ソードアート・オンライン ~剣の世界で弾を放て~ 作:レゾナ
「初めまして。シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなところがあるかもしれませんが、よろしくお願いします」
と、シャルルと呼ばれる男子は礼儀正しく挨拶をする。その一つ一つに気品があり、まるで貴公子を思わせた。
蓮司は本を読みながらも、少しだけ驚く。
それは男性IS操縦者という事実にではなく、他の事に対してだ。
(今のこの時期、なぜ今のような時に……それに、そんなニュ-スどこにも……)
本を読みながらもその内容は頭に入ってこない。それ程に今の蓮司の頭の中は混乱してしまっていた。
(考えられる事は国をあげて匿っていたか……もしくは……)
「お、男……?」
蓮司は思考に没頭していると、クラスメイトの一人がそう聞く。
「はい。僕と同じ境遇の方々がいらっしゃるとお聞きしたので」
そして
「き――――」
「え?」
(やばい)
蓮司は何かいやな予感がしたので咄嗟に思考を中止し、耳を塞ぐ。
「男子キタァァァァァァァァァァァァーーーーーー!!!!」
そしてどっかで聞き覚えのあるような女子たちの叫び声が教室を揺るがした。
(ぐおぉぉぉぉぉぉ!!??み、耳を塞いでいるといいのに……!?)
耳を塞ぎながらも深刻なダメージを負った蓮司。
「男子よ!これで三人目よ!!
「しかもうちのクラスに!!」
「美形だし!しかも守ってやりたいタイプ!!」
「地球に生まれてよかった~!!」
これはもはや騒音だ……蓮司は心底そう思った。これでは他のクラスから苦情などが来てしまうのではないだろうか。
そして、そんな騒音が鳴り響いているにも関わらず、もう一人の転校生は我関せずを貫いていた。
背丈は他の二人より低く、銀色の髪を腰の位置まで伸ばしているが、どちらかといえば伸ばしっぱなしという感じであった。左目にはよく悪の幹部がしているような黒い眼帯をつけていた。その雰囲気から、軍人という感じであった。
「ラウラ。せめて挨拶ぐらいはしろ」
「教官がそうおっしゃるのであれば」
「教官ではない。もうお前に教えることはない。ここでは織斑先生と呼べ」
教官と呼ばれている事から織斑先生はこの転校生に何かを教えていたのだろう、蓮司はそう思いながら転校生の次の言葉を待つ。
「ラウラ・ボーヴィッヒだ」
…………………名前を言っただけで他に何も言わない。
「えぇと、これで終わりですか?」
そして山田先生は恐る恐る聞いた。
「………………」
そしてまた口を閉じた。
それは正に、挨拶しろと言われたからしただけ、といった感じだった。
(はぁ……何か、考える事が多くなった気がする……)
これからの学園生活、どうなるのだろうか……蓮司は心底、心配になった。
授業は恙無く進み、今は昼休み。今日は久しぶりに自室で昼食……すなわち弁当を作ったので、出来れば一人で食べたかった。
というのも、まだ試した事のない料理だったので他の人にも食べさせて大丈夫か、それが心配だったのだ。
弁当というのは必然的に冷えてから食べてしまう。冷えて味に何か不都合でもないか、それを確認する為にも一人で確かめる必要があった。
今日も紫苑達から昼食に誘われたが蓮司はそのような理由から断った。
理由を告げると紫苑、琴音、簪、本音は口を揃えて
「「「「じゃあ、大丈夫だったら食べさせて(食べさせてね~)♪」」」」
こう言った。蓮司自身も大成功だったら他の人にも食べさせてあげたかった為、快く承諾し、今は屋上に来ている。
「さて、と……匂い的には問題ないな……」
今回挑戦したのは、中華料理オンリー。炒飯にエビチリ、チンジャオロースに酢豚。
デザートには杏仁豆腐だ。
正直、杏仁豆腐は作ったことがないので不安要素が一杯だ。
蓮司は箸を持って手を合わせる。
「さて、いただきます」
蓮司はまず炒飯を食べる。
「うん、塩コショウもよく効いてるし野菜なんかも大丈夫そうだな。次はっと……」
と、昼食を食べながらどこをどう改良すればいいのかを頭の中で整理する。
と、その時、蓮司は背後で誰かが迫ってくるのを感じた。
「誰ですか?ドッキリとかならお断りですよ?」
「…………あらら。バレちゃった」
迫ってきた人間……まあ、必然的に女子になるが、その女子は諦めたのか蓮司の隣に座る。
蓮司は隣に座った女子。その髪色を見て蓮司は驚いた。
水色、なのだ。その水色はどこか、簪を思わせる色だった。
顔立ちを見てみると、どこか簪と似ている。
いや、実際に似ているのだろう。蓮司の隣に座っている女子の胸元にあるリボンは二年生の色だ。つまりは、先輩というわけだ。
「あの、失礼ですが名前は?」
「ああ、自己紹介がまだだったわね、更識楯無よ。よろしく♪」
「更識先輩ですか、俺は」
「知ってるわ、園田蓮司、でしょ?知らない女子はいないと思うけど?」
そういえばそうだった、と蓮司は思い立つ。
「それで?先輩は何をしにきたんですか?」
「あら?生徒会長が勧誘しちゃいけないの?」
と、楯無は持っていた扇子を開く、そこには「勧誘」と書かれていた。
「勧誘?俺をですか?しかも生徒会って……」
「ああ、言い忘れてたけど私、ここの生徒会長なのよ」
「生徒会長、ですか……それで、なぜ俺を?正直ネームバリューとしては俺よりも織斑のほうが大きいと思いますが」
「純粋な興味よ♪」
何か、掴めない人だな……楯無の第一印象を蓮司はそう思った。
「すいません、そんな大事な事ここで返事するわけにもいかないと思いますし……少しだけ時間くれませんか?」
「わかったわ、色よい返事を期待するわね」
そう言って立ち上がると、楯無は屋上を後にする。
蓮司はその姿を見送りながらも、料理の改良策を頭の中で整理していった。
楯無SIDE
屋上から出て行った私はその足で私の城、生徒会室にやってきた。
「たっだいま~♪」
「何をしていたんですか、お嬢様」
部屋に入るやいなや、虚ちゃんがそんな厳しめな声でそう聞いてくる。
「蓮司君の所に行ってたのよ」
「蓮司君のところですか……それで、記憶の方は?」
「簪ちゃんや本音の言うとおり、記憶はないみたい」
「そうですか……」
虚ちゃんは肩を落とす。
それも仕方がないと思う。私達は一日だけではあるけど、蓮司君と遊んで絆を育んだんだから。
「やはり、あの一件ですよね……」
「ええ、それに関しては本当に……私達が悪いのかもしれないわね」
蓮司君のご両親の死……いや、正確には殺されたといえばいいだろう。
それも……更識家の分家の人間の手によって。
「思い出して、くれるのでしょうか……」
「思い出してほしいとは思うけど……難しいでしょうね、思い出すって事はあの事件も思い出すって事だから」
蓮司君に私達と遊んだ記憶がないという事は、あの事件の全容を忘れたという事だろう。
一種の防衛本能。理解したくない、認めたくない。当時の蓮司君の本能はそう感じた。
その方法が、その事件の前日までの記憶の削除。そうする事によって壊れるのを防いだのだ。
記憶を思い出すという事は、そんなトラウマを呼び出す事に等しい。
「ホント、侭ならないわね……」
私はそんな事を呟きながら、席に座り弁当を食べ始めた。
SIDE OUT
分家やなんやらは独自設定です。
後、楯無の言葉の通り、蓮司は両親が死ぬ日の前日、楯無(当時は刀奈)、簪、虚、本音と一緒に遊んでいました。