ミストレの兄   作:主義

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第2話

多くの人間にとってミストレーネ・カルスは憧れであったりする。容姿端麗、文武両道の彼を憧れない方が無理な話なのだろう。女子のファンも多くてファンクラブが出来るほどだ。

 

本人も顔を傷つけられるのは死んでも嫌なようで全力でガードをする。どんな時でも余裕そうな笑みを浮かべたりして…真面目さがあんまり伺えない彼がここ最近は嘘のように大人しくて訓練にも真面目に取り込んでいる。それは教官たちにとって勿論、嬉しいことだが…同級生の者たちからすれば何があったのだろうと心配になってしまう。

 

 

そして特にバダップ・スリード、エスカ・バメルはミストレーネ・カルスと話すことが多いためか……心配している素振りが見て取れる。だが彼らは話す事が出来ないでいる。

 

 

 

 

何故、ミストレーネ・カルスが急にこんな風になったのかを説明するには一週間前に振り返ることが必要になる。

 

 

 

--------

一週間前

 

 

 

その日、ミストレはいつものように学校に行き帰宅していた。家に着きいつものように玄関に入っていくとそこには普段ないはずの靴が置かれていた。その靴はある人物のもの。あの人はこだわりがあるようで靴はいつも同じ物を履いている。オレは駆け足でリビングに向かうとオレが想像していた人物がソファーに座っていた。

 

 

 

「おかえり、ミストレーネ」

 

 

 

そこには爽やかな笑みを浮かべながらオレに声を掛ける青年の姿があった。オレはその青年の事を知っている。だってオレが憧れている人物なんだから。

 

 

「…た、ただいま、兄さん」

 

 

少し緊張してしまっていつものようには返事が出来なかった。今日、帰って来るなんて聞いてないんだけど。兄さんは軍人だからあんまり家に帰って来ることはない。だから帰ってくる前には絶対に一報からある。だけど今回はそんな話を聞いていない。

 

 

 

そしてそんな事を考えている間にも兄さんはソファーから立ち上がり、オレの目の前に来た。そして当たり前のようにオレの頭に手を置いて優しく撫でた。

 

 

「随分と見ない間に大きくなったね」

 

 

 

兄さんに撫でられると何でか分からないけど…とても落ち着く。昔からそうされていたかもしれないけど、母さん、父さんに撫でられても何か満足できなかった。だけど兄さんに撫でられると満足できるんだよな。他の人にはこんな気持ち分からないだろうし、分からなくても良いんじゃないかと考えている。

 

 

「…そうかな、そんなに変わっていないんじゃないかな」

 

 

 

「ボクはたまにしか帰ってこないからかもしれないね。ミストレーネと会うのも二年振りぐらいだしね」

 

 

 

「………本当はもっと一緒に過ごしたい…兄さんは軍人として忙しいから仕方ないですよ」

 

 

学校の奴らがこんな喋り方をするオレを見たら驚くだろうな。オレがこんな丁寧に近い言葉を使うのは家族だけだからな。

 

 

 

「だけどこれからはもう少し頻繁に帰って来れるようにしたいと思っているよ」

 

 

 

「それで……兄さんは何で今日帰って来たんですか?」

 

 

軍人に長期休暇というのはあんまりない。それに兄さんほど優秀な軍人ともなると仕事は絶えない。それに今まで兄さんはかなりの年数軍人として働いているのを見てきた。だけど一度たりとも正月とかでもなければ帰って来る事はなかった。だけど今の季節、時期は別にそういう季節でも時期でもない。

 

 

 

「…ああ、そうだね。今回はミストレーネに伝えたい事があって少し時間を作って会いに来たんだ」

 

 

 

「オレに?兄さんが」

 

 

 

「うん。王牙学園から要請があってね。来週からボクが君たちの訓練の指導をする事になったんだ」

 

 

 

「………え、兄さんが!!」

 

 

 

「そうなんだ。どうやら講師に呼ぶならボクが良いという名指しだったみたいでね」

 

 

兄さんがうちの学園に…来る。もし、教師からオレが授業を真面目に受けていないと知られたら兄さんに失望されるかもしれない。失望されたらオレは終わりだ。兄さんから失望の眼差しで見られたら待っているのは地獄だ。

 

 

時は戻り、現在。こういう事があったが故にミストレは授業を真面目に受けるようになったのだ。

 

 

 

 

 

そして今日は兄さんがこの学園に来る日。今日までの一週間の間は真面目な生徒としてのミストレーネ・カルスを作り上げてきた。これで少しは安心できる。自分の席に座りながらそんな事を考えていると担任の教師が入って来た。教師は全員が机に座っているのを確認してから話し始めた。

 

 

 

「今日は皆さんに紹介して置かなければいけない人がいます。では入って来てください」

 

 

そして入口からスーツに身を包んだ兄さんが入って来た。

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