だから俺は○○じゃねえって!   作:ガウチョ

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ストックはないです


成長する少年と成長する必要のなかった少年

個性のトレーニングを初めて二ヶ月……出久の体はまた変化が始まっていた。

 

 

「ほっほっほっほっほ………」

 

 

今日も出久は食後のジャグリングをしているが、既に時間経過によって金属球の重さは7キロに増加し、ジャグリングする球は五つに増えている。

 

体つきは二ヶ月で更に筋肉が増えて体がでかくなり、手首は太い血管が軽く浮き出るほどに、そして身長は更に伸びて175センチ程に増加していた。

 

そう……この時点で出久は爆豪の身長を抜かしてしまったのだ。

 

それに気付いた爆豪は内心で腸が煮えくり返っている。

 

見下ろしていた人間に物理的に見下ろされるということは、思春期真っ盛りの少年とっては中々の衝撃である。

 

そしてクラスメイトからは内心で若干みみっちい男と言われている爆豪が我慢できるわけでもなく。

 

 

「おいデク……最近テメェ調子に乗ってんじゃねえかァ…? 無個性が身体を鍛えてれば雄英に入れるとでも思ってるのかよぉ!?」

 

 

ジャグリングを終えて、一息ついていた出久の胸ぐらを左手で掴み、右手の汗腺のニトロを爆発させながら凄む爆豪……だが。

 

ガシッ!

 

 

「なっ!はな……せぇぇ!!」

 

 

出久に左手首を掴まれ、爆豪が反射的に手を引こうとするが。

 

 

(う、動かねぇ!……それに掴まれただけで手首の汗腺を絞められて(・・・・・)個性がうまく発動しねえ!?)

 

 

「なめんなクソナードがぁぁ!」

 

 

掴まれていない右手の汗腺が開き、ニトロを送り込んだ爆豪はそのまま出久の顔に目掛けて放とうとする。

 

それを見たクラスメイトは流石にそこまでやる爆豪に唖然として動けず、下手すると大事件に発展しそうになった瞬間。

 

 

バシッ!

 

 

「あぁぁ!」

 

 

出久は正確に放たれた右の掌底を左手で右手首を掴み阻止。

 

今、二人の体勢は出久が爆豪の両手首を掴んで向かい合う形になった。

 

 

「かっちゃん……学校内は個性の使用は禁止だよ」

 

 

ギチリと手首を握る力が増し、爆豪は手首からの痛みに冷や汗をかく。

 

そして彼の生まれもった天性の戦闘センスが出久の腹に膝を叩き込むことを導きだした。

 

流石の身体能力で爆豪の膝蹴りは出久の腹に綺麗に入るが。

 

 

(…かてえゴムみてえな!)バッチーーーーーン!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……起きたか爆豪」

 

「……何で俺はここで寝てんだ?」

 

 

爆豪が目を覚ますと目の前にはクラスの担任がおり、自分は保健室で寝かされている。

 

 

「個性を明確に人に向かって使用……お前みたいな強い個性の生徒の場合、相手の怪我によっては停学または数ヵ月の自宅学習と内申が絶望的になってもおかしくはないんだぞ?」

 

「……なあ?何で俺はここで寝てんだよ?」

 

「後で親御さんに来てもらうことになる……幸い()()()の緑谷が怪我一つ無くお前を無力化したし、緑谷本人が()()()()()してしまったので寛大な処置をお願いしますと言っていてな。お前は今回だけお咎め無しだよ」

 

「なんで……何で俺はここに……」

 

「いい加減にしろ爆豪、まだ分かってないのか?お前は緑谷に顔をはられて気絶させられたんだ。とにかく後でお前の親御さんと一緒に緑谷の所に謝りに行くからな」

 

 

お前には期待していたんだがな……そう言って保健室から出ていく先生を見送った爆豪は

 

(気絶させられた?……あのデクに張り手一発で?)

 

その後の爆豪の記憶は曖昧だ。

 

起きたのは五限目の半ばだったが、結局放課後に母親の光己が学校に現れても放心したまま、光己が自分の頭を出久に向かって下げさせて、光己自身も頭を下げていたのが視界に入っているのだけやけに鮮明に覚えている。

 

目の前の出久は光己に恐縮し、反射的に爆豪に手が出てしまった事を詫びていて。

 

 

「結局かっちゃんを上手く止めれなかった自分が悪いんです」

 

 

と言った出久に光己はホッとすると同時に、少し見ない間に見た目も心も大きく成長した息子の幼馴染に感心していた。

 

結局勝己は光己に連れられるように家路につき、ボーッと何をするわけでもなく椅子に座る勝己に光己はこう言った。

 

 

「ダサいわね、あんた」

 

「…………ぁあ?」

 

「あの子はあんたが思っている以上に本気で雄英を目指してるのよ……ノリや冗談であんな身体作れるもんですか」

 

 

家族だからこそ真っ直ぐと伝わってくる母親の気持ちに勝己は。

 

 

「……んなこたわかってる」

 

 

そう、わかっていた。あの内向的でフワフワして無個性なのに馬鹿みたいにヒーローになりたいとはしゃいで、ろくに目線も合わせなかったクソナードが、いつの間にか誰もが無個性だと馬鹿に出来ない程に身体と心を鍛え上げ、磨き始めた。

 

手首を掴まれた時、出久が自分を見る目が爆豪が忘れられずにいた。

 

真っ直ぐと、こちらを見定める目……敵意ではなく友好的でもなく、誇りを持って相対すると決めた漢の本気の眼差し。

 

 

「ひよってたのは俺のほうってか……クソだせえじゃねえか」

 

 

それに自分は応えようとしなかった、気のせいだと適当に脅しつけて、マウントを取ろうとした挙げ句のこのザマである。

 

 

「……ババアちょっと散歩してくる」

 

「はいはい、夜ご飯が冷めないうちに帰ってくんのよ」

 

 

ガチャリと家を出ていく勝己に光己はまだまだうちの息子も男の子だねぇ……と、呟いた。

 

その後の事は爆豪勝己の名誉のために割愛するが、真っ赤にした目元を見せないようにコソコソと帰って来た勝己はテーブルに準備された夜ご飯を温め直し、さっさと飯を食うと寝た。

 

そしてその日以降学校内での爆豪勝己と緑谷出久の衝突は起こらず、学校は概ね平和といえる日々が送られる運びとなった。




これも一つのアオハルですね
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