幽霊にセクハラしても罪にはならないですよね?   作:ボトルキャプテン

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第106話 さよなら、龍星

 病院に戻って来たあたし達は全員が病室に入る訳には行かない為、一緒に住んでるあたし達が代表で入る事になった。未だに昏睡状態の龍星を見つめながらあたしは呟いた。

 

「龍星、終わったわよ」

 

 婦長さんもあたし達を見渡しながら安堵する。

 

「ご苦労だった。さぁ、最後にひと仕事をするか」

 

 婦長さんが姦姦蛇螺さんの方に目を向けると、姦姦蛇螺さんは黙って頷いた。

 

「では、皆の者……龍星の周りに集まるのだ」

「皆さんを呼んで来ますね」

 

 お菊さんが廊下で待っている他のお化け達を呼びに行くとゾロゾロと部屋の中に入って行く。姦姦蛇螺さんの指示で龍星のベッドの周りに詰める様に集まった。

 

「これで全員だな?」

「結構キツイわね……」

「ふぐぅ……潰れてしまう」

「花子さん、ここは我慢しましょ!」

 

 今にも押し潰されそうになる花子をトンカラトンという幽霊が励ましていた。

 

「ではゆくぞ……皆の者、ベッドに手を添えるのだ」

 

 全員が言われた通りにベッドに手を置くと姦姦蛇螺さんがボソボソとお経を唱え始める。その間あたし達はただ黙って祈る事しか出来なかった。

 

すると。

 

 あたし達の体に異変が起き始めた。

 

「ちょっとあんた、体光ってるわよ?」

「そういうあんたこそ……」

 

 隙間女とテケテケがお互いの体に指を差す。思わず花子も姦姦蛇螺さんに尋ねた。

 

「姦姦蛇螺さん、これはどういう事じゃ?」

「ふむ……どうやら我々は成仏出来るようだ」

「えっ、成仏!?」

「あたし達成仏出来るの?」

 

 7人ミサキという7つ子の幽霊が姦姦蛇螺さんに尋ねると、

 

「ここに居る皆の者、それぞれ存分にあの悪党の住処で仇討ちをして本来の未練を達成したからやり残した事は無いんだろう。普通なら霊力を注ぐと跡形もなく消滅するのだが、まさか成仏出来るとはな……」

「なるほど、通りで肩が凄く軽くなったと思ったのよねぇ」

 

 状況を理解した口裂け女が納得した。

 

なら、そろそろお別れかな……。

 

 そう思ったあたしは皆に声を掛けた。

 

「もうそろそろ、お別れの挨拶した方がいいと思うよ?」

 

 そう言うと、アクロバティックサラサラとメンヘラという幽霊が龍星に声を掛けた。

 

「勝ち逃げされたのは悔しいけど、成仏出来るならトイレの件は許すわ」

「せっかく名前付けてくれたのは嬉しいけど、電話ボックスでされた事は絶対許さないんだからね!寿命で死ぬまで待っててやるんだから!」

 

 それに続いてトンカラトンと7人ミサキが声を掛けた。

 

「貴様は、我が妖刀暗黒魔刃暗夜丸の錆にしてやろうと思ったのに!」

「あたしらも腑に落ちない所はあるけど、この際いいや。元気でね!」

「セクハラすんなよ!」

「風邪ひくなよ!」

「風呂入れよ!」

「歯磨けよ!」

「パンツちゃんと履けよ!」

 

 トンカラトンと7人ミサキが別れを告げると、首なしライダー、テケテケ、濡れ女、マフラー女が声を掛けた。

 

「ったく、久しぶりに会えたと思ったらもう会えねぇなんてな。元気でな」

「……元気でね」

「ひひひひ久しぶりだったのにははは話せなくて残念だよ。さっさよなら」

 

 マフラー女が告げると、涙を滲ませながら龍星の顔を撫でながら話し掛ける。

 

「こんな別れ方……したくなかったなぁ……。足を直してくれてありがとう……。さよなら、龍星」

 

 テケテケは耐えきれなくその場で泣き始めてしまった。堪らず首なしライダー達に支えられながら龍星から離れた。次に、婦長、カシマレイコ、ブラッディ・メアリー、ラ・ヨローナが近づく。

 

「さよなら、マイフレンド」

「カラダニキヲツケテネ……アディオス、アミーゴ」

「まったく、この病院をしっかり護るんだぞ」

「靴下の件、まだ許して無いんだからね? その、 またね」

 

 メアリー達が離れると、人魚のザンがびちゃびちゃの状態でカマ女に支えられながら近づく。

 

「泳ぎを教えてくれてありがとうね、また沖縄に遊びに行ってね!」

「お兄ちゃん、会えなくなるのは寂しいけど……元気でね!」

 

 どさくさに紛れて若大将は龍星の股間をまさぐるととメリーに頭を叩かれた。若大将は頭を擦りながら離れる。次に、口裂け女とお岩が近づく。

 

「まさかこのあたいが成仏出来る日が来るなんてね、あの世でうんとお礼してやるから楽しみにしてなよ」

「お姉さんも成仏出来ると思ってなかったわ。ありがとうね、龍星くん。バイビー♪」

 

 そして遂に同居していた幽霊達の番になった。栄えある1番手は、八尺の手の上の乗せられた小さいおじさんだった。おじさんは泣きじゃくりながら龍星の顔に縋り付く。

 

「うおおおおん!あんちゃん!あんちゃん!元気でな!体壊さねぇようにな!元気で暮らせよ!楽しく生きろよ!うおおおおぉん!」

「龍星さん、貴方と初めてお会いした時に自由を貰い今日まで楽しく暮らせました。いつまでもお元気で……」

 

 八尺と小さいおじさんが離れる。次に隙間女、お菊、姦姦蛇螺、くねくねが近づく。お菊は手を取り、涙を流しながら声を掛けた。

 

「龍星さん、お仕え出来て嬉しかったです。どうか、いつまでもお元気で……」

「りゅーせー……げんきでね、たのしかったよ!」

「ふんっ、こんなもので死ぬ貴様では無いだろう。起きたら真っ当に生きて行くんだな」

「龍星……起きたら誰もいなくなるからびっくりするだろうけど、あんたならちゃんとした人間の友達が出来るよ。だからあたしらの事は忘れて生きてね」

 

 八尺達が離れると、花子とメリーの番になった。花子は目をうるうるさせながら龍星の体に顔を埋める。

 

「馬鹿者……さっさと起きんか……。でなきゃ皆いなくなってしまうのだぞ?……お前が初詣で願うからこんな事になったんじゃ……馬鹿者が」

「花子さん、落ち着いてください」

 

 お菊に宥められながら離れると、メリーが俯きながら近づく。

 

「龍星……あんたには色々買って貰ったし、楽しませて貰った。だから色々セクハラにも我慢した。けど、こんな別れ方なんかしたくないっ!起きなさいよ!あたしも成仏しちゃうんだから最後くらい挨拶しなさいよっ!バカっ!あんたを何度も殺したいと思ったたけど……今じゃ……殺しくたくない。死んで欲しくないのっ!あんたの事が好きだから!」

 

 メリーが告白した瞬間、幽霊達が顔を真っ赤にする。はっと我に帰ったメリーは弁明を始める。

 

「い、いや好きって友達としてだかんね!?違う違うから!いや、隙間何笑ってんのよ!ちょ、あんたも早く起きなさいよっ!」

「メリー、そろそろ時間だ」

 

 必死に言い逃れしようとしてる時に姦姦蛇螺に止められる。

 

「まだ終わってないから!なにこれ!?嘘!?こんな別れ方ある!?待って待って!!告白したみたいになってんじゃん!ちょっと!あーーっ!」

 

 幽霊達はキラキラと輝くと共にその場を消えていった。それと同時に俺は目を覚ました。俺は上半身を起こして辺りを見渡す。

 

「すっげぇうるさかったんだけど……誰かいたのかな?」

 

 俺は何事も無かったかの様にナースコールを押した。

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