その天殺星がすごい年取ったお爺ちゃんだっていい。
ちなみにリンバスで一番ビジュが好きなキャラは多分藍色の老人です。
ここは蜘蛛の巣。五本の指が、とある刀を鍛える場所。
その内部の構造は不明瞭で、そこに住む者たちが各々の領域でその時を待つ。
領域の内の一つ、何もない黒い空間。そこに、刀を持った老人が居る。
天地も曖昧なその空間で、彼は間違いなく"地"に腰を下ろしていた。
「憐れだな。天殺星」
老人に話しかけたのは白無垢の女。
黒い空間の中に現れる畳の上を歩く彼女の足元は、青い光を放つ行灯で照らされている。
「かつて世界を歩いたお前は心に穴を開け、歩みを止め、ついに奈落に落ちた。それとも、ここすらお前の見たかった世界だと言うのか?」
老人は答えない。
「私は次の天殺星が生まれるまでここを出られない。お前がその刀を惜しまなければ、一時でも私の自由が無くなる事はなかっただろうに……」
白無垢の女、地慧星は、一通り恨み節を吐いた後、畳の道を戻っていった。
「やあ、天殺星。今日は嬉しい報せがあるんだ」
その空間では把握できない時間が流れ、スーツを着た男がやってきた。
彼が歩く石造りの道には時折階段が現れ、重力すら無視して上下左右を行き来する。
やがて、有るかも分からない壁に座る老人を見る形となった彼は、笑みを浮かべて話し出す。
「ようやく生まれたよ。貴方の才能を地慧星の適性で磨いた傑作だ。ヨシヒデと名付けた」
老人は答えない。
「地慧星は……出られると分かったら直ぐに出て行ってしまったな。顔くらい見ていけばよかっただろうに」
老人は答えない。
「貴方は実践しか教えられないだろうから、幼いあの子は連れて来れないけど……。まあ、言葉を覚えたあたりで一度顔を見せに来るよ」
スーツの男、リアンは、そう言って石の床を戻っていった。
また時が流れ、再びリアンがやってきた。
「天殺星、前に行ったことは覚えているか?」
彼は、後ろに居る少女に前に出るよう促す。
現れたのは、白いワイシャツに赤いスカートの少女。
「はじめまして……ヨシヒデといいます。貴方が私の本当のお父さん……ですか?」
その声を聞いて、今まで不動を貫いてきた老人が立ち上がる。
「お父さん……?」
鞘から抜かないままの刀を手に持ち、下がった切っ先を上げようとする。
「天殺星。言っただろう?今回は顔を見せに来ただけだ。貴方が剣を教えるのは、もう少し先になる」
しかし、それはリアンに制止された。
老人は、またその場に腰を下ろして沈黙する。
「見ての通りだ、ヨシヒデ。彼の事は……彼の授業で分かって来るだろう。それまで待とう」
「うん……」
リアンの言葉に、怯えた様子のヨシヒデは小さく頷いた。
「あいつだ」
また時が過ぎる。やってきたのは成長したヨシヒデ。
彼女が歩く畳の道にはいくつもの障子が現れ、閉じた向こうから暖色の光が差す。
ヨシヒデは、少し遠い位置で足を止め、同行者に声を掛けた。
背後から現れたのは、ヨシヒデに似た、青いメッシュの少女。
「こんにちは!アラヤって言います!おじちゃんは、お母さんの本当のお父さんって聞きました!じゃあ、私にとっては本当のお爺ちゃん?」
老人が立ち上がり、剣を構えようとする。
「今回は授業じゃない、こいつを見せに来た。覚えおけ、"アラヤは違う"」
老人はまた腰を下ろす。
「アラヤ、釘は刺したが、あいつには近づくな」
「ずっとここに居るの……?」
「お前が気になるって言うから見せたんだ。これで満足しろ」
ヨシヒデとアラヤは、道を引き返して行った。
天殺星
小指親方の老人。藍色の老人や酔手夜客くらい老人。
昔は記憶全てが阿頼耶識一振りに匹敵するほどの感受性の持ち主だった。
刀を振る度記憶を失う事を悲しんだ彼は、悲しみを凌げる場所を探して無我にたどり着いたが、以来その場に留まり、刀を抜かなくなってしまった。
地慧星
良秀は蜘蛛の巣で"発生"したと思ってたけど、地慧星の口振りと原文のニュアンス的に腹を痛めて産んでるっぽい。
産ませるために連れて来たのかって言うとそうでは無くて。
「自由を望む地慧星は、動かない天殺星が理解できない」と「天殺星の才能を地慧星の適性で磨いた」っていうのをやりたかった。
蜘蛛の巣にメインターゲットされたのは天殺星だから、もしかするとこの世界の良秀は"発生"してるかもしれない。
良秀が出て行ったあとアラヤが地慧星に成り代われないっていうね。