だから俺は○○じゃねえって!   作:ガウチョ

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どうしてこうなったんでしょう。


ライバルには負けたくない

デクと爆豪の動きをモニターで見ていた生徒達は唖然とした。

 

まず最初、お茶子をお姫様抱っこしたデクに峰田と上鳴がなんだそりゃあ! と喚いていたが一飛びで最上階の窓にダイナミックエントリーすると他の生徒もなんだそりゃあ!と驚いた。

 

 

「私は別にルートは指定していないからね」

 

 

オールマイトの補足に納得する生徒達。

 

でも人一人抱えて最上階までなんて……と、思っていたらヴィラン側の爆豪がすぐさま反応し、爆破を使った高速ドロップキックに、デクが解ってたかのように盾で捌いてお茶子を下ろした。

 

 

「あんな入り方してきた二人にこうも反応できるのかよ」

 

「緑谷さんはそれも織り込み済みだったのか、しっかり盾で守りましたわね」

 

 

才能マンやだやだ……と、呟く上鳴とデクの状況想定能力の高さを評価する八百万。

 

そしてそのまま爆豪が叫びながらデクに高速移動で背後に回りながら空気砲を連射する。

 

 

「……あいつの動き一朝一夕で出来るものじゃない。相当にコスチュームの機能を習熟している」

 

「先に渡して貰って練習したってことか? そんな事しそうな奴には見えなかったけどな」

 

「個性把握テストもそうだったが爆破を圧縮したり、出力を調整していたのを見てるし、意外に繊細な事ができるのかもな」

 

 

轟の指摘に切島がそんな努力タイプか?……と疑問を出すが尾白が補足する。

 

 

「だけどオールマイト先生の言っていた様にどちらも装備の使い方はかなり上手ですわ。爆豪さんはコスチュームの機能、緑谷さんは盾の使い方……そして気になるのはあの装備……手掛けたのは同一人物のようですねオールマイト先生?」

 

「そうだよ八百万くん、二人の装備は現在警察が使ってるゲシュペンストアーマーを作った神代表悟CEOお手製さ」

 

「あの無茶苦茶かっこいいアーマーを作った人が手掛けた特注品って事か!?……羨ましいなぁ」

 

 

切島は羨むが轟は厳しい顔をしている。

 

自分は誰よりも強い個性を持って生まれたと自覚している轟だが、あの二人と見てると胸のザワつきが抑えきれないのだ。

 

 

「二人の装備は自分の個性が持つ弱点を打ち消し、強みを相手に押し付ける様な設計がされている……緑谷少年は接近戦の攻撃力はピカイチだから純粋な防御力と特殊な個性のヴィランや環境での戦闘をサポートできるものを。爆豪少年のは両手からでしか出来なかった爆破移動や、爆破を放つだけの攻撃をコスチュームの機能で補助し、デメリットの発汗しにくい寒さの対策としてコスチューム内部は保温と断熱処理が行われてるのさ」

 

 

オールマイトの説明になるほどと納得する生徒たち。

 

 

(爆豪少年のコスチュームは更に()()()()がとても高くなるモードがあるらしいけど……ここでは言わないほうがいいか)

 

 

オールマイトはそう思案していると四人に動きがあった。

 

デクと爆豪が何か言い合い、タイマンの様な位置取りをし、お茶子と飯田が対峙する格好となった。

 

 

「緑谷さんをほっとけばあのパワーで何もかも捻じ伏せかねないですから、爆豪さんが張り付いて仕事をさせないようにする気のようですわ」

 

「みたいだな……俺ならどちらとも対峙したくねえけど」

 

 

八百万の言葉に上鳴が呻く、そして

 

 

「やるみたいだな」

 

 

モニターの向こうからでも感じる強い気配に誰かが緊張で唾を飲んだとき、事態は動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

(後は時間一杯稼ぐだけ……)

 

 

モニターで見られていた爆豪は頭の中で冷静に残り時間を計算している。

 

彼はみみっちいと原作で言われるほど、態度が粗暴な癖にルールを守ったり世間体を気にする所があった。

 

態度は暴力的だが行動のリスクを理性的に判断できる男

 

 

(なんとしてもかっちゃんを出し抜くか倒していかないと……)

 

 

対してデクは態度は大人しいが、リスクを背負う躊躇いのなさは()()()()()()()()()()()()()で、原作では何度も個性を使って腕をメチャクチャにしてしまう等強調されていた部分である。

 

態度は内向的なのに行動のリスクを本能的に無視できる男

 

 

余りに人として対極的な二人が意識して噛み合ってしまうのも無理はなかったのかもしれない。

 

そしてその二人の衝突はどちらも合図をした訳ではない始まりだった。

 

ゴヒュウ!!

 

スッと上体が下がった状態から真横に爆破移動しながら爆豪は空気砲を連射する。

 

デクは盾で捌いて突っ込もうとするが、爆豪の狙いを理解して爆豪から()()()()()()を潰すように移動した。

 

彼ならそうする、やつなら守る。言葉にせずとも通じ合った戦術が場の雰囲気を加速させる。

 

 

「やってくれる」

 

「俺を捉えきれるかデクゥ!!」

 

 

爆破の移動で空中を駆けながら空気砲を連射する爆豪と、お茶子を守りながら飯田に突っ込むか判断に迷うデク。

 

お茶子もデクの葛藤に気がつくと。

 

 

「デクくん!ある程度場を()()()()! 後は自分で何とかする」

 

「…わかった!」

 

デクはお茶子を守りながらビル地面や柱を殴り壊し、ターゲットを守る飯田の行動範囲を削っていく。

 

だがそれはデクにとっては悪手であった。

 

ボアアァァ!!

 

噴射口の加速は爆破移動と違って段階的な加速を可能とし、正にジェット戦闘機の様に空を飛んでデクに襲いかかる。

 

空気を引き裂くような飛び膝蹴りは盾で受け止められるが、当たる反動すら利用して体を回して踵落としを決める爆豪。

 

 

「ぐ…」

 

 

遠心力がたっぷり乗った一撃だったが、デクは一言漏らしただけで反撃の右ストレートを放った。

 

拳が風を纏って唸りを上げるが、爆豪は当たる前にジェット移動で射程外に逃げている。

 

それから数分間、爆豪の攻撃が当たり、デクが空振る時間が続くが二人の様相は大きく変わっていた。

 

爆豪は余裕そうに笑っているが体中の発汗は進み、見てわかるほど消耗しているが、デクは何度攻撃を食らっても致命的なダメージを防ぐために筋肉を締めて防ぎながら、爆豪とタイミングが()()のを待つように剛腕を振るい続けている。

 

スタミナお化けとセンスの塊と呼ばれる少年も一撃喰らえば行動不能になるとわかる攻撃に神経を削られていき、対して格上との戦闘の経験値を積んできた少年は時間という追い込まれる要因の中落ち着いていた。

 

 

「てめえの攻撃なんざ鈍くて当たらねえなあデク!」

 

 

安い挑発だが、それでも延々続けた高速移動の負担を感じている爆豪には貴重なインターバルだった。

 

しかしそれはデクにも適応される。

 

 

「ふう……そろそろ()()()かっちゃん」

 

 

デクの分析能力は原作でも描写されていたがかなり高く、戦闘の仕方も優等生だ。

 

慣れさえすれば応用もきかせる事が出来る彼は、今の爆豪の動きも見切りつつある。

 

今も賢明に隙を伺うお茶子に決して攻撃が行かないような立ち回りを続けるデクは冷静で、もう下手な攻撃は相打ちの様に合わせられそうなのを爆豪はそのセンスで嗅ぎ取っている。

 

ならば手は限られる。

 

(見せてねえ手札を使うしかねえ……持てよ俺の体!)

 

 

爆豪は使ってなかった必殺技を起動する。

 

コスチュームについた吸気口が唸りを上げ、その攻撃の為の()()の準備をする。

 

それは小手に最大まで貯めたニトロと空気を圧縮し、それを一発に込めてから放つ爆破の拳

 

 

「ターボジェットインパルス……受けてみろやクソ筋肉!」

 

 

爆豪の叫びにデクは背筋が栗立つのを感じてワン・フォー・オールフルカウルの解放率を限界いっぱいまで引き上げ、更にワン・フォー・オールチャージインパクトの準備を始めた。

 

 

『爆豪少年! それは建物を倒壊させかねない危険な攻撃だ。やれば大幅な減点は免れないぞ!』

 

 

「ここなんだオールマイト!……今ここで、俺は俺が納得出来る何かを掴めなきゃ、一生この()()を後悔する!……だから」

 

 

爆豪の背面のジェット機構は噴射のためが進み、そして

 

 

「今ありったけ……全部くらいやがれデクゥゥ!!」

 

 

それは奇跡の様な一撃だった。

 

完璧な姿勢制御と個性の圧縮、そして肉体の限界を超えたそれはビルを()()()()()()にするだけのダメージを与える収束した火と風で生んだ閃光だった。

 

だがそれは相手に対する信頼とも呼べるポテンシャルがあるとわかっていたから放った致死の一撃……だからこそ相手はその信頼に完璧に応えてみせた。

 

 

「オオオオオオオオ!!!!!」

 

 

手の向きから完璧に芯で受け止めた出久は、その熱と衝撃に思考が直ぐに吹っ飛んであっさりと個性を限界以上に使う。

 

だが原作と違って今の彼には個性以外に()()がある。

 

彼は信じている。自分の体を作ってくれた人達と自分が積み上げた筋肉の力を。

 

体の繊維一本まで研ぎ上げるかのような地獄の肉体改造はデクの心の深層に筋肉に対する少なくない信仰を抱かせた。

 

筋肉は自分を裏切らない……自分が未だ使いこなせない不安定な個性ゆえに相棒(筋肉)を信じてやるしかない!

 

 

「大雑把に使うな……こいつはヤワな力じゃ持っていかれる……麗日さんを守るんだ!」

 

 

それは奇跡のような一撃だった。

 

個性が筋繊維一本一本に行き渡り肥大化、デクの体があり得ないほど急速にパンプアップし、ターボジェットインパルスを盾で受け止めていた左手は更に二回りほど肥大化。

 

デクの体がデク自身に応えるように個性の反動を抑えるどころか同調させるようにブーストした。

 

一瞬だけ100%を超えた100%……名付けるならばワン・フォー・オールマッスルオーバーリミット……

 

限界を抑える服の保護機能が限界を迎えて弾け飛びながらデクにかかる負担を肩代わりしつつ、ターボジェットインパルスはデクによってお茶子に何一つダメージを通すことなく防ぎきられたのだった。

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