ソードアート・オンライン ~剣の世界で弾を放て~ 作:レゾナ
~アインクラッド六十一層『セルムブルグ』~
その道を歩いているのはレンとシオンだ。
「ねぇ、そういえば疑問に思ってたんだけど」
「何だ?」
「レン君って何で片手剣で盾とか使わないの?」
「別に。邪魔になるから使ってないだけだが……」
レンはあまり興味はなさげにそう答える。
「邪魔にはなるけど盾があるのとないのとで防御できる確率……つまりは死ぬ確率とかも変わってくるでしょ?そこら辺も考えてやってるのかなって思って……」
「シオン、お前にはあまり関係ないだろ。俺の問題なんだ」
「それはそうだけどさ……心配なの、だってレン君って一人でどこまでも突っ走りそうだもん」
「まあ、それに関しては否定は出来ないな」
「ほらっ!だからさ……」
そこまで言って先頭を歩いていたシオンは振り返りレンに向き直る。
「明日さ……私とパーティー組まない?」
「パーティー?」
このSAOではパーティーを組む事が出来る。しかしパーティーを組む人がいない、そしてそれでもなお攻略に乗り出している人間の事を一般的に『ソロ』と呼ばれる。
レンはこのソロに位置する。
そしてパーティーの他にも何人かの人間が集まって集団を作る。これを『ギルド』と言う。
「何で、俺がパーティーを組まないといけないんだ?今まではソロでやっていけたんだ。これからだって」
「でも、結構危ない橋を渡ってるよね?」
「…………」
シオンの言葉にレンは口をつぐむ。
実際、シオンの言う通りレンは七十層を越えた辺りからソロでは限界ではないかと考え始めていたのだ。
「ね?レン君だって死にたくはないでしょ?」
「まあ、確かに死にたくはない……」
「そうでしょ?それに一人より二人の方が死ぬ確率はぐっと低くなるんだしさ」
「…………」
彼の脳内では今、二つの考えが渦巻いていた。
まず一つはシオンからの提案を受け入れてパーティーを組む事。しかしこれを選べばレンは血盟騎士団の中で嫉妬の対象にされるだろう。
何せ、血盟騎士団の中でもアスナと人気を二分するほどシオンは可愛い…らしいのだ。
正直そんなのはレンにとってはどうでもいいのだが……。
そして二つ目の考えは、提案を断りこれからもソロで貫く事。
これが彼にとっては最善である。なぜなら彼には人には言えない秘密がある。
しかし
「わかったよ、パーティーを組もう……でも、最前線は危ないぞ?」
「っ!!」
レンがそう言った瞬間にシオンは背中に担いでいた自身の武器『ルナティック・ルーフ』を手に取り、レンの首元に置く。
シオンは血盟騎士団の中でも随一の槍使いとして有名なのである。
ついたあだ名は「神槍のシオン」である。
「わかったわかった。心配は不要だったな」
そう言ってレンはメニューウィンドウを出すとパーティー申し込みをシオンに出す。
シオンはそれを確認してから○ボタンを押す。
「さて、それじゃあ急ごうか」
そう言ってシオンは意気揚々と自分の家がある方向へとスキップしながら歩いていく。
(そんなに嬉しい事でもないだろうに……)
レンはそんな事を考えながらスキップしていくシオンを見失わないように少し足を速めた。
「ここが、私の家だよ」
「ほぅ……中々に大きいな」
レンは感心しながらシオンの住まいを眺める。
シオンの家は普通の家とは違い、VIPが住むような豪華な家だったのである。
「お前ってこんな所に住みたい願望でもあったのか?」
「そうじゃなくて、空いてる物件がここしかなかったの。ささ、入って」
そう言ってシオンは中に入っていき、レンもそれに続くように家に入る。
「お邪魔します」
「どうぞ」
そんな恒例行事のような事をしてからレンは武装を解除して近くにあったソファにゆっくりと座る。
「着替えてくるから。ちょっと待っててね」
そう言って二階へと向かうシオン。ああ、と返事をしながら部屋の内装を見るレン。
(こんな感じなのか、女の子の家って……)
実を言うとレン…女の子の家はおろか、女の子の部屋にも入った事がないのである。
おそらくは今は平静を装うので精一杯だろう。
「お待たせ」
そう言って二階から降りてくるシオン。
「ああ、早かったな、シオンっ!?」
レンは振り返りながらシオンを視界にいれた瞬間に声が上擦ってしまう。
それもそうだろう、シオンの姿だが……ミニスカートなのだ。
耐性がないレンには酷だろう。
「どうしたの、レン君?」
「あ、いや、その……予想外というか……」
顔を赤くさせながらそう言うレン。もう完全に動揺しまくっている。
「ふふふ。そんなに緊張しなくてもいいよ、それで?今日は何をご所望?」
「シェフのお任せで。それと出来る事ならミニスカとかはやめてくれ。目に毒だ」
「むぅ、結構お気に入りなんだけどな……」
シオンはそう不満げに言うと奥の方へと向かう。
おそらくはそこで着替えて夕食を作るのであろう。
レンはシオンがいなくなったのを確認してからメニューウィンドウを開き自身のスキルスロットを見る。
その中に見慣れない言葉がある。
「『銃』……それに『一剣一銃』『二丁拳銃』か……」
エクストラスキル『銃』……レンのスキルスロットにいつの間にかあったスキルである。
情報屋のスキルリストにも載っていなかった事からレンはこの銃スキルを「ユニークスキル」と読んでいる。
ユニークスキルとはこの世界で1人しか手に入れる事しか出来ないと言われているスキルである。
しかしこの世界ではユニークスキルを持つのは……血盟騎士団団長、ヒースクリフだけなのである。
レンはこの事をずっと隠してきた。なぜならこの事を公表すれば無用な混乱を招く可能性があったからである。
「そろそろ、限界かな……」
レンはそう呟いてからメニューウィンドウを消す。
「レン君、そろそろ出きるよ」
「ああ、わかった」
そう言ってレンはダイニングへと向かった……。
そして翌日……今日はシオンも何も予定がない事から七十四層の迷宮区に行こうという話になりレンは先に七十四層に来ていた。
その際になぜか「先に行ってて!女の子には色々と準備する事があるの!」とそう言って追い出されたらしいが……。
(女の子って……よくわからん……)
「あ、レン。お前も来ていたのか」
と、聞き覚えのある声が聞こえたのでレンは振り向く。そこには予想通りの人物、キリトが立っていた。
「なんだキリト。お前もか?」
「ああ、アスナと一緒にな」
「奇遇だな、俺も今日はシオンと一緒に迷宮区探索に行くんだ」
「へぇ……だったら一緒に行かねぇか?その方が面白そうだし」
「そうだな……俺は概ね同意するが……女性勢がどういうかわからんぞ?」
「いいて。二人共仲良しなんだから」
この二人は何もわかっていないらしい。
と、キリトの丁度真後ろに光が現れる。転移の光だ。
「きゃあああああ!よ、避けてぇぇぇぇぇ!!」
「う、うわぁぁぁぁ!?」
レンはいち早く危険を察知し、難を逃れたがキリトは一歩遅く飛び込んできた人物と激突した。
そしてあろうことかキリトはその手を女の特徴部分にあてがい、手を開閉しだした。
「や、やーーーーー!」
キリトはブッ飛ばされた。アスナは顔をSAOの感情繁栄の最大まで紅潮させ、キリトを睨みつけている。
レンはそんな二人を見ながら呆れる。
そしてアスナに続くようにシオンがやってきた。
「ごめんごめんレン君……これ、何かのコント?」
「さあな。俺にはよくわからん」
「や……やぁ、おはようアスナ」
さらにアスナの目がきつくなる。しかし怖く思えない。
そしてすぐに新しい転移光が発生する。それを見たアスナは速攻でキリトの後ろに回った。
すると昨日アスナの護衛であった一人が立っていた。
どうやらアスナを追ってここまで来たらしい。
「ア……アスナ様、勝手なことをされては困ります……!ギルド本部に戻りましょう……!」
「嫌よ!大体貴方…なんで朝から私の家の前で張り込んでるのよ!?」
それを聞いてキリトはげぇ、と言った感じの顔をしている。
レンとシオンも同じような顔をしている。
「シオン、もしかしなくてもだが……あの男……」
「うん、名前はクラディールって言うんだけど……もう殆どアスナのストーカーよ」
それを聞いてレンは呆れていた。かつては最強ギルドとさえ言われていたギルドである血盟騎士団であるがこんな輩まで入れるようになったのか、と思っている。
そして男、クラディールがアスナの手を取って連れていこうとするとキリトはその腕を掴む。
レンも無言で近づいてキリトの応援をする。
「やめときな」
「なっ!?貴様、何者だ!?」
「それはこっちの台詞だ。副団長をたかが普通の団員であるお前が連行していい権限なんてない筈だぜ?」
「私はアスナ様の護衛だ!権限は!」
「護衛ってのはあくまで守る事だけだ。それにアスナ自身はお前を必要としていない。今日のアスナは血盟騎士団の副団長としてじゃなく、一人の女剣士としてここに立ってるんだ。護衛は必要ない」
「……っ!」
クラディールはレンを睨みつける。
そして激昂したクラディールはレンにデュエルを挑んできた。
「アスナ、いいか?」
「うん、大丈夫。団長には私から言っておくから。思いっきりやっちゃって、レン君」
そう言われてレンは○ボタンを押し、初撃決着モードを選ぶ。
「ご覧くださいアスナ様! 私以外に護衛が務まるものがいないことを証明しますぞ!」
「………………」
レンは無言で腰の鞘から愛剣である「レッド・ザ・グラスホッパー」を抜き放つ。
騒ぎはどんどん広がっていく。
「おいおい、「赤い死神」とKoBメンバーがデュエルだとよ」
そんな感じでどんどん見物客が広がっていく。
「………………」
レンは無言で剣を構える。刃先を下に向けて逆手に持ち、左半身を相手に見せるような形だ。
これが基本的なレンの構えの状態である。
そして【DUEL!】という文字が俺らの前ではじけ飛ぶ。
クラディールは突進系スキル『アバランシュ』を使用し、レンに突撃するが……
レンはそれを冷静に見極めながらすれ違いざまに剣を一閃させてクラディールの剣を破壊する。
この時レンはソードスキルは発動させていない。
では、なぜレンはクラディールの剣を破壊できたのか……それはクラディールの剣に問題があった。
クラディールの持っている剣は装飾ばかりに気を使って耐久値が低かったのである。
そしてレンはその剣の一番耐久値が低い場所を見抜き、そこに剣を一閃させたのである。
そしてレンは振り向いてから
「その程度で最前線に来ようなんて思うなよ」
そう言ってクラディールの背中に剣を突き刺す。
デュエルの結果が表示される。勝者はもちろん、レンである。
「さ、これでわかったでしょ?さっさと帰りなさい」
シオンがそう言ってクラディールに帰るように促す。
「くっ…………転移、グランザム」
クラディールは悔しがりながら転移していった。
「災難だったな、レン」
キリトはそう言ってレンを労る。
「いいさ、恨まれ役は慣れてるしな」
レンはそうぶっきらぼうに言う。
「レン君、ごめんね。私のせいで」
アスナはすごく申し訳なさそうに言う。
「いいですよ、それよりも。今回俺たちとキリト達は目的も一致してる訳ですし……一緒に探索しませんか?」
「え?一緒に……?」
「はい。さっきまでキリトとその話してたんで……」
そう言うと、シオンとアスナは少し遠くまで向かう。どうやら秘密の会話があるらしい。
そして数秒してから戻ってきた。
「いいわね、面白そうだし。それじゃ、行きましょう」
どうやらアスナはオッケーらしい。
「さて、それじゃ向かいますか。キリト、フォワードよろしくな」
「って、俺かよ!?お前だって!?」
「今回既に頑張ったからな。後はお前の仕事さ」
「ちょ、待てって!」
そう言ってレン、キリト、シオン、アスナは迷宮区へと潜っていった。