やっちまった。
いくらなんでもあれはないだろう。
言うまでもなく、フブキの件だ。
同級生にあんな惨めな姿晒すとか何の罰ですか?
ちなみにあの後、自分は泣き疲れて寝てしまったらしい。子どもかよ。
起きた時には昼になっており、それまでずっと膝枕をしてくれたフブキに土下座し謝罪すると怒られた。
マジで理不尽に感じたが、フブキの時間を浪費したのだ。受け入れるしかあるまい。
その後は何も無かったのようにゲームをしたが、自分のPSは絶望的なまでに下がっていた。
ほぼフブキにキャリーされたようなもので、それはそれは酷いものだったが、フブキ的には満足らしい。
帰り際にあのことは忘れて欲しいと一縷の望みをかけて言ったが、やだぷぅ、とだけ言い残し走り去った。
流石は戦闘科のエリートだ、スペックが違う。
この世の中では、頭よりも魔法や武術の才が優遇されている。
当然だろう。この世界の生態系のトップは人間ではない。
ドラゴンや天使、悪魔がいるのだ、どれほど力を磨いたって足りやしない。
まあ先日、ドラゴンの最強格の1人に研究用の金属を頂いたのだが。
彼女も不思議だ。
なんでも天使と同居しているらしい。
一体何があってそのようになったか気になるが、中々教えてくれない。
そんなに言うなら家に来てよ!と天使に誘われたが、女の子の家などノエルの誕生日パーティー以外で行ったことなどないので無理だ。
まあ、次誘われたら行こう。
未来の自分に丸投げする。
日が沈んで来たので、そろそろ居候が帰ってくるだろうと思い、研究資料を片付ける。
晩御飯の準備はほぼ出来ている、出来たてじゃないと文句を言うので彼女の帰宅を待つ。
するとドアが開いた音がし、続いて声が聞こえた。
「ただいまー!ご主人、ご飯できてる?」
「あくあの帰りを待ってたんだよ、冷めてると文句言うだろ…は?なんで?」
リビングに入ってきたのは、我が家自慢の駄メイドの湊あくあと
「Ahoy!宝鐘マリンです、お邪魔しますね」
「是非とも帰ってくれ」
「なんでだよ!マリンに会えて嬉しいダロォォン!?ほら、嬉しいって言えよ!」
――誘った覚えのない、宝鐘マリンがいた。
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マリンはあくあの客人らしい。
何でもお泊まり会をするんだとか。
「にしても珍しいな、あくあ。いつもは誘われる側なのに。」
「ああ、それは船長が頼んだんです。お泊まりはあくたんからの提案でしたが、あくたんの家に全然行ったことなかったんで」
犯人はお前か。
多分この性格が原因で、マリンと共にいても劣等感を感じないのだろう。
こういった、アクティブだが人の心を読めるところが彼女の魅力だ。
あくあの希望でオムライスの準備をしていたが、チキンライスを多めに作っておいて良かった。
サッと温め、バターをしいたフライパンに溶き卵を入れる。
あくあのお店みたいなのが食べたいという無茶苦茶なオーダーに応えるために練習したのだ。
オムレツのようにまとめ、チキンライスの上にのせる。
包丁で切れ目をいれ、広げる。
半熟の玉子が姿をみせた。
「おお〜!お店みたい!」
「それがいいと言ったのはあくあだろう…ホワイトソースとデミグラスソース、ケチャップがあるから好きなのを使ってくれ」
「うん、わかった!」
「え、自作ですか?」
「さすがにデミグラスは無理だよ、友人から譲ってもらったものだよ」
「てことはホワイトソースは自作ですか、家庭的ですね」
「どっかのメイドが仕事しないからな」
「うっ、で、でも、掃除とか洗濯とかちゃんと出来てるから!」
その通りだ、料理以外のスペックは高い。
だが料理になると、皿を割ったり、手際が悪くなかなか作れなかったりということになる。
せめてチャーハンなどが作れればなあ。
せっせと2人分つくり、サーブする。
あくあはケチャップ、マリンはホワイトソースにしていたので、自分はデミグラスソースにした。
貰うつもりはないが、何となくだ。
1口頬張る。
野菜や骨をじっくり煮込み、旨みを出したデミグラスソースが美味い。
ちょっと贅沢して買った高い卵を使ったが、その濃厚さと噛み合い絶妙なハーモニーを奏でている。
思わず顔を綻ばせていると、あくあと目が合った。
次に言う言葉が何なのか分かるくらいには一緒に過ごしている。
「ご主人、1口ちょうだい!」
ほら来た。
自分の周りは人に食事を与えるか貰わないと気が済まないのだろうか。
「いや、マリンがいるぞ?」
「あ、そっか。船長にも1口あげないとだね」
そうじゃない。
何でそんな風になるんだ。
「船長も1口欲しいです、凄い美味しそうに食べてますし」
何でそんなにニヤニヤしてるんだマリン。
もう考えるのも億劫なので、2人に1口分与える。
「美味しい!」
「ほんとですね、お店やれるんじゃないんでしょうか」
「よせやい」
お世辞にも程があるだろう。
「それにしても…」
マリンがまたニヤニヤする。
何か嫌な予感がした。
「あくたんだけでなく、船長にもあーんするなんて、るしあやノエル、フレアたちがなんて言うでしょうね?」
なるほど、そうきたか。
確かにこのことがバレたらマズイだろう。
今挙げられた人以外にも、戦闘能力が高い人は多い。
多いのだが…
「ノエルやフレアなどは多分大丈夫だが、るしあやラミィがどう出るかは分かってるのか?」
「え?そりゃ、あなたの事を…」
「違う。彼女たちは自分ではなく、その相手を殺すと言っていたぞ」
これは事実だ。
るしあもラミィも、酔っていたときに言っていたので嘘とは考えにくい。
「るしあやラミィに嫌われてもいいってんなら、どうぞ広めておくれ」
「…遠慮しておきますね」
その後はあくあが何故か拗ねたこと以外は何も無く、平和に食事が済んだ。
皿洗いを済ませると、風呂の用意ができたので先を譲る。
嫌がるあくあを引きずって、マリンが風呂場に向かった。
「覗いてもいいですよ?」なんて言っていたので、最近成功した中量の液体金属の完全制御を活かして、大型メイスをつくるとさっさと行ってしまった。
振り回せるわけないのに。
―――――――――――――――――――――――――――――
「あくたんは、彼のことをどう思ってるんですか?」
湯船に浸かっている船長からそんな風に訊かれる。
「ッスーーーー……す、好きだよ」
そこそこの年数を同じ屋根の下で過ごしているのだ。
そういった気持ちも生まれてくる。
「そういう船長はどうなの?」
「ええ、好きですよ」
堂々とそう言った。
「何かを頑張ってる姿も、船長の圧に負けじと会話してくれるところも好きですね。まあ、勉強を教えてもらえないのは残念なんだワ」
「そりゃそうでしょ」
こう見えて船長は凄いのだ。
白銀聖騎士団が陸地の治安維持組織ならば、海は宝鐘海賊団だ。
レヴィアタンやクラーケンなどの大型の魔物を追い払い、場合によっては討伐する。
その組織のトップたる船長を務めているのだ、頭が良いに決まっている。
え?聖騎士団団長?あの人はまあ…ね?脳筋だし。
「それにくっつければあくたんも付いてきますし、1度で2度美味しい的な?」
「え、やだ」
「ちょっとぉぉ!?即拒否らなくてもいいじゃないですか!」
どれだけ仲が良いと言っても、譲れないものがある。
ご主人の世話は
これは、メイドという存在が生まれた昔からずっと続く、運命なのだ。
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最近見つけたELSクアンタという機械人形の設定資料や戦闘シーンを眺めていると、2人がきた。
「お先ー、ご主人!」
「お先にいただきました」
「おう、マリン!」
「マリン船長ダロォォン!?」
そんな風に会話し、風呂場へ向かう。
あくあとマリンには、あんまり気を使わなくていい。
とても楽でいいのだが、脱衣場に下着を置いていくのはやめてほしい。
どうせマリンだろうが、そういったところには気を使ってくれよ、頼むから。
そう思い、クスッと笑いながらなんて伝えればよいか考えるのだった。
合計1万字いったので失踪します。
次回の投稿日時、ホロメンは未定です。
ヤンデレが書けたらいいなと思っています。
感想、リクエスト、お待ちしております。
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