IS~インフィニット・ストラトス~ Re:交わる物語 作:ダメ野良犬だったもの
以前の作品に比べて小難しい単語が怒涛のように並んでいるのは作者がそういった知識をドヤ顔で使いたいだけなので、深く考える必要はありません(半笑い)
あとはなんとなく原作を読み返して「こういうのってどうなんだろな?」とか折角のクロスオーバー作品なので宇宙世紀と比べて、連邦軍の一兵士だった彼から見てこの世界をどう思うのかなーって純粋に書きたくなったので書いてみました。
またリメイク前とは違うオリ展開に突入するにあたって、追加されたタグに意味を与える原作キャラクターが続々登場すると思います。
あまり長々と長文を書いても蛇足にしかならないかなと思いつつ、ここらへんで切り上げて……
本編をどうぞお楽しみください。
一年生達が初めて受けるIS学園の授業は滞りなく進んでいる。
普通科の公立高校や専門学校とは違う、国立のIS専門学校は言うなればエリート校。
通常の授業に加えてISの専門的な知識や操縦を一年生の一学期にはマスターして、二学期からは各々が得意とする分野に進まなければならない。
大雑把に分ければ実技かそうでないかの違いである。
実技を選んだ生徒の多くは校内で開催される行事等で目立った成績を挙げて、代表候補生や企業の代表として将来は操縦士としての道を進むことになる。
それ以外のIS学園卒業生の進路といえば、多くがISの新装備などを開発する企業などのメカニックやエンジニア、デザイナーといった仕事に就くことで、運悪くIS学園に身を置きながらISと関わる仕事に恵まれなかった生徒はそれぞれの国へと帰り、一般企業への就職活動か大学への進学を考えなければならない。
「――――――であるからして、アラスカ条約の改正がなされた訳だ」
チョークで板書する……等という前時代的な教育方法をIS学園の教員の殆どが採用していない。
教卓に立った教師が手にしたリモコンでボタンを押せば、スッと立体映像が現れて分かり易く多言語化された文章と学習内容に相応しい画像を自動で選択、生徒たちの机の前に展開してくれる。
今教員がやっているのは現代史に於けるISの地位向上とその後について。
ISが世に出回った頃、科学者や研究者の多くが未知の存在を鼻で笑った。
(まるでミノフスキー博士だな、あの人は……)
脳裏に過ぎるのは破天荒を絵に描いたようなウサ耳エプロンドレスの女の笑う顔。
いつの世も天才と呼ばれる科学者や発明家は最初の頃は世界に理解されず、やがて理解される頃には厄介な人物としてその身を世界中から狙われるようになってしまう。
宇宙世紀の頃は戦争の悪用を恐れて連邦側に亡命した結果が泥沼の一年戦争だったが、篠ノ之束は誰の力も借りることなく表舞台から隠れて世界の何処かに逃げ果せた。
そんな事を暢気に考えていた黒崎に対して教師が指名する。
「では黒崎君、アラスカ条約について25ページの項目を読んで頂戴」
「はい―――アラスカ条約は別名IS条約とも呼ばれ、日本を含む21の国が条約に署名した事で設立されました。これは日本国内でしか開示されていなかったISの情報を世界中に向けて共有する事を確約させた他、第一世代開発と同時に始まった軍事転用における特定通常兵器使用禁止制限条約の附属議定書の規制対象にISが追加された事を世界中の国・軍隊・企業に認知させる必要があったからとされています。またISが国連宇宙5条約に準ずるものという共通認識を持たせる狙いもありますが、此方はまだ正式な発表はされていないとの事です」
「そこまでで良いわよ黒崎君。それじゃあ皆、アラスカ条約の項目に関しては必ず一学期の中間試験に出る問題だから、必ず覚えておくように!分からない所は後で先生に聞きに来て頂戴」
「「「「「はい!」」」」」
六法全書並みに分厚い参考書を片手に黒崎は自分で読んだところを目で読み直す。
冷静に考えればアラスカ条約には穴がある。仮に21の国が条約を律儀に守ってISの研究と開発を進めていても、それ以外の国は裏で「そんな条約知ったことか」と平気で軍事転用と実戦投入を始めるだろう。現にこの世界の中東やアフリカの紛争地帯では勢力図が大きく書き換えられており、その中心には必ず条約違反とされる人狩りに特化したISの姿があるからだ。
宇宙世紀も大概、ニュータイプとか強化人間とかコロニー落としとか碌でもない歴史を歩んできたらしいが、この世界もぶっ飛んでるな…と黒崎は内心苦笑していた。
クラスの中で、それを理解している娘がどれだけ居るというのか……
理解したうえで、絶対に身を守れる術を持つ娘は一人もいないだろう。
*
(――――――さて……昼飯は何を食いますかねえ)
四限目の授業も終わって、一部の生徒達は足早に食堂へと駆けていく。
しかし黒崎はクラス内外問わず多くの女子生徒の好奇の視線に晒されており、下手に動けば食堂へ向かう生徒の邪魔になってしまうため、椅子に座ったままのんびりどうするかを考えていた。
「あれが噂の二番目の男子?」
「すっごい、ワイルドって感じよね!」
「ええ~アタシは断然一組のイケメン君がいいけどなぁ…」
「噂だと、一組の男子ってあの千冬様の弟らしいよ!」
「うっそぉ!!?そっち見にいこーよー!」
(おっ、入り口の群れが動いたか?)
あれこれ言われているというのに黒崎は我関せず、目を閉じて音で状況を把握する。
何故目線を向けないかというと、前の休み時間になんとなく視線を周りに向ける度に目が合う女子から黄色い悲鳴が上がったからである。
(おじさん、前の世界合わせて4●歳になるんだけどなぁ……なーんか雑誌のなよっとしたアイドルみたいな扱いっていうか、動物園のパンダだなこりゃ)
そんな事を考えていると、後ろからコツコツとヒールの踵を鳴らして足音が近づいてきた。
黒崎は自分の方に向かっているなと半分目を開けて、首は前を向いたままチラと目だけを向ける。
座ったままの彼の姿勢から見えるのは健康的な褐色肌のむちっとした脚とミニスカート。
(おぉ、眼福眼福……)
心は年老いても体は若者のそれだ、申し訳なさも感じるが性的興奮が無いと言えば嘘になる。
やがてその足の人物は黒崎の横でピタっと止まり、彼もそれに合わせて視線を上げた。
「――――――俺に何か用かい、ギャラクシーさん」
生徒個人で自由なカスタマイズが可能なIS学園の制服、その上着部分にベージュのクロークのようなものをつけているのが、彼女の特徴の一つといって良いだろう。
深緑色のショートボブで、前髪は七三分けして少し額が広めに見えている。
目はくりっと丸く、アメジストのような瞳は奥まで見透かしてきそうな雰囲気があった。
ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー、タイのIS代表候補生であり四組の女子生徒の一人だ。
「黒崎君、貴方に一つ聞いておきたい事があるのだけど……いいかしら?」
「俺に答えられる事なら何でも」
普通に会話してるだけの2人に対して外野はきゃーきゃーと騒ぎ立てる。
黒崎は平然としているが、ヴィシュヌはそれを受けて嫌そうに眉を顰めた。
それを彼は見逃さず、廊下の方の人だかりが減っているのを確認して口を開く。
「―――此処じゃ目立つな、場所を変えるか?」
「そうね……屋上ならどうかしら」
「おーけい」
よっこらせと声を上げながら黒崎は席を立つ。
ヴィシュヌは彼を待たずに先に廊下へと向かって歩き出していた。
余程切羽詰まった質問か、或いは隣を歩いてまた女子に騒がしくされるのを避けたかったのか、何にせよ置いていかれた側としてはあまりいい気分はしないだろう。
彼はやれやれと肩を軽く竦めて彼女の後に続いた。
屋上にはちらほら人の姿はあるものの、2人が入ってきても注目されるような事はなかった。
空から降り注ぐ陽は温かいが、吹き抜ける春の風はまだ冬の寒さに近い。
ミニスカートを履いているヴィシュヌには少し慣れないものだったらしく、ぶるっと身を震わせて後ろから来た黒崎に風があまり来ないところへ行こうと目で促した。
「んで、聞きたい事って?」
「単刀直入に聞くわ。――――――貴方、
その質問はいつか来るだろうと黒崎が入学前から覚悟していたものだった。
ヴィシュヌの目は彼の瞳を捉えて離さず、表情からやや物々しい雰囲気が漂っている。
「何がしたい……と来たか。さて、答え方によってはギャラクシーさんの中で俺の印象が変わってくるだろうな、慎重に言葉を選んでいきたいところだが……」
「……ごめんなさい、質問した私が続けてこんな事を貴方に言うのは酷かもしれないけど、IS学園には私みたいに国の威信を背負って知識や技術を学びに来る子や、将来ISの仕事に就きたいって意志のある子が入学してくるのよ。合格率1.5%の壁を越えようとしてね……当然、落とされる子の方が多いわ。……貴方はそれを知っているかしら?」
「正直に答えるなら、知らなかった……君の口から聞くまでは」
「そう……。回りくどいのも嫌だから、ハッキリ言うわね……ただ男でISが動かせるからとか、貴重だからなんて曖昧な理由で、たとえ無理やりに連れてこられたのだとしても、中途半端にこの学園で三年間を過ごして欲しくないの」
彼女が言わんとしている事を黒崎もよく理解している。
理解しているからこそ、敢えて笑顔で彼はヴィシュヌに向かって聞き返した。
「逆にギャラクシーさんは、何をしにIS学園へ来たんだ?」
「私は代表候補生、それなら態々聞く必要もないと思うのだけれど。……まぁいいわ、私はこの学園で自分の操縦技術や他の国の機体の性能や操縦者の練度を確かめるつもり。いつか開かれるIS同士の戦いの祭典、モンド・グロッソに出場して優勝するためにね」
モンド・グロッソ……過去二回開かれたIS同士の性能を競い合う世界大会はオリンピックにも引けを取らない盛況ぶりだった。黒崎も幼い頃の記憶ながら、それはよく覚えている。
各部門で優勝した者にはヴァルキリーの称号が与えられ、最優秀選手には唯一無二の称号としてブリュンヒルデを名乗る栄誉が贈られるのだ。
この学園に、たった一人だけそのブリュンヒルデを名乗れる女性が教師として居るのだが、本人はその称号で呼ばれる事を嫌っているらしい。
「成程。確かに俺には崇高な目的も、そしてこの学園に入る過程の努力も、覚悟も何も無いわけだ。言葉にしたら陳腐な台詞だが、血の滲むような努力と揺るがない覚悟を持って、眩しいくらいの目標を持っているギャラクシーさんにとって……
「そこまで言うつもりはないわ。……けど……貴方の言ってる事も間違ってない。きっと心の何処かで私は貴方達が気に入らないと思ってるのかもね……気を悪くしたのなら謝るわ」
「いいや?ギャラクシーさんの言ってる事はほぼ間違いなく百パーセント正論だよ。もう一人が同じ事を言われてどう受け取るかは別として、陰口をヒソヒソ叩かれるよりは、こうやって面と向かって言って貰えた方が気が楽になる」
ヴィシュヌは驚いた表情でぽかんと口を開けて黒崎を見つめている。
最初の自己紹介の下りで彼女が見た限りの彼の印象はやや軽佻浮薄な青年といった感じだった。
女子との会話の最中に聞こえてくるものも、彼女個人としてはあまり好ましくない内容ばかり。
それが今、2人きりで話しているこの瞬間だけ、彼が年の離れた全くの別人のように思えた。
口元は笑みを浮かべているが、目だけは真剣みを帯びて彼女の顔をじっと見つめている。
やがて無言で見つめ合っているのも気恥ずかしくなって、ヴィシュヌは顔を背けて歩き出す。
「変わってるのね、黒崎君は……普通こんな風に言われたら誰でも怒る筈だけど……」
「怒るってのはエネルギーの消費が激しいだろ?慣れない環境で気ぃ張って疲れしてるところに自分で感情を制御出来ずに追い打ち掛けたら、いつか潰れちまう。だから大抵の事には感情を荒立てないよう、自分でトレーニングしてんのさ」
感情を抑えるようになれたのは本当だが、トレーニングをしたというのは嘘である。
過去の経験上、口でネチネチ嫌味を言ってくる上官や肉体言語で上下関係を築こうとするような頭のネジが飛んだ連邦軍兵士時代の忍耐の日々があったから、女子供の小言程度は苛立つどころか逆に頭の良い喋り方をする者に限って感心する余裕があるくらいには精神が鍛えられているのだ。
「……貴方、武道か何か嗜んでるの?」
「近未来のCQCとサバイバル術なら少々」
「……何それ……」
本当の事を言っているのだが、当然ヴィシュヌには黒崎の質問の答えが理解出来ない。
若干声のトーンを高めに言っているから、冗談なのだろうと心内で結論づけた。
ふと2人は同じタイミングで手元の時計を確認する。
「もう食堂に行かなくちゃ……人も少なくなってるでしょうし」
「だな。……それじゃこれにて失礼、ギャラクシーさん」
「……ヴィシュヌ。……私の事は、名前で呼んでいいわ」
「了解。俺のことも苗字でも名前でも、好きに呼び捨てで構わないぜ」
そう言って2人は別々の道から食堂への道を目指して歩き出した。
この誰にも聞かれる事のなかった会話の間に、一人目の男子こと織斑一夏とその幼馴染がベタベタなラブコメをしていたのだが…それはまた別の話。
何処かのタイミングでキャラクター紹介とか設定紹介をしたいとは思っていますが、まだ完全には纏まっていないので、暫くお待ちください。
一つハッキリしている事は一部の例外を除いてアーキタイプ・ブレイカーに登場したヒロイン達の殆どがIS学園生徒として入学ないし在学しています。
前回の後書きでクラス代表まで書きますとか言っていながら、キャラ同士を絡ませたい欲求が勝ってしまったので、クラス代表云々は次になりました。