タグのR-15はグロを表しているので、期待した方は申し訳ありません。
とうとうこの日がやってきた。
把握しうる限りのグレーテルを斬り尽くして、漸く忌々しいグレーテルも最後の一人となった。そう、先生と行動しているグレーテルだ。元々ボクはアイツをコロす前提で先生の仲間になった。苦痛だったアイツとの仲良しごっこも今日で終わりなのだと考えれば清々しい気持ちになる。
「という訳で、グレーテル、お前には今から死んでもらう」
目の前のグレーテルに武器を向けて、吐き捨てるように告げる。
「そんなに急かさないでもらえる?ワタシはまだ他のヘンゼル姉様をツブし終えてないから先生との約束を破ることになるわ」
グレーテルはそんなことを抜かして、武器に手もかけずにボクを見る。姉であるボクを舐めきった態度に腹が立つ。あぁ、穢らわしい。こんなヤツが妹だなんて考えるだけで虫唾が走る。
「へぇ、まだ終わってなかったんだ。やっぱりグレーテルはトロいなぁ」
「あら。トロいは心外ね。ワタシは無能なヘンゼル姉様と違って役に立つから、先生によく呼ばれるの。だからツブしに行く時間が無かったのよ」
「そんなにセンセイに媚を売って、裏では腰でも振ってんだろこの淫売が」
そうやって煽ると、グレーテルの目が細まり、威圧をかけるかのようにボクを睨みつける。そして、躊躇なく引き抜いた裁ち鋏をボクに向けて、呆れた様に言葉を吐く。
「ヘンゼル姉様は本当に愚かね。何も言わなければもっと生きられたというのに」
「馬鹿なのはオマエだ。愚妹がボクに勝てると思っているのか?」
『死ねェェェェェェェェェェェッ!!』
そう叫ぶや否や、相手の元に飛びかかり刃を交じらわせる。単純な力だとボクの方が上だけど、グレーテルにはいなすテクニックがある。そう簡単にはコロセないし、簡単にコロスつもりもない。最後のグレーテルなんだ。ゆっくりじわじわと痛めつけてやろう。
「アハハッ!!タノシイだろグレーテル!!」
「えぇ!姉様を今からコロセると思うと楽しくて仕方ないわ!!」
狂気を孕んだ笑みを浮かべ、何度も何度も刃を重ねる。そして、油断したグレーテルの左目を、空いたボクの右手で潰す。
「ッウ…!!目を潰すなんて卑怯よ!」
「オマエには言われたくないなグレーテルゥ!!」
グレーテルはボクから飛び退き、左目を抑えて水色の瞳でボクを見る。
ボクを表す水色を、嫌でも酷使しないといけないグレーテルが酷く哀れで、嫌でも笑いが込み上げてくる。
「無様だなぁグレーテル!」
グレーテルは何も言わず、苦虫を噛み潰したような顔をボクに向ける。
それでも裁ち鋏を手放さないということは、まだ戦意は喪失していないのだろう。そうじゃなきゃボクが困る。
とあることを思いついたボクは、彼女にゆっくり近づき、グレーテルが無意識のうちに砂を掻いていた右手にボクの裁ち鋏を突き刺す。
「アァァ!!」
グレーテルは痛みに藻掻くように叫び、フーッフーッと息を荒くしてボクを見る。そんなグレーテルを嘲笑うように見下したボクは、自身の手首に切り傷を入れて、彼女の目前に血を滴らせる。
「ほら、グレーテル。ボクの血が飲みたいんだろう?このボクが親切に差し出してやってるんだ。飲んだらどうなんだ?」
「飲む訳ないでしょう…このクズ…!」
この期に及んで反抗するグレーテルが愚かとしか表現が出来なくて、グレーテルの手に突き刺した裁ち鋏をグリグリと動かしながら、足の爪先でグレーテルの顎を上に向ける。驚いて開かれたままの口に大量の血液を入れてしまえば、いくらか気管に入ってしまったみたいで、ゴホゴホと残りの血液を全て吐き出す。グレーテルの口元も服もボクの血で染まって、なんとも言えない高揚感がボクを襲った。
「なんだ、感謝の言葉を言うこともできないのか?“血をくださってありがとうございます”だろ?」
グレーテルは咳き込みながら、絞り出すように言葉を紡ぐ。
「ゴホッ…だれ、が…そんなこと…ゴホッ、ゴホッ……」
うっすらと涙まで浮かべて、グレーテルはボクを睨みつける。だが、体はもう反抗する気力も無いらしく、ただボクを睨んでいるだけ。口だけ。それを見たら急激に冷めてきて、笑顔を捨ててグレーテルの頭を踏みつけた。
「もういい。もうお前にも興味が失せた。最後に派手に血でも撒き散らして死んでくれ」
そう吐き捨て、グレーテルの心臓目掛けて刃を下ろす。その瞬間、
「ワタシは、ただ姉様に認めてほし____」
グレーテルが何かを呟いた。重力に従って振り下ろした裁ち鋏は止まることを知らず。グレーテルが言い終わる前にその命を貫いた。一方のボクは、グレーテルの返り血を気にすることもなく、唖然とする。グレーテルの言葉はちゃんと聞こえた。だけど脳がそれを理解できない。認める?何を。一体どういうことなんだ。
「…答えろ……答えろグレーテル!!!どういうことだ!?オマエはッ!オマエは何で、ボクに執着していたんだ!」
そう叫んでも答えは返ってくることが無い。濁って汚くなった瞳、ボクの血に塗れた体。グレーテルの口元は、嘲笑うかのように、安楽を表すかのように、口角が上がっていた。
ふと、いつぞやにグレーテルと先生がしていた会話を思い出す。
『グレーテル、不快だったら答えなくてもいいんだが、その裁ち鋏、ヘンゼルの裁ち鋏の片割れだよな?憎んでるんだったら何で使ってるんだ?』
「あら先生、よくこれがヘンゼル姉様の片割れだってわかったわね。これはね、ワタシが先生の元に来た時、武器が無かったワタシに、姉様が渡してきた物なの」
『へぇ、あのヘンゼルがグレーテルにか』
違う。ボクはただ来たならせめて働けという意味を込めて渡しただけ。そこには気遣いも何も存在しない。
「元々一組だった姉妹が別れて過ごしているのを、皮肉ってるみたいで面白いわよね」
そのグレーテルの言葉に、先生はただ自分の解釈を言うように、何の感情も持たず否定する。
『…いや、裁ち鋏って別々にしたら裁ち鋏自体の機能を失うだろ?だけど、揃えば再び機能を取り戻す。自分は、いくら別れていても二人揃ってこそ成し遂げられる物があるって表現しているみたいでいいと思うぞ』
その言葉に、ボクは飛び出しそうになるが、グレーテルが先に先生に言葉を返す。
「…流石先生。想像力が豊かね」
『それは…褒め言葉として受け取っていいのか?』
「さぁ?どうかしらね」
そう言いつつも、グレーテルの顔が満更でもなさそうに微笑んでいたのを今でも覚えている。あの時は気味が悪かったり、驚いたりで見なかったことにしたが、今考えると、認めてほしいという感情から来たものだったのだろうか。
でもまぁ、そんなことどうでもいい。やっとグレーテルが居なくなったんだ。これからはグレーテルの居ない世界を満喫できる筈だ。
「アハ…アハハハハッ!!やっぱり生き残ったのはボクだったな!グレーテル!」
その声は誰にも届くこともなく、虚空に響いていた。
色々と不可解に思うことがあるかもしれませんが、後に続編を書くつもりなので、そちらもどうぞよろしくお願いします。