最近知ったんですけどお気に入りってユーザーにもできるんですね、何名か作者のことを登録されていてビックリしました。
ありがとうございます、これからも精進します。
アンケートがあるので、もし良かったらご回答ください。
このリストを読んで分かったのは、自分の知人の約9割の名前が載っていたことだ。
正直、もう怖気付いてる。
「なあ、なんでラミィの名前にマーカーが引かれてるんだ?」
自分を(というより自分のしかめた顔を)見て薄く笑っているいたずら猫に問うと、遂に声を出して笑いはじめた。
「あんまり大きい声で言えないんだけどね、ラミィってめんどくさいの」
「それは知ってる」
青髪拗らせハーフエルフとそれなりに付き合っているのでそんなこと分かっている。
「多分、ここでの面倒さはキミが想像している以上だよ。それに、他の客と喧嘩したりするし、場合によっては戻ってきたりするからね」
「うわぁ…」
なんだそれ、迷惑客の言葉に収まりきらないぞ。
でも冷静に考えてみると、別に問題ないのではないか?
確かに、これらの行動は全て厄介ムーブでしかない。
しかし、だ、よく考えてみると、ラミィが自分を指名する可能性は低いのではないか?
何せ、ここには天性の人たらし(と噂されている)猫又さんが居る。
彼女に骨抜きにされていて、自分のことなど眼中にないのかもしれない――考えていて虚しくなってきた。
「あとねぇ…去年は別のところもホストクラブやってたんだけど、ラミィを初めとした迷惑客に心が折れて今年はやらないらしいんだよね」
「は?」
トワ可哀想だったなぁなんて呟いているが待て待て待て待て。
要はホスト潰したってことだよ。
そんなんただの害悪じゃねえか、どうすればいいんだ。
「ん?そんな不安そうな顔してどうしたの?」
「いやいやいや、もう不安ってか絶望だよ。そんな連中が万一やって来て暴走したらもう無理だよ」
「あー、そこらへんは大丈夫だよ?今年は助っ人を呼んでるから。そろそろ来るか―」
「―ちわーっす!大空スバル、参上!」
「な、なんでアヒルがここに!?」
「なっ!?初対面で失礼だろお前ぇぇぇ!」
猫又さんの発言をたたっ斬ってやってきたのは、何度もあくあから聞いたことある名であった。
――――――――――――――――――――――――――
「――ということで、スバルちゃんがこのお店の受付をやってくれまーす」
「なるほどなぁ、よろしくです、大空さん」
「スバルでいいよ、皆からもそう呼ばれてるし。敬語もなしで」
猫又さん曰く、スバルさんはどうやら客の暴走時に強制退去など対処するために頼まれたようだ。
前回は彼女によって引き剥がされた客もいるらしく、今回もその手腕にあやかろうと言うわけだ。
「じゃ〜ボクもおかゆって呼んでね。スバルちゃんのお陰でお客さんの暴走は抑えられるから、遠慮なく相手を落としていいよ」
「落とせるかどうかは別問題だけどな。初手からあのリストに名を連ねる人が来たら無理ゲーだよ」
「でも来る人の半分以上はあれに名前あるよ〜」
「えぇ…」
何それ、詰みやんけ。
まだ猫又おかゆ式会話術マスターしてないんだぞ。
これじゃあ敗北まで一直線だ。
「大丈夫、大丈夫。見知った顔の人もよく来るだろうし、数こなせば段々慣れてくるから」
「おかゆのその発言、スバルは刺されるヤツだと思うぞ」
「そうやって去年から言われ続けて今年も生きてるしへーきへーき」
「もう今年はあくあとシオンが来ても助けねえからな」
なんか前の2人が不吉な会話をしているが無視だ無視。
そんなこと気にしてたらホスト(もどき)なんてやってられん。
「さあ、もうすぐ開店だよ。準備はいいかい、『ニグレド』君?」
「…腹は括りました。任せてください、『おか斗』先輩」
正直逃げてぇ。
引き受けた頃に戻って過去の自分に押し付けたい。
でも、引き受けた以上は結果を出したい、期待に応えたい。
だから、頑張るしかないんだ。
「それじゃ、ホストクラブギルティ、かいて〜ん。スバルちゃんよろしく!」
「はぁ、分かったよ。今年の地獄の開幕だ…」
重い足取りで店の扉に向かうスバルさん。
…なんかすまん。
さあ、張り切って―――
「では、開店し――グワァ!」
「ニグレド君、そこにいるんでしょー!!」
「ラミィ、お前出禁にすんぞ!?」
――やろうと気合いを入れようとした瞬間の会話によって気力は流れ落ち、入れ替わりに絶望が心を満たした。
――――――――――――――――――――――――――
目の前にはポニーテールのラミィ。
いつもの服装と違い、どこかお嬢様感を醸し出す姿だ。
目を合わせると、にこりと笑顔。あらかわいい。
いきなりラスボスとはしんどいが、ここで踏ん張ればこの後も戦えるはずだ。
「いらっしゃいませ。一夜限りの幸せを。ホストクラブ『ギルティ』へようこそお嬢様」
「うんうん、新人さんなんだって〜?初々しい感じがいいね〜」
やべえよこのお嬢様。
もう押され気味なんだが。
「ええ、今日が初出勤なんですよ。それで、お嬢様のお名前は?」
「えー?雪花ラミィって言います『俺だけのラミィ』って呼んでね」
「ぇ?ああ、はい。分かりました。俺だけの――」
「――ねぇ、敬語やめてくれる?壁を感じて嫌なんだけど」
圧かけるのが早いですよ姉貴。
こちとら新人なんです、もっと優しくしてやってください。
「えっと、分かったよ。ラミィ。そr「俺だけのラミィ」――俺だけのラミィ。」
怖い、怖いよこのお嬢様。
「そ、れ、で〜、ニグレド君は、ラミィに合う飲み物はなんだと思う?」
嘘だろ、普通そんな質問するか!?
ここで理由なしに『シャンパンタワー』なんて言えば、好感度はダダ下がり。かと言って、安い飲み物を言ってしまえば売上に繋がる可能性はなくなる。
考えろ、考えろ――
「うーーん、難しいなあ。ラミ――俺だけのラミィは今日、オシャレしてるから、高貴な感じがするんだよね。だからその、高貴な感じのドリンクが似合うと思うよ」
「高貴なドリンクって?」
「そうだね…『シャンパンタワー』が一番かな。俺だけのラミィの透き通った感じがピッタリだし、今日この時のためにコールを一生懸命練習してきたんだ。それに――」
――初めてのコールは、俺だけのラミィに送りたいから。
最後はラミィの耳元で囁いた。
これが自分が出せる全力だ。
頼む、上手くいってくれ。
ラミィの耳元から離れ、彼女の顔を見ると朱に染まっていた。
その後、雪花ラミィはシャンパンタワーを注文した。
――――――――――――――――――――――――――
「つ、疲れた…」
ソファーに沈み込む。
1人相手にしただけで疲労困憊だ。
「ほれ、水」
「お、ありがとう」
スバルさんが水の入ったペットボトルを渡してくれたのでそれを1口。
「ラミィ捌くの上手かったな。ほんとにホスト初めて?」
「初めてだよ。ラミィと話すのが初めてじゃないからいけただけさ」
とりあえず、山は1つ越えられた。
もう少し休んでいたいが、待ってくれている客がいる。
「よし、次いくか。スバルさん案内頼むよ」
「オッケー、まあその、頑張れよ」
なんでそんな含みのある言い方をするんだ?
山場は越えた、そんなに警戒する必要などないはずだ。
さあ、どんとこい。
「ニグレド君、はじめまして〜」
「余は久しぶりだね〜」
ねえ、2人同時はズルいって。
――――――――――――――――――――――――――
やってきたのは百鬼あやめともう1人。
前者はまだいいと思っていた。
関わりがあるし、そこそこ性格を把握していたつもりだった。
そのはずなんだが――
(なにその声のトーン、イメージとかなり違うんだけど)
服装はいつもの和服に二刀の刀を携えたものではなく、西洋風のお嬢様といった雰囲気が感じられるものだ。
普段とのギャップに心の臓が早鐘を打つが、その声が拍車をかけた。
どこかふわふわした声でなく、見た目通りの大人びた声となっている。
(もう1人は誰だ?体型が、その…すごいし、声も…)
服装は、改造メイド服と言った感じだろうか。
首元に赤いリボン、頭には2本のツノがあり、小さな一対の羽も見える。
なんの種族なのだろう?常闇さんと同じく悪魔なんだろうか。
丈が短いスカートに白の…長い靴下?
名称が分かんない、あとであくあにきいてみよう。
そして、ノエルに引けを取らないほどのふくよかな胸。
失礼を承知して言うとサキュバスなんじゃないか。
まあいい、まずは挨拶だ。
「いらっしゃいませ。一夜限りの幸せを。ホストクラブ『ギルティ』へようこそお嬢様方。お名前を教えていただけても?」
「あら?ニグレド君、私たちの名前を知らないの?」
いや知らねえよ、初対面だぞ。
そんな言葉を飲み込み、耐える。
もし先程の予想が合っているとしたら、こちら側が弄ばれるだけだ。
ならば、できる限り失言を少なくして揚げ足を無くすしかない。
とはいえ、そのまま伝えるのも意趣が無い。
「あー、百鬼あやめさんのことは知っていますよ。ただ、俺の人生においてあなたのような美しくて大人な女性とは出会ったことがないのでね。会ったことがあるのなら、その名前を忘れるはずがありませんから」
「あはっ、随分と達者なお口だこと。そうね、ちょっと意地悪だったかしら。私は癒月ちょこ、気軽にちょこって呼んでね」
唇に人差し指をつけながらそう話すこの女は、妖艶という言葉がこの上なく似合っている。
その声だけでも堕ちる男性は数知れずだ。
タメで大丈夫よ、なんて言ってる彼女の横にはいかにも「余、怒ってます」という顔をした鬼がいる、かわ余。
「ねえ、余のこと忘れてない?」
「忘れられるわけないよ。前会った時から随分とオシャレになってるからね、垢抜けたって言えばいいのかな?」
「そ、そう…」
よし、あやめとは結構いい感じに戦えてるな。
ラミィと違って言葉の端々までしっかり気を張らなければならないという訳では無いところが大きい。
あとは推定悪魔の癒月ちょこをどう対処するかなんだが…
どうやら自分は、油断していたらしい。
警戒対象のラミィを乗り越えたことが気の緩みを招いたのかもしれない。
この時の自分は、あれを気にしてもいなかった。
何故、客が複数同時に来ると困るのだろうか。
同時に接客するのが困難だからか?
1人もネガティブにならない言動を努めなければならないからか?
どれも正しいが、もっと重大なことがある。
それは、1人の時には絶対に起こりえないこと。
「いやぁ、ニグレド君余のことよく分かってるね!うれし――」
「いや、私よ!私の方が分かってるわ!」
「何言ってるの!?余の方が――」
――そう、修羅場だ。
「付き合いが長い方が、心が通い合ってるに決まってるわ!」
「私から接し始めたんだから私の方が――」
やべえ、どうしよ。
目の前にいる女性2人を止めることが出来なさそうです。
多分、ここの雰囲気に呑まれてるだけだから店から出れば元通りの仲になるとは思う。
それに、これだけ盛り上がっているのだ、すぐにスバルさんが来てくれるはず…あれ?
(全然来ないんだけどあの人…何してんの?)
もしかしたらおかゆさんの方でもトラブルが起きているのかもしれない。
となると、この諍いは自分が鎮めないといけないらしい。
「――見てみなさいよ自分の身体を!どっちに軍配が上がるでしょうね!」
「大事なのは身体だけじゃなくて内面もよ!外見で釣ったって心はね――」
そんなことを考えている間にもOHANASHIはヒートアップ。
鬼と悪魔の言い争いなんて神話物だ。
こんなものが見学できるこの学園って素晴らしいなぁ()
はい、現実逃避終わり。
スバルさんが来ない以上、自分がやるしかない。
「あ、あの〜、そろそろ話をまとめてもら――」
「ニグレド君はどうなのよ!?余とこの人、どっちが良いの!?」
「そうよ。も!ち!ろ!ん!私よね?」
「余だよね?そうだよね?」
物語でよく聞かれる答えづらい質問じゃないですかヤダー。
どっちかを選んだらもう片方はしょんぼりしちゃうし、両方なんて言おうものなら振り出しに戻ってしまう。
1番いいのはスバルさんが来るまで時間稼ぎをすることだが、話を中断させてしまったし、スバルさんに引き取ってもらったら売上にも繋がらない。
あまり、この手段は取りたくない。
自分の卑屈さが出てきてしまいそうだし、1人は初対面の異性だ、触れたら気持ち悪がられるかもだ。
でも、賭けに出るしかない。
俺は、2人の肩にそれぞれ手を置いた。
「ごめんな、あやめにちょこ。君たちにそんなことを言わせてしまって。俺は2人同時に話をするのが苦手だから、どうしても1人ずつになってしまう。2人とも良いんだよ、俺が悪いんだ」
そう、そもそもそんな言葉を言わせてしまったことが良くない。
そこを謝るという場外の手だ。
目の前の人を誰も下げず、なおかつ地雷を踏まないようにするには、自分を下げるしか無かった。
おかゆさんには自分を下げないよう言われてたから、これはあとで説教されるな。
肩に手を置いたのは、頭を撫でられると嫌がる人が割と多いからだ。
髪型を崩されるのは嫌だろうしな、決して恥ずかしいからしなかった訳じゃない、断じて。
そう思って2人の顔を見ると、ほんのり赤くなって、口をモゴモゴさせている。
あれ?怒っていらっしゃる?
これも地雷ってガチィ?
とりあえず2人の肩から手を離す。
「「ぁ…」」
しかしどうしたものか、今のもダメならもう打つ手がない。
それなりに頑張ったつもりなんだがなぁ、現実は残酷だ。
ああ、2人とも肩を震わせてる、自分に触られたの相当嫌だったんだ…失敗だ。
なんか悲しくなってきた、もうやめよ――
「悪い、遅くなった!あやめ、ちょこ先、覚悟!!」
ナイスタイミングですスバルさん。
もうしばらく2人の顔見れな――「「スバル!!」」―ん?
「え、なにそんな急に大声出して?どした?」
「「ニグレド君にシャンパンタワー1つ!」」
「は?」
「え?」
今東洋と西洋の悪魔たちはなんて言ったんだ?
あやめがちょこの方を向いて、何故か頷きあってこっちに近づいてきた。
「「あの!」」
「は、はい?」
「「次の機会は、頭撫でてね」」
――――――――――――――――――――――――――
スバルさんが中々来なかったのは、やはりおかゆさんの方で問題があったらしい。
なんでもあくあと紫咲シオンさんが騒ぎ立ててたそうな。
しっかり2人ともシャンパンタワーを頼んでいたあたり、おかゆさんの毒牙にやられているのだが…
あの後も、順調に客が訪れてくれた。
おにぎりを100個頼み、謎のコールを要求してきた獅白さん。
お願いします、ここラーメン屋じゃないんです、そんなノリで来ないでください。
あと今度PCについてご教授願います。
大きな角を生やしたロリ、ラプラス・ダークネス。
開口一番に「お前はトワ様がやった時のための練習台だ!」なんて言われてめっちゃ傷ついたけど、ドンペリ頼んでくれたし、話も合うし楽しかった。
その後携帯に「流石に最初の言い方は酷かったわ」から始まる長文が送られてきたのを見て、店とのギャップに好感度が急上昇した。
ただ、気になったのは去り際に侍とシャチのどっちを飼いたいか、と言われたことだ。
侍もシャチも飼えるものではないと思うが、両方好きだと答えておいた。
フェネックの獣人である尾丸ポルカさん。
ちょっとメンヘラが過ぎます、自分の手に負えません。
テンションがジェットコースターなので話すのに苦労したけど、いい経験になった。
あ、不知火建設の一員なんですね、今度一緒にゲームしましょう。
ハーフエルフのたらし、不知火フレア。
自分よりホストに合ってるんじゃないかな、才能の差を見せつけられたよ。
ちょっとしょぼくれてたらドンペリ頼んでくれた、なんかすまん。
アフター楽しみにしてるね、なんて言われても何すればいいかも分かりません。
産まれてくる種族を間違えた悪魔、常闇トワさん。
めっちゃ励ましてくれたし、メンタルケアになった。
去年にこの苦しみを味わった人からの憐憫と激励は、それはそれは心に染みた。
わざわざシャンパンタワー頼んでくれたあたり、TMTよTMT。
来年一緒に頑張りましょう、逃がしませんよ。
血が苦手なヴァンパイア、夜空メル。
少女のあどけなさと女性の艶めかしさを混ぜた様な声で、心臓に悪かった。
ただ、本人はそこまで男慣れしている訳でもなくちゃんと対処できた気がする。
初対面の女性にボディタッチが通用するか、申し訳ないが彼女で実験した。
頭は危険だから肩にだけど。
顔真っ赤にして逃げられちゃったからやっぱりやめておいた方が良いみたいだ。
でもカクテル4つ頼んでくれたし、携帯で逃げたことについて謝罪されたからとても良い子のようだ。
お詫びにいつかご飯を奢ってくれるらしい、気にしなくてもいいのに。
客より用心棒してた方が似合うドラゴン、桐生ココ。
いじめないでください、お願いします。
普段とキャラが違うとか言って笑わないでください、心折れます。
でも最後に、液体金属の件でお世話になってることからありがとうと最大限の笑顔で言ったら、ちょっと耳が赤くなってた。
照れてくれたら嬉しいな。
でも、頼むから自分の前で何頼んだかちゃんと言って欲しい、そのせいで終わったあとにシャンパンタワー10個分の売上あなたからだと気づくの遅れたんです。
我が家自慢の駄メイド、湊あくあ。
スバルさんに追い出されたのに、また来たよ。
しかもちゃんと自分を指名してくれたよ。
しかもしかもめっちゃチョロかったよ。
あくあと結婚する人は財布しっかり握らないと大変なことになりそうだと思いました。
ただなぁ、何より厄介なのは――
「ちょっとぉ〜?私の話聞いてる、ニグレド?」
「ああ、聞いてるぞ。おにぎりの話だろう?」
「そーそー、それでねぇ〜――」
今自分が接客している白上フブキだろう。
いや、フブキって言っていいんだろうか…何故かホワイトブリニャンなどと自称し、普段の彼女とはかけ離れた言動を繰り返す。
はっきり言おう、キツい。
ふと、彼女の左手のネイルアートに目がとまる。
「そのネイル、おにぎりか?」
「あっ!ようやく気づいてくれたのぉ。そう、これおにぎりなの。親指からおかか、めんたいこ、しゃけ、こんぶ、ネギトロ。最後のはおか斗くんが選んでくれたんだよぉ」
「…そう」
思ったより低い声が出てしまった。
なんでだろうか、少し心がチリつく。
別に気にすることでもないはずなのに。
俺が嫉妬してどうする、相手の思惑通りに転がされてしまうぞ。
「あっ、ごめんねぇ。他の子の名前出しちゃって、怒ってる…?」
「怒ってはないよ、ちょっぴり妬けちゃうけど」
「うんうん、私が悪かったねぇ。ごめんね。それでね――」
さっきからずっとこんな感じだ。
彼女はホスト狂いを演じているだけだ。
なのに、どうしてこんなにも手玉に取られてしまうのだろう。
先程のちょことの会話を思い出し、あれは2人だからこそ助かったのではないかと思えてきた。
もし一人で来ていたら、今のように弄ばれていただろう。
そのまま、ずっと彼女のペースに流された。
「あっ、もうこんな時間かぁ。じゃあニグレド、シャンパンタワー1つお願いするから、とっておきのコールをちょうだい?」
「…ああ、任せとけ」
完全にしてやられた。
また、おかゆさんに鍛えてもらわないと。
次こそは、こっちが主導権を握る。
決意を込めて、コールを叫んだ。
――――――――――――――――――――――――――
その後も沢山の方がいらっしゃり、残りは1名となった。
本人の都合で遅くなるみたいだから、少し休憩だ。
「どうだった〜?ちゃんと皆を堕としたかな?」
まだまだ余裕そうなおかゆさんが恨めしい。
去年も癖のある女性を捌いていた経験の差だろう。
「フブキに関しては、失敗した。他はぼちぼちって感じだけど」
「フブキちゃんねぇ。凄かったでしょ?あれ去年もやってたんだよ」
「え?そうなのか?」
友人の見えなかった一面を知ってちょっとショック。
可愛い顔してあんな狂気を内に飼っていたなんて…
「あのフブキちゃんを制御するのは無理だと思うよ。むしろ、ちゃんと売上を出せたことを誇りに思わなくちゃ」
「それでも、やっぱり悔しいよ。なあ、来年も出ていいか?」
「へえ、こっちから頼もうと思ってたのに。またやりたいの?」
はっきり言って、やりたくない。
癖のある人ばかりだし、ラミィはめんどくさいし、ラミィはめんどくさい。
でも、フブキにしてやられたままなのがいやなのだ。
「ああ。次はフブキを何とかしてみせる」
「いいねぇ、その意気だよ。君ももっともっと色んな女の子堕としていこーね」
そんなことを話しているとスバルさんがこっちにきた。
「なんてこと言ってんだよおかゆ。マジで刺されるぞ?あと、最後のお客さんがいらっしゃった、お前をご指名だ」
スバルさんの指の先には自分がいる。
ラストか、手応えが得られるといいな。
「さぁ、ファイトファイト〜」
「頑張れよ」
おかゆさんは優しく何度も、スバルさんは力強く1回肩を叩いた。
「ああ、頑張るよ」
所定の場所に移動し、客が来るのを待っているとその姿が見えた。
黒縁メガネ、白いマスク。
茶髪のストレートロングに左上にはピンクの髪飾り。
ピンクのフワフワした服からは黒い紐が肩に見えている。
下は茶色のロングスカートになっており、その姿はどこから見ても可愛らしく美しい。
誰なのかは、何となくわかった。
勘違いかもしれない、気のせいだ、理性はそう叫ぶが感覚で確信した。
きっと、あの人だ。
さあ、誰であろうとまずは挨拶だ。
「いらっしゃいませ。一夜限りの幸せを。ホストクラブ『ギルティ』へようこそお嬢様。お嬢様のお名前は?」
その挨拶に、彼女はマスクを外して答えた。
「はじめまして、ときのそらです。よろしく!」
――――――――――――――――――――――――――
凄く緊張した。
冗談で口にしたが、まさか本当にアイドルがやってくるとは思ってもいなかった。
スバルさんとおかゆさんは事前にこのことを知っていたらしく、自分に隠していたようだ。
あの後、サインをいただき、少しだけ話させていただいた。
彼女の志はまさしくアイドルで、多くの方々から愛されるだけのカリスマを感じられた。
最後に写真を1枚と、連絡先を貰った。
何度も遠慮したのだが、すいちゃんのお友達なら大丈夫、と言われて譲らなかった。
俺、現役アイドルと連絡先交換したんだよな…
実感が湧かない。
今にも天に上りそうだ。
額縁を買って、写真とサインを保存しておかないと。
今日はいい夢が見られそうだ。
でも、大体こういう日ってちゃんと釣り合いが取れるようになっている。
当然、今日もその例に漏れなかった。
「うう…なんで、なんでぇ…」
「沙花叉が何したっていうのさぁ!ルイねぇぇ…」
自宅の前に、『拾ってください』と書かれたダンボール。
そこには、背中に刀を携えた少女と、黒いフードを被り、目元をマスクで隠した少女がいた。
久々に長めでお送り致しました。
ようやく6期生を話に出せる…長かった…
さてさて、次回以降ですが、ジャキンジャキンとインターンをどうするかのお話、そしてアンケートにあるお話を書こうかなと思っております。
アンケートに関しては上位のものは1話で、その他はコソッと地の文に混ぜていこうかなと考えてます。
次回をお楽しみに!
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