「おいおい、どうなってるんだよ……こりゃ――」
少し軽薄そうな少年が弱ったとうなだれる。
生徒会の一室。
おそらく、すぐにでもテロリストに占拠されるだろう。
「こんなことになるなんてね――とりあえず、さっき校内放送で無抵抗を呼びかけておいたけど……」
うつむく彼女は生徒会長のミレイ。
生来お調子者の彼女であるが、さすがにこの状況下でははしゃげない。
どうにかして生徒の被害を防ぎたいけれど……
「大丈夫ですよ、あの人が私達を殺すなんて……」
均整のとれた体。
きれいなその顔を思案に歪ませるのはシャーリー。
「信用できるわけないじゃない。あいつらはイレブンなのよ!? 会長も皆も、抵抗しなきゃ殺されちゃうわ。そう――殺される前に……!」
ぎりぎりと顔に爪をたてるのはニーナ。
今にも叫びだしそうな危うい雰囲気。
その顔が歪んでさえいなければ、小動物的な愛くるしさを感じていたことだろう。
「ニーナ……大丈夫よ、彼らも抵抗さえしなければ手荒には扱わないはず」
「そんなのわからないじゃない!」
狂乱する彼女はシャーリーの言葉など聞いちゃいない。
「「「――っ!?」」」
ざわめきが聞こえてくる。
テロリストだ。
どうやら彼らには目立たないように移動する気すらないらしい。
「では、皆さんは逃げてください」
車椅子の少女が言った。
彼女はナナリー。
「車椅子では逃げられません。だから、あなた達だけでも」
「ダメよ。あなたを置いて逃げる訳にはいかない」
「そうだぜ。そんなことをしたらルルーシュのやつに殺されちまう」
「そうよ。いくらなんでも――黒の騎士団がナナちゃんを手にかけるわけ……」
「……っ!? 近づいてきた。とりあえず、隠れましょう」
ミレイは他の皆といっしょに物陰に隠れる。
ナナリーを抱きしめながら必死に息を殺す。
「黒の騎士団だ! 学園は俺達が制圧した。学生は全員体育館に押し込めとけとのゼロからの命令だ。大人しくついてきてもらおう!」
入ってきた男が声をはりあげた。
張り詰めた静寂。
誰かがいた痕跡は残っている。
けれど、逃げ出したのか気配は感じられない。
「……」
適当に当たりを見渡す。
もちろん、銃を構えるのは忘れていない。
ひと通り見渡したところで納得する。
「……ここにはいねえか」
出て行った。
耳の痛くなるような静寂の中、生徒会のメンバーはまだ息を潜めている。
何時間――いや、何分……だろうか。
とにかく、体感時間だけは異様に長くなる中、外が騒がしくなる。
そして、スザクとの声が聞こえた。
会話全体はよくわからない。
だが……確かにそういったのだ。
今はここにはいないとはいえ、スザクもまた生徒会のメンバー。
見捨てるわけには――
「皆さん、スザクさんを助けてあげてください」
「でも、ナナちゃんは……」
ナナリーが迷いなく声を上げた。
その言葉には従いづらい。
いくら仲間が危険にさらされているとはいえ、歩けない目も見えない女の子を置いて行くなんて。
「私はここでおとなしくしています。黒の騎士団の方も歩けない私に暴力をふるうことはないでしょう」
「でも――」
ナナリーはさらに言い募る。
一応、言っていることは正しい。
何が起こるのかわからないのが戦争だということを除いて。
「お願いします」
「……仕方ないわね」
さらにお願いするナナリーに皆は折れた。
生徒会の面々はできるだけ静かにスザクのもとへ向かう。
もちろん集中していれば聞き取れるくらいの音を出しながら移動する。
彼らは忍者ではないのだ。
しかし、相手もテロリストとはいえ、訓練を受けたこともない素人集団。
多少の幸運に恵まれた彼らは見つかることなく声が聞こえた場所に向かっていく。