幽霊にセクハラしても罪にはならないですよね?   作:ボトルキャプテン

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第61話 ひとりかくれんぼをみんなでやってみた!

 私はおくま、少し古くて髪が伸びる日本人形。この家に放置されてから1年弱が経って新たな住人がやって来た。名前は福島龍星、この男は不思議な力を使って怨念を溜め込んだ私を感じ取った。最初の頃は殺してやろうと何度も思ったが、今はそんな事は思ってない。今じゃこの家の留守番を任されているし、生活も悪くない。ただ、龍星が時々いやらしい本を持って帰ってくるわ、私の伸びた髪を使って遊ぶのがたまに傷だ。今日も今日とて私は玄関で帰りを待っている。別に待っている訳では無いが。

 

 そんな事を考えていると、龍星が帰って来た。

 

「ただいま、おくま」

 

おかえり、喋れる訳では無いがな。

 

 龍星がパタパタと茶の間に行き、テレビに電源を入れて何かを見始めた。それと同時に同居人達がこぞって現れる。すると、龍星がメリーに声をかけた。

 

「なぁ、メリー?この【ひとりかくれんぼ】ってほんとにやったら幽霊現れるのか?」

 

幽霊なら売るくらいそこに居るだろう。

 

「現れるんじゃない?こんな子供騙しみたいな幽霊出ないと思うけどね」

 

 メリーが映像に写っている幽霊を指差して笑っていた。それにつられて花子や隙間女も笑い始める。

 

お前も人形みたいなもんだろう。

 

 ひとりかくれんぼとは、「コックリさん」のような降霊術の一種で、現代に入ってできた都市伝説のひとつ。別の名を「ひとり鬼ごっこ」とも呼ばれており、自分自身を呪いにかけるような手法から、コックリさんよりも危険であるとも言われている。そんな下手をすれば命を落としかねないのに龍星が唐突に言い出した。

 

「ねぇねぇ、ひとりかくれんぼをみんなでやってみない?」

 

コイツは何を言っている?ひとりかくれんぼを皆でやったらそれはひとりかくれんぼじゃないだろう。いや、待てよ?龍星以外は皆幽霊、元々ひとりなのか?ん?

 

 そんな事を考えながら私が顔を引き攣らせていると、

 

「面白そうじゃな、龍星。やり方を知っているのか?」

「さんせ〜!やろうやろう!」

「かくれんぼなら私負けないんだけど?」

「か、かくれんぼ!かくれんぼする!」

「私は大きいのでどうしましょう?」

 

便乗するな、やるのを止めろ。

 

 すると、龍星が不気味な笑みを浮かべながら私を見つめる。

 

な、なんだ?

 

「おくま〜?ちょっと手伝ってくれる?」

 

は?

 

 ひとりかくれんぼを行う為には、手足があるぬいぐるみ、ぬいぐるみに詰められる程度の量の米、縫い針と赤い糸、包丁やカッターナイフなどの刃物、コップ一杯の塩水が必要だ。ひとりかくれんぼはぬいぐるみが必須。

 

だが私は日本人形、綿は入っていない。

 

「ぬいぐるみ無いからおくまでいいかな?」

 

コイツ正気か?

 

 龍星の言葉に気を取られている間に人の意見も聞かず、龍星は私の着物を脱がせ始めた。

 

お、お前何をしている!?や、やめろ!

 

 龍星が着物に手をかけた瞬間、花子と隙間女が止めてくれた。

 

「おい、龍星。おくまは市松人形なのじゃぞ?石膏で出来ているから中身は綿は入っておらんぞ」

「そうよ、おくまじゃ無理よ。リサイクルショップでやっすいぬいぐるみ買って来なよ」

「え?中身空っぽなの?そうなの?」

 

 龍星は私に問いかけて来た。

 

お前よく人形に話しかけられるな。まぁ、供養になるからこちらは助かるが。

 

 だが、龍星は無言のまま着物を脱がせる。そして何故か鼻息を荒らげている。

 

待て、お前人形にも発情するのか?

 

「おくまぁぁぁっ!」

「あんた何やってんの!?遂におくまにも手を出すようになったの!?」

 

 すんでのところでメリーに助けられた。

 

良かった、助かった。

 

「何も中身に入れなくたっていいじゃん。米をビニール袋に入れて赤い糸でぐるぐる巻きにすればいいんじゃないの?」

 

おい、雑にするな。

 

「それ良いね!サンタクロースにすればいいのか!」

「その手があったわね!」

「メリー、考えたな!」

 

私をサンタクロースにして幽霊が出てくる訳ないだろ!

 

 私の声が届かず、為す術なく私は米を担がされてしまった。

 

「んじゃ、夜中の3時前に降りてくるから待っててね?」

 

おい、このまま放置する気か!?

 

「ワクワクしますね!」

「あたしらいるのに幽霊なんて来るのかなぁ?」

 

 龍星達は私を残してそれぞれの部屋に戻って行った。

 

もう、殺して欲しい。

 

 ───────数時間後、龍星がバタバタと降りて来た。時計を見ると深夜3時15分だった。

 

せめて時間は守れ。

 

 龍星は慌てながら私を持ち上げて話し始めた。

 

「えーと、最初の鬼は龍星。最初の鬼は龍星。最初の鬼は龍星!」

 

おい、始める前になんで遅れたか説明しろ。

 

 私の声が届く訳もなく、そのまま風呂場へ向かい、私を水を張った風呂桶に入れた。

 

冷たっ!着物が濡れてしまったじゃないか!

 

 龍星は私を置いて明かりを消し始め、テレビをつけた。龍星はその場で目をつぶって数を数え始める。数え終わったと思えば、龍星はすぐに戻って来た。

 

「おくま、見つけた」

 

お前が勝手にどっか行って戻って来ただけだろう。

 

 じっと龍星を見つめると、龍星は米が入ったビニール袋にハサミを突き刺した。それにより米が一気にこぼれ始める。

 

日本中の米農家に土下座して詫びろ。

 

「次はおくまが鬼だから」

 

 龍星はそう言い残してどこかへ行ってしまった。

 

今度は私が探せばいいんだな?ハサミだけでは物足りない。確か下駄箱に金槌があったな。

 

 私はハサミを片手に玄関に向かった。下駄箱から金槌を拾ってその途中テレビの電源を消して辺りを見渡した。

 

よくも着物を濡らして辱めてくれたな。髪が伸びる日本人形代表として全員見付けてやる。

 

 私は激昂しながら金槌で壁をガンガン叩きつける。突然物音がして驚いたのかタンスから声が聞こえた。

 

隙間女、出て来い!

 

 私はタンスをガンガン叩くと隙間女が現れた。

 

「わ、分かった!私の負けでいいからそんなに怒らないで!」

 

黙れ、貴様はそこに座っていろ。

 

 隙間女は廊下に正座して反省を始めた。物音で起きたのか、小さいおじさんがゲージから騒ぎ始めた。

 

「なんだようるせぇなぁ。静かに───────」

 

黙れ穀潰し、貴様も叩き割ってやろうか!?

 

 私は髪の毛を伸ばして小さいおじさんを縛り付けた。小さいおじさんは何も言わずにその場で正座する。

 

八尺はどこだ、あのデカブツめ。

 

 ギロギロと辺りを睨み付けながらあるいていると、冷蔵庫の影から隠しきれていない奴がいた。

 

おい、八尺。

 

「わ、私はい、居ませんよぉ?」

 

やかましい。出て来い!

 

 ガンと金槌で床を叩くと八尺はびくっとした。観念した八尺は大人しく出て来た。

 

「ごめんなさい、隙間女さんの隣に座ってます」

 

そうしておけ。残りはメリー、花子、龍星だな。お菊さんとくねくねは恐らく起きれなかったんだろう。気配を感じない。

 

 私は2階に向かいメリーと花子の部屋に入った。私は髪の毛を伸ばして押し入れを開けると、上にメリー、下に花子が隠れていた。両手を上げながら2人は出て来た。

 

「流石はおくまじゃな。参った」

「悪ノリしたのは悪かったわ。ってか金槌をしまってくれる!?」

 

残りは龍星だな。覚悟しろ!

 

 メリーと花子を正座させて龍星の部屋に向かう。金槌をギュッと握り締めてドアノブを叩き折って中に入った。ベッドに視線を向けると、布団が膨れ上がっていた。

 

あんな所に隠れているのか?バカなのかアイツは。

 

 ゆっくりと近付いて布団を捲ってみると、塩水の入ったコップを零したまま爆睡している龍星がいた。私は何事も無かったかのように布団をかけ直して玄関に戻って行った。

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