「八木さん……このスケジュールはあんまりだよ」
緑谷出久はさっき出会った神代表悟という名のおじさんが知らないとはいえオールマイトにダメ出しをしている事にハラハラしていた。
「自分では結構自信作だと思ってるんだけど?」
「いやいや、こんな免許を取った日にドラッグカーに乗せるようなスケジュールは緑谷くんの体に良くない」
「ううむ……それでもスケジュール的に時間がカツカツなんだよ」
事の初めは一時間前……出久と一緒に海浜公園に来た表悟はトゥルーフォームのオールマイトと遭遇。
オールマイトは自分の正体を明かす事は難しいので本名の
表悟からは出久の夢の助けになるということを。
オールマイトからは出久が非常に珍しいケースで個性に目覚めた為、その強力すぎる力をコントロールさせるためのトレーニングの指導をしていると説明した。
十代半ばに目覚めた本人がコントロール出来ない個性など聞いたことないと表悟は訝しげに二人を見たが、出久とオールマイトは背中にタップリ冷や汗を出しながら何とか取り繕ったバックボーンを納得させた。
因みに原作で事の経緯を知っているので、表悟は完全に知らないふりをしている。
いい面の皮である。
そして出久の強力な個性のコントロールを実現するためのトレーニングスケジュールを見た表悟が言った一言が冒頭の台詞であった。
「ならばどうスケジュールを組むんだい?」
「身体を作るのはわかるが、能力のコントロールは並行してやらないと駄目だ」
オールマイトの問いに表悟は答える
「小さい頃にとっくに目覚めてたのならともかく、出久君は個性を使い初めの一年生だ。本番前に一秒でも長く個性を使う感覚に慣れないと全く歯が立たない。なにせ相手は雄英を目指してきた子達で個性の試用期間は10年を越える、出久君から見ればベテラン揃いだ」
「うーむ……的確な正論過ぎてぐうの音もでないな!」
二人の会話を聞いていた出久は自分が挑もうとしている壁の高さに肩にズッシリと重石が乗るような感覚があった。
「まあ身体作りは八木さんにお願いしましょう……能力のコントロールは私が考えておくよ」
「緑谷少年の体が試験前に壊れないかい?」
オールマイトの驚く声に出久も同意する。たった一週間だが身体の悲鳴は深刻なレベルなのだ。
「個性を聞く限り100%の能力を出すと破壊されてしまうんだろう?ならばまず体が壊れないレベルの個性の発動率を調べないと。それに体を鍛えるのは君に任せるが体を作るのは俺に任せてほしい」
表悟は出久の家の住所を聞くと「週末の休みは家にいるんだよ」と言い残して海浜公園のそばに停めてあった明らかに一般人が使わない高級リムジンの
「うーむ……しかし彼程の人が緑谷君に協力を申し出るとは大きな行幸と言えるよねぇ」
オールマイトの言葉に出久は首を傾げた。
「オールマイト……神代さんの事を知ってるんですか?」
「まあね。彼というより彼の会社が有名なんだ……ビックディッパーインダストリーって聞いたことあるだろ?」
「え?あのBDIですか?」
「そう! 世界的な最先端機械製品の超巨大企業さ! 彼はそこのCEO……最高経営責任者だよ。はっきり言って緑谷少年はとんでもない人に目をつけられたと言ってもいいね!」
出久はそれを凄い人なんだと軽く受け止めていたが、週末になった時彼は世界的企業のCEOとはどれ程無茶苦茶な存在か身を持って知ることになる。
表悟に家にいてくれと言われた週末。出久が家に居るとお昼頃にインターホンが鳴った。
「出久~、悪いけど出てくれる~?」
「は、は~い!」
出久がいそいそとドアを開けると
「出久君、遊びに来たよ」
「あ、表悟さんおはようございます」
「おはようさん!早速だが君の身体作りを短縮するための秘密兵器も持ってきたんだよ」
「あのー……その後ろの凄く大きい段ボールですか?」
「そうだよ」
「……もしかして出久のお友達?」
玄関で息子が親しげに話すなんて珍しいと、出久の母親である緑谷引子は様子を見に行くと、明らかに息子より年上そうな青年が親しげに話している。
「ん? もしかして出久君のお母さんですか? 初めまして、俺は出久君の……友達でいいかい?「は、はい」――友達の神代って言います」
「そ、そうなんですか?」
「すいませんがお邪魔しても?」
「え、ええ構いませんよ」
お茶菓子あったかしら……出久のお母さんはリビングに急いで戻っていくのを出久と表悟は見送ると。
「さーて……まずは荷物を運ぼうか出久君」
「え?」
出久は表悟の言葉に驚いて玄関から出ると、そこには明らかに冷蔵庫が入っててもおかしくない大きなダンボールがいくつもあるのだった。
オールマイトはグラントリノという無茶苦茶な爺さんに師事を受けていた影響なのかトレーニング方法が若干脳筋気味です。
何でジャンプ作品の師匠ポジの人って無茶苦茶な人ばっかなんでしょうね。