URAブラックリスト、幼女に手を出す   作:知らない後輩

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今日は短めですね。サクサクっと読めます


Lesson3 決意完了!

彼女、浜野祭理が俺をヒステリック娘コンプレックスバカ父親からトレーナー解除の危機から救ってくれた、一瞬ヒヤヒヤした最初の練習から数ヶ月。

 

トレーニングを重ねて行く内に彼女の特性、強みと課題点が段々掴めて来た。

特別に教えてあげよう。

 

まず彼女の得意距離、これはマイルと中距離。

前の話で彼女のタイムを複数回計測した結果、この距離のタイム変動が目立たず年齢平均も余裕で超えて来ていた。

 

このまま順調に育って行けば皐月賞や秋の天皇賞だって望めるかもかも知れない。

思考の飛躍が過ぎるかも知れないが、彼女の情熱が五年以上冷めなければ起きるかも知れない未来だ。無下に否定はできん。

 

そしてもう一つ。彼女には最初からレースの才能があったという事。

練習が始まる前の計測で平均を超える実力があった事、それはつまりスタートラインが多くのウマ娘より前に出ていたという意味だ。

 

という事は練習すればもっと速くなれるのは当然で、俺が必死こいて考えたお粗末な練習メニューでも随分彼女のタイムは縮まって行った。

 

そして、自身の努力が目に見えて分かるのは中々に嬉しいモノだろう。

祭理ちゃんがタイムを聞きに来た時、この事を話して褒めてやると素直に喜んでくれた。

 

だが、これ程良い事が多ければその分悪い部分も目立って見えてしまうのは事実で、彼女の欠点も見つかった。

 

と言ってもこれは走りの面では無く彼女の性格にあった。

彼女は異様に感情の浮き沈みが激しかったのだ。

 

世の女性の気は嵐の様に変わり易いと誰かが言っていたが、俺に言わせるとあんな物はただのそよ風程度だ。

 

何か良かった事があったらしい日は何度も好タイムを出してくれるが、気分が最悪な日は何をやってもダメになってしまうらしい。

 

前回の結果より今日のタイムが遅い事が続くと、イライラしてがむしゃらに走り出してしまい無駄に体力を消費して練習がお流れになった事も少なからずあったし、理不尽に些細なことで腹を立てていた時もあった。

 

だが、これは俺の感覚的に子供特有のワガママが酷くなっただけな気配を感じたので彼女の成長と共に消えて行って欲しいと願う。

それに、あの父親が不自由無く娘を甘やかした所為でこんな性格になったのだと思うと自然に納得が出来たからね。恐るべし、箱入り娘。

 

 

 

まぁ、そんな感じのワガママハイスペック箱入りウマ娘との練習も遂に年末近くまで来てしまった。

 

最初は子供の遊びを一緒にやる様な感覚だったのが、今では心の底でちょっと情熱と好奇心が燃え上がっている。

 

追っかけをして来た時に付けていた観察ノートはあの日から『祭理ちゃん研究ノート』に名前を変え、書く内容も名選手のプライベート関連から今後の課題や彼女の些細な変化、有効な練習メニューのレシピに備忘録...祭理ちゃんを勝たせる為の設計図にジョブチェンジした。

 

今日も今日とて研究ノートに必要事項を書き込んでいくと何やら周りが騒がしい。

良バ場のカウンター机から目線を外して覗くと、常連のジジイ共が何やら備え付けテレビを見てどよめいている。

 

俺もそれに倣ってテレビを見ると、画面越しに全力で走っている少女達の姿を見た。

あぁそっか、忘れてた。今日はG1レースのテレビ中継の日だ。

 

ディスプレイの奥の彼女達は自分とトレーナー、そして応援してくれたファンの為に走る。

そして局面は最後の直線。先頭の集団がデッドヒートを切り、緊張感がひしひしと伝わって来る。

 

昔はわざわざレース場に赴いて会場の熱狂を感じていたが、今になっては他人事に近い感覚だ。

輝かしい彼女達の姿は思わず応援したくなってしまう謎の欲を掻き立てているらしく客共が近所迷惑を考えず声を掛けている。

 

そんな姿にたった一年前だが、昔の自分を感じちまった俺に、声が掛けられた。

 

「お前も応援しなくて良いのか?」

「フッ、もう俺にゃそんな資格何て無いさ」

「そうか?お前はただ、URAの息がかかった場所に行けないだけで、テレビ中継位だったら応援したって誰も文句言わないだろ」

「もういいんだ、俺は。あの子達の晴れ姿見たってあの時の感情が蘇るだけだし」

「おい、それを本気で言ってるのか?」

「...いいや、ちょっとだけ違った。俺にはまだ祭理ちゃんの育成が待ってる。それに十年後にレースを久しぶりに観に行った方がなんか感動的だろ。だから、俺はちょっとだけウマ娘から卒業するよ」

「お前らしい答えだな、分かったよ。じゃあ十年後、またお前と好きなもので朝まで語り明かすのを楽しみに待ってやる」

「そいつはどうも」

 

如何やら、今回のレースを制した勝者が確定したらしく、店内には称賛と労いの会場に届かぬ拍手が響いた。

 

ありがとう親父。アンタがそう帰る場所を作ってくれるとちょっとは荷が降りた感じがする。

言葉にはせずに心の中でそう呟く。

 

 

 

カランカラン、突然良バ場のドアが開いて客の入店を教える。

「トレーナーさん、いまテレビ見てたら走りたくなっちゃったんだけど、今日練習しくてれる?」

 

なんか漂ってたしんみりした雰囲気を壊す様に祭理ちゃんがやって来た。

この子は時と場所も空気さえ選ばない。が、それが彼女の特徴の一つ。

 

「ああ分かった、祭理ちゃん。丁度してもらいたいトレーニングが有るんだが、やってくれるかい?」

「うん!」

 

いつもと変わらずのいい返事。さて、彼女の気が変わる前に行きましょうか。

 

「そんじゃ、親父。行ってくるわ」

「おう、夜になる前に帰ってこいよ〜」

 

「すぐにいかないと学校が閉まっちゃうよ!トレーナーさん早く早く!」

見送られて、いつものグラウンドに二人は歩む。

彼と彼女の行く先にあのるは栄光か挫折か。

それを知る者はこの場には居ない。




言っておりませんでしたが、大体二話で一年が過ぎます。
主人公がその年の個人的に印象深い出来事をピックアップして語っている感じです。
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