アラム・デグレチャフ。転生した私の兄貴であり、軍人として働いている。兄貴は国に暮らす者たちから「英雄」だの「百年に一度の天才」とか言われているが私から見たら兄貴はとても天然な人間だ。
兄貴はとても優しくて他人のことを心配してしまう。前の世界でエリート街道を突っ走ていった私的にはこういう人間は絶対にエリート街道を突っ走れない人間だ。社会では人を蹴落とさなければならない状況に陥ることもある。その時に人を蹴落としても上に進もうと思えなければエリート街道は走れない。
前の世界でもし、兄貴のような人間と会っていたら私は目にも留めなかっただろう。
兄貴の優しさは私の腐った心が浄化されていく。出世のことを一番に考えて他のことを二の次に考えていた時の私と違って今の私は出世のことも少しは考えているけど一番は兄貴だ。
兄貴のお陰で今の私の精神は安定しているんだ。だから簡単に言うと私の精神安定剤だ。こんなに一人の人間に執着するのは生まれて初めてのことで自分でもあんまり理解出来ていない。前の世界の私が今の私を見たら「何やってんだ!」とか言われそうだが…私はこれで良いと考えていたりする。兄貴と一週間でも会えないと私は敵、味方関係なく殺してしまう。
それほどまでに私は兄貴に依存している。だが、私は一度たりとも兄貴に対して好印象な言葉を使ったことは無い。今まで甘えることををしてこなかったから…急に誰かに甘えるとなった時に甘える事が出来ない。別に甘えたいというわけじゃないが…自然に甘えられる人が羨ましくないと言えば嘘になる。まあ、兄貴は私が急に甘えるようになったら逆に驚いて今まで見たいに普通に話す事が出来ないのではないかなと考えたりすることもある。
だからどこか踏み出せない。
私が生を受けて…初めて特別な感情を抱いた兄貴のことを私は死んでも守り抜く。
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「兄貴、私はもう一人前の戦士なのだから心配しなくても大丈夫だ。兄貴は過保護なところがあるから、こちらの方が兄貴のことを心配だ」
私はいつもの口調で兄貴に向かって言った。すると兄貴はいつものように…笑みを浮かべていた。兄貴が笑みを浮かべていない日を今まで一度も見たこと無い。あんなにいつも笑っていて疲れないのかと私的には思ってしまったりする。
「ボクの方は大丈夫だよ。適当に仕事をこなしているしね」
こんな笑いながら「適当に仕事している」と言う人間がいるのだろうか。兄貴だから許されるが…他の兵士がこんなことを言っていたと上層部に言われたらその人間は首を切られる可能性が高い。
「適当にこなしている……か。国の最後の切り札とも呼ばれている兄貴が言うセリフではないと思うが」
「良いんだよ。ボクは皆が期待する良い人間ではないんだよ。ボクが軍人をやっているのも衣食住を安定させるためだしね」
「まあ、それが人間の働く目的だから兄貴も普通ということだな」
「そうかもしれないね」
兄貴は満面の笑みを浮かべながらに口にした。
兄貴は普通であることを望んでいるのだ。生まれてすぐに天才と呼ばれ、期待を背負ってきた兄貴にとって『普通』とは縁遠い言葉だ。だから普通に憧れている。
前に一度、「兄貴は生まれ変わるなら何に生まれ変わりたい?」と聞いた事があった。その時の兄貴の返答は「まあ、何でも良いけど普通なものがいいな。疲れないもの」と言っていた。
これはそんな兄貴と転生した私の物語。