「さーて……今日から出久君には個性のトレーニングを始めたいと思うんだけど……何だか顔色悪いけど大丈夫?」
今日の朝ついに海浜公園のゴミ掃除が終わって、出久はオールマイトに個性を譲渡された。
雄英の試験まで後
出久はオールマイトから譲渡されたアレを摂取して既に三時間ほど……今日は代表から誘われたある場所に集合していた。
「だ、大丈夫です……でもこんな場所が使えるなんて……」
出久の自宅から車で一時間ほどの少し奥まった郊外。
ミザールスペースというプロヒーロー達が己の個性の鍛練などに使う倉庫のような大型施設に集合した出久と代表とオールマイト。
「ねえ代表君……ここって貸し切りが無理な施設じゃなかった?」
オールマイトも何回も使ったことのある、ここはプロヒーローのライセンスがあれば利用可能な施設で、使用料金が安い代わりに貸し切りが出来ず、いつもだったら結構な数のプロヒーローが己を磨く為に鍛練に励んでいたりする場所である。
耐熱性、対電性が高く、噂ではナンバー2ヒーローのエンデヴァーの全力の火炎すら焦げ一つ出来ない頑強さを備えているといわれる場所ゆえに、暴れるに丁度いいとプロヒーローに人気の施設なのだが、今日は人っ子一人いない。
「いや、ここ誰が出資して作られたか知らないんですか?」
代表が指差した所にはミザールスペースというお洒落な文体で書かれた下に、小さく提供企業Big Dipperの文字が。
「今日は施設のメンテナンスということで休館
「「CEOって凄い!」」
ビックリする出久とオールマイトだった。
「さて……八木さんに出久君の個性のトレーニングをお願いしようと思いましたが、まだその体に下手に負担はかけられないということで計画は変更します」
「HAHAHA! 面目ない……」
「い、いやオールマイトは殆ど付きっきりで身体作りを手伝ってくれましたから!」
「優しいなあ緑谷少年は」
出久のフォローに顔だけマッスルフォームにして感動の涙を流すオールマイト。
「いや出久君もあんな殺人的メニューを良くこなしたよね」
「いえいえ、代表さんのあのグラビトン6とかプロテインとかのお陰ですよ……あれがなかったら身体が持ちませんでした」
「そりゃ良かった。仕事があって中々参加出来なかったけど溜まってたやつは全部片付けたし、暫くは手伝いが出来るからよろしくね」
「はい、よろしくお願いします!」
元気良く挨拶する出久にニコニコ笑う代表
「さて、今日ここに集まってもらったのは他でもない……出久君の個性トレーニングと並行してオールマイトにこちらで作った装備の性能試験をしてほしかったんだ」
代表がポケットから出したリモコンのボタンをピッと押すと
ガコン!ウイーーーーン………ガシャン!
施設の床が開閉し、そこから数十点は装備がくっついた長さ十メートル程のウェポンラックが三列もせり上がって来た。
「「何これー!!」」
男の子が大好きそうなギミックとゴツい装備がてんこ盛りな状況にテンションの爆上がりの少年と大人。
「さて……それじゃ出久君のトレーニングと装備の性能試験を始めようか」
その日、ミザールスペースにはしゃぐ少年とおおはしゃぎの大人の声が聞こえたそうな。
そして一週間後……。
「ほっほっほっほっほ……」
中学校での出久の生活態度に大きな変化があった。
「ねえ……また緑谷お手玉してるよ」
「ついに受験でおかしくなったのかよ」
「おい、関わんないほうがいいぞ」
出久は学校の休憩時間や暇な時にテニスボールぐらいの金属の光沢をした三個の玉をジャグリングするようになった。
クラスメイトはその光景に嘲笑する者や、不気味に見る者がいたが
「おい緑谷! 頭がおかしくなってお手玉かよ!」
流石にこれにクラスのお調子者が食いついて、その玉の一つを空中でキャッチすると
(え? 重っ!)
自分が想像した数十倍は重い玉にそれを取り落とし、自分の足先に落としてしまった。
ガッ!
「いってぇぇ!」
足の甲に当たって揉んどりうつお調子者にギョッとするクラスメイト達。
「危ないよ、これ一個3キロするから」
転がらない様にお洒落なデザインの滑り止め模様のついたそのお調子者の落とした球をひょいと拾う出久。
彼がそれを一メートル程手首の反動だけで投げていたのを見ていたクラスメイトは戦慄する。
(どんな筋力してるんだよ……)
(普通のテニスボールみたいにやってたよね?)
(もし邪魔して周りに飛んできたら……)
さっきのお調子者はビビったのか出久から離れ、半泣きになりながら自分の席についたのを見たクラスメイト達は、今の出久の邪魔はしないでおこうと胸中で思ったのだった。
因みにお調子者の足の甲にはごくごく小さなヒビが入ったそうだ。
そしてこの金属球……勿論只の球ではない。
今は練習期間としてその機能は解放されていないが、この金属球は機能が作動するとジャグリングしている一定時間毎に
7キロとは男子の砲丸投げの球の重さほどあり、そんなものをジャグリングするなんて正気の沙汰ではないのだが、そこで出久の個性の出番というわけなのである。
ワン・フォー・オールは人外の肉体強化を促す個性。
その一%でも引き出せればこの球の最大負荷のジャグリングを普通に行えると代表は考えた。
ゆえにまずは0から100ではなく、0から1を引き出す訓練の為のトレーニングとしてこの球のジャグリングを課したのだった。
更に代表は身体が破壊されずに高い%出力のワン・フォー・オールの使い方を考察。
そして出た結論が負荷を段階的に高めること、そして高めた状態を維持すること、そしてその状態から段階的に負荷を軽くしていくこと。
オールマイトの使うスマッシュ系統は瞬間的に個性を使うために使用は控え、代表が出したトレーニングの結論は。
「個性を使いながら限界ギリギリの筋トレ漬けで感覚を覚え込ませるか」
そして代表は筋肉の事を調べすぎて若干脳筋に侵され始めていた。
結局筋トレが一番(ニッコリ)