幽霊にセクハラしても罪にはならないですよね?   作:ボトルキャプテン

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第33話 赤いマフラーの女

赤いマフラーの女性は、俺の方を向いてニコリと笑っている。俺は咄嗟に目を逸らしてしまった。

 

このクソ暑い中マフラーをしている時点でもうヤバい。幽霊にしろ、人間にしろ関わらない方がいいタイプだ。

 

嫌な予感がした俺はそのままタクシーに乗り込んでその場を去った。後部座席から確認すると、マフラーの女性はずっと俺の事を見つめていた。駅から約30分、見慣れない街並みを眺めながら警備会社が所有している家に辿り着いた。木造二階建ての瓦屋根で表札には○○警備会社 社宅と記されていた。俺はその家を見上げて、

 

「ここが3ヶ月世話になる社宅かぁ、まぁ幽霊はいなそうだし問題ないな」

 

そう呟きながらスーツケースを運んで鍵を開けた。中に入ると新しい畳の匂いがふわっと漂っていた。

 

研修は明日の8時から○○会場で始まる。今は昼の12時45分、せっかくだから観光を混じえながら街を散策しようかな。

 

そう思った俺は、スーツケースを茶の間に置いて財布とスマホを持って社宅を後にした。見慣れない住宅街を歩いていると、○○県でで一番安い商店街というキャッチコピーののぼり旗を見つけた。

 

「へぇ〜、一番安い商店街ねぇ。こういうの好きだなぁ!」

 

商店街の入口の周辺を見渡すと、大規模の商業施設は見当たらずこの商店街はこの街の住民を支えているようにも感じた。

 

丁度いいや、3ヶ月間の間の衣食住はここで買おう。

 

いざ、商店街に入ると様々な個人店がゾロゾロと立ち並んでいた。お昼時も関係しているのか、サラリーマンなどが飲食店に並んで人が多かった。

 

「腹減ったなぁ、何か食うか」

 

朝からなにも食べていなかった俺は、様々な飲食店を眺めていると。

 

「お兄さん、お兄さん!」

「はい?なんですか?」

「あんた、見ない顔だね?この街は始めてかい?」

「ええ、そうですね」

「そうかいそうかい!一人暮らしなら何かと入り用だろ?良かったら見てってくれよ!」

 

個人店の気のいいおばさんに声をかけられた。俺は足を止めて、店の看板を眺めると【調味料】と掲げられていた。

 

調味料か、醤油とか味噌も買わなきゃないよなぁ。

 

俺はおばさんの店に入ると、色んな味噌や塩、醤油が並んでいた。すると、おばさんは何を思ったのか拳程の大きさのある石の様な物を持って来た。

 

「お兄さん、これなんかどうだい?」

「なんですか?それ?」

「コレはね、岩塩だよ。ここ○○県の特産品なんだよ」

 

一人暮らしになんてもん売りつけようとしてんだよ、このババァ。

 

俺は顔を引き攣らせながら、

 

「い、いやあの、天然岩塩ですよね?高いんじゃないんですか?」

 

そういうとおばさんはがははと手を叩きながら笑った。

 

「あはは!外国の岩塩なら高いよ。けど、最近じゃ1000円位で買えるやつもあるんだよ。ウチも流行に乗って見ようと思って最近仕入れて見たんだ。どうだいお兄さん、普通の塩を買うより安いよ?」

 

確かに、一人暮らしで塩なんてそうそう使うもんじゃない。だから逆にかえって岩塩を買っておいて使いたい時削って使えば楽か。

 

「分かりました。それ一つ下さい」

「そう来なくっちゃ!毎度ありがとうね!」

 

おばさんに丁寧に梱包してもらい、天然岩塩を受け取って店を出た。

 

「よくYouTub○とかでも岩塩プレートとか動画にあるからな、俺もちょっとオシャレに料理でもしてみるか」

 

そのまま再び歩き始め、ラーメン屋に入った。中に入りもやしマシマシ味噌バターラーメンを注文し、たいらげた。パンパンに膨れ上がった腹を擦りながら店を出ると、駅で見かけたマフラーの女性が店の陰から俺を見つめていた。

 

またあの女だ……。この街の住人なのか?

 

俺は何も見なかったかのように来た道を戻り、社宅へ戻って行った。だが、その道中にヒシヒシと視線を感じ、誰かに尾行されている気がした。不審に思った俺は歩くのを止めると、少し遅れて足音が止まる音が聞こえた。

 

え、何?俺について来てるのか?

 

そう思った俺は後ろを振り向くと、後ろには誰もいなかった。が、明らかに気配を感じた。

 

仕方ない……。

 

俺は道路のど真ん中でクラウチングスタートを繰り出し……。一気に駆け出した。すると、向こうも陸上選手の様に走ると思わなかったのか、戸惑いを隠しきれず慌てて走り出した。

 

やはり誰か来てる!!ここで勝負だっ!

 

俺は駆け出したと思わせといて突然ビタっと止まった。突然止まったのに驚き、後ろで転んだ音が聞こえて来た。その隙に振り向くと、先程のマフラーの女が寝転んでいた。社宅を知られては不味いと思い、俺はマフラーの女に声をかけた。

 

「い、い、い、いたい」

「おい、あんた。さっきからなんで俺について来るんだ?」

「─────っ!?」

 

マフラーの女はバッと頭を上げて俺を見つめて、

 

「や、や、やっぱり、わ、わ、私がみ、見えるん、だね?」

 

マフラーの女は滑舌が悪いのか、途切れ途切れに言葉を発した。

 

これはかなり不気味な女に絡まれてしまったな。

 

「こんなクソ暑い中でなんでそんなマフラーをしているんだ?冷え性レベル100なのか?」

「ひ、ひ、冷え性、じゃ、じゃない、よ」

「んじゃなんだ?」

 

俺がじっとマフラーの女を見つめると、マフラーの女は不気味に笑った。

 

「ひ、ひひひひひひ。し、知りたい、の?」

「あー是非とも聞きたいね。真夏にマフラーをする理由がな」

「ひ、ひひ。も、もう少し、と、歳をと、とったら、おし、えるよ」

「何年先まで焦らすんだよ。教えてくれないなら帰るよ?」

 

ぐるっと振り返り帰る素振りを見せると、

 

「え、え?か、帰る、の?」

「帰るよ、時間の無駄だしね。今から晩御飯の支度しなきゃいけないからさ」

 

マフラーの女に野菜の入ったレジ袋を見せるとマフラーの女は首に汗疹が出てるのか、ボリボリとかきむしりながら不気味に笑った。

 

「ひ、ひひひひひひひひ。じ、じ、自炊して、してるんだ」

「ほら、汗疹でて痒いんでしょ?無理にマフラーしなくていいじゃん」

「そ、そ、それ、は、わ、私のアイ、アイデンティ、ティだし」

 

頑なにマフラーをしている理由を話そうとしないマフラー女を見て俺はため息を吐いた。

 

埒が明かないな。幽霊なのは確定見たいだし、こんな道のど真ん中でいつまでも騒いでいられない。仕方ない、ここは連れて行くか……。

 

「分かった分かった。とりあえず家で汗疹手当してあげるよ」

 

そう言うとマフラーの女は狂ったように、

 

「ひ、ひひひひひひひひひ。い、家に、いっ、行っていいの?」

「うん。いいよ、こんな所で1人で騒ぎたくないしな」

 

俺はそのまま社宅に案内して中に招き入れてスーツケースから痒み止めの塗り薬を取りだし、マフラーの女を畳に座らせた。

 

「ほら、さっさとその暑苦しいマフラーとれ」

「で、で、でも」

「でもも、デーモンでもない。早く外せ!暑苦しいからっ!」

 

強く言うと、マフラーの女は根負けしたのかマフラーに手をかけた。

 

「こ、こ、これ、い、い以上、ひ、ひ、秘密に、で、出来ないね」

 

マフラーの女はそう言って赤いマフラーを外し始めた。すると、彼女の首がぼとりと落ち、畳に転がった。

 

「うおぉぉっ!?取れた!?」

 

驚いた俺は慌てながら這ってマフラーの女から離れた。彼女の首がこちらを見つめて、

 

「こ、こ、これが、わ、わた、私の、ひ、秘密だよ?」

 

喋った!?

 

どうやら首が取れても意識があるらしい。俺は彼女の首をゆっくりと持ち上げた。

 

「び、び、びっくり、し、した?こ、こ、怖いで、でしょ?ひ、ひひひひひひひひひ」

 

マフラーの女が不気味に笑う中、俺はじっと彼女の目を見つめた。だが、俺はそのまま目を瞑って鼻息を荒らげ、口を3の様な形にしながら突き出した。

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