星井美希に転生したけど765プロがない件について   作:naonakki

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第二話

 「……あの、大丈夫ですか? ……まさか今ので骨にひびが入っちゃったとか!?」

 

自分は何も悪くないというのに、顔を青ざめさせて慌てふためく穂乃果さんを見ているとなんだか可愛く見えてくる。まあ元から可愛いけど。

この様子を見るに、どうも穂乃果さんは、おっちょこちょいな性格なようだ。主人公はおっちょこちょいな性格というのがデフォなのだろうか?

 

 「ううん! なんでもないの! 急に呼び止めてごめんなさい。」

 

 いつまでも心配させておくのは悪いので急いで立ち上がり、こちらが動揺していることは一切顔に出さず代わりに満面の笑顔を浮かべて心配ないことを伝える。ウインクもおまけしておく。

 そんな私を見た三人はポーッと心ここにあらずといった様子でこちらを見つめてくる。

 しかし、そのうちの一人がハッと我に返ると「あ、あの……」と、小声で呟きながら、おずおずといった感じで私の前に進み出てくる。

 丁寧に手入れされていることが分かる腰まで伸びた艶のあるグレーの髪色と、なんといっても頭の上にちょこんと乗ったとさかのような可愛いらしい髪型をした女の子だ。全体的におっとりとした雰囲気を持っており、思わず守ってあげたくなるような女の子の中の女の子といった感じだ。

 

 ……結構タイプなの。

 

 今度は私が目の前の女の子に見惚れてしまう。自分には無い可愛さを持つこの女の子がとても魅力的に見えてしまう。

 

 「……はっ!? 穂乃果にことり! 早くしないと本当に遅刻してしまいます!」

 

 しかしここで、凛とした佇まいと敬語口調の大和撫子を彷彿させる女の子の一言で、私たちの意識が現実に引き戻される。

 穂乃果さんは急いで携帯で時間を確認するとその顔色をどんどん悪くしていく。

 

 「あぁっ! 海未ちゃんの言う通りだっ! このままじゃ二年生初日から遅刻だ!? ことりちゃん早く行こう!」

 「え? あ、ちょ、ちょっと!」

 

 そのまま穂乃果さんと海未さんは、私に軽く会釈だけするとそのままことりさんの手を引っ張って走って行ってしまう。

 ことりさんは、後ろ髪を引かれるように私の方をちらっと振り返るが、やがて観念したのか、そのまま前を向き、他の二人と共に走っていく。

 

 ……みんな可愛かったなの。

 穂乃果さんに、海未さん、ことりさん……か。

 あっ、私も時間やばいなの!?

 

 その後全力ダッシュで学校に向かう羽目になったが、幼少頃から体力を鍛えていたおかげで何とか遅刻せずに間に合った。

 

 

 

 入学式を無事終え、群がってくる男子どもを適当にあしらっているとあっという間に放課後となった。

 晴れて高校生になったわけだが、特に変ったことはなかった。

 ただ、ちょっと気になったのは今年の入学生の数が多かったくらいだろうか。去年の倍近くの入学生がいたらしい。少子高齢化が進む中での異例の数だったらしく、特に女子の比率が多いそうだ。理由はよくわからないが女子が多いのは私としては嬉しい限りだ。

 

 今日は午前までで終了なので昼食前の下校となる。

 私はすぐには帰らず、教室の窓からぼんやりと空を眺めながらはぁと溜息をつく。

 そんな私の姿を見て周りのクラスメイトから見惚れたような視線を感じ、何やらヒソヒソ話されているようだったが、どうでもよかった。

 

 ……これからどうしようかな。

 

 本来なら今日、早速スクールアイドル部に入部申請するつもりだった。

 しかし、この世界がラブライブの世界であることが分かり、その行動に待ったがかかる。

 きっと彼女たちには本来、見ているこちらが熱くなるようなスクールアイドルとしての様々なストーリーが待っているのだろう。

 それを私の行動で無茶苦茶にしてしまうのは気が引けた。

 約束されていた輝かしい青春を迎えることができない辛さはこの身をもって経験しているからだ。

 勿論、私と違って穂乃果さん達は自分たちが実はアニメ作品の中のキャラだと認識しているはずもないのでそんなことを思うはずもないが。

 それにもう既に無茶苦茶になっている可能性もあるので今更かもしれないが……。

 要は私の考え方次第なのだが、どうしても引っかかるのだから仕方がない。

 

 こうなってくるとやっぱりプロの世界に行くべきか……。

 そんな考えが頭をよぎる。

 というかそもそもなぜスクールアイドルにならないといけないかよくわかっていない。周りがそれを望んでいただけなのでそれに合わせようと思っただけだ。

 そんな投げやりな考えでいいのかと思うかも知れないが、別に構わないと思っている。というのも、本音を言うと765プロのみんなとアイドル活動ができないと分かった時点で私のモチベーションはかなり下がっているからだ。

 後は、プロの世界でもライバルになるような人達がいなさそうなのもモチベーション低下の理由の一つだ。765プロのみんながいれば、そう思わずにはいられなかった。最近は、アイドル業界についてもほとんど調べてすらいない。たまに諦めきれず、765プロがないか確認する程度だ。

 勿論、アイドル活動は楽しいと思うし、続けたいとも思ってはいる。しかし、かつてのやる気があるかと言われると答えはノーだ。

 そういうわけで別に今すぐプロに行く必要はないと思っていたし、スクールアイドルも一応アイドルであることに変わりはないので、別にいいかと思っていた。

 何ならしばらく何もかも忘れて遊んでもいいかなとさえ思っている。これまで一切遊ばずにアイドルに費やしてきたのだ。それくらいは許してくれるだろう。

 

 しかし状況が変わった今はそうも言っていられない。まずは状況の整理だけでも早急に行う必要がある。

 

 ……まずは穂乃果さん達と接触していくことからかな。

 

 そんなことを考えながらふと正門前に視線を移す。そして瞳に入り込んできた光景に思わず目を見開く。

 急いで回れ右をして、早速仲良くなったクラスメイトの女の子たちに別れの言葉を述べ、急ぎ足で正門まで向かっていく。

 

 正門まで近づいていくと、数人の男子が何かを取り囲むように群れをなしていた。そしてその中心にいるのはことりさんだった。

 そう、なぜか朝に出会ったことりさんがこの高校の正門前で誰かを待っているのが教室から見えたのだ。その姿を見た瞬間、ことりさんが去り際こちらを振り返った姿が重なったのだ。

 もしかしたら私に用かも。その可能性を考えると居ても立っても居られなかった。まあ、違ったら違ったで構わない。どのみち接触するつもりだったのだ。

 そのことりさんは、どうもうちの学校の男子どもからナンパされているらしい。そしてどう見てもことりさんは困っている……いや、怯えているようだ。早く何とかしなくては。

 ……ここはベタだけど、この方法で。

 

 「ごめ~ん! ことりさん! 待ったなの? みんなごめんね? 今からことりさんと美希の二人きりでデートなんだ~!」

 

 そう言いながら、飛び込むように、ことりさんの腕に自らの腕を絡めて今からデートですよと周りにアピールする。先約があるからお前らは引っ込んでろという作戦だ。

 腕を組みにいったのも仲良く見せるための作戦だ。決して他意はない。

 ちなみにことりさんは凄く柔らかくてとても甘ったるいいい匂いがします。

 ことりさんは突然の私の登場に「えっ、えっ!?」と顔を真っ赤にして何が起きているのか理解できていないようだ。可愛い。

 周りの男子も私の登場に面食らったようだが、すぐに我に返ると何か言ってこようとするが、笑顔を向け男子達の動きを止める。

 

 「じゃ、行こっか!」

 「う、うん。」

 

 そのまま戸惑うことりさんの手を引き、急ぎ足でその場を離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そろそろ来る頃かしらね。

 

 大好きなアイドルグッズに囲まれた学校の一室で私はそんなことを思いながら、パソコンをいじり、最新のスクールアイドルについての情報をチェックしながらその時を待つ。

 鼻歌交じりにその小さな体を揺らすたびに、彼女のツインテールもゆらゆらと揺れる。

 

 そしてその時はすぐにやってきた。

 コンコンと扉のノック音が室内に響く。「どうぞ」と声をかけるとすぐにドアがガチャリと開く。

 

 「こんにちは。また来たわよ、にこ!」

 「やっほ~、にこっち。」

 

 やって来たのは、音ノ木坂学院の現生徒会長と副会長改め絵里と希である。

 絵里は満面の笑みを浮かべ、少々興奮気味である。絵里がここに来るときはいつもこの調子だ。ちょっと前までの頑固でクールな姿からは想像もできないほどの変わりようである。他の生徒が見たらどう思うのか……。

 一方の希は、にこにこと笑顔を浮かべており、手をフリフリとこちらに振っている。こちらは以前からその態度に大きな変化はないが、最近は接触する機会が増えたからなのか冗談を交えた絡みが増えてきた気がする。

 ……相変わらず、この二人が並ぶと絵になるわね。

 絵里はロシア人の血を引き、真っ白な肌にモデルのような体型であり、希もどことは言わないが高校生とは思えないほどの抜群のプロポーションを持っている。

 まあ、可愛さなら私も負けないけどね。

 

 「……また来たのねあんた達。」

 「またまた~、うち達が来て嬉しいくせに~。」

 

 そう言いながら、頬っぺたをツンツンしてくる希を引きはがしていると、絵里がこちらに迫ってくると私の真横に椅子をつけてくる。

 

 「それでにこ! ミキミキちゃんについて何か新情報はないのかしら?」

 

 そう聞いてくる絵里の表情は子供のようにキラキラと輝いている。

 だが、これは絵里に限った話ではない。ミキミキのこととなると皆こうなっているだろう。私も例外ではない。

 

 ミキミキとは動画サイトのアカウント名であり、少し前に彗星の如く現れたプロのアイドルを目指している無名の女の子である。

 そのダンスと歌声は、既にプロの世界でもトップアイドル級であるとの声も上がるほどの完成されたものだった。

 そして、数多のプロのアイドル事務所の勧誘を断った彼女はまずスクールアイドルになることが分かった。

 全国的に本日が高校の入学式の為、スクールアイドルが好きな者ならば、ミキミキがどこの学校のスクールアイドルになるのかは気になるところだろう。私も今、そのことを調べていたが、めぼしい情報はなかった。

 

 「残念ながらまだミキミキがどこの学校のスクールアイドルになったかは分からないわ。」

 「……そう。」

 

 あからさまにがっかりする絵里。まあ気持ちは分からなくはない。

 そんな様子の絵里を見た希は、話を切り替えるように話題を振ってくる。

 

 「確かこの辺に住んでいるんよね? そのミキミキちゃんは。」

 「そうよ。」

 

 ミキミキが投稿する動画はいつもどこかの公園や河原などで撮られている。その背景からおおよその住んでいる場所が特定されたのだが、それがなんとこの辺りだったのだ。

 そしてそのことから彼女が進学する学校もある程度特定することができた。

 実はこの辺りはスクールアイドルの強豪校が多くあることでも有名である。その筆頭は、現スクールアイドルの頂点に君臨しているA-RISEが所属するUTX学園である。

 当初、ミキミキもこの強豪校のどこかに行くものだと誰もが予想していた。しかし、ミキミキはUTX学園のスカウトを断ったのだ。

 世間は戸惑った。家も近いはずだし、スクールアイドルを目指す者にとって最高の環境が整っているUTX学園に行かない理由は何か。

 現在、その解答の最有力候補としては、ミキミキは逆にスクールアイドルとして無名の高校に行き、そこで一気に頂点まで登ろうとしているのではないかということだ。

 確かに有名校でトップを勝ち取るより、無名高でトップを勝ち取る方がドラマ性があり、話題性も格段に上がる。そしてミキミキならそれが可能だった。十分に考えられることだった。

 では、無名高としての候補はどれくらいあるのかということだが、これが意外にも少なかった。

 なんとそれは私たちの音ノ木坂学院を含めて僅か三校だった。

 そしてここからが驚きだったのだが、そんな確証のない情報だけで、ミキミキと同じ高校に行きたいと、この三校への入学希望者が殺到したのだ。

 本当にこの三校にミキミキが入学してくるか分からない。しかも仮にその三校のうちに入学したとしても三分の二ではずれを引くというのにだ。まあこれについては、最悪同じ学校でなくても、近くの学校にミキミキがいる可能性が高いならそれでもいいかという考えも持っているようだった。

 それほど、ミキミキの影響力は絶大なのだ。ちなみに私も逆の立場だったらこの三校を目指しただろう。

 願わくば、この音ノ木坂学院にミキミキが入学してくれないかと思ったが、先ほど一年生を見に行き、それらしい人がいないことは確認してしまった。まあミキミキは変装していると自分でも言っているので、見抜けなかっただけの可能性もあるが。

 

 「でもすごかったな~。そのミキミキちゃんの影響であの入学生数なんやろ? まさか四クラスもおるとは思わんかったわ。」

 「……それはそうよ。ミキミキちゃんはそれくらいの凄い子だもの。」

 「でも純粋な疑問なんやけど、ミキミキちゃんにはプロからスカウトが来てるんやろ? なんでプロに行かへんの? 別にスクールアイドルにならんでもいいような気がするんやけど。」

 

 希のそんな発言に私と絵里はガタリと無言で立ち上がり、希に詰め寄っていく。希はそんな私の様子に「え、え?」と珍しく戸惑っている。

 

 「はぁー、いい希? ミキミキがプロの前にスクールアイドルになるのには、ちゃんと意味があるのよ。」

 

 それから私はいい機会だったので希にスクールアイドルについても含めて、丁寧に一から説明してあげた。

 

 ミキミキが現れるより少し前から発足したスクールアイドルはどんどん人気を集めていった。

 その人気ぶりから、だんだんと各メディアにも取り上げられ、有名になっていった。

 その人気を爆発的に押し上げたのがA-RISEの存在だった。彼女たちが高校二年生の時には、その実力は既にスクールアイドルのみならず、プロの業界でも通用するほどの実力を兼ね備えていた。

 特にリーダーである綺羅ツバサのアイドル性は世の中の女子中学生、女子高生を夢中にさせた。勿論、優木あんじゅ、統堂英玲奈の二人も他のスクールアイドルと一線を画す実力を備えていることは明確だった。そんなA-RISEの認知度はプロにも引けを取らないものだった。

 A-RISEの活躍に後押しされるように、スクールアイドルになる者は飛躍的に増え、元からスクールアイドルをやっていた者達も、これまで以上にその実力を磨いていき、よりスクールアイドル界は熱を帯びていくことになる。

 そして、ついに今年、盛り上がるスクールアイドル界のNO1を決める大会『ラブライブ』が開催されることが決まった。

 そして、ラブライブで優勝すればプロになることができるという情報も同時に広まっていく。

 このことにより、スクールアイドル界はプロの業界をも巻き込むこととなり、前例のないほどの盛り上がりを見せることになる。

 ここで優勝すれば間違いなくアイドル界の歴史に名を刻むことになり、アイドルとしての栄光を勝ち取ることができるのだ。

 

 「なるほどなー。色々事情があるんやね。」

 「そういうことよ。ラブライブで優勝するという事はアイドルにとってとても重要なことだし、今後のアイドル活動でも必ず財産になるわ。」

 

 そして、元々盛り上がっていたスクールアイドル界はミキミキの登場により、最早誰にも止められないほどの勢いを得た。

 この歴史的瞬間を私は絶対に見逃さないと誓っている。

 

 「でも、そうなるとミキミキちゃんが優勝は間違いないんじゃないの?」

 「……そうね、その見方が大多数よ。でもね、A-RISEもこのまま終わりというわけでもないと思うのよ。特に最近のA-RISEの伸びは以前と比較にならないわ。一部では、もしかしたら……なんて声も上がっているほどだしね。それにミキミキみたいにまた凄い人が現れる可能性だってあるかもだしね。」

 

 希は「ふーん」と言った後、私にニマニマした顔を向けてきて

 

 「……じゃあ、私たちがスクールアイドルになってその凄い人になってみる?」

 

 そんなことを言ってくるのだった。

 

 「……はぁ、馬鹿なことを言わないでよ。」

 

 その言葉二年前に聞きたかったわ、とは心の中でとどめておいた。

 希の言葉を受け、横で絵里が真剣な表情を浮かべ、何かを思案しているのには気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あーあ、海未ちゃんはお家の習い事で、ことりちゃんも何かの用事で隣の高校まで行ってくるとか言ってたし……。」

 

 制服から着替えもせずに自室の机に顔を突っ伏し、愚痴をこぼしながら足をバタバタさせる。

 海未ちゃんは仕方がない。昔から家の事情で忙しいのは分かっている。

 でもことりちゃんは違う。いつも私と一緒にいてくれたのに、最近あるアイドルに夢中になっているらしく、それのせいで私と遊ぶ時間が前より減ってしまった。

 確かそのアイドルの名前はミキミキちゃんと言っていた気がする。

 私はアイドルには全く興味がないのでよくわからないがそんなにもいいものなのだろうか?

 

 ……それにしても暇だなぁ。

 何かわくわくするような事件でも起きてくれないかなぁ。

 

 なんとなく。本当になんとなくだった。

 自分の携帯でミキミキと検索をかけてみた。

 するといくつかの動画が出てくるが、それを見て驚く。

 ……すごい。どの動画も再生回数が数百万回とかじゃん。 

 試しに適当に一つの動画を押してみる。

 ページが開き動画が再生される。

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 学校の近くにあった小さな公園にやって来た私達は、追手が来ていないことを確認し、ことりさんの手を離す。

 

 「ことりさん、無理やり連れてきちゃってごめんなの。誰かを待ってたんだよね?」

 

 くるりとことりさんの方を振り返りながらそう謝罪を述べる。ことりさんはそんな私の方を見て慌てたように手をパタパタと振ってくる。

 

 「う、ううん! むしろ助けてくれてありがとうございます! ……それに待ってたのはあなたなんです。今朝会った時にさっきの学校の生徒だって分かったから。」

 

 ……ん?

 この凄く甘ったるく耳がとろけそうな声は……。

 まさか……いや、間違いない。

 

 「……もしかして、ミナリンスキーさん?」

 

 それは私の衣装を作ってくれており、定期的に電話で会話を重ねたミナリンスキーさんの声そのものだった。

 こんな可愛らしい声の持ち主が二人といるとは思えなかった。

 すると、ことりさんは目をぱっちりと大きく見開き、どうして分かったのと言いたげな表情を浮かべてくる。

 

 「わぁっ! やっぱりミナリンスキーさんなの! これって運命なの! ずっと会ってお礼を言いたかったの!」

 「じゃ、じゃあ、やっぱりあなたがミキミキさんなんですね! 今朝会った時、声で分かっちゃいました。」

 

私は動画を投稿する際、星井美希だとばれないようにウィッグを被る以外にも、声色を若干変えるという対策をとっていた。そのおかげで一応これまで正体がばれることはなかった。

 しかし、ミナリンスキーさん改めことりさんと電話で話す際は、素の声で話していたので、私だと分かったようだ。

 

 「こほん、改めて自己紹介するの。私は星井美希です!美希って呼んで欲しいの!」

 「うん、よろしくね美希ちゃん! 私は南ことりといいます。ことりって呼んでください。」

 

 そういうわけで私たちは、公園から出て適当に歩きながら、思わぬ出会いに感謝しつつおしゃべりに夢中になった。

 電話越しでもわかっていたが、ことりさんは凄く優しくて本当に裏表のない良い人なんだということがよく伝わってきた。これで可愛いとか反則だと思う。

 ちなみにことりさんはスクールアイドルではないらしい。そもそもことりさんの通う音ノ木坂学院にはスクールアイドル自体がないそうだ。

 それが私の影響によるものなのかどうかは分からない。もしかしたら今からスクールアイドルになる可能性だってある。

 これはもう少し様子見をした方がいいのだろうか……。

 しかし、私の衣装をつくってくれていたのが、ラブライブのメンバーの一人だとは思わなかった。

 これはただの偶然なのか或いは……。

 

 「美希ちゃん! 私、美希ちゃんがスクールアイドルで活動するのを応援してるからね! 衣装もどんどん任せてね!」

 

 と、とても嬉しいことを言ってくれるのだが、私はそれにどう反応すればいいかと迷ってしまう。

 そんな私を見てことりさんは不思議そうな表情を浮かべている。

 

 ここで何やら周りが騒がしくなっていることに気付いた。

 見渡すと、多くの女子中学生やら女子高生が目の前のビルの大きなモニター前に集まっているようだった。

 ここは秋葉原だろうか? いつの間にかこんなところまで来ていたらしい。

 

 「あ、そろそろ始まるわよ!」

 「楽しみー!」

 「最近のA-RISE凄い伸びてるもんね!」

 「ミキミキちゃんも凄いけど、私はA-RISEを応援するって決めているからね。」

 

 そんな声が聞こえてきて私も何が始まるのかと気になり、モニターに視線を移す。ことりさんも同様にモニターに目を向ける。

 

 そこにかつて見たA-RISEのメンバーが現れた。

 そしてテンポのいい音楽が流れ出し、彼女たちは躍り出す。

 私は驚いた。かつて見たときよりも格段にその実力が上がっていたからだ。

 前に見てからまだ半年と経っていない。

 プロですらここまでの実力を持ったアイドルがどれほどいるだろうか?

 気づくと私は、画面の中で輝く三人から目を離せないでいた。

 そして音楽が止むと周りから「キャー」と黄色い声援が飛び交う。

 ことりさんも「……すごい」と小声で呟いている。 

 

 すると、画面が切り替わり改めてA-RISEの三人が映りこむ。

 自己紹介から始まり、そのまま学校紹介などが行われていく。

 だが、あるタイミングで三人の空気がガラリと変わる。

 その挑戦的な瞳にはメラメラと炎が宿り、カメラ越しに誰かを捉えているようだった。

 そして、A-RISEのリーダーである綺羅ツバサはゆっくりと言葉を紡いでいく。

 

 「皆さんご存知の通り、今年はラブライブが開催されます。そして現在の優勝候補は、動画上で大人気を誇っているミキミキさんです。最初は私達ですらそのあまりの実力を前に心が折れかけました。ですが、私たちは諦めずより厳しい訓練を行ってきました。そして私たちは確実にレベルアップを果たして来ましたし、これからもより高みを目指していきます。……ミキミキさん、あなたがこれを見ているかは分かりません。ですが、私たちは必ずあなたに勝ってラブライブで優勝を果たします!」

 

 その瞬間、周囲がワッと沸く。

 気づかなかったがいつの間にか周りには埋め尽くさんばかりの人が集まっていた。

 そのあまりの盛り上がりは、まるで世界そのものが揺れているようだった。

 私は今まで動画上でしかアイドル活動をしていなかった為、このような歓声を生で聞くのは初めてだった。

 

 

 

 ……ドクン

 

 

 

 私の中で何かが燃え上がった。

 




沢山の感想ありがとうございます。
誤字報告していただいた方ありがとうございます。

最後にすみません。
別の作品も書いてるので頻繁に更新できないと思います……。
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