だから俺は○○じゃねえって!   作:ガウチョ

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平和の落日

No.1ヒーロー引退する!!

 

 

 

彼の事務所から関係各所に送られた引退を表明する旨が書かれた紙が送られた時、あらゆるメディアやネットでその紙面が連日連夜報道され、世界を駆け巡る。

 

オールマイトの引退……数年前に負った傷が悪化し、個性の使用が肉体に多大な負担を抱えることになり、引退を考えていた事を丁寧な文章で綴られた内容に、それを読み上げるニュースキャスターすら涙した。

 

嘘なんじゃないか?

 

引退詐欺なんじゃないか?

 

または未だ見ぬ巨悪を欺く作戦なんじゃないか?

 

錯綜する情報に、憶測が憶測を呼んで既にオールマイトは死んでいる説なんて話が飛び交う始末。

 

世界中がたった一人の動向に躍起になる中、ついにその渦中のヒーローは記者会見を開くことになり、会見にはあらゆるメディアが引退する平和の象徴の姿をカメラに納めようと集まった。

 

あらゆるメディアが緊急生特番としてオールマイトの引退記者会見を放送する。

 

そして世界は()()平和の象徴の姿を見ることになった。

 

 

 

 

 

「うそだろ……」

 

 

カメラ越しのその姿に、幻なんじゃないかと目視で確認するカメラマンだが、その人物に変化はない。

 

今まで自分達が見ていた彼とは違い、今の立ち姿は亡霊そのものだった。

 

筋骨隆々……世間では画風が違うと言われたナチュラルボーンヒーローはまるで別人のように痩せ細り、立っている姿に全く安心感が感じられない。

 

 

「……この姿だとわからないでしょう」

 

 

そう言った彼は気合いを入れたかと思うと、一瞬で自分達がいつも見ていた大きな身体になっていた。

 

しかし……。

 

 

「……グッ……すまないが時間のようだ」

 

 

それは空気が抜けるように痩せ細った亡霊のような姿に戻っていく。

 

 

本当に重症なのか?

 

 

真実を知りたくて来た記者達も、言葉がない。

 

彼はゆっくりと深呼吸をしながら記者会見用の席に座り、テーブルに置いてあった水を一口飲んだ。

 

 

「あの姿自体が個性の様なものでね、今の体だと数分……力なんてとてもじゃないが発揮出来ない状態さ」

 

 

その言葉を皮切りにオールマイトは今後の自分の事を話していく。

 

数年前から肉体は限界を迎えていたこと。

 

そしてここ数ヵ月でその限界も越え、個性を使うだけで肉体に多大な負担がかかるようになったこと。

 

そしてもう個性を使った戦闘も不可能で、これからは無個性の様に生きていくしかないということを。

 

余りに辛い話であった。平和の象徴が居なくなる……それが現実味を帯びてきていた。

 

オールマイトからの説明が終わると今度は記者達の質問に移行していく。

 

 

 

 

今後貴方は引退後、何をするのか? という問いに。

 

雄英高校の教師として後進の育成に携わることになると答えたオールマイト。

 

ざわつく記者達だがその身体で何を教えるのか? という問いには。

 

実際の訓練には他のプロヒーローと協力して生徒を教えることになる、これ迄長い間プロヒーローとして活動していた経験を、少しでも生徒に伝えることができたらいいと思っていると、答えるオールマイト。

 

こうして質問は多岐にわたり、No.2の事や今後のヒーロー情勢、引退後の結婚の話なんてのも飛び交った。

 

オールマイトは終始穏やかに話し、記者の際どい質問もいつものジョークでさらりとかわす。

 

体が細くなり、存在感が無くなっても彼は彼だと思わせる会見だったが。

 

 

「そろそろ時間なので最後に一言言わせてほしい……」

 

 

オールマイトがそう言って顔を引き締めた。

 

そうなると未だ質問をしたかった記者達も押し黙った。

 

 

「私がヒーローとして過ごした長い時間……後悔することも多かったが、それ以上にやってて良かったと思える瞬間が幾つもあった。危険もあったし、悔しさに帰って涙を流すこともあったんだ……だから、今いるプロヒーローとヒーローを目指したい者達へこの言葉を送りたい」

 

 

オールマイトは気合を入れるとマッスルフォームへ変わる。

 

 

Plus Ultra(更に 向こうへ!)……残念だが私はここまでだ……だから私を超えていけヒーロー……それを私は……グフッ!」

 

 

そこまで言い切ったオールマイトのマッスルフォームが解け、その場で崩れ落ちる。

 

 

「オールマイト!?」

 

「まずい! カメラを止めろ!」

 

「救急車だ!救急車をよべ!」

 

 

それを世界中が見て、平和の象徴が終わったことを嫌でも人々は感じ取った。

 

 

後日各新聞の一面にはオールマイトの写真がデカデカと載っている。

 

 

笑っている彼、亡霊のような彼、いつもの決め台詞を言う彼、そして崩れ落ちた彼も。

 

紙面を彩る彼は多種多様で、その存在を惜しむ声が世界に広がった。

 

世間がオールマイトという偉大な存在を振り返り、彼の作った平和を実感している時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が蓋をしてきた、悪意が吹き出そうとしている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最高の演技だったろ?」

 

「意外と俳優もいけますね、オールマイト」




次回 代表がウォームアップを始めたようです。
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