「チェックメイトですね、姉上」
「ぐ――ダールトンを操るなど、貴様……何をした?」
ルルーシュの絶対遵守のギアスに決まっている。
しかし、直後に彼を殺した。
主人を殺した騎士に、その意識が取り戻される前に死をくれてやったのは――せめてもの償いか。
そして、今。
ルルーシュはコーネリアと対峙している。
一人はナイトメアを壊され、自身すら傷つきひざまづいて魔王を見上げる。
一人は無傷、魔女を伴って傲然と戦姫を見下ろす。
「それで、どうするつもりです?」
三人目。
魔女は数には含めない。
ナナリーが現れた。
「ナナ……リー?」
「お母様の仇ですか? それなら、今もアシュフォード学園で潰されていますよ」
「――ほぁ?」
「それについては後でお話しましょう、お兄さま」
「ナナリーだと? ならば、ゼロ――お前はルルーシュ?」
「知られてしまいましたか。しかし、あなたを生かしておく気など――っ!」
ルルーシュはナナリーを見て躊躇する。
この子の前で人を殺していいものかと。
だが、すでに彼女は人が死ぬところを見ている。
「いや、待て――ナナリー、まさか目が……」
「はい、見えます。ギアスの影響ですね」
ルルーシュを見つめるナナリーの目には2対の凶鳥。
すでに達成人の領域にまで辿り着いている。
どれほどギアスを使ったのか、いや――使わされたのか。
「このギアスは強すぎる。おそらく、お兄様のものとさえ比べ物にならない。お兄様は考えたことがありませんか? 運命の赤い糸があるのなら、死の黒い糸があってもおかしくないのではないか、と。そして、色の種類は無限と言ってもよいうほどに」
「運命を司る糸を紡ぎ、操り、断つ3人の女神――モイラか。けれど、それが……」
「それが私のギアスです」
「――っ!?」
「父様が憎いのなら、絶対遵守と運命のギアスがあればたやすいこと。もっとも、日本人を勝たせるのは不可能ですが」
「黒の騎士団が負けると?」
「ええ、見ていてください。あなたがいなくなれば、お姉様を失った有象無象にすら負ける。その程度では、精々が反逆しかできない。守ることなど、遠い夢の果て」
「それでも、俺は……犠牲にしてしまったもの達のために――」
「世界は犠牲を求め続ける。誰一人として、犠牲を捧げなかったものはいない。なぜなら、世界は捧げなかったものの敵だから。お兄様のそれも、規模が大きいだけで皆がやっていることにすぎない。あなただけが償う必要なんてない」
「ナナリー。でも、俺は優しい世界を作るために」
「では、選んでください。世界の敵となって”優しい世界”を作るために戦うか――それとも、私のために諦めるか。前者を取るのなら、私は今ここで果てます」
ナナリーが取り出したのは、彼女が持っているはずがないもの。
偶然落ちていたものを拾った。
運良く、いや――運悪く? 完全に動作する状態。
「――そ、そんな……俺は、お前のために……でも、それじゃカレンや黒の騎士団に申し訳が……」
「選んでください」
「――わかった。わかったから、その銃を下ろしてくれ。お前が自分に向けて銃を持っている姿なんて、見たくない……」
「待て!」
「――お姉様、何か?」
「どういうことだ――ルルーシュがゼロ? そして、やめるだと……貴様ら、一体何を言っている?」
「将来のことですよ、コーネリア姉様」
「姉上――あなたは殺しておくべきですね。しかし」
この期に及んでも、妹の前で人殺しをすることには躊躇いを覚える。
「あなたはそこでおとなしくしておいてください。あなたが生きていても、それはもはや黒の騎士団の無いに等しい勝利の確率がさらに0に近づくだけ。変わりはしません」
「ナナリー? そうだね。君がそう言うのならそうしようか」
ルルーシュはコーネリアに一瞥をくれる。
その瞳にあるのは哀れみ? それとも親愛? 憎しみということもあるかもしれない。
けれど、コーネリアは見てしまった。
その瞳に一瞬だけ後悔が浮かぶのを。
ルルーシュは携帯をかける。
「藤堂か? 私だ――ゼロだ」
「ゼロか。ちょうど良かった……指示をくれ。ブリタニア軍がまた押し返してきてる」
「後はお前がやれ」
「な、なんだと――? ふざけるな! おい、ゼロ――」
「私はもう、何もしてやれない」
「なんだと!? それはどういうことだ――我々は力を合わせてブリタニアを打倒するのではなかったのか?」
「それはもう、関係がない――永遠に」
「待て、ゼロ。貴様は我々を見捨て――」
通話を切った。
それだけでは飽きたらず、真っ二つに折ってしまう。
「これでいいんだな? ナナリー」
「ええ。では行きましょうか――私達二人で」