休日。
それは、学生であれ、社会人であれ甘美な言葉であろう。
ゆっくり眠るのもよし、趣味に時間を費やすのもよし、タスクを先回りしてこなすのもよし。
いわゆる自由とは、このことを言うのであろう。
もちろん自分も、例に漏れずその自由を謳歌する。
この前みた機械人形の映画の主人公機のプラモデルでも作ろうか、と予定していたが、お誘いがあったので断念。
休日の時間をあたしにくださいという可愛らしいお願いをされたら、断れる者などいないだろう。
その後、一人称の指摘をしたことで真っ赤になってしまった顔を見れば断るという選択など無限遠まで飛んでいく。
どうも彼女は、照れたり焦ったりすると一人称がブレる。
そこもチャームポイントなのだが、それを言うと拗ねてしまうのは既に経験済みだ。
その日の朝、朝食を済ませ、居候の分の朝食を準備した後出かけた。
え?扱いが雑?これくらいでいいんだよ。
ちょっと優しくするとすぐに煽るからなあ、見た目だけなら美人なんだが…
まあ、彼女もメイドなりに成長が見られるから今後に期待だ。
それはさておき、約束の場所に10分早く着くように家を出た…のだが、目的地に近づくと人影が見えた。
待たせてしまったことに申し訳なく思い、急ぐ。
着いたらまずは謝罪だ。
「ごめん、待たせちゃったな」
「ううん、気にしなくてもいいのです。るしあもついさっき着いたところなのです」
そう言い、潤羽るしあは笑った。
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今日はお団子なのか。
るしあを見てそう思う。
彼女はヘアスタイルが3つあり日によって変わるのだ。
彼女と共にショッピングモールに入る。
だが買い物が目的という訳では無い。
そのままフードコートへ行き、適当に飲み物を買って向かい合って席に座る。今回は勉強会だ。
潤羽るしあは死霊術師だ。死霊術や魔術、呪術に長けている。
実際彼女は学校での魔法のテストは実技、ペーパー共に優秀だ。
彼女の教えを乞うと、魔法分野での成長は間違いない。
それくらい人に教えるのも上手いのだが…
「物理が20点、数Aが25点、両方とも赤点ギリギリ回避か」
「面目ないのです…」
数学と物理は苦手のようだ。
それもそうだろう。
数学に関しては、るしあは苦手ではあるが1度見た問題は2度目でいい線まで解くことができる。
魔法を極められるだけあって、地頭は良いのだろう。
問題は物理だ。
この科目、魔法が得意な人は苦手とする傾向がある。
当たり前だ、
それに慣れると原理を理解するのがより大変になるだろう。
とはいえ、物理は必須科目、逃げる訳にはいかない。
「力の図示はできてるが…水平成分の運動がなあ」
「だって、投げ出されてから5秒間浮遊魔法で水平に動いたとかわけわかんないんだもん!」
そりゃそうだ。
魔法があると本当に文章が支離滅裂になる。
しかも実際にそれが起こせるのだから尚更タチが悪い。
研究者たちは物理と魔法を対義語としているが、実際は類義語に限りなく近いのではないか?
「これはこの前やったやつより簡単なものだ、まず…」
――――――――――――――――――――――――――――――
「お、終わったぁ~…」
るしあが力なくそう零したのは昼前だ。
よくここまで頑張ったと思う。
彼女にとって、物理など拷問に等しいだろう。
「そろそろお昼にするか、何食べたい?」
「んー、クリーム系のパスタがいいのです」
「そっか、じゃあ待ってて」
「ちょっと待つのです」
そういって自分の袖口を掴むるしあ。死霊術師なのに力が強いのはなぜだろう。
「るしあもついて行くのです」
「そしたら席が空いちゃうだろ。荷物で占領してもいいが、何か盗られるかもしれんぞ」
「じゃあ、るしあが買いにいきます。教えてもらった立場でこれ以上こき使うようなことは…」
るしあはいつもこうだ。
何とも礼儀正しく、できた娘だ。
だが、ここで退くわけにはいかない。
何せるしあは死霊術師。死霊術師になれることなどレアケースだ。
彼女の1秒は自分の1年とはとても釣り合わないだろう。
「駄目だ。まだ研究レポート書けてないんだろ?」
「うっ」
「せっかく希少な才を持てたんだから、ここで頑張らないと」
そう言って店に向かった。
幸いお金はある。選ぶのに不自由はしないだろう。
「そんなもの、どうでもいいのです。あなたと一緒にいられたら、それで、それだけでるしあは――」
――――――――――――――――――――――――――――――
ちょっと時間がかかってしまった。
料理を受け取り、席に向かう。
紙に何かを書き込んでいるるしあに持ってきたことを告げ、スペースを作ってもらう。
ちなみにだが、魔術師はレポートをパソコンではなく紙で仕上げることが多い。
何でもまあ、保存の魔法と保護の魔法を紙に書ければ絶対に失われることはないからだそうな。
魔法って便利だな(諦観)。
自分も魔法の適性があればなあ
「ん〜!美味しいのです!」
るしあの声で現実に戻る。
彼女はカルボナーラを食べている。生クリームを使うタイプのやつだ。
大して自分はミートソースパスタだ。
それも肉が少し大きめのやつ。
こうすることで、肉の食感がアクセントとなるのだ。
フォークを使い、肉の旨みがしみだしたトマトソースが絡んだパスタを頬張る。
肉とトマトの旨みが互いを高め合い最高だ。
さらに粉チーズをかけると味に重厚感が生まれる。
これもまたうま――――――
「はい、あーん」
そう言ってるしあがパスタを巻いたフォークを向ける。
「いや、何をしてるんだるしあ」
「あーんは?」
「待ってくれるしあ、流石に人前でh「あーんは?」…分かったよ」
そう言って口を開き、るしあのパスタを食べる。
生クリームとチーズ、そしてベーコンの旨みが合わさったとのに黒胡椒が効いた絶妙な味がする、はずなのだが…
「ふふ、美味しい?」
正直、わかんない。
マジで心臓がドキドキして、味なんてわかったものじゃない。
るしあは絶世の美少女だ、そんな彼女にこんなことしてもらって平静としていられる人がいるか?
「…うん、美味しいよ」
「ほんと?それは良かった!」
そう言ってまた食べ始める。
こっちの気も知らないで。
ちょっとムッとしたが、彼女に同じことをし返しても喜ぶだけだ。
諦めよう。
その後、数学を勉強し、少し魔法学を教えてもらったら、空模様は夕焼けとなった。
そろそろお開きだろう。
「そろそろ帰るぞ、るしあ」
「ん、わかったのです」
片付けを始める。
しかし、何故こうもるしあは自分に懐くのだろうか。
まったくもって分からない。
これ程できた娘だ、自分には勿体ないだろう。
ノエルもフレアもそうだが、何故なんd「ねえ、今他の女のこと考えたでしょ?」――は?
ちょっと待て、なんで考えがわかって――
「そんなのどうでもいいよ、ねえ、どうして?どうしてるしあと2人きりなのに他の女の子のことを考えるの?何で?何でなの?」
「るしあじゃ不満なの?何が足りないの?今日楽しくなかった?バカな子は嫌いなの?」
「ねえ、答えてよ」
だから何でこうも死神は来るんだ。
ハサウェイに来なくて自分に来る理由はなんだ?度胸か?
昼とは違う意味でドキドキする鼓動を鎮め、言う
「いや、楽しかったぞ?ただ、るしあがノエルたちのようにここまで自分に親しくしてくれているのはなんでだろうな、とふと考えただけなんだ」
「本当?」
「本当だ、嘘じゃない」
本当の本当に嘘はついていない、これでダメなら終わりだ。
「…そう、なら良かった!」
るしあはそう言って無邪気に笑う。
良かった、お気に召したらしい。
これでダメならほんとにどうしようかと――「でも」――え?
「次、他の女のことを考えたら、許さないからね」
自分の唇に人差し指を置き、妖艶に笑う彼女に、ゾッとしながらも魅了されてしまうのだった。
るしあは昔から知ってるよ。
蝶々になってよく見てたから。
彼とよく、蝶の姿で遊んだから。
昔のあどけない姿も。
今の成長して、凛々しい姿も。
るしあに教えてくれる時に向ける、優しい顔も。
―――そして、それを他の女の子にも見せることを。
まだいいよ、まだ、るしあのものじゃない。
でも、いつか―――
―――ぜーったい、捕まえちゃうからね?
潤羽るしあさん2周年おめでとうございます。
次回のホロメンは未定です。
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