皆様本当に申し訳ございません。
50,000UAありがとうございます!
今回明らかにライン越えなので一部添削するかもです。
脈をうつ。
主のいない鎧に膨大なエネルギーが流れ込む。
胸の装甲から収まりきらない光が溢れ、当たりを照らし、消えていく。
その光景は幻想的でもあったが、観客は誰もいない。
封印された鎧に、注目を集める者などいない。
だが、鎧の方はどうであろうか?
いや、心臓、というべきか。
―――旧大罪の心臓は、今も虚空を埋めんと光を流し込む。
旧大罪というのは、これを手に入れたとあるドラゴンの言葉遊びだ。
怠惰、強欲、暴食、色欲、憤怒、傲慢、憂鬱、虚飾――そして、嫉妬。
その罪を背負う魔物たちのドロップアイテムの合成体だ。
鎧の主から引き剥がされ、封印と称しためちゃくちゃなデバフ魔法によって随分と弱体化していた。
そう、
ここには、多くの罪人がいる。
いつからか、色欲にまみれたケダモノが現れ、それが伝染し一気に集まった。
暴食だけが銀からしか発生しなかったので時間がかかったが、彼らが体を重ね初めてからは暴食も加速した。
食事というよりは、心の貪りだが。
そして何より、主から感じられる罪が心臓を活性化させる。
怠惰、憂鬱、色欲…それらよりも遥かに大きなものが、主から現れている。
虚飾についても新しく来た人間から供給されており、充分だ。
あと必要なのは、主の意思だけだ。
ヒトの黒い感情を輝かせ、無へと送る様は、憐れで美しかった。
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ここに来てから、もう1週間だろうか。
彼が近くにいるのに中々会えないというのは想像よりもどかしく、退屈であった。
当初は勝手に会ってしまおうかと思ったが、周りの彼に対する執着の具合を見てやめた。
そんなことをしたら恐らく殺されるだろう、冗談抜きで。
(流石に命とは釣り合わないんですよね…)
るしあがいる以上、殺したって死霊術で蘇ることが出来るのでそういったモラルが歪んでいる可能性がある。
不用意な言動は慎むが吉だ。
それに、もう少ししたら会わせてくれるらしい。
それまでの辛抱だ、今までに比べたら楽なもんだ。
『はっ、はっ…イッ、あ"あ"ッ、ァッ…』
あと、ノエルが良いものをくれた。
屋敷の中を自由に見ることが出来る手鏡のようなマジックアイテム。
音声付きで映像を見ることができて、一部を除いたほぼ全ての部屋を色んなアングルから見られる。
もちろん、彼の部屋も。
(今日はあやめ先輩か)
先輩と呼ぶのは彼女と手合わせしたときに負けたことからだ。
それにしても、毎晩毎晩色んな女と体を重ねるなんて、見ない間に随分と罪な男になったものだ。
(それにしても…あくたん、意外に大胆だったな)
他の女との痴情を見て、嫉妬とか黒い感情が出てこない訳では無い。
それでもこれを受け入れない限りは彼と共には居られないのだ。
ちなみにこのアイテムを貰ってから毎日彼の部屋を見ていたが、フレアとノエルのはまだ見られていない。
それどころか、その時だと思しき日にはフレアしかおらず、また交わってもいなかったのだ。
この件についてノエルにクレームを入れると、どうやら何日かに1回は添い寝で済ませて何もしないらしい。
また、貰った日の前日にその埋め合わせとして2人同時にやったそうだ。
(見ようとしたことを怒らなかったのは、何ででしょうかねぇ)
もう、この時点でかなり壊れているように思える。
安全策をとるなら、連絡するべきだ。
ここへ来れたのは、彼女との協力関係があってこそなのだから。
(ごめんなさい、それでもあたしは…)
初めから裏切るつもりであったとはいえ、罪悪感が体にのしかかってくる。
でも、決めていたんだ。
妥協なしに夢を叶えるなんて、才能と運をもつ人だけの特権だ。
彼が居なくなって、それを痛感したあの日からずっとこの時を夢見てきた。
(謝罪も、後悔もしません。恨むなら、あたしを恨んでください)
何も出来ない今はとりあえず、おさまらない下腹部の熱に応えよう。
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『ンッ…ぐ、ガハッ!うぇ…ゲホッ』
気持ち悪い。
『てめ、何吐き出してんだよ!』
『ぐあっ!』
痛い。
『待て待て待て、傷付けるなって命令だぞ!?』
『お前が回復魔法使えるからいいじゃねえか。膜は治せねえからこれで我慢してやってるってのに』
『そういう問題じゃねえだろ、いくらなんでも雑にしすぎだ』
『こいつの腕輪が力を奪ってるんだから抵抗も出来ねえよ。鬼族は体も丈夫で、自然治癒も人間より優れてる。ほら、問題ねえよ』
苦しい。
『身に付けてるもんが腕輪だけってのが中々…あーあ、見た目も良いのに本チャンまで持ってけねえとか』
『当たり前だ。そもそも人質として拉致ったんだぞ?こんな杜撰にしてることがそもそも異常だ』
『そうやって言いながら、ここに来てる時点でお前も、だろ?』
『…まあ、そうだな』
『…す…ぇて』
『あん?なんか言ったか?』
『たす…けて…うぐッ!』
『お前が!ちゃんと!俺らの役に立てたら!助けてやる、よ!』
痛い。痛い。痛い。痛い。
『ほら、休憩できただろ?もう1回いくぞ?』
『…ぁ…ぃや…』
気持ち悪いのは嫌。痛いのは嫌。苦しいのは嫌。
『あんま殴んなよ、魔力の限界だってあるんだから』
『こいつが暴れなければな。さて…』
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
辛い。
苦しい。
助けて――
――――あやめ?
崩れていく。
気持ち悪いのも、痛いのも、苦しいのも全部。
そこには、ただ彼が立っているだけ。
澄み渡った青い空の下、目に光をやどす彼が笑っていた。
「余は…余はなにをすればいい?余にできることならなんでも…」
「…」
「捕まっちゃって、酷い事も言った…けど、それでも余は―」
「―あやめ。しばらく休んでてくれ。」
「ぇ…」
「あやめを酷いようにした奴らはまだ全員は仕留められていない。あいつらを潰す、その時まで少し待っててほしい」
「ま…まって…」
「まだ万全じゃないだろ?それに…あんな奴らに傷付けられてるあやめの姿を、もう見たくない」
「それじゃあ…余は…余はなにをしたら…」
「ここで、俺の帰りを待っててくれ。そん時に、笑って出迎えてくれたら最高だ。」
――あやめはただ笑って楽しそうに話してくれればいい。
その言葉が、何よりも残酷で。
1番、聞きたくなくて。
待って…行かないで…
余を必要として!
「ッ!?」
意識を引きずり出される感覚。
先程の嫌悪感も、彩りも感じられない暗い部屋にいると知覚して、ようやく夢だと理解した。
(ついに…この時まで…)
あの夢は、1人で眠るときによく見るもの。
でも、彼といる時には決して見ることは無かった。
その、筈なのに…
忌々しい記憶。
やらかして、敵に捕まってしまった時の記憶。
慰みものとして少なくとも5人に嬲られた。
「無傷で」捕らえておくという約束を守るために、犯されなかったことだけが幸いであった。
それでも、あの日々は地獄だと思っていた。
理不尽に蹴られ、使い潰される。
助けられたのは、捕まってから2週間後だったらしい。
もはや時間の感覚も狂っていて、そんなことも分からなかったが。
あの日以来、いわゆる男性恐怖症をわずらった。
今ではだいぶ克服できているが、当初は刀を向けるだけでも震わせていた。
救出されてから初めて彼と会った時、散々に責めた。
――どうしてもっと早く助けてくれなかったの!?
――ごめん。
――どうして…ねえ、どうして!?
見知らぬ男によって育まれた嫌悪と憎悪を、よりにもよって彼にぶつけてしまった。
トラウマによって、彼に対してすら忌避感を覚えた。
苦しくて、辛い原因がどれなのか、あの時はまったく分からなくって。
1番近くにいた存在に、全てをぶつけてしまった。
それでも、立ち直ることはできた。
毎日の彼との面会で、少しずつ、少しずつだけど普段通りになっていった。
周りの協力と、余が錯乱して傷つけてもめげずに来てくれた彼のおかけだ。
でも、彼は余を戦いから遠ざけた。
余にしてほしいことを彼に聞くと、いつも決まって、笑顔で喋って欲しいと言う。
その場にいてくれるだけで、幸せになれるのだと。
それでは、ダメなのだ。
それだけでは、彼の役に立てない。
彼の、必要不可欠な存在になれない。
――だから、余はこの状況がとても嬉しいのだ。
彼は、もう戦うこともなければ、余を置いていったりもしない。
余たちと…余と一緒じゃないと、何も出来ない。
そんな状態が、本当にうれしくて。
その目に光など必要ない。
ただ、たった一人を写し続ければ、それで良い。
そんな願望が叶ったことが、至福だった。
(ぐっすり眠ってるなあ)
朝、彼より早く目覚めるこの時が好きだ。
彼とは身長差が大きく、どうしても見上げる形になってしまう。
だから、一緒に寝て頭の位置が同じなこの時がいい。
すると、闇が開かれた。
「おはよう。ぐっすりだったな」
「…はょ…」
現実への覚醒が不十分な結果は舌足らずな挨拶として現れた。
こんな風に、ゆっくり眠っていても何も言われない平和が楽しい。
「じゃあ、朝風呂行くか」
「ん…」
――――――――――――――――――――――――――
「かゆいとこはないかー?」
「ん、大丈夫」
「そうか」
目の前にある頭をわしゃわしゃと洗う。
揃えているものも良いし、生活習慣も…まあその、夜更かしを除けば良い方なので、髪質がいい。
飽きない感触だ。
だが彼に言っても、自分のを触ればいいと返されてしまう。
褒めているのだがなぁ。
頭を洗い流し、体を洗ってから攻守交替する。
余の髪はかなり長いので、正直洗うのは大変だと思う。
自分のなので、こちらは慣れているが彼にとってはだが。
優しく、丁寧にやっているのが感じられ、ちょっとニヤけちゃう。
少し強めのシャワーで泡が洗い流されたあと、彼の手が止まった。
「もー、また余のうなじを見ておるのか?」
「見る機会があまり無いからな…その、髪長いし」
「別に責めているわけじゃないからな。好きなだけ見な」
体を見られるのはあんまり好きじゃない。
あいつらに汚され、傷つけられた痕が今もこびり付いている感じがする。
でも彼は綺麗だと言ってくれる、大事にしてくれる。
なら、見せることも、差し出すことにも抵抗はない。
彼が手を泡立て始めたのが鏡越しに見えた。
「もう満足した?」
「これ以上見てると我慢できなくなりそうだからな…洗うぞ?」
「…えっち」
――――――――――――――――――――――――――
「今日は何するんだ?この前の続きか?」
「んー…」
朝ごはんを食べながら話を振る。
この前の、というのは小物などの制作だ。
彼の部屋にあるスターナイトライト、あれを媒介して星と生命を創る竜の力を引き出し、白っぽくて虹色に輝く結晶を作る。
それを削ったり、他の材料を生産するマジックアイテムを使ったりして色々作っているのだ。
最近だと、自動迎撃機能付きの杖や、何故か三分以上流れ続けるオルゴールを作っていた。
素材の組み合わせだけでそんなものができるのはおかしくないか?
「あやめと戦いたい」
「え?」
今なんと言った?
タタカイタイ?冗談だろう?
そんなもの、もう必要ないと――
「最近、運動してないし。だらしない体型にならないようにしないとな」
「あ、ああ…そうだな」
なるほど、運動の手段がこれしかなかったからか。
危ない危ない、早とちりするところだった。
「別に構わんが、手加減はしないぞ」
「久々に剣握る奴に慈悲はないの?」
「ない余」
うーん、運動する設備も整えないといけないか。
体を動かす方法が戦いしかないのは確かに不便だしなあ。
「ふふっ、余の本気を見せてやる」
「絶対勝てないなこれは…」
――何より、もう彼は
ここで戦意を挫く。
敵わなければ、手足を削ぐ。
その四肢は、生きるために必須ではない。
ただ、こちらの温情で切り離していないだけだ。
(あ。回復魔法あるじゃん)
そうだ、削ぎ落としてもまた生やせる。
なら、躾替わりに1本ぐらい大丈夫か。
それとも、罰則がわりに千切るか。
そうすると、夜だけ再生させて、寝てる間に切り落とすべきか。
(また話し合う内容が増えてしまったな…)
寿命問題も解決してないのに、新しい問題ができてしまった。
これでは、安寧が訪れるのは当分先になりそうだ。
受験が近づいているので失踪します
次の更新は忘れた頃にやって来ると思います。
あと、ヤンデレですが順番は焔→初号機→船長→団長の予定です。
気長にお待ちください。