IS~インフィニット・ストラトス~ Re:交わる物語   作:ダメ野良犬だったもの

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 やる気が戻って来たので投稿します。


第3話

 

 動物園に来た珍しい動物と似たような気分を味わった昼食の時間。

一人で簡素に食事を済ませた黒崎は早々に教室へ戻り、授業開始の時を待っていた。

教室内にはまだ少数の生徒しか戻ってきておらず、彼女らは午前中で黒崎に対する興味が薄れたのか女子同士の会話に興じている。

 

 黒崎はチャイムが鳴るまでの間、目を瞑って楽な姿勢で座りながら仮眠を取ろうか一瞬考えたが、周りから見て昼休みにそんな事をしている男子がどういう風に見られるのか察して、仕方なくほぼ暗記した貴方の町の電話帳並の分厚さがあるISの参考書をパラパラ捲って流し読みすることにした。

 

(こっちの方が知的に見えて好印象だろ。…結局、根暗なのは変わらねえけど)

 

 

「うーい、そんじゃ初日は午前授業だけで午後はホームルームで終わりにするからナ~。―――と言いたいケド、先に再来週行われるクラス対抗戦に出場する代表を決めておこうかぁ」

 

 午後の授業が始まって早々に担任のアリーシャが教壇の前に立って話し始めた。

IS学園の行事等にあまり関心のなかった黒崎がさっと手を上げて質問する。

 

「アリーシャ先生。クラス対抗戦って何ですか~?」

 

「んぁ?そっか~黒崎はIS学園に来たばっかりで知らないよナ。クラス対抗戦ってのはクラスから1人の代表を決めて、学年毎に分かれてISで戦う行事だよ。昔の代表は実力やら専用機持ちやらで選ばれてたが、今は生徒達の自主性を重んじるっつーことで自薦他薦は構わず、こうして空いた時間に決め手おくんダナ」

 

「成程。ありがとう御座います」

 

「あぁ、因みに優勝したクラスにゃ学食のデザート無料クーポンが貰えるゾ」

 

 アリーシャがそう告げた瞬間、大半の女子生徒の目が肉食獣のようにギラギラ光る。

周りの空気が変わったのを黒崎も肌で感じ、やや苦笑交じりに「…女の子は甘いものが好きな子が多いんだっけなぁ」と彼女達が闘志を燃やす様を見守っていた。

 

「そんじゃ改めて…誰か四組の代表やりたい奴いるかー?」

 

「はいっ」

 

 早速手を挙げたのは窓際の前の方の席に座るヴィシュヌだった。

そんな彼女の方に「おぉ~」と感心するような女子たちの声が各所から上がる。

黒崎も昼休みの時に彼女と話していた感じから、恐らくヴィシュヌは自分から名乗りを上げるだろうとは予想していた。

 

「ン、ギャラクシーだな。…他には居ないか~?」

 

 この時、ヴィシュヌはチラと肩越しに振り返って後ろの黒崎に視線を送った。

何を考えているか分からないが、恐らくは彼も自分から立候補するのか気になっているのだろう。

しかし彼女の視線に気づいた彼はチラと視線を返し、軽く首を横に振った。

 

(俺は此処じゃ新参者だ。悪目立ちするつもりはないし、譲るよ。―――まぁ)

 

「はいっ!黒崎君を推薦します!」

「私も彼女と同意見です!」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 一人の女子が手を上げて黒崎の名前を挙げると、それに同調する声も上がった。

一気にクラス内が騒がしくなり、あっという間に派閥のようなものが出来上がる。

代表候補生であり専用機持ちとして十分な実力を持っているから確実に勝利を狙えるヴィシュヌ派と、世界に二人しかいないISを動かせる男子の片方というネームバリューを活かして各方面から注目を浴びようとする黒崎派。

アリーシャは関心したような声を上げて生徒の意識を再び集める。

 

「お~見事に半々くらいに分かれたナ。…さて、どうするか?常識的に考えて自ら名乗り出たヴィシュヌと本人の意思ではない第三者からの推薦の黒崎じゃ、圧倒的に前者が有利なんだケド…」

 

「…先生、分かり易い方法があると思います」

 

 今まで騒がしくなった教室の中、静かに思考を巡らせていたヴィシュヌが声を上げる。

多くの視線が集まるなら、毅然とした態度で彼女は提案を口にした。

 

「クラス代表は対抗戦に勝てるだけの実力のある生徒が選ばれるべきと云う意見は尤もです。それなら私と彼で学園のISを使用して模擬戦を行い、その勝敗で決めるのが全員からも納得を得られるのではないでしょうか?」

 

 彼女の提案にクラス中の誰もが驚きの声を上げた。

何故なら彼女は言葉の中で、()()()I()S()()()()()()()()()()()という点を強調したからだ。

彼女が専用機に乗って、訓練機に乗った黒崎と戦えば経験に加えて機体の性能差で勝敗は明らか。

ならばいっそ経験を除いて性能差を同じレベルに落とせば納得がいくだろう。

 

 ヴィシュヌの提案に対し、アリーシャは反対意見などが無いかを聞いた。

しかしクラス内の誰一人として、反対の声を上げるものはいない。

 

「ヨシ、模擬戦の日程と訓練機は私の方でなんとか調整してみせようじゃあないか。んで黒崎ヨ、お前は他からの推薦枠だから辞退してギャラクシーに代表を譲ることも出来るが…どうする?」

 

「ん~…正直勝ち目は薄いって誰でも分かる勝負に挑むのは馬鹿のやることですし、俺も悪目立ちしてクラスの皆に嫌われたくないから辞退を考えてたんですけどね…」

 

 ぐぅっと背伸びをして首をゴキゴキ鳴らしながらリラックスした様子で黒崎は答える。

推薦した女子たちが辞退するんじゃないかと不安そうな顔をしたが、彼は続けて――――――

 

「―――まぁ、偶には馬鹿やってるくらいが男子は面白いって言いますし?ヴィシュヌも譲られて代表やるなんて事になったらモチベーションが下がるでしょう。…やりますよ、模擬戦」

 

 黒崎の視線がヴィシュヌに向けられた途端、肌が粟立つ感覚に襲われて彼女は驚く。

さっきまでのんびりとした口調で喋っていた青年から途轍もない闘気が感じられた。

格闘技に心得のある彼女にとってそれは闘気であり、彼にとっては戦闘の意思。

 

 こうして一年四組のクラス代表は二人の生徒が模擬戦の勝敗で勝ち取ることが噂になった。

少し離れた一組では織斑一夏とイギリスの代表候補生セシリア・オルコットが、互いのプライドを賭けた決闘という名の模擬戦を後日行う事になったらしいが…

黒崎達がそれを知るのは翌日のことだった。

 

 

 クラス代表の一件から打って変わって、ホームルームは特に騒ぎなど起きずに進行した。

どうやら四組の生徒はあまり男だ女だという風潮を気にしていないらしく、本来なら「ISを動かせるだけの男の癖に、代表になるなんて生意気だ」くらいに陰口を叩かれてもおかしくないのだが…

 

(や~何事もなく一日平穏無事に終わりそうですなぁ)

 

 遠くの空に沈み始めた日の光が差し込み、オレンジ色に染まる午後の教室にて。

ペンケースやら分厚い参考書やらを鞄に放り込んで黒崎は椅子から立ち上がり出ようとする。

不意に彼は足元に近付いて来る毛玉の存在にに気づいた。

 

「…猫?」

 

にゃぁ

 

 青色の瞳に白い毛並みのヨーロピアン・ショートヘアがトテトテと歩いている。

黒崎の周りの女子もそれに気づいて苦手なものは目を真ん丸にしてそそくさと退避、猫が好きな女子たちは黄色い声を上げて猫を抱き上げようと手を伸ばした。

 

な~

 

 どうやら許可を出していない状態で抱っこされるのは嫌らしい。

やや低めの声で鳴いた白猫は、黒崎の靴に前足を置いてん~と伸びをした。

 

「あーっ!黒崎君いいなぁ!」

「ね、その猫。黒崎君が飼ってるの?」

 

「や、俺も知らない猫だな…野良が紛れ込んだのか?」

 

 しかし此処は海の上に浮かぶ人工島、野鳥は居ても野良猫などいる筈もない。

ふと彼は見下ろす猫の毛に埋もれて見えなかった首輪の存在に気づく。

そのタイミングで教室に入ってきたアリーシャが声を上げて白猫を抱き上げる。

 

「シャイニィ~また勝手に部屋を脱走したなこいつめ~」

 

なーっ

 

「あぁ、その猫…アリーシャ先生の飼い猫だったんですね」

 

「そうだよ。こっちで教師やる前のイタリアに居た頃から飼ってンだ。―――おぉ、そうだ黒崎。丁度いいところに居たな、お前に渡すもんがあって来たんだ。…ほいこれ」

 

 シャイニィを抱っこする方とは反対の手で懐を漁ったアリーシャが黒崎にある物を渡す。

それは四桁の番号が掛かれた札付きの鍵だった。

 

「これは、鍵ですか。…ああ、学生寮の?」

 

 IS学園は全寮制であり、校舎に併設される形で学生寮が設けられている。

二人一部屋の学生寮はそこそこ良いホテル並みの設備が揃っており生徒から好評だった。

黒崎はポケットの中に鍵をしまってお礼を言った。

 

「察しが良くて助かるヨ。んじゃ、私はシャイニィを部屋に戻してくるんでまた明日な~」

 

「お疲れさまでした、また明日」

 

にー

 

 アリーシャに抱っこされた後に撫でまわされて満足気に鳴いているシャイニィ。

そんなシャイニィを撫でたい欲求に駆られた生徒達がアリーシャの後に続いた。

黒崎はぼけっと教室に突っ立っている訳にもいかず、一人寮へ続く廊下を歩いている。

一人きりになった時、そっとポケットの中から鍵を取り出して静かに呟く。

 

「…相方は男子であって欲しいけどなぁ…」

 

 脳裏に過ぎるのは例の天災が推しに推しまくっている親友の弟と最愛の妹。

それがこうして偶然にも同じ学校に通えるようになったのだから、寮の部屋割りを細工して二人を相部屋にするくらいはあの天災ならやりかねない。

黒崎にとっての問題は、そうなった場合の自分のルームメイトへの悩みだった。

 

「こーんなむさ苦しいオジサンと相部屋なんて、思春期の娘にゃ地獄だろうな~」

 

 

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