勇者とサキュバスパーティーにてお送りしています。   作:バンビーノ

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03.ショタ勇者もそうさ。必ず存在する!!!!

 ギルド内の掲示板には冒険者に向けての依頼が貼られている。ペットの迷子探しから魔物の群れの討伐まで幅広い依頼が選り取りみどり。身の丈にあったものを選んで受け付けに依頼用紙を渡せば受理されるシステムだ。

 

 その受け付けカウンターからは睨まれているが、もちろん俺は悪くない。あれから懲りずにおっぱいネタを口にしたミュカの巨乳が虚乳になりかけたのが原因だ。

 

 しかし、ああやって気軽に魔法を連発出来るのは羨ましい。

 

「え、なに。エルは魔法使えないの?」

 

 俺に限らず人族は魔法を使わない。使えなくもないが使わないのだ。基本的に人間に備わってる魔法回路は貧弱すぎるのだから仕方ない。人族は尻尾がないのに尾てい骨があるように、ろくすっぽ魔法を使えないのに魔法回路があるのだ。

 

「でも聖剣から光ぶっぱなしてたじゃないの」

 

 あれは剣の性質の延長線にあるからノーカン。剣がないと撃てんし、そも俺の魔力も使用していないから魔法とは全くの別物だ。魔法に例えるよりも、銃火器に例えるのが近いか。トリガーを引くくらいの力は自前で用意してるが、魔法は火薬も弾丸も魔力っていう自前のもので賄っているからな。

 

 勇者がそれぞれ所有している剣は、持ち主の性質によって力の方向性が決まる。ただし剣の力はあくまでも剣のものだから、俺単体ではああいう崩壊の性質を持たせた極光は放てない。

 

「つまり、あんたは『崩壊』の力を持たせるような性質……うん、短い付き合いだけど意外性はないわね」

 

 似合っているだろう? 俺もそう思う。師匠は悲しがってたけど、こればかりは剣のせいなのでどうしようもない。俺は悪くない。

 

「結局、エルを含めて人族は魔法に適性がないの……? 同人誌で読んだ魔法使いに捕まって淫紋でよがり狂うってのは」

「ねぇよ。むしろサキュバス(お前ら)の専売特許だろ。淫紋作成スキルを人族に期待すんな」

 

 そもそも人族にも魔法使いはいるにはいるが結構希少だったりする。なんなら勇者の数より少ないかもしれない。

 

 まず人族に魔法回路って器官が適応していない。魔力を多量に回せば焼けるような熱さが巡って、酩酊状態のように平衡感覚がなくなる。あとだいたい吐く。

 これは魔法使いの職種(ジョブ)を持ってても同様だ。ぶっちゃけ魔法使いって魔法回路が一般より発達していて、魔法使いっていう職種(ジョブ)による補正ありきで先述の症状に多少耐性があるだけだから。

 魔法使いの必須アイテムは魔法の杖じゃなくてエチケット袋とも言われている。勇者や戦士・騎士職は前線で血反吐を吐いて、魔法使いは後方でゲロを吐く。

 

「エルを見て感覚狂ってたけど、人族って貧弱だったわね。あと職種による補正ってなに?」

 

 人族って脆いし弱いし短命だろ。だから生き残るためにいつからだか生み出されたのが、職種(ジョブ)っていう半永久的なバフだ。適合した職種になることで長所に補正が掛かるんだよ。魔法使いなら魔力酔いへの耐性上昇とか。

 冒険者ギルドで適性検査してからギルドカード作れば、自分のステータスや職種(ジョブ)の獲得ができるから冒険者はほぼ全員が作っているな。

 

「……もしかして勇者ってのも」

 

 そうだよ。人族のなかで特異的なステータスを持ってる奴らがなれる職種(ジョブ)だ。これに関しては生まれつきの才能がもの言うことが多いな。

 

「じゃあショタ勇者は存在するってわけね! GG対ありぃ!」

 

 ショタGG対あり……? またワケわからんことを抜かしよる。無駄に喜んでる姿が無性に苛つくけどまぁいい。

 つまるところ、人族は俺みたいな基礎ステータスが高めの希少種を軸にあとは数で補う種族だから、魔法とか使えないのもしゃーない。得られる経験値は美味しいんだけどな。

 

「ちょいちょい同族から得られる経験値について語るの止めてくんない?」

「経験値でものを見るのは癖だから慣れろ。お前らサキュバスがエロ主軸でもの考えるようなもんと思え」

「なるほど、完全に理解したわ。でもあたしだって経験値盛れるバフ魔法くらいなら使えるわよ。倍率は超低いけど仲間にかけられるやつ。讃美歌で生命力をぐぐっとね」

 

 サキュバスが讃美歌を歌うのか。魔族としてのアイデンティティの崩壊が危ぶまれるな。

 

「生命の讚美みたいな感じよ。命の誕生はかけがえのない奇跡で祝福されるべきものでしょ? そして命が生まれるにはセックスが必要不可欠、エロス最高!」

 

 知性が育ってきたこの頃かと思ったが、やっぱり根っこは変わらないらしい。三度の飯よりセックスが好きというか、そもセックスが飯代わりにる種族なんてこんなもんだ。

 俺のパーティーらしいサキュバスは完全に理解してない知能の低い顔をしていた。まぁ、支援(バフ)魔法使えるならそれでいいんだが釈然としないところはある。

 

「任せなさい。てかあんたなら魔法くらい使えそうなもんだけど、もしかして使えないの?」

「使えなくはないがデメリットがキツいからな。一時的に火力を伸ばせるが、活動可能時間が短くなって短期決戦必須になる」

「つまり経験値稼ぎの時間が短くなると」

「そうだよ、賢くなってるじゃん」

「なんとなく、エルの感覚がわかってきたわ……あんまりわかりたくないけど」

 

 魔法を使って吐いた記憶も遥か彼方。師匠と出会ったとき以降はほとんど魔法を使った記憶がない。

 

 ──というよりもだ。どうしてもっと早くに支援魔法(バフ)のことを言わないのか。ゴブリンの集落での経験値稼ぎにロスが生じた。というか命乞いのときに言っていれば、あの無駄なやり取りもせずに済んだ。

 

「思い出したらイライラしてきたな……」

「イライラしてきた? なんで、というかなにが? もしかしてナニがイライラしてきの? 一発抜いてあげよか?」

「フンッ!」

「にぎゃぁぁぁあああ!? いっっったい! 聖剣が!」

 

 無言で抜剣せず鞘の腹でケツをしばいた。ケツから煙を燻らせたサキュバスが、涙ながらに自身に回復魔法をかける姿はなかなかに間抜けだった。

 

 それを尻目に掲示板の依頼を見るが、ろくなものがない。王都に進行する魔王軍の殲滅とかないのだろうか。王立騎士団とか含めた正規軍に任せるより手っ取り早く終わらせる自信がある。

 

「でも兵を求めてはいるみたいよ」

 

 却下。俺以外が前線にいたら巻き込む自信しかない。正直、巻き込んでもいいよっていうなら参加するが、それをヨシとしない世間から罪人扱いを受けてしまうのがいただけない。

 

「じゃあ、ヴァリス街の奪還作戦前の斥候ってのはどう? 少人数の募集だし、あんたが先陣切れば巻き込む可能性も減るでしょ」

 

 少人数ってのは悪くないが却下。最悪、少人数なら巻き込んでも斥候中の不慮の事故として有耶無耶に出来るが、街の奪還作戦ってことは物的破損をなるべく減らせってことだろ。ゴブリン集落の有り様を思い出せよ。俺が経験値を求めたら、そこには何も残らないぞ。さすがの俺も奪還後に更地になってる住民を思うと心苦しい。

 

「あんたの感性が人の世に適してなさ過ぎるのよ」

 

 逆に、この世が俺の感性に適してないのが悪いとも言える。

 世の中の常識とか当たり前とか、軽々しく口にする奴もいるが、それは狭窄した視点での話に過ぎないなんてことはよくある話だ。井の中の蛙という言葉もあるように、お前が世界と認識しているものは井戸のなかという狭い空間でしかない可能性を考慮したことはあるか。ないだろう。つまり、俺の感性のことをおかしいおかしいという奴はごまんといたが、所詮はそいつらも井の中の蛙でしかなく、正しいのは俺で間違っているのは俺以外となるわけだ。

 

「確かにそうかもしれないわねって気持ちと、なにかがおかしいって気持ちが競り合ってるわ」

「納得しそうになってるお前の頭がおかしいんだろうな」

 

 頭の残念さがここまでだとパーティーを組んだのは早計だったかもしれない。経験値バフよりもデメリットが上回るような気がしてきた。身体つきはいいんだけどなぁ、頭に回す栄養分も全部吸われちゃったんだろうな。

 

「どうして憐れむような目で見てくるのよ……あ、そうそう。職種(ジョブ)って私みたいな魔物でも取れるの?」

「冒険者カードを作れば取れるな」

「じゃ、作ろうかしら」

「無理だが?」

「なんでよ!?」

 

 なんでよじゃないわ。むしろ、なんで驚いているんだよ。基本的に貧弱な種族の人間が職種(ジョブ)補正を得て、魔王軍や野良の魔獣に対抗するためのシステムだぞ。

 

「私は仲間になったしいいじゃない!」

「ちょっとは頭使お? ただでさえポンコツなのに使わないとさらに錆び付くから、な?」

「こんなところで出会って以来、一番優しげな話し方するんじゃないわよ! えっ、でも実際さっきギルドの受付で正式にパーティー組んだでしょ?」

「例えばお前がとても賢くて狡猾な魔族で仲間入りしたとするだろ?」

 

 ……いや、あり得ないか。

 

「例えばお前の色香に惑わされた冒険者が仲間にしてくれたとするだろ?」

「ねぇ、なんで仮定をわざわざ変えたのよ。ねぇったら」

 

 不満そうなミュカに肩を捕まれて揺すられながらも無視して話を続ける。

 

「それで人族よりも基礎スペックの高いうえ、敵対している魔族にギルドカードを作成して流出させてみろ。大惨事だぞ」

 

 だからギルドカードの作成方法も機密だし、勇者の俺も知らない。

 受付のロリばばぁエルフことリゼットは亜人ながらに知っているようだが、1世紀以上もギルドに勤めているらしいから信頼度も下手な人間より高いのも納得できる。

 

「なるほど、魔族や亜人がギルドカードを作るには信頼が必要ってわけね」

「そういうことだな。まぁ、エルフみたいな人族との交流が深い種族だともう少し楽なんだが、サキュバスなんかだとむしろ審査は厳しい」

「セクシーすぎてハニートラップで付け入ったんじゃないかって疑われるってわけね!」

 

 珍しくもまともに正しいことを言うミュカに黙って頷く。間違ってないがエロが絡むときにだけ察しがいいのやめろ。

 そんな心情を知るよしもないミュカは何故かやる気に満ち溢れていた。

 

「どうやったらギルドから信頼を得られるのか教えてよ」

「じゃあ、取り敢えずお前だけでこの依頼でもこなしてこいよ」

「ひ、ひとりで!? あたし戦闘能力なんてほとんどないんですけど!」

「誰も戦ってこいとは言ってないだろ。安全なやつだから安心しろ」

「へぇ、エルも気が利くのね。採取系の依頼かし、ら……えっ? なにこの依頼」

 

 どぶさらいだよ、どぶさらい。難易度の低い採取系の依頼は新人冒険者たちが頼まれずともやるかやな。誰もが嫌がる低賃金重労働をこなして街を綺麗にしてきてくれ。そうすればギルド職員からの顔覚えも良くなるだろう?

 ほら、受付のリゼットもその依頼書を持って早く来いって手招きしてるだろ。

 

「で、でも、ちょっ押さないでよ!」

「おっ、どぶさらいの依頼を受けてくれるとは感心だねぇ」

 

 躊躇うミュカの背中を押して受付まで運べば、リゼットがにこやかに依頼書をかっさらっていった。誰もやらないせいで、いつまでも残り続けている依頼を消化する期を逃さないつもりらしい。

 

「じゃあ、この依頼契約書に拇印を……ないんだったね。はい、指借りるよ」

「痛い! 流れるような動作で指切って血判取られたんだけど!? えっ、これで契約済んじゃったの!?」

「はいはい、じゃあ清掃道具は貸してやるし場所の案内もしてやるから行くよ」

「やっ、ちょっと!? 助けてエルぅ!」

 

 半べそをかきながら引き摺られていくミュカを見送りながら手を振る。

 じゃ、街綺麗になるまで宿に帰ってこなくていいぞ。

 

「嘘でしょ!?」




職業はある程度選べるし、適性が低くても努力次第で伸び代はある。勇者は例外的に先天的なものに依存。魔法使いは魔法使いがなるのを止めておけという職業。
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