるが、最近は液体金属に関する研究も止めているし、日程に余裕がある。
最近異性の家に上がるのが増えていることに少し恐怖を感じるが、やっぱりそれでも楽しみに思えてくるのであった。
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「それで、アーマーの元デザは決めたの?」
問うてきたのは白い私服姿のフブキだ。
わざわざ自分の家まで訪ねてきて一緒に行ってくれている。
「あー、まだ決まってないんだよね。ビーム兵器関連がまだまだ燃費悪くて使えないし」
参考のため色々なアニメや漫画、小説を見たが、中々ビビッと来てくれるものがない。
今度、閃光の名を冠する映画を見る予定だ。
「うーん、白上的に良さそうなのを挙げたつもりなんですけどね〜」
「すまんな、武器のアイデアには凄い助かっているんだが…」
「いえいえ、白上も自分のオススメを紹介できて満足してるんで、大丈夫だよ♪」
気を使ってくれたのだろうか、優しいな。
彼女に薦められた作品はどれも心に残るものばかりであり、そこに出てくる設定や機体、登場人物が深く面白いのだが…
「この前のやつはどう?面白かった?」
「えっと、ガンダムUCだっけ?面白かったぞ、特に主人公の性格が」
どれだけ絶望的な状況に追い込まれても、それでも人の可能性を信じて戦う姿は眩くて、かっこいい。
「あれに出てきたユニコーンとかいいと思うよ。『可能性の獣』って言われてたし、まだまだ発展できるその液体金属にもピッタリだよ!」
「…なるほどな。でも…」
ユニコーンガンダムというのは、形態変化を持つ機体で、リミッターを解除したときにその名の意味を体現する。
かつて謳われた『白い悪魔』のような性能を持っていたが、主人公の諦めない性格により、可能性の光で宇宙を照らした。
「ん?どうしました?」
「あっああ、何でもない。だが、あれは自分に似合わないよ」
「ええー、そうかなぁ。白上のイメージカラーの白なのに…」
可愛らしく顔を傾げ耳をピクピク動かすフブキに申し訳なく思うが、やはり俺には無理だ。
――俺に、
だって、俺の周りはもっと―――
「まあ、いっか!今度のやつに、何かヒントがあるといいね!」
「…ああ、そうだな」
陰りを焦がす、純情な瞳で笑うフブキに少し見惚れながら目的地まで向かった。
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「お邪魔します」
「ミオ、入るよ〜」
着いたらインターホンなしで入ってきてと言っていたのでそのまま家に上がる。
「はーい、リビングまで来てね〜」
遠くからミオの声が聞こえてきた。
なるほど、料理中に来るだろうと読んでいたのか。
もし不審者が来たらどうするつもり…いや、戦闘科にいる狼の獣人から逃げ切れるやつが不法侵入などしないか。
スリッパが2人分用意されていたのでそれを履いて向かう。
「おー、いらっしゃ〜い」
「今日はありがと…な?」
「いやなんで疑問形なのさ」
いやいやいや、鬼まで一緒に料理してるとは思わなかったよ。
フード付きの服に、ピンク色のエプロンを着ているミオの隣にいたのは――
「その…恥ずかしいからそんなに見ないでくれ…」
ポニーテール姿に水色のエプロン、真っ赤な顔で彩り鮮やかな百鬼あやめだ。
「あやめちゃんも料理してたの!?こりゃーなおさら楽しみだなぁ!」
「フブキがそんなに喜んでどうするのさ」
朗らかに笑う肉食獣たちと対照的に黙っているあやめ。
これは自分が何か言わないといけないタイプか。
「あー、似合ってるぞ?初めて会った時とはまた違った印象で、こう、グッとくる感じだ」
「そ、それは、良かった余…」
「あらら〜?あやめもしかして照れてるの〜?」
ミオの声を皮切りにキッチン組が盛り上がったので、そのままにしておく。
そんな目で見てきても助けられないぞあやめ。
「あっ、そーだ!ねえねえ、しっぽの毛繕いしてくれない?」
フブキは何を言ってるんだ?
「近くに新聞紙あると思うから、それ敷いてからやってね〜。ブラシはすぐそこね」
なんで誰も止めないの?
自分がおかしいだけなの?
「はーい、えっと…よし!では、お願いします!」
「いやいや待て待て、やったことないし、なんでそんなに準備がいいんだ?」
「ミオの家には何回も泊まったことあるので。それに、前あなたに頭撫でられた時気持ちよかったんですよね〜、だから、ね?」
「えぇ〜…」
特に意識してやったことはないんだが…
ただ、褒められたことは間違いないだろうし、フブキにもかなりお世話になったからなぁ…
「わかった、ブラシちょうだい」
「わーい!はい、どうぞ」
ブラシと先が黒いしっぽを差し出された。
うーむ、引き受けたはいいが何をすればよいのだろうか。
とりあえず、手で撫でてみる。
「…っ」
なめらかでフワフワな感触、こういうのを絹みたいと言うのだろう。
いつまでも触っていたくなるが、我慢我慢。
毛の向きに沿って、ゆっくり優しくブラッシング。
「…ぁ、ぅん…」
抜け毛が全くないし、日頃からしっかりと手入れしているのだろう。
何故自分に頼んだのだろうか?
まあせっかく頼まれたのだ、できる限り尽くそう。
「はぁ…んっ…んぁ…あっ」
「あーフブキ?しっぽが荒ぶっているが大丈夫か?」
「だ、大丈夫…続けて?」
なんか息荒いし、顔を紅潮させていたがほんとに大丈夫なのか。
だがこの手触りは病みつきになる、もう少しだけやらせてもらおう。
「ふぅ…ぁっ…あん…んん…」
「ねえ、ミオちゃん…」
「うん、あれは…センシティブ、だね」
そんな2人の会話があったことに、気づくことはなかった。
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暫くしっぽをいじり、何故か息を荒くしていたフブキを落ち着かせていると、料理が盛り付けられた皿を2人が運んできた。
なんか、家事を押し付けたような気分がして心が痛い。
「はーい、お待ち遠様〜」
そう言って並べられたのは、空腹な人ならみな心奪われる沢山の料理だ。
豚の角煮、麻婆豆腐、しゅうまい…中華料理か。
「あ、ミオ、この前持ってきたアレは?」
「ここにちゃんとあるよ」
ミオの手には酒瓶が。
「あれは?」
「白上が準備した日本酒だよ。他にも色んなお酒を用意して、今日のためにミオに置いてもらってたの」
お酒か…フブキの気遣いはとても嬉しいのだが…
「どうしたの?顔しかめちゃって」
「以前、ラミィやフレアと呑んだ時、記憶が無くなるまで呑んだらしくてな…フレアの転移魔法で家まで送ってもらったらしいんだ」
あん時はやばかった。
最後の方は何言ったか覚えてないし、翌日は何故かラミィが家に凸ってくるし、わけがわからん。
「…キミは、もっと女の子の扱いを知るべきだと思うなあ」
そんなことを言ったミオの顔はどこか不満げで。
「むぅ…」
なんでフブキも顔を膨らませてるんだよ、笑ってくれ。
「なんか胸がチリチリするが…その不安に関しては安心していい余。あくあちゃんには事前に伝えてあるから、ここで好きなだけ酔い潰れてくれ」
あやめが携帯をいじり、メールアプリの画面を見せてきた。
そこには『ねえええええ!あてぃしのご主人盗らないで!!!』と書いてあるが…許可なのか?
「そうそう。明日も休みだし、家に泊まっても問題ないだろうからね」
「いや、だが「「「泊まるよね?」」」…はい」
すごい圧を感じた。
逆らわない方が身のためだろう。
「じゃ、冷めたらよくないし、食べよっか!」
「そうだね、では!」
「「「「いただきます」」」」
日本酒が注がれた小さいコップを受け取り、1口飲む。
酸味が口の中に広がり、芳醇な香りが鼻を抜ける。
後からゆっくりと旨味が追いかけてきた。
「う〜ん!この唐揚げはミオのやつだよね?美味しい!」
「フブキが欲しがってるだろうと思ってね、沢山あるからどんどん食べてね」
「やったーーー!」
肉食獣たちが盛り上がっている横で、麻婆豆腐を小皿に分ける。
唐揚げも美味そうだが、こっちもすごい気になる。
日本酒にも合いそうだ。
「あっ、待って!」
「うま!いいなこれ、美味しい!」
ミンチの肉からの旨みと、唐辛子、山椒などの香辛料からの辛みが交互に顔を出す。
豆腐にもしっかり味が染みており最高だ。
ネギの食感と風味も追加されてこれまた良い。
「〜っ!」
何故か目の前にはリンゴ色の鬼が。
悶絶してるし、何か自分がやらかしたか?
「その麻婆豆腐を作ったのはあやめなんだよ〜。随分張り切って作ってたし、褒めてもらえ―「言わなくていいからっ!」―恥ずかしがり屋さんだなあ」
あやめはヤケになったのか酒をグイッと飲んだ。
あーあー、そんなペースで飲むと――
―――――――――――――――――――――――――――――
布団にあやめを寝かせる。
案の定、酔い潰れてしまった。
幸い、脱いだり吐いたりといった迷惑をかけることなくスヤスヤと夢へ誘われた。
それよりも――
「フブキもぐっすりだね〜」
「…何でだろうな」
何故か、フブキまでもどんどん飲んでいったのだ。
あやめの料理を褒めたあたりからおかしくなってしまった。
「…それを本気で言ってるところが罪だと思うよ」
「?」
どういう意味だろうか。
「まあそれはそれとして、退院おめでとう!」
「あーうん、ありがとう」
「なにその微妙な反応」
「前も言ったけど2日しか入院してないからなぁ」
「…心は?」
「は?」
何を言ってるんだ?
そりゃあ、怖かったのは嘘ではないが怪我が原因で入院してたのに。
「心は大丈夫なのかって聞いてるんだけど」
「大丈夫に決まってるよ。戦闘訓練も積んでたんだし、まあ最後はヘマったけど問題ないない」
少しおちゃらけて言ったが、ミオはしかめっ面なままだ。
「じゃあ、なんで今日来れたの?」
「え?そりゃあ―」
答えようとして、気付いた。
ミオが言いたいこと、それは――
「思い出しちゃうから、でしょ?」
死の恐怖に耐えられたか?
―――――――――――――――――――――――――――――
どうやら当たっているらしい。
すぐに顔に出るあたり、嘘をつかない方が良いのではと思ってしまう。
ほんと、どこか抜けてて子供っぽいなあ。
訓練と、実戦は違う。
死がすぐそこまで近づいてくることへの恐怖や、普段通りの実力を発揮できない弊害がある。
また、環境にも左右される。
阿鼻叫喚の中で平常心を保つのは至難の業だ。
「慣れ」ていない人間には決してできない。
そう、「慣れ」だ。
いくら訓練していようと、知識として分かっていようと、経験しないと得られない「慣れ」。
――一般人に、ある訳がない。
戦闘科のように日頃戦い慣れている訳でもなく、ましてや今回は街中でのテロだ。
現場はパニック状態で、悲鳴と物が焼ける音をBGMに戦ったのだろうに。
病院での2日ごときで、心が癒される訳が無い。
「もー、ほんとに隠し事下手だよね」
「…すまん」
「まあ、フブキたちは気付いてないだろうけど」
これは半分嘘だ。
違和感はあるが、確証が持てないだけだろう。
「ん」
両手を広げる。
これは合図だ。
「いや、大丈夫だから」
「ウチかしたいんだから、強制だよ」
そう言うと、渋々ながらも抱き着いてくれた。
顔が赤いのはお酒のせいではないだろう。
「まーったく、強がりなんだから」
「…全部お見通しか」
「当たり前だよ。ウチの観察眼、なめないで欲しいなあ」
こういう、皆に心配をかけないように強がる姿は好きじゃない。
彼はどこか、自分を下げて蔑ろにしてる節がある。
「キミはもっと、色んな人に愛されてることを理解した方がいいよ。弱い所を見せたぐらいで、関係なんて変わらないし」
「…見せたくない」
「それが今の状況に繋がっちゃってる、でしょ?」
彼がどんな気持ちで普段いるのかハッキリとは分からない。
彼が目指しているものもだ。
――でも、支えるくらいはできる。
「また辛くなったらおいで。ギュッとするから」
どこかの狐も、同じような手で彼を手懐けようとしているのは把握している。
でも、渡さない。
だってウチ、狼だもん。獲物は必ず手に入れちゃうから。
ワクチンの副反応がエグいんで失踪します。
次はヤンデレか残りの2つ、アンケート次第では別のを書くかもです。
遅くなってすみません。
感想、リクエスト、お待ちしております。
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