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えぇ…何この状況?
目の前には涙を流している女が2人。
わざわざ『拾ってください』と書かれた大きめのダンボールに入っているのだが、いつからここにいたのだろうか。
こんなのご近所さんに見られてたら明日から冷たい視線だらけになってしまうんだが。
着ている服は汚れていない。
捨てられる前に洗われたのだろうか?
というかフードの子…フードに『caution』なんて書かれているテープ?がついてるぞ、どういうことだ。
その時、携帯から通知が着た。
137件溜まっているメッセージアプリを起動、90件超のラミィを後回しにし、今回の容疑者との画面に移る。
見たら電話しろなどと書いてあったので遠慮なく電話する。
1コール、2コール…あ、出た。
『さっきぶりだな、ホスト楽しかったぞ!』
「それはありがとう。所で自分の家の前にいる2人はそちらの仕業か?」
『勿論だ!うちの優秀な2人を送ってやったぞ!』
「とてもそんな円満な感じで来てるわけではなさそうなんだが」
自分の目が正しければ、2人は震えて慈悲を請う目でこちらを見ている。
『そこの2人の名前は聞いたか?ないなら吾輩が教えてやろう』
「――いや、結構だ。この2人にはお引き取り願おう」
瞬間、2人の体が跳ね、涙の量が増えた。
そんな目でこっちを見ないで欲しい、自分としても言いたくて言っているのではないのだ。
『え!?な、なんでだよ!その2人のこと、好きなように使ってくれても構わないんだぞ!』
その言葉にちょっと、ホントにちょっとだけ心が揺れ動くが答えは変わらない。
「うちには既に1人居候がいる。家事を任せる必要はないんだ」
『別に家事じゃなくても、エロいことでもいいんだぞ?』
「言い方直接的すぎんだろ」
あの2人が服を掴んで涙目でこっちを見てきた。
その上目遣いでさらに罪悪感が増す。
律儀にダンボールごと移動したようだ。
『いーじゃんかよー、漫画のシチュエーションを味わえるんだぞ?夢のようだろ?』
「あれは創作だから成り立つんだよ。2人も居住者が増えたらエンゲル係数ぶっ壊れる。お、確かに夢のようだな、悪夢だけど。という訳で早く引き取って…ちょ、待って…引っ張るんじゃない!」
いつの間にか物凄い力で服を引っ張られていた。
いくらなんでも強すぎるのでは…?
『あーあと、そいつら用心棒と掃除屋だからめっちゃ強いぞ』
「早く言えよそれ!あーもう…服がダメになっちまったじゃんか」
ようやく振り払った時には服は伸びに伸び、雑巾行きが確定した無惨な姿となった。
制服じゃなくて良かった、そうじゃなかったら多分我慢できずに叫んでいただろう。
『てか金ならこっちから出すぞ?少なくとも水道代やら食費やらは』
「は?」
このしましまロリは何を言っているのだろうか。
「だとしたら尚更意味わからないよ。なんでうちでこの2人を引き取らなきゃ行けないんだ?お金がないわけじゃないのに」
『うっ、それは、その…え?なんだと?――おい、ちょっと幹部に代わるぞ』
「は?おい待て!」
ろくな説明もせずに部下に丸投げしましたよ。
もう腰あたりが2人の涙を吸って冷たいんだけど。
『あー、うちのラプがごめんね〜、まともな説明もしないで』
声が変わった。
落ち着きのあるこの声、なるほど、ラプラスの保護者の――
「鷹嶺ルイさん、ですか?」
『あら、私の名前知ってたんですね?』
「いつもラプラスと一緒にいるのを知ってるんで」
『そう、それは嬉しいです。それで、さっきの話の続きをしてもいいですかね?』
「ダメです、今すぐ自分の腰にすがりついている2人を回収しに来てください」
『ごめんね、それでももう少し付き合ってもらいますよ』
どうしてそこまでしてこの2人をこちらに押し付けてくるのだろうか。
全く分からぬまま、鷹のセールスが始まった。
――――――――――――――――――――――――――
「あら、ラプ。ホスト楽しかった?」
それは、あの学園祭の最中。
トワ先輩がホストをやっていないと聞いてテンションが地の底だったラプラスにおかゆ先輩のホストに練習代わりに行かせた後。
「おう、確かにあれをトワ様にやられてたら吾輩死んでたわ」
「良かったわね、これで耐性がついた」
「ああ、それと――」
なんでもない会話に突然、爆弾が投げ込まれた。
「あの男、殺されるかもしんねえわ」
「そうなんだ……え?」
「ちらっと見えちゃったんだよな、あいつの未来。ま、吾輩ラプラスの悪魔だし」
「いやいやいやいや、何普通のトーンで言ってるの?それに枷ついてるのに?」
「たまーに突然やってくるんだよ、吾輩の意思関係なくな。」
なんとも迷惑な未来予知だ。
しかし、知ってしまった以上見捨てることはできない。
「それで?助けるんでしょ、どうするの?」
「新人とさむらいを送る」
「え?本気?」
うちの戦闘員誰もいなくなっちゃうじゃない。
いくらラプが戦えるって言っても、沙花叉はともかくいろはまで…
「まーな。あいつトワ様と繋がりあるっぽいし、恩売っとけば吾輩の株上がるじゃん?あと五円チョコ買うのめんどい」
「そんな理由で2人を送らないで欲しいのだけれど。いろはに関してはそろそろちゃんと給料用意しなさいよ」
「ああ、だから送る日にまとめて渡す。いろはのことだ、どうせクビ前のボーナスと思い込むだろう。新人についてはあいつの荷物を詰め込んだダンボールを部屋の中に置いておけばいい。そのあと派遣だと言えば2人は諦めるだろう」
今の話を聞いてる限り、2人はきっと派遣ではなく左遷だと思うだろう。
沙花叉はともかく、いろはには酷だ。沙花叉はともかく。
「でも、2人は反対するわよ。絶対に泣きつくし、そもそもそんな理由じゃ2人を遣れないわ」
「そうなれば、幹部のほうから『派遣』だと強く言い聞かせてやってくれ。来たるべき時までここに帰るのは禁止。目的はあの男の護衛、奴が求めたことには全て答えることと命令すれば大丈夫だ。通帳や荷物は家に転がり込むまで送らないとしといてな」
「うわぁ、勘違いしそうな言い方を求めるものね…それで、ホントの理由は?」
その言い方だと特に沙花叉は同人誌のような扱いをされるのだと思うだろう、仕方ないが。
「あいつ、確かテロ組織とやりあったじゃん。ふぉーるん?とかいうのとさ。あれ世界征服に邪魔だから消したいし、あいつの傍に新人といろは置いとけばいつかぶつかるじゃん。あと、あいつ本人とのコネが欲しい」
「先輩は、確か液体金属の第一人者だものね、コネクションとしては良いと思うわ。命を助けられればきっと私たちも助けてくれるだろうし、もしかしたら発明品のおさがりが貰えるかも」
「これではかせも言いくるめることができるぞ!どうだ、吾輩天才だろう?」
驚いた、まさかラプがここまで考えていたなんて。
てっきりいつもの感情論まで持っていくと思っていたが、ラプがそこまで考えていたのなら、こちらとしては異論はない。
沙花叉といろはには辛いと思うが、メンタルケアは私がしていくのでそれで耐えて欲しい。
「素直に驚いたわ、ちゃんと考えられてるし、いろはと沙花叉に定期的に会えるなら問題ないわ。――それで、先輩への説得は?」
返答は沈黙。
つまり、そういうことだ。
「…一緒に考えるよ、沙花叉を送るのはかなり手間をとるわ」
「おう…」
生野菜を齧るケモ耳狂信者と、床を覆い隠すゴミを生産し、かつ掃除ができず、風呂も入りたがらない女。
前者はともかく、後者を引き取ってくれる者などいるのだろうか。
その後、掃除屋と用心棒に指令を通達。
家を失った彼女たちは、涙を堪えながら目的地に向かった。
――――――――――――――――――――――――――
あの時はラプに感心していたが、今の説得を見ると本当にあの時と同一人物なのか疑問に思えてきた。
あまりにも聞いていられなかったので代わったが、ここまで相手に敵意を抱かせていると無理な気がする。
『はぁ…じゃあ、なぜこの2人をここに捨てたんですか?』
「うん?私はそちらに向かうように指示したんだけど…」
『でもダンボールに2人仲良く入ってましたよ。そのまま返品するんで住所送って…あー、住所だとまず『ルイねぇぇぇぇ!』『お願いです、風真を捨てないで!』ちょ、大声で泣かないでよ!近所迷惑だから!』
電話越しにこちらまで声が聞こえるということは、かなりのボリュームなのだろう。
ただ、捨てられたという状況でいけとは一言も言っておらず、挙句それが裏目に出たので最悪だ。
とはいえ、当時の彼女達の心境を考えると致し方ないだろう。
実際、自分も同じ立場なら用済みと判断されたように感じるから。
「あなたがその子たちを引き取ってくれたらきっとご近所さんから誤解されることもないと思いますよ」
『それです!何故自分のところにこの2人を捨て…派遣したんですか?武装した知らない人を家に入れるとか自殺行為のように思えてならな『『沙花叉(風真)絶対そんなことしないからぁぁぁ!』』ああああ、もう!』
向こうはパニック状態だ。
喚きたいのは分かるが、ここで彼の機嫌を損ねたら困るのは彼女たちなので、もう少し静かにして欲しい。
1度スピーカーにしてもらい、沙花叉たちを落ち着かせたあとスピーカーを切ってもらい、続ける。
「先輩、この前テロ組織と戦いましたよね?連中は何故か分からないけど先輩が参戦してから比較的早く撤退しました。恐らく先輩の何かが相手の気を変えたんです」
『それで、自分があいつらに狙われる可能性が高いと?』
「流石先輩ですね、そうです。先輩の実力を疑っているように思われても仕方がありませんが、これが私たちができる最大限の行為なんです」
『ふーん、なるほどねぇ…それで、何が欲しいの?』
やっぱりそうくるよね。
つらつらと相手にメリットを説いてばかりいると疑わしくなってくるものだ。
それに彼は開発者の先端を走る者だ、きっとこんな感じで媚びてくる人達と出会った経験があるのだろう。
だが、こちらはものが欲しいのではない、それよりも――
「協同開発させて貰えませんか?」
『…はぁ!?』
――――――――――――――――――――――――――
「…とりあえず、2人ともシャワー浴びてきな。着替えはパジャマや大きめのTシャツ、ジャージを用意しておくから、自分に合ったのを着てね」
脱衣所まで2人を連れ、扉を閉める。
完全にしてやられた。
協同開発については、保留にさせてもらった。
向こうにもどうやら頭脳明晰な人がいるらしいが、素性が分からないし、何より開発データをリークしたくない。
一応自分が先駆者であるのと、ある程度使いこなせているからそれでお金が稼げているのだ。
追い抜かれて嵌められたらたまったもんじゃない。
とはいえ、あのしっかりものの鷹嶺さんのツテが、そんな邪悪だとは思えない。
なので保留だ、またどこかで人柄を知れたらと言った感じ。
次に引き合いに出されたのはあくあだった。
被害を受けるのは自分だけでは済まないかもしれない、そうならないようにどちらかが自分を、もう片方があくあを守るためだと言われた。
2人も遣ったのはそういう事かと納得してしまった。
そこからはあれよあれよと鷹嶺さんのペースに持っていかれ、これだ。
ごめんよあくあ、コミュ障なのに2人も知らない人を家に住まわせてしまって…
そうして待つこと30分。
銀髪の人はオーバーサイズの長袖にショートパンツ、金髪の人はジャージを着てこちらへ来た。
リビングに向かい、椅子に座らせてテーブルにて話し合いだ。
「えっと…まず、2人の名前は?」
「沙花叉クロヱ…です。好きなように呼んでください」
「風真いろはでござ…申します。同じくどのように呼んでいただいてもかまいません」
ふむふむ、沙花叉クロヱに、風真いろは。
「ありがとう。それで、早速で悪いが1つ約束だ。しばらくの間、午後11時を過ぎたら自分の部屋から出ないで欲しい」
大丈夫だとは思う。
でも、万に、億に一つの場合があるのならば、それを防ぐべきだ。
幸い、この2人は直ぐに頷いてくれた。
というかそこまで何度も頷かなくていいのよ、首痛くない?
「あ、あのっ…」
言葉を零したのは沙花叉の方だ。
「沙花叉たちを、拾ってくれるってことでいいの…んですか?」
「無理に敬語にしなくていいよ、その回答はyesだ。さっきの約束を守っていたら、という条件付きだが」
さっきは部屋と言ったが、そこまで広いものでは無い。
ベッドを置いたらそこそこのスペースを取られてしまうくらいだ。
窮屈に感じてしまうかもしれないが、我慢してほしい。
「まあ、これぐらいでいいかな。他に質問はある?」
「え、えっと…」
次は風真の方からだ。
一体何の質問だろ――
「ここって、生ナスありますか?」
「え?」
これ以降の質疑応答は、これからの生活を不安にさせるのに十分なほど、奇妙で愉快だった。
うちにはBLなんてないし、生ナスを食べさせることもありません。
この話により主人公くんはヤンデレルート行きを回避しました。
家にあくたんと彼だけならともかく、あの二人まで居たら相手はもう何もできません。
こうなるには学祭でトワ様がホストをやらない必要があり、そのためには去年でトワ様の心が折れる必要があり、そのためにはラミィがトワ様のお店へ来店する必要がありました。
よって今回のMVPはレバーフェイスです。
それと、とりあえず現時点(4/24)でアンケートから「餌付け」と「麺屋ぼたん」は確定とさせていただきます。
今使ってる機種/拙作が読みやすいか
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