「マエストロ様!」
バンドの練習が終わり、皆でRiNGを出てすぐだった。
突然響いた大きな声。視線を向ければ、声の主であろう白い長髪の少女と、2mを超えるかという長身の男性。
「うわ……」「あっ!」
「「え?」」
2人の姿を見て、声が重なる。嫌な記憶を思い出した私と、何かいいものを見つけたような嬉しそうな声を上げた愛音ちゃん。
「そよりん、知ってる人?」
「女の子の方にね、ちょっと前に会ったの」
「作品無くしたって言って落ち込んでた。話聞いたら意味わかんないことばっか言った挙句、良い材料になるとか言って絡んできた奴」
「あぶねー女の子」
出会った時のことを、立希ちゃんが掻い摘んで説明してくれた。その時の印象としては、よくわからない事を言ってくる、あまり会話が出来ない少女といったところ。
「だからあんまり関わりたくはないかな……」
「え~、でもあの人の弟子とかだよね?気になるなあ」
「男の人のって事?知ってるの?」
「ほら、前に話した芸術家の人!カリストさん!」
そういえば、2人で歌詞を考えていたら芸術家の人に出会って詩を褒められたと言ってたっけ。聞けば、以前別の場所で活動していた高名な芸術家だったとか。
そんな彼らは、もはや2人だけの世界に行ってしまったのだろう。周囲の注目など意に介さず会話を始めている。
「アルビナ。あなたも来ていたのですね」
「マエストロ様!私、ここに来てからファシアが居なくなって、作品も作れなくて……!」
「ええ、そうですね。ここは都市とは違います。強化施術は無く、治安維持組織は強力に機能している……材料確保は極めて困難です」
あの意味の分からない話もきちんと理解している。少女の師匠というのは本当らしい。
少女は以前『マエストロ様』なる人と侵入者の相手をしたと言っていたっけ。彼のことをマエストロ様と呼んでいたようだし……。
……あまり関わりたくはない。
「帰ろう」
「え、何で?」
「あの人たちに関わらないほうがいいと思う」
以前自分の体を作品にしたという発言と、監視を気にしているような口振り。ろくでもない事をしていた可能性が高い。
いち早く離れようと提案する。立希ちゃんも賛成してくれているけど
「私は……気になる」
意外なことに、燈ちゃんが残ると言い始める。
「どうして?」
「あの人……迷子だったから。迷ってる内に全部を失くして、動けなくなってた。でも今は……また歩こうとしてる?」
「ほら、ともりんもこう言ってるしね?」
「……じゃあ見てるだけにして。本当に危険な人かもしれないの」
「もー、そんなに?」
会話が終わったら見つからない内に離れる。これが最大限の譲歩。
そう話している間も、あの2人の会話は続く。
「しかし、アルビナ。果たして我々は身体派を続けるべきなのでしょうか?」
「マエストロ様……?」
「貴女も気付いたはずです。ここは、私達を受け入れてくれないと」
「……」
「芸術は見る人が居てこそです。あなたがファシアと共に投げかけた問いも、考えるのが作者自身だけでは意味がないでしょう?」
諭すように語るカリストさん。話を聞くアルビナと呼ばれた少女は顔を俯かせている。
「だからこそ、私はこの世界の芸術を追求しようと思うのです。材料が変わっても、世界は素晴らしい作品で溢れています。アルビナ、貴女も共に新たな道を歩みませんか?」
「そんな……」
以前何をしていたのかは分からない。でも、昔のやり方を諦めるような言葉。きっと彼にとっては思うところはあっても、決して悪いものではない決断。
でも。アルビナさんにとってはそうではなかったらしい。
「……っ!」
「アルビナ!」
アルビナさんが踵を返して走っていく。カリストさんは背中が見えなくなるまで、寂しげにその姿を眺めていた。
カリスト
バンドリ世界に来て身体派は根っこから認められないと悟った。
『合わない人がいる』くらいならその人向けの物をと考えられるけど、『そもそも受け入れられることは無い』レベルだと流石に諦めそうって事で、心機一転今いる世界の芸術に向き合おうとしている。
周りに合せているからブレーキかかりまくってるだけで、薬指身体派だったことは変わりないので関わらない方がいいというそよの考えは間違ってない。
アルビナ
どうやって身体派やるか悩んでいたところでカリストに出会ったが、彼は身体派を諦めた事を知る。
都市だったらねじれてたレベル。
愛音燈カリストの出会いも書きたかった。
歌詞を考えてる2人のノートをたまたまカリストが見て込められた心を考察したり、迷走した末に返り咲く事が出来なかったと語ったり、バンドリ世界の芸術をやってみようというきっかけになったりする予定だった。
どうやってカリストが2人のノートを見る展開にするかが思いつかなかったのであきらめた。
アルビナが去った後にMyGOと話す展開も書きたかった。
燈に「貴女という芸術家に出会えたこと、光栄に思います」「いつか貴女の作品を見る事を楽しみにしていますよ」的な事を言わせたかった。
単純に書けなかった。