心を安静にしたい。
先日のノエルとるしあの件を思い出し切実にそう思う。
今日のゲストはそういう心労もないだろうし、安心だ。
ゲームの準備を終え、この後の至福の時間に心を寄せながら、自分の研究を進める。
最近は液体金属研究の第一人者になった。
2年前に復讐者の無限大戦争という映画を見て、インスピレーションを受けて創ったものだ。
主人公がナノマシンテクノロジーなるものを使っていたので真似しようとしたところ、何故か液体となってしまった。
金属の定義たる展性(叩けば広がる)延性(引っ張れば延びる)金属光沢(磨けば光る)があるので金属と名乗ることは一応できる。
最近はメガネのガジェットによる脳波制御で硬化、軟化、形成ができないかのテストを繰り返している。
これができれば、名誉が得られて、ノエルやるしあの隣にいて恥ずかしくなることもなくなるだろう。
彼女たちと遊ぶことができるよう、努力を欠かすわけにはいかないのだ。
今日、居候は家にはいない。
何でも猫の獣人の家に遊びに行くんだとか。
「あてぃしがいなくても寂しがらないでね!」なんて言われたが、そろそろ追い出してやろうか。
まあ、そんな訳で応対は自分がしなくてはならない。
自分の客だから仮にいたとしても自分が出るが。
「はーい、ちょっと待っててくれ」
そう答え、急いで玄関に向かう。
メガネを外す手間も惜しい。
鍵を外し、ドアを開ける。
するとそこには――
「こんばんきーつね!朝なのに夜の挨拶をする白上がき…来ました……よ?」
―――――何故か顔を赤く染めた、白上フブキがいた。
――――――――――――――――――――――――――――――
やばいやばいやばい、すごい眼福だこの光景!
なんてことだろう、まさかメガネ姿を見れるなんて、白上の今までの徳はこのためにあったんですね!
彼の姿に見惚れながらぼーっと突っ立ってしまう。
「どうしたフブキ?顔を赤くして突っ立って、何かあったか?」
おっと、少し夢中になりすぎたようだ。
「えっと、そのメガネは?」
「ん?ああ、これか。研究のためのデバイスだよ。まだ試作段階だけどな」
研究というのはあの金属のことだろう。
あれは何ともすごい発明だ。
魔法によって、物理法則を無視した容器の作成は容易になった。
そんな容器にあの液体金属を大量に詰め込んだら?
それを自在に操れたら?
そんなことになれば彼はとてつもない力と財を手にするだろう。
何せ即座に剣や槍、果ては銃やビーム兵器を作成し、設計さえインプットしておけば、アーマーすら作り出す。
魔法が使えるこの世界では、治安維持のための武力の向上は必須、なのでそうなれば彼の技術にはとてつもない需要が生まれる。
今はまだ夢物語だが、彼なら数年で実現してしまうのだろう。
1度だけ、何故研究を続けているのかを聞いたことがある。
なんでも、ノエルたちと並び立てるように、自分にも何か実績が必要だから、だそうな。
なんて健気なんだろう。
世界的に見ても進んだ技術を開発しているというのに、理由はなんとも可愛らしい。
「白上ちょっとそれ気に入っちゃったので、今日1日それつけていてくれませんか?」
「え?別にいいけど…似合ってる?」
「ええ、それはもう!白上が保証します!」
「そっか、フブキがそう言うなら安心だ」
なんとも嬉しいことを言ってくれる。
これでは尻尾を押さえるのが大変だ。
「さ、上がってよ」
「はい!お邪魔しま〜す」
――――――――――――――――――――――――――――――
今日彼の家に訪れたのはゲームを一緒にするためだ。
大人気のハンティング系のゲームに大型アプデがきたので、それをやろうと白上から誘ったのだ。
彼はあまりゲームや映画といった、娯楽に時間を使わない。
見たとしてもほとんどが彼の研究の参考のためだ。
そんな中、例外として彼がハマったのがこのゲームであるため、よく一緒にやっている。
「もうフブキは攻略したのか?」
「いえいえ、せっかくなので君と一緒にやりたいな〜と」
「へえ、いつもならその日中に隠し要素まで遊び尽くすのに」
「このゲームだけは別ですよ〜」
だって一緒にドキドキワクワクしたいんだもん。
「ん、少し待っててくれ、準備する」
そう言って彼はゲーム機を起動し、UIを立ち上げる。
「うわぁ、1週間ぶりなのか、時間の流れは早いなぁ」
「えっ、1週間!?1週間もやらなかったんですか!?」
そんな状況など考えられない。
1週間ゲーム禁止など白上からすれば拷問だ。
「ああ、研究ばっかりやりすぎたな」
「…なんで、そんなに時間を研究ばかりに費やすんですか?」
「…何度も言っているだろう、ノエルやフレアにるしあたち、それにフブキと一緒にいても恥ずかしくないようにだ」
実際、白上を含めて彼の周りの人は皆、戦闘科ではかなりの好成績をおさめている。
また、白銀ノエルや宝鐘マリンなど、文字通り次元が違う存在もいる。
前者はその実力と位が、後者はその実績が。
本人たちからそんなこと気にしていないと言われても、やはりどこか遅れを感じるのだろう。
そんな彼が可愛くて、思わず後ろから抱きしめる。
「――何をしている、フブキ」
どこか突っぱねるような声色。でも、その奥にある感情など分かっている。
「無理、してないですか?」
耳で囁く。
彼の弱点は耳だ。
そっと囁くことで、より彼の心に言葉が染み渡る。
「この研究はある意味自分の趣味だ、没頭できてるんだから無理してやっているわけじゃ「違いますよ」―は?」
「少し、思い詰めてませんか?」
「そんなわけないに「ではなぜ、そんなに焦っているんですか?」…え?」
きっと、無意識なのだろう。
ゲーム、映画、漫画…どれも、アイデアの宝庫だ。
いつもこれらを見て、発想を求めると同時に心を休めていたのに。
もちろん、ゲームを点けていないだけであって、漫画や映画を見ている可能性はあったが賭けた。
やっぱり白上は幸運きーつねなのだろう。
「…また、白銀聖騎士団が成果をあげたんだ。るしあも最近、新しい魔法への糸口を見つけた。フレアやラミィだって、精霊との結びを強めてる。自分だけが足踏みする訳にはいかないんだ」
彼はメガネを外し、目をこする。
きっと泣いているのだろう、自分の無力さに。
悔しいのだろう、親しい者に置いて行かれたように感じて。
まったく、しょうがないですねえ。
そう思い床に座り、太ももを軽く叩く。
「おいで。白上が癒してあげます」
いっぱい泣いてください。
いっぱい悩みを言ってください。
いっぱい弱みを見せてください。
全部、皆の前では見せれないこと。
でも、白上には見せてくれること。
そのことが白上をちょっぴり優越感に浸らせる。
たくさん頑張ってほしい、かっこいいところを見せてほしい。
でも、辛くなったら、その時は――
―――白上を頼ってください。いつでも、君を癒しますから。
これちゃんと白上フブキかな?不安です。
次回のホロメンは多分マリンメイドです。
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