IS~インフィニット・ストラトス~ Re:交わる物語   作:ダメ野良犬だったもの

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 以前書いたものをリメイクして更に書き直しました。


Good bye U.C 0096 / Hello A.D 2050

 17年間、俺は連邦軍のMSのパイロットとして戦い抜いてきた。

コロニー落としによって消えた故郷と死んだ家族の(かたき)討ちで始まった軍人としての生活に馴染むまで時間は掛らなかった。

 

「鬼畜ジオンを殺せ!」

宇宙(そら)の害虫共を駆除するんだ!」

 

 上官が、仲間が、口々に叫ぶ言葉を聞きながら俺も賛同していた。だが…

 

[―――だ、駄目だぁっ!俺に構わずいk―――]

[包囲されたっ、救援を乞う!救援を乞う!うわぁぁぁっ]

 

 一年戦争…地獄の日々を今でも夢に見る。

ジオンのMS【ザク】による蹂躙、死兵として前線に送られては死ぬ仲間達の断末魔、将来を誓い合った恋人も核爆発の中で塵となって消えた。

 

「なんで、なんで俺だけ置いていくんだ…お前ら…っ!」

 

 どれだけ苦しんでも戦いは終わらない。

死ぬ度に補充されたり、或いは異動した先で新たな友を得ても、戦いの中で俺だけを残してみんな消えていく。

 

 年齢を重ねると同時に感情というものが希薄になっていった。

俺はMSのパイロットとして戦って、敵を殺すだけの人殺しの歯車でいいと思った。

 

 一年戦争、グリプス戦役、ネオ・ジオン戦争と時代に合わせた乗機を乗りこなしながら、いつしか俺はMS部隊のエースパイロットと呼ばれるようになった。

俺の名前【クロサキ・オオカミ】苗字の黒と、名前の狼から取って【連邦の黒狼】

一年戦争時代に活躍したジオンのMSパイロット【シン・マツナガ】の異名【ソロモンの白狼】に対抗してつけたようだが、俺はそんな立派なものじゃない。

合理的に判断して戦い、運良く生き残っただけだ。

 

(だからいつかは……こうやって死ぬ時がくる)

 

 U.C0096…最期の出撃となったのはトリントン基地の防衛だった。

襲撃してきたジオン残党のMSを撃破していた。

乗機【バイアラン・カスタム】の機動力を駆使して、メガ粒子砲とビーム・クローによる一撃離脱を意識した戦いは一方的のように思えた。

 

 敵の【マラサイ】が放った海ヘビで動きを止められた直後、遥か上空を飛んでいた残党軍の輸送機に乗る【ザクⅠ・スナイパータイプ】にスラスターを撃たれて落ちた。

 

(この激戦の中で空中の俺に狙いをつけたのか?野郎、良い腕してやがる…)

 

 もうジオンに、スペースノイドに恨みや憎悪なんてものは抱いていない。

それどころか俺は戦いの中で、強敵に対し操縦技術の賞賛と対抗意識を燃やしている。

―――だがまあ、それはそれとして…俺に海ヘビを巻き付けやがったマラサイは落下中にビーム・クローの餌食にしてやったがな。ガハハ!転んでもただは起きねえぞ!

 

「地上までの距離…1000~800ってところか…?」

 

 警報が鳴り響くコクピット内でひとりごとを呟いた。

ペダルを幾ら踏み込んでも、無事なスラスターも反応しない。

幾つかのシステムを起動したり、スラスターの再起動を試すがうんともすんとも言わない。

 

(当然か……こいつは少しでもエラーを吐いたら動かなくなる検証機(ポンコツ)だからな)

 

 ヘルメット裏の通信から部下達の声が聞こえる。

生き残ってるのは…半分もいないか。

最初の襲撃時に、哨戒中の奴ら大半がやられちまったみたいだからな…

海上の部隊とも連絡が取れないってことは…あいつ等も逝っちまったんだろう。

 

「皆…今、俺もそっちに―――――」

 

 コクピット越しに見える砂の大地へと落ちた瞬間、俺の意識は途切れる。

死ぬ瞬間の壮絶な痛みはあったかもしれないが、大して恐怖を感じなかった。

連邦軍の兵士、クロサキ・オオカミ大佐は名誉の戦死を遂げたのさ。

 

 

「目が覚めるとそこは、人類がまだ地球から巣立つ大昔の時代でした」

「あっはっは~!未来人の君からすれば大昔だけど、束さんにとっては現代(いま)だよ~!」

 

 A.D2050年、薄暗い実験室で俺は()()()()()()()のやりとりをしている。

鋼鉄のベッドで横になった俺の体に、無数の電極が張り付いていた。

独り楽し気にパソコンと向き合っていた紫髪の少女【篠ノ之束】は俺の呟きに対し、コスプレ用のウサ耳をピコンと動かしてぐるりとその場で半回転し、話しかけてくる。

 

「その通りだな束。ところで検査は終わりか?」

「うん、外していいよ~!サンキューまたよろしくね~おーくん♪」

 

 言われて体についていた電極をさっさと外して着替えた。

十代の少女に裸を見られたくらいで今さら動揺はしないが、見せびらかすような趣味もない。

それよりも早々に改善して欲しい事を束へと指摘する。

 

「了解だ。……と言いたいところが、俺のことを()()()()って呼ぶのは勘弁してくれ。見た目はこの通り()()()()()()()()だが、中身は立派なオッサンだからな?」

 

「えぇ~いいじゃーん!おーくんって自分でオッサンぶってる割には、趣味とか服のセンスが他の有象無象どもと変わんないしぃ?中身がアラフォーって実は嘘でしょ~?」

 

 言葉を並べて否定したいが、束の指摘は間違っていない。

兵士だった自分とは別人と思うくらいに、今の俺は若者の生活を送っている。

洋楽、アニメ、ドラマ、映画、洋服、漫画…流行のものには特に敏感だ。

逆に女子高生でありながら、私生活が壊滅的で趣味が研究しかない束の方が心配になってくる。

 

「青春を堪能出来るのは若い内だけだ、少しは若者らしく青春しろよ束」

 

「ふっふ~んだ!偉大な研究に忙しい束さんは青春なんて犠牲にしちゃうもんね~!そーんなくだらないことよりもっ、束さんにとって人類のステージを一歩先に進めることが重要なんだよ~!」

 

「人類の…ステージねぇ…」

 

 束の研究は、俺の知らない西暦の歴史に新たな風を吹き込むだろう。

それが吉と出るか凶と出るかは分からない。

 

 俺に出来ることは、ただ遠い未来で人類が最悪の悲劇を起こしたことを、その副産物として生まれた驚異の技術を、この世界でただ一人理解出来る彼女に教えることだけだ。

 

「…まぁ、そうだな…お前のやりたいようにやればいい。いつだって世界を動かすのは、俺みたいな寂れた歯車ではなく、それを作り動かす仕組みを生んだ天才と相場は決まってるからな」

 

「えっへへ~おーくん分かってるぅ♪―――そう!束さんは世界一、いや宇宙一の天才だからね!世界の一つや二つ、動かすくらいお茶の子さいさい!」

 

 彼女が進めた現代(いま)のその先で新たな悲劇が繰り返されるようなら……俺は戦うだけだ。

今度はMSのパイロットとしてではなく、一人の人間として、歯車の役割を果たすさ…

そんな事を思って笑みを浮かべている俺に向かって、とつぜん束は顔を近づけてきて言った。

 

「――――――歯車、その程度のものにおーくんを収めるなんて束さん許さないからね?私に悪魔の囁きをしたのは他でもない君だよ、君も世界の中心になるんだ」

 

「……冗談だろ束?」

 

「―――あはっ♪」

 

―――どうやら俺の人生は前世よりも波乱万丈になることが確定したらしい。

 

 




黒崎 狼(クロサキ・オオカミ)

 本作の主人公、連邦軍のMSパイロットとして一年戦争時代から活躍するも17年後に起こったジオン残党軍によるトリントン基地襲撃で戦死する。
その後はISの世界に転生、自分が知り得る知識を腐らせるのはもったいないと思い、偶々近所にいた自称天才・篠ノ之束に宇宙世紀の話やモビルスーツ技術のことを教えてしまう。彼女が未来をどんなふうに変えていくのか楽しみにしながら自分は傍観するつもりでいたが、それを許さない束によって物語の中心を歩くことになった。

篠ノ之 束(シノノノ・タバネ)

 IS原作ファンの皆さんご存知、IS世界で一番やべー奴。
身内と認めた者以外には冷淡な彼女が、唯一心を開いた同級生の狼に「束さんとちーちゃんに並ぶ細胞レベルでオーバースペック」な素質を感じ、その正体を知って自身の研究の協力者へと半ば無理やり引きずり込む。以降は「おーくん」と愛称で呼ぶほど無邪気に接する一方で、彼が束の描いた未来で、傍観者になろうとしていることを否定し彼の人生を面白おかしくしようと動いている。


2名とも本編開始時24歳、プロローグの時点では16歳

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