幽霊にセクハラしても罪にはならないですよね?   作:ボトルキャプテン

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第72話 俺の御札

 滞在2日目、俺は昼間に観光を楽しんだ。夕方になり、ホテルに戻って来た俺は部屋に入ろうとした時、ふと奥に続く廊下を見つめた。

 

なんだろう、この気配……。

 

 妙な気配を感じると、薄汚れた黒いウェディングドレスを身にまとった花嫁がバージンロードを歩く様にゆっくりと歩いて居た。タダならぬオーラを感じ取った俺は鍵を開けて直ぐに部屋の中に入った。

 

「なんだよアイツ……」

 

 もう一度ドアを開けて廊下を確認すると、花嫁の姿はもうなかった。俺は胸を撫で下ろし、ドアを閉めた。

 

アレは間違いなくヤバい。襲撃されない様に対策しないと。

 

 そう考えた俺は電気を付けて備えられた紙と万年筆を手に取り書き始めた。

 

「これで良し。効果はどうかな……メアリーで試して見るか」

 

 俺はおもむろに洗面所の鏡に向かった。

 

「ブラッディ・メアリー、ブラッディ・メアリー、ブラッディ・メアリー」

 

 メアリーの名前を呼ぶが、彼女は現れなかった。

 

流石にあれだけの事をしたんだ、来るわけ無いか……。

 

 俯いて鏡から視線を外したその時。

 

「何よ!」

「───────っ!?」

 

 俺は驚きながら鏡に目を向けるとそこにはメアリーの姿が写っていた。

 

「何?なんか用?」

「いやぁ、まさかまた来てくれるとは思ってなかったから」

「あたしだって来たくないわよっ!呼ばれたら必ず来なきゃないの!」

 

そうか、日本で言う花ちゃんの「花〜子さん、遊びましょ?」的な感じだから必ず現れなきゃないのか。

 

「幽霊も大変なんだなぁ」

「ほっといて。で?なんなの?」

 

 メアリーがギロリと俺を睨む。だが、俺はケロッとした表情で答えた。

 

「呼んだのは他でもない、ちょっと聞きたい事があってね?」

「聞きたい事?何? スケベなことだったら承知しないわよ?」

「ノーブラでもバレない事くらい知ってるさ」

「───────っ!!」

 

 メアリーは突然耳まで真っ赤にしながら俺に掴みかかって来た。

 

「じょ、冗談だよ。花嫁の事を聞きたいんだ」

「花嫁?誰よそれ?」

「なんだ、知らないのか?ここのホテルに彷徨ってる花嫁の幽霊だよ」

 

 俺が答えると、メアリーはぱっと手を離した。

 

「どうやら今回は本当の様ね。うーん、花嫁……花嫁……」

 

 メアリーは俺から離れ、腕組みをしながら考え始めた。

 

「まさか、アイツかな……?」

「アイツ?」

 

 俺が首を傾げると、メアリーは。

 

「いや、まさかね。アイツはメキシコに居るはずだから……なんでもないわ。忘れて」

「え?メキシコ? んじゃあの子は?」

「その辺の浮遊霊よ。心配する事はないわ」

「そうかなぁ……念の為に御札を用意したんだけど」

「おふだ? アジア人が魔除に使うっていう紙の事?」

「そうそう。こっちでは十字架だろうけど、生憎俺十字架持ってないんだよ。だから護身用に書いてみたんだけど、見てくれる?」

「いや、あたしに見てくれって言われてもお門違いじゃない!?」

「そこをね、何とか頼むよ」

 

 メアリーに頼むと根負けしたのか、メアリーは呆れた様子でリビングに向かった。メアリーがテーブルに目を向けると、

 

 

【挿絵表示】

 

 

「え?、何これ?……え?」

「一生懸命書いたんだけど、どうかな?」

 

 メアリーは俺の御札と俺の顔を交互に指を差す。

 

「こ、これがおふだなの?なんって言うか、その、怖い」

「えっ?なにが怖いの?」

「怖いでしょ!何これ!?あたしはおふだってよく分からないけど、聖書みたいな字を書くんじゃないの?」

「えっ?そうなの?」

「いや知らないけど! 多分、多分よ?あんた間違ってると思う」

「そうかなぁ?効果あるかな?」

 

 俺は御札を手に取ってメアリーに近付けて見る。

 

「止めて、なんかその目が頭に残るから……いや、ホント止めて」

「効果はあるようだね」

「効果ってか、どんな幽霊でもそれを見せられたらビビるわよ。「えっ、何この絵、怖いんだけど」って言うわよ」

「そんなに!?やったね!」

「褒めてないから。なんなら1回セラピーとか専門医に行った方がいいと思うほどよ」

 

 何故かメアリーは俺を可哀想な人の様な目で見つめて来た。

 

なんだかんだでこの御札は嫌がらせ程度の効果はあるらしい。

 

「他に何かある?ないならもう帰るわよ?」

「あっ、待って!」

 

 俺はメアリーを引き止めた。

 

「何?まだなんかあんの?」

「昼間、ちょっと観光に行ってきたついでに買って来たんだ。良ければ受け取って欲しい」

「えっ?」

 

 俺は紙袋をガサガサと漁り、取り出した。

 

「はい。キャミソールとスポーツブラ」

「あんたソレどうやって買ってきたの!?」

 

 メアリーはゾッと青ざめて後退りする。だが、俺はその分近付いた。

 

「いやぁ〜女の店員さんにも変な目で見られたから大変だったよ」

「でしょうね。男がそんなのレジに並んで買ったんだもの」

「受け取ってくれ」

「いやいや要らないから、それにそのままの状態だと持って帰れないし」

「だったら今そこの暖炉で燃やすよ!」

「あんた正気かよ! いいよそこまでしなくても!」

 

 メアリーは暖炉に投げ入れようとする俺を引き止める。

 

「き、気持ちだけ受け取るから、な?それでいいだろ?」

「な、なんだと!?これを買うのにどれだけの屈辱を味わったと思うんだ!高校生くらいの女の子にも「え、なにこのアジア人?キモッ」ってボソボソ言われながらも買ってきたんだぞ!」

「うんうん。さぞ辛かったでしょうね。けど、頼んでないから。お菓子とかだったら生気吸えるから良かったけど、下着とか想像の斜め上行くとは誰も思わないでしょ?」

 

 メアリーは頑なに受け取らないが俺も退かなかった。

 

「今回だけ、今回だけ受け取ってくれ、国際交流と思ってさ?これ持ってても仕方ないからさ」

 

 そして遂に、メアリーが根負けした。

 

「あーもー、分かった。分かったから。早く燃やしてくれる?」

「了解!ちょっと待っててね」

 

 俺は意気揚々とキャミソールとスポーツブラを暖炉の火に入れた。あっという間に燃え尽きたキャミソールとスポーツブラは灰になった。メアリーはその灰からキャミソールとスポーツブラを取り出した。

 

「これで文句ないでしょ?」

「似合うといいんだがね?」

「ま、まぁ後で着てみるよ。んじゃね?」

 

 メアリーはそそくさと鏡の中へと入って行った。

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