ホロのまったり日常   作:maximum

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湊あくあさんのヤンデレがレアなので初投稿です


《warning!》
今回の話は、人によってかなり不快感を与えます。
性的描写が苦手な方はブラウザバックをお願いします。


☆爛れた氷の鎖

鉛を連想させる空気にて、彼女たちは語る。

否、正確に言えば――

 

 

 

「怖いですよ、あやめ先輩。刀どけてくれませんか?」

 

 

「断る」

 

 

――不穏分子の裁判、といったところか。

 

 

「先程も言った通り、次のラミィの日にて行動を起こすつもりです」

 

 

「それを、るしあが…るしあたちが我慢したのを知っていてやるつもりなの?」

 

 

この場に立ちこめる殺意はあまりにも濃厚で、死神がいるように感じられる。

それでも、笑ってしまったのは仕方がない。

その影響で空気がよりピリついた。

 

 

「ええ。だってラミィは我慢できませんから」

 

 

足元から出てきた骨を氷砕する。

近くの刀も震えてきて、どうやら決壊はすぐそこのようだ。

 

 

「ラミィが望むのは双方向の愛であって、一方的な執着ではありません」

 

 

「だがそれは、今後彼がどうなるかという懸念で取り決めたはずだぞ?」

 

 

「そうですね、ええ…どうなるかわからない、まるで恋愛みたいじゃないですか?」

 

 

「ふざけるのも大概にするんだ余!」

 

 

緑と赤が動き出す。

殺意を込めた魔法がその身を穿ち、憤怒に染まった刃が首を刎ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…何のつもりですか?」

 

 

「なんで止めたんだ?団長」

 

 

――前に、白と銀が動いた。

白は青い炎で攻撃を塗りつぶし、銀は得物で刀を止めた。

その後ろには、金が弓を構え牽制の姿勢を見せた。

 

 

「私も不快ではあるよ?でも、ラミィの言うことには一理ある」

 

 

「このままじゃいけないってのは、あたしも思うし」

 

 

「ここを作って白上たちが参加するようになったきっかけの…あくあちゃんの意見がまだだしね」

 

 

 

そして、視線は紫に収束する。

期待、疑問、殺意、不安…醜く絡まった感情を一身に受け、ようやくその沈黙を破った。

 

 

 

「…ラミィちゃんが、初めてになるんだよね?」

 

 

「当然ですよ。ラミィが提案したんですから」

 

 

その言葉に、2つの人型から空間が歪んだと錯覚するほどの殺意が立ち篭める。

それでも、ビロードは揺れなかった。

 

 

「ご主人を変えるため、なんだよね?」

 

 

「はい」

 

 

「じゃあ、独り占めしないって宣言して?」

 

 

「ええ、ラミィは決して独占しません。これは、みんなの為でもあるんですから。ここでラミィを殺すよりは良い結果になるでしょうね」

 

 

この発言で、ようやくこの場が収まった。

 

 

「それに、結界が揺れた件もあります。早めに行動するのが吉かと」

 

 

結界に影響を与えた人物は予想できている。

というか、彼女しかありえない。

それよりも、あと何人がこのことを察知したのかが問題だ。

 

 

「その件はるしあとノエルで何とかするからいいよ。ラミィちゃんは彼のことだけ考えといて」

 

 

「任せますね」

 

 

「こっちもね」

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

七つの大罪、というものがある。

七つというのは、傲慢、怠惰、強欲、暴食、憤怒、色欲、そして嫉妬のことだ。

これらは人を罪へと導く感情とされている。

かつては憂鬱や虚飾もあったが、統合されてしまった。

 

 

まあそれはともかく、ここで述べられた感情は人間の本能に直結したものばかりだ。

欲求階層において低位な、言い換えると優先順位が高く、誘惑など身の回り数知れず。

 

 

 

 

――そして、罪は伝染する。

咎人の意思に関係なく、広がっていく――

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ねえ、あれは何?」

 

 

「ん?」

 

 

その夜彼の部屋にて、不思議なものを見つけたので言う。

以前もあったが、今まで聞く機会がなかったのだ。

 

 

「ああ、あれか。スターナイトライト*1って言うんだ。綺麗だろ?」

 

 

7色に輝く球体から、1本の白い帯が一回り徐々に大きく螺旋を作っている。

そのすぐ近くに、かなり小さいが、赤、青、黄、緑の球体が浮いていた。

 

 

「あの戦いの前に、手に入れたんだ。初めて1人で手に入れられた力だからつい記念に、な」

 

 

「…ふーん」

 

 

嘘だ。

確か彼は、これを使って対象の治癒や再生をすることが出来たはずだ。

ならばこれは、戒めだろう。

 

 

 

 

――大切な人(湊あくあ)を守れなかった、自分への。

 

 

戦いが終わり平和になったと慢心した、自分に。

 

 

 

(取り上げたいんだけどなあ)

 

 

彼はこれを手にしてから、その潜在能力を発揮していった。

彼曰く、星を喰う竜と命を創る竜の力を一部もぎ取ったそうだ。

だが、それを加味しても飛躍しすぎだ。

一体何が彼をそこまで――

 

 

 

考えに沈んでいると、暗い瞳が視界に入った。

少し考えすぎたらしい。

 

 

「ん、ごめんね。ちょっと考え事しちゃって」

 

 

「構わないさ。俺はラミィのことを『待ち続ける』から」

 

 

そう、彼はいつもそうだ。

瞳を濁らせた日からずっと、ラミィたちの行動を待ちわびて、それに流されて、最後は謝って。

何度これが繰り返されたのだろうか。

 

 

「じゃあ、待ってても仕方がないし、飲もっか」

 

 

「なんかラミィと居る時酒も共にありって感じする…」

 

 

「何でよ!お酒関係ない時もあったやん」

 

 

持ってきたのはグラス2つに軽いつまみとウィスキー。

ウィスキーを選んだ理由は彼と一緒にまったり飲みたいという気持ちと、もう1つ。

 

 

「なんか不遇な感じするけど…じゃじゃーん!今日のお酒はこれだよ!」

 

 

「それ…かなり高いやつじゃないか?よく手に入ったな」

 

 

彼に言われた通り、今回のお酒は中々のお値段がする。

だが先の戦いにて報酬が弾み、ここに引きこもって居ても遊んでいけるくらいには貯蓄がある。

この程度の出費なら問題ない。

 

 

「ふふーん、美味しそうでしょ?値段もそうだけどレアだから全然手に入んなかったんだよね」

 

 

「そうか、それは『期待』できるな」

 

 

期待か。

その言葉、そっくりそのまま返したいな。

グラスに酒を注ぎ、彼に手渡す。

 

 

「うーん、いい香りだねぇ」

 

 

「ああ。俺は酒の善し悪しがあんまり分からないが、これだけで高品質であるのは分かる」

 

 

彼も楽しくなってきているようだ。

なら、早く始めよう。

 

 

 

「じゃあ、君に乾杯」

 

 

「えっと…ラミィに、乾杯」

 

 

あの時とは違う感情によるギクシャクとした感じが、かえってあの頃を連想させた。

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「すっごい顔赤いね、大丈夫?」

 

 

「…ちょっと熱っぽい。久々に度数が高いのを呑んだから、身体が慣れてないのかもな」

 

 

あれからそこそこの時間が経ち、ラミィは3杯、彼は1杯との半分程度を飲んだ。

まもなく、食べ頃となるだろう。

 

 

「満足してくれた?」

 

 

「そりゃもちろん。ラミィにお酌してもらったし」

 

 

主体性をなくしても気の利いたセリフは言えるらしい。

 

 

「ラミィが注いだからってお酒の味は変わらないよ」

 

 

「それでも、いいご身分だろ?美女に酒注がせて談笑するなんてさ。本来俺じゃありえない―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――それが、ラミィたちに手を出さない理由?」

 

 

呆れた。

まさかこの後に及んで、そんなことを考えているなんて。

ならば、仕方ない。

 

 

「ラミィ…?ッ!?」

 

 

 

彼をベッドまで引っ張り押し倒す。

言っても分からないのなら、行動で理解してもらわないと。

 

 

「いつまでそんな身勝手な考えをしているの?」

 

 

「ちょっと待て…今、は」

 

 

「もう、充分待ったよ」

 

 

朱に染った彼と唇を合わせる。

これで、もう我慢できないはずだ。

 

 

 

「たくさん愛したんだから、君もラミィのことを愛してね?」

 

その言葉が、肉欲の宴の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

喘ぎ声が響く部屋のドアから耳を離し、もたれ掛かるように座り込む。

 

 

 

どうやら、上手くいってしまったようだ。

薬を盛って、誘惑する。

何とも古典的な手法だが、引っかかったようだ。

今頃、ご主人とラミィちゃんは……

 

 

 

一体、何が悪かったのだろうか。

 

 

 

 

素直になれなかったからか?

 

 

もっと、アプローチが必要だったからか?

 

 

ご主人を庇ったあの時、怪我をしてしまったからか?

 

 

 

ご主人のことを好きな人が沢山いたのは知っていた。

皆、魅力に溢れていたことも知っていた。

それでも、勝てると思っていた。

 

 

 

だって、一緒に暮らしていたから。

 

 

皆が知らない彼の生活を知っていたから。

 

 

共に過ごした時間は、誰よりも長いと信じていたから。

 

 

 

 

そんな思考(負け惜しみ)を嘲笑うかのように、ラミィちゃん(勝者)の声が耳に届く。

あの日常がずっと続くと腑抜けていたから、こんな結末が訪れたのだろう。

 

 

 

なぜ、自分を選んでくれなかったのか。

 

 

生意気だったからか?

 

 

素直じゃなかったからか?

 

 

メイドとして無能だったからか?

 

 

あの時、ご主人を悲しませたからか?

 

 

 

考えれば考えるほど溢れ出る原因。

そのどれもが否定できなくて。

 

 

 

「ふっ…く、ひぐぅ」

 

 

気づけば、目からも気持ちが溢れた。

 

 

結局、全部自分のせいなのだ。

どれだけ想っていても行動に移せなかった、挙句の果てに周りに助けを求めた。

その臆病さと無力さのせいなのだ。

その傲慢さのせいなのだ。

 

 

 

「はっ、くっ、あっ…あん…や、あッ!」

 

 

嬌声とすすり泣く音が悲歌(エレジー)を奏でる。

これが、自分への罰なのか。

自分の責任が、返ってきたのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっ…ひぐっ―――くふふ」

 

 

あれ?おかしい。

なぜ、あてぃしは笑ったんだ?

 

 

「くふ、あはは…ふっ、くっ…あははは!」

 

 

泣いて笑って過呼吸気味だ。

それでも、笑いは止まらない。

なんで?なんで?なんで?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ああ、そうか。

あてぃしはメイドだ。

主人が…飼い主(上の立場)が、あてぃしを飼っている(雇っている)んだ。

よく言うではないか。

 

 

 

 

――下のした事は上の責任(ペットの不始末は飼い主の責任)と。

 

 

 

 

ならあてぃしがこんなになったのは、全部ぜーんぶご主人の責任なのだ。

 

 

 

「あっは!あは、アハハハハッ!」

 

 

もう涙は止まった。

 

 

いっぱい悲しもう。

 

 

いっぱい辛くなろう。

 

 

いっぱい苦しもう。

 

 

 

 

そうなった責任は、全部ご主人が取ってくれる。

 

 

 

「はっ、あっ、んん、イッ…んぁ!」

 

 

「アッハハハハ!」

 

 

気づけば、悲歌は歓喜の歌に変わっていて。

心の底から、高揚感で満たされた。

 

 

 

 

 

「あー…あてぃしの番が、楽しみだなあ。…ふふっ」

 

 

 

早く、調教してくれない(愛してくれない)かなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

「くっそ…るしあが初めてになりたかったのに…」

 

 

「それは団長も一緒だよ。ほら、そろそろ切り換えないと」

 

 

「分かってるけどさぁ…」

 

 

 

ラミィたちがおっぱじめているだろう時に、るしあと一緒にとある場所に向かっていた。

久しぶりの再会だ。

友人だし、あまり悪い気分にしたくはない。

まあ、手遅れであろうけどね。

 

 

そして目的地に着くと、既に相手は居た。

るしあはムスッとしたままだし、私が声をかけよう。

 

 

「久しぶり、随分とやつれてるね」

 

そこには、目の下には濃いクマがあり、全体的に痩せこけ、目にはかつての情熱はないが――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当然ですよ。狙っていた宝が、音もなく消えてしまったんですから。ノエル達と一緒にね」

 

 

あの時と変わらない声音の、宝鐘マリンがいた。

*1
元ネタ有り




マジで時間がないので失踪します。

次のヤンデレは多分お嬢ですね。

感想、リクエスト、お待ちしております。

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