ホロのまったり日常   作:maximum

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膝を大怪我したので初投稿です


今回の話は、エロやらグロやらではなく、ファンの方々にとって読むのがしんどいものとなっております。
あまり評価がよろしくなかったり、要望があれば削除しようかなと考えております。


☆【番外編】蝶よ夢よ、さようなら

夢は覚めるもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

それがどれだけ良くても悪くても。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その多くは忘れられてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、仕方ないこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

忘却とは、我々を苦しめて(救って)くれるものだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも、今回は、今回ばかりは――――――

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「……ん?」

 

 

ここはどこだ?

黒に散りばめられた星達が視界を出迎えてくれたが、場所が分からない。

生憎星を見て場所を把握する術もない。

さて、どうしたことか――

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

地面が、光ってる。

と言うよりは、足元に生い茂った植物に光っている蝶が多くとまっている。

どういうことだ?ここは、一体――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶり」

 

 

 

 

「――は?」

 

 

 

彼女が言われたように、久しぶりに聞いた声音だ。

なるほど、蝶の羽の模様を見れば、確かに彼女が居るであろう。

 

 

 

 

「まさか、こんなところで会うとはな……潤羽るしあさん」

 

 

 

潤羽るしあ。

自(・)分(・)の(・)推(・)し(・)の(・)1(・)人(・)だ(・)っ(・)た(・)存(・)在(・)だ(・)。

彼女のことは、1年前から追っていた。

昔のアーカイブや配信、切り抜きなどを見ていたし、某会社とのコラボカードなども集めていたりした。

そんな人が、今目の前に、改造されたウエディングドレス姿で立っている。

 

 

 

「こうして面と向かって話すのは、初めてだよね?」

 

 

 

「…ええ、そうです。今後あるだろう機会も無くなってしまいましたし、最初で最後です」

 

 

 

「…」

 

 

 

彼女の配信は面白かった。

暴言、台パン、メンヘラにヤンデレが溢れていたが、それと同じくらいに可愛い部分があって、優しいところがあって……

うまくまとめることが出来ないけど、確かに好きだったんだ。

 

 

 

 

 

だからこそ、辛かった。

あの時の出来事から始まってしまった、今回の事態がだ。

 

 

 

「どうして、自分たちの思いを裏切るような行動ばかりとってしまったんですか?」

 

 

 

「…」

 

 

 

「なんで、あんな悪手ばかりを――」

 

 

 

「―ッ!そんな事ばかり言わないで!!」

 

 

 

一喝。

悲痛なその慟哭は、彼女の心情を想像させるには十分だった。

 

 

 

「私だって…もっと皆と居たかった!マリンやぺこら、ノエルにフレア…3期生だけじゃない、ホロライブの皆と…また一緒に遊びたかったのッ!でも……でも、配信の枠立てをミスって、あんな風になっちゃって…皆に、色々言われて…」

 

 

 

確かにあれは酷かった。

配信画面に映ったものが引き金となり、愛を燼滅し憎悪を滾らせる黒い炎が燃え上がったのだ。

SNSでは誹謗中傷の嵐が吹き荒れ、何が真実か分からなくなるくらいに様々な情報が飛び交った。

 

 

 

「もうどうすればいいかも分かんなくって……皆が私を踏みにじるかもしれない、離れていってしまうかもしれない。そう思ったら、怖くて―――」

 

 

 

 

「それで、掴む藁を間違えたって訳ですか」

 

 

 

 

返事はない。

この場所が醸し出した神秘的な雰囲気を塗りつぶす、涙と声。

今まで聞いた彼女のどの声よりも重く、苦しい、同情を誘う声だ。

 

 

 

「…潤羽るしあさん。あなたには同情します。正直、どれぐらい辛かったかは分かりませんが、心細かったというのは酷く理解できます……それでも、あの行動は許されませんが」

 

 

 

「…そう、だよね」

 

 

 

企業の秘匿情報の流出。

それは、絶対にあってはならない。

企業側には、会社員の個人情報や、客側には見せられない裏の話などを隠し通す必要がある。

それには当然、そのメンバーが1人1人責任を持って動かなければならないのだ。

だから、彼女の処分は当然なのだ。

 

 

 

だから、だから、仕方がないことなんだ――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―ふっざけんなよ!俺は…俺たちは、あなたに沢山楽しませてもらったんだ!ゲーム実況にコラボ企画、ライブにASMR…色んな配信を見た、沢山の活動を追った!――なのに、こんな終わり方って無いだろうが……」

 

 

理性と心でもう考えがぐっちゃぐちゃだ。

今俺が何を口走ったのかも分からない。

でも、そう……理解できても、納得がいかない。

月並みな言い方であるが、本当にこれに尽きるんだ。

 

 

 

「キミ君…」

 

 

 

 

「どうしてだよ…チャンネルの削除、グッズの返金…終わりを飾るには、御大層なもんじゃねぇかよ」

 

 

 

皮肉を言っても、心の傷は塞がらない。

じくじくと何かが溢れて、流れて……

 

 

 

「ごめんね、キミ君の願いは叶えられない。それ――」

 

 

 

 

「―分かってます。これは貴女の願いではない、俺の我儘ですから」

 

 

 

いくら彼女に励ましの言葉を送るつもりで、『○○がもっと見たかっただろうに』、『○○をもっとやりかったはずじゃん』なんてものを言おうとも、それは彼女の幸せを自分の物差しで測る愚かな行為に過ぎない。

彼女の先程の発言も、本心からかは本人にしか分からない。

だから、外側の俺たちがとやかく言うことはあまり出来ないんだ。

なら、今目の前にいてくれるこの状況で俺がやれることは――

 

 

 

 

「潤羽るしあさん」

 

 

 

「はい」

 

 

 

 

「少し、思い出を語りませんか?」

 

 

 

「…はい?」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

困惑から始まった思い出話は、意外と盛り上がった。

 

 

 

 

 

時には――

 

「ワードウルフ配信は絶妙でしたね、特にフレアさんが狼のときのやつは…今でも思い出すと笑いが止まりません」

 

 

 

「あー、あれね〜。キミ君は分かんなかったかもだけど、るしあ大変だったんだよ?あんなこと言い出すから一瞬頭回んなくなっちゃって」

 

 

 

「あんなこと言われたら、誰だって困惑してしまいますよ」

 

 

 

「あ、そうそう。それとね……」

 

 

 

 

 

 

時には――

 

 

 

 

「3期生のスマブラ配信えげつなかったなぁ…」

 

 

 

「あ…あれは、その、心のリミッターが外れちゃって、止まらなかっただけなの!」

 

 

 

「あれはまさしく初号機でしたよ」

 

 

 

「ねぇぇぇぇぇ!」

 

 

 

「あ。ほら」

 

 

 

「もう!意地悪しないでよぉぉぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

時には――

 

 

 

「歌枠の時は毎回心が踊りましたよ。あんなに透き通った声聞いたことありませんよ」

 

 

 

「そう?ありがと。こっちも皆に喜んでもらえるように一生懸命練習してたし、そう言って貰えて嬉しいよ」

 

 

 

「歌ってみたとか、何回聞いたか数えられないくらいですし」

 

 

 

「そんなに褒めても、もう何にも出せないぞー?」

 

 

 

 

 

他にも、多くの話をした。

それはとても長く、短い時間。

夢のような時を何度も何度も…

 

 

 

 

そして――

 

 

 

「6期生とのコラボも面白かったですよ、清楚と清楚()のコラボとか―」

 

 

 

 

「なんか悪意感じるんだけど」

 

 

 

「き、気のせいですよ、気のせい」

 

 

 

「…6期生の娘たち、みんな可愛かったでしょ?これからが楽しみだね…って、何言ってんだるしあは、もうそんなこと言える立場じゃないのに…」

 

 

 

仮初の明るい雰囲気は、ほんの一言で崩れ去った。

残るは、口を開けない重苦しい空気のみ。

配信で見ていた時よりももっと近くにいるのに、遠のいてしまったような気分がする。

いや、実際そうなのだ。

もう、彼女は存在しなくなる。

 

 

 

 

 

 

すると、潤羽るしあの体が薄く光り始めた。

 

 

「え?一体、何が…」

 

 

 

「ああ、もう時間になっちゃったか」

 

 

 

時間だと?

意味が分からず困惑する。

 

 

 

「ここは、あなたの夢。私は…るしあは、そこにお邪魔してるの」

 

 

 

「これが…夢?」

 

 

 

「そ。きっともうすぐ、キミは目覚めちゃう。その時、夢も覚めるでしょ?」

 

 

 

「だからって…」

 

 

そうだ、まだ彼女には感謝や恨み言、励ましに文句など言いたいことが山ほどある。

言い尽くせないほど、たっぷりと――

 

 

 

「ダメ」

 

 

 

「…え?」

 

 

 

「るしあは…潤羽るしあとして、状況を説明せずに去った。だからキミから聞かれても答えられないの」

 

 

 

「さっき…あれだけ、一緒に話したのに…」

 

 

 

「それは、キミが知っていることだから。ここは夢だよ?キミの無意識の世界。キミが知っている以上のことをるしあ(部外者)は教えられないよ。それに、キミの夢の中にいるからね、キミのるしあに対する印象が混ざってるから、今までるしあが言ったことも、もしかしたらホンモノとは違うかもしれない」

 

 

 

なんだそれは。

 

 

 

 

「そして、夢は忘れられていくもの。起きたらもう覚えていないかもしれないし、覚えてても、いつかは忘却されちゃう。だから、ここでの会話もすぐに忘れてしまうよ」

 

 

 

るしあは覚えているけどね、と付け加える彼女をどう見ればよいのか分からなかった。

都合の良い記憶を忘れてしまうのは、いやだ。

都合の悪い記憶を忘れてしまうのは、いいんだ。

 

 

そんな自分勝手が、ここだけはまかり通って欲しいと願う。

いや、ここだけでなく、いつも願ってはいる。

それでも…彼女の夢を覚えていたいんだ(彼女の最期を忘れたいんだ)。

 

 

 

何も言えぬ間に彼女の体はどんどん薄くなっていく。

 

 

「うわぁ…透けていくってこんな感じなんだね、ちょっと不気味。――さて、私から言えることはこれくらい。もう時間もないし、多分、次のキミ君の言葉が最後になるよ。」

 

 

 

最後。

納得のいかない終わり方を経て、ここで自分の思うような終わりを迎えることができるようになった。

 

 

 

 

 

何を言うべきか?

 

 

 

 

 

彼女の歌声に感動した。

 

 

 

 

彼女の最期に涙を流した。

 

 

 

 

彼女の配信で歓喜を得た。

 

 

 

 

彼女の終わりに裏切りを覚えた。

 

 

 

 

彼女の軌跡は面白かった。

 

 

 

 

彼女の終焉は虚しかった。

 

 

 

 

 

全部が全部、いい思い出じゃない。

だから、「ありがとう」と口にするには素直になれない。

 

 

 

全部が全部、悪い思い出じゃない。

だから、「お前のせいで」と口にするには冷酷になれない。

 

 

「またね」なんて、無責任なことも言えない。

 

 

 

 

ならば、これしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さようなら、潤羽るしあ」

 

 

 

 

「――うん、じゃあね」

 

 

 




私情、妄想たっぷりのお話でした。
起きてしまったことは仕方がないし、その言葉で抑えるにはあまりにもしでかした事が重大でした。
ただ、公式からの発表が全てだと思いますので、多くは語りません。
筆者としては、この話で言いたいことは言えたかなと思っております。

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